20 / 48
高級チョコケーキと晩餐
しおりを挟む真正面からフィンが抱きしめてくれたのは初めてかもしれない。
こ、これは気持ちええもんだ……。はふ~。
以前、背後から抱き枕状態で抱きしめてもらったことならあるけど、あの時は緊張して何も考えられなかった。
今も、抱きしめられてから息が止まったというか息をするの忘れてる気がする。
鼻腔をくすぐるフィンの匂いとか、背中に回された手が優しくさすってくれたりだとか、あと、耳に聞こえるフィンの息遣いとか……やばい。
私は驚きで口を開けたまま、真っ赤な顔して突っ立ってるだけだ。
固まっちゃった。せっかく抱き締めてもらったのに何も返せない。
無反応ですみません。なんとか再起動だけはかけてるから。
「君は本当に可愛いな」
ぎゃー! そんなこと言われたら再起動も追いつかないよ。また固まった。
私どんだけ固まってればいいの? それとも何かしら言い返すべき? 恋愛奥手すぎてわからんよ!
「はう……あう……ありがとうございます……」
ほーら。訳わからなくなりすぎて御礼言っちゃった。
「ディムナ、そのへんで勘弁してあげて。リリエイラはもういっぱいいっぱいみたいだ」
クールさんには不憫がられた。そうです。私のライフはもうゼロです。
できたらこのまま気絶したい。
「エリは俺より年上なのにこういうの苦手なのか」
「ひい!ごめんなさい未経験です初体験です年上ぶってすいませんっ」
「別に謝らなくても」
「だって面倒くさいでしょこんな女!」
「新鮮で面白いよ。エリみたいな女の人は社交界にはいない」
どこと比べてんだあああ比較対象が雲上人じゃん!
そうだったフィンことディムナ様は貴族様であらせられたわね。
イーガンさんなんか大公様に近しい人っぽいから、もしかしたらディムナはもっともっと高貴な身分の人かもしれないんだ。
一般ド庶民の田舎エルフじゃ貴族のお嬢様方とは違いすぎて、お笑いにしかならないと思うの。
「ちっくしょー頑張る! 貴族の嬢ちゃんになんか負けないもん!」
お洒落とか洗練された仕草とかは無理だけど、家庭的なあれこれで頑張るわ。
「その意気よ~リリエイラさん」
そのお声はディムナのお母様。松葉杖をついてこちらに歩いて来るところだ。
あ、そこ段差あって危ないですよ。と思ったらクールさんが横からすかさず支えた。さすがです私の師匠クール先生。
いつの間にか私の中で先生呼ばわりになってるけど、まだお父さんに許可もらってないんだよなあ。帰ったら早速お父さんに相談だ。
「母様、迎えに行くから座っててと言ったのに……」
「あらあ~でもねえ、みんなリリエイラさんを探してるから、私もと思ってね」
「え?! 探してるって……あ、もうそんな時間でしたか」
そろそろ帰りの時刻というやつである。
きっとシャドランが、私が見当たらないから探してるのだろう。みんなってエルフのみんなかな。総出で探されちゃってるのね私。すいませんここにいるよ。
「ええ。それでね、最初に私がリリエイラさんを見つけたから、今夜は泊まっていきなさいな」
ん? のほほんと言っていることが飛んだけど筋は通ってるね。お泊りしていいということでしょうかお母様。
「メイニル、それは保護者の許可は得ているのかい?」
「大丈夫よ~エルフの方々にはお話したわ。ご両親には今からお手紙書くわね」
へ。本当にお泊りしていいの? ディムナと夜も一緒にいていいということ?
私とディムナは顔を見合わせて、お互いに驚いてる顔を確認しあった。
うん。びっくりだ。
メイニルお母様は、いきなり突拍子もないこと思いつく人なんだねえ。
*
「それじゃあ、ちゃんといい子にしてるんだよ。ご迷惑をお掛けしないように」
「わかってるよシャドラン。そんな何回も言わないで。耳にタコできちゃう」
「何度言っても足りないくらいだ。外泊なんて……カドベルに怒られるのは僕なんだから……」
まーだ納得してないらしいシャドランにぶつくさ言われながらも、私はディムナにくっつくのをやめない。
抱き締めてもらってからこっちずっとひっつき虫のようにひっついている私である。だってそこにディムナがいるから。くっついてないと。
「あと、それ。そこ。一線だけは越えないように」
越えるわけないじゃん。なに心配してんの。
私、エルフ年齢15歳でこんなに見た目は幼女だよ。
いくら好き合ってるとはいえ一線越えたら犯罪だろう。
「変なこと言わないでよ。ディムナはシャドランと違って紳士なんだから」
「分かってないなリリィ。男なんて皆ケダモノだっつーの」
「そっちこそ分かってないもん。ディムナは優しいもん。前、一緒に寝たときだって、胸揉みだけで終わってくれたんだからね!」
ほーら越えてない。セーフだ。私はドヤ顔でのたまったのであるが、シャドランは心底驚いたように口をあんぐりと開けた。
「アッホだなお前。そんなことカドベルに報告できると思ってんのか?」
「報告しなきゃいいじゃん。気が利かないなあシャドランは」
「誰に向かってそんな口聞いてんだあ? ああ?」
ああああ頭の米神んとこ拳骨でぐりぐりしないでええええええ。
「ふふ~大丈夫よお。きちんと貞節は守らせます。うちの息子がリリエイラさんに不誠実なことをしたら責任も取らせますので、どうぞご安心下さい」
メイニルお母様、それはそれでなにかがズレてます。
「気を悪くしないでくれシャドラン。この家は代々、肉食家系なんだ」
「ああ、うん。お前も大変なとこ入っちまったなクール。草食系エルフには辛いだろうが」
「慣れたら面白いよ。情熱的だし」
そこな大人エルフ二人、なんの話だなんの。
まったく、皆してディムナを狼さん呼ばわりして失礼しちゃうわ。
たとえ私の牡丹色したロングストレートを撫で梳いてこようと、たとえお膝の上に乗せてもらってお口あーんとかしてくれようと、ディムナは紳士なのです。
「んっ、ん……もう食べらんないよ。それおっきいし」
「じゃあ小さく割ってあげる。これなら口に入る?」
「うん……でもお夕飯前に食べ過ぎ良くないよ。あとそれだけね」
「わかった」
と言って、貴重なチョコレートを使ったケーキを私の口に運んでくれるディムナ。完全に餌付けされてるね。
「美味しい?」
「美味しいれふ」
私じゃお高すぎて買えないチョコレート。それをふんだんに使ったチョコレートケーキ。美味しいに決まってる。
さすが貴族様だね。私のおやつにって、さくっと高級チョコケーキ出てくるあたり身分の差をひしひし感じます。
そしてお茶はディムナが手ずから淹れてくれた高級茶葉使用のロイヤルミルクティーなんだぜ。
ここは高級ホテルのラウンジかっ!てくらいのおもてなしを受けてます私幸せ。
「ディムナはお茶淹れるの上手なんだねえ」
前も思ったけど、貴族のお坊ちゃんなのにディムナはお茶の淹れ方を知ってるのだ。その時点で驚きである。
「母様がああなってから、本読んで勉強した」
「自分で学んだんだ。すごいな。何歳頃の話?」
「八歳くらいだな」
「誰か教えてくれる人いなかったの?」
「ああ。茶の淹れ方をわざわざ教えてくれるやつはいないだろ」
そりゃそうだ。貴族の坊ちゃんには必要ないもんね。
じゃあ使用人とかに学べばいいのではと思って尋ねたところ、
「元々この家に使用人は少ない。今もそんなにいない」
なーんて驚愕の事実を聞かされるわけです。はい?
「昔っからそうなんだ。カザストラ家に関わると事件に巻き込まれたり、酷いと命を落とす。国でも評判良くない。だから誰もこの家に勤めたがらない」
ディムナったら、あっさり言っちゃったけどカザストラ家ってあれだよね。ゴロムト大公の出自がそうだよね。大公について調べた本を思い出す。
『謀の系譜~カザストラ家の人々』とかいう題名だった気がする。
謀……。謀略とか人を陥れるという意味の言葉だ。
「ディムナはカザストラ家の人ってこと?」
「その通りだ」
これまたあっさりと教えてくれる。いいのかね。
私はそれだけ信用されてると考えて、いいのかね。
「傍流だけど祖父のイーガンは嫡嗣だ。本名イーガン・デタイユ・カザストラ。
現大公オルモック・ガジニ・カザストラとは従兄弟関係にある」
従兄弟か。身内に身内を人質にとられているのね。本当に謀が常套なのか。怖い家系だ。
それからディムナは少しだけカザストラ家のことを話してくれて、最後に深い溜息を吐いた。
「エリにこんなこと注意したくないけど……気をつけてほしいから話す」
なんだ? 耳をそばだてると、ディムナはゆっくりと私を背後から抱き締めて言った。
「ゴロムト大公はエルフ好きだ。お祖母様を狙ったのもそう……父様まで……。もう、あんな思いはたくさんだ。エリのことは俺が守る。この命を捧げても構わない」
ちょいとディムナさん今すごいこと言った。今、全私が感動で打ち震えた。
命を懸けて守るとか騎士みたい! 私の中の全乙女がそこで感激の涙を流した。
エルフ好きの大公はキモいな。お祖母様はエルフだって聞いてたし、美人なんだろう。手を出したくなるのはわかる。
しかしクール先生までとか……やめて。あの美貌と麗しさの究極コラボを堪能したい気持ちはわかるけど、やめて。
クール先生が気分悪くなった理由がわかっちゃった。ゴロムト大公の話題を出したからだね。お労しや…………。
「怖がらなくてもいい。俺が絶対に守るから。エリ……」
私が色んな意味で震えてたからだろう。ディムナは抱きしめる力を強めて私を慰めてくれる。
ごめん。震えている理由は恐怖じゃない。主に乙女部分の狂喜乱舞と大公への怒髪天をつく怒りのためだ。
「ディムナ、私は大公に会わないよ。もし何か機会があったとしても、ずえーーーーったいに会わない。全力回避をお約束する。だから、そんなに心を傷めないで。命捧げるとか言わないで。ディムナが死んじゃったら私も死ぬしかないじゃん。言っとくけど私、今世は長生きするって決めてるの。後追いなんてしたくないからディムナは全力で生き抜いてくださいお願いします」
きっぱり宣言したらディムナの抱き締めてくれる力が緩んだ。
私は振り返ったんだが、そこでディムナの顔が正面に迫ってるのが目に入った。
間髪入れず口を塞がれる。口づけだ。
今までのキスは口にしても少しくっつけただけで直ぐに終わった。
でも今回は終わらない。腰に腕を回されて後ろ頭もディムナの手に支えられてる。
私は息継ぎが分からなくて何度も身を捩ったんだけど、有無を言わさず押さえ込まれてキスし続けてる。
こ、これがディープキスというものか……。
「もちろん初めてだよな」
「うぅ……初めてです……」
こんなに気持ち良いものだとは知りませんでした。ありがとうございます。
初キッスはレモン味とかいうけどチョコケーキ食べてたからチョコ味でした。
たいへんおいしゅうございました。
以前にした唇に軽く触れたあれはキスじゃないね。これが本物のキスだ……。
「もっかいする?」
「ま、また、今度、で」
ディムナの顔をアップで見るだけで心臓ドキドキするのに、これ以上キス重ねたらどうなることやら。頭パーンしちゃうかもしれん。
ちょうど「夕餉の支度が整いました」とこの家の数少ない使用人さんが声がけにいらしたので、私はディムナのお膝から降りて真っ赤になった顔を隠したのだった。顔あっちいよー。
いくら使用人さんが少ないとはいえ、このお屋敷を維持するのに最低限の要員はいる。執事さんにコックさんに庭師さん、それから今私たちを案内してくれたメイドさんみたいな人である。名前はミラさんだと伺った。役職の正式名称は知らぬ。あくまで前世で漫画から得た知識だ。
夕食は普通のダイニングテーブルでいただいた。
よくある貴族の館だと、ばかでかいテーブルなのに縁の方で椅子も離れてコース料理食べるようなイメージがあるが、そんなことはなかった。
ちょっとゴージャスな部屋で、ちょっと大きいテーブルを囲って、ご当主イーガンさん始めトレアスサッハ家の面々で料理を食べた。
料理は……これが美味すぎた。
手長エビのカクテルに始まって甲羅に入ったドレスドクラブ&イチジクのサラダ、メインはお魚のシチューなんだけどこれカニやエビで出汁とってるね。
深みのある味でブイヤベースに似てた。トマトも入ってる。だから濃い味なのにあっさり食べれた。
うーん。この家のコックやるなあ……旨すぎてすんごくじっくり無言で味わって食べちゃったよ。一人遅れて食べ終えたの不審に思われそうだ。後でコックさんに御礼言わないとな。
デザートは海藻のアイスだったよ。ここインスーロは海に囲まれた島だけあって海産物が美味しいんだよね。エルフも海の幸が大好きなのだ。
コックさんはその辺よく分かってる。もしかして私が泊まるから気を使わせちゃったかしら。
この島の人たちは魚なら魚!貝は貝!海藻もどーん!ていう食卓が多い。
でも今回いただいたお料理は、どれも丁寧に調理されてた。カニの身はほぐしてあるし白身魚は食べやすいようカットされてた。ありがたいことです。
そんな訳で私は調理場へ向かってる。ディムナも一緒である。
一人で行けると言ったんだけど、案内がてら手を繋いで散歩したいんだそうだ。おっふ。まるでデートみたい。トレアスサッハのお屋敷を巡るデートだね。
「おや、エルフのお嬢ちゃん。こんなむさ苦しい場所まで来なくても……」
「お夕飯とっても美味しかったから御礼に来ました。おじさんが作ってくれたの?」
「リリィ、料理人のコスタだ。ゴロムトに居る頃からずっとうちの厨房の主をしてる」
「こりゃあ……坊ちゃんまで……嬉しいねえ」
コスタさんは帽子を脱いで目をこすってる。感動で目から汁が……とか誤魔化しているけど、泣けちゃったのね。感激屋の気のいいおじさんだ。
やはり今日の料理は私のことを考えてのメニューチョイスだったみたい。
手を使って食べるものは避けて、私――お子様エルフが好きそうな味付けにしたんだって。ありがたや。
「どれも美味しかったけどシチューがとても味わい深かったです。何か柑橘類も入ってましたか?」
「お、鋭いねえ。オレンジピールを混ぜ込んだんだよ。トマトだけじゃ甘味と酸味が足りないと思ってね」
「なるほど。香りも味わえてすごく良かったです。また食べたいです」
「嬉しいねえ。作りがいあるってもんだよ」
と、また目をこすこすしてます。泣き虫なおじさんだ。いい人だ。
そんなコスタさんにプレゼント。
じゃじゃーん! アモルファスシリカ~~。
格好良い言葉で秘密道具みたいに出してみたけど、要は珪藻土のことです。トリポリともいう。
「なんだいこれ?」
「見た目ただの白い石ですが、これを塩や砂糖を保存する時に一緒に入れておくと湿気を吸い取ってくれるんで便利ですよ」
「なんと。それは凄いな。早速使ってみるよ。ありがとう」
うん。あまり信じてない顔だねそれは。まあ使ってみれば珪藻土のスゴさはわかる。しばしコスタさん管理の厨房で実験してもらおう。実はまだ検証してないので私にも効果のほどが分からない。
日本で市販のものは使っていたのだ。この世界の珪藻土も同じ効果なら、数日もすれば珪藻土があるかないかで如実に違いが分かるだろう。
使う前にオーブンで数分あっためて、乾燥させてから使ってくださいねと言い置き、私たちは厨房からお邪魔した。
*:゚+。.☆.+*✩⡱:゚
<トレアスサッハ家の晩餐>
前菜二種とお魚メインのパン食べ放題
~幼エルフに優しい心がけ~
プラウンカクテルのマリーローズソースがけ
┗マヨ&ケチャップのお子様舌対応ソース。
ドレスドクラブ甲羅に盛り付けて
┗お子様のためによりクリーミーに仕上げている。下記のサラダを添えて。
ブルーチーズとクルミのサラダ
┗お子様のために青カビチーズじゃなくてプロセスチーズに変更。
イチジクが目立つが本来は脇役である。
魚介類のシチュー
┗お子様のために甘いオレンジピールを追加。
海苔アイス(メレンゲ菓子とアーモンドが入ってる)
┗お子様のために隠し味のブランデーを抜いてシロップ追加。
仕上げにチョコソースがかかっていた。コスタさん神!
1
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】「君を手に入れるためなら、何でもするよ?」――冷徹公爵の執着愛から逃げられません」
21時完結
恋愛
「君との婚約はなかったことにしよう」
そう言い放ったのは、幼い頃から婚約者だった第一王子アレクシス。
理由は簡単――新たな愛を見つけたから。
(まあ、よくある話よね)
私は王子の愛を信じていたわけでもないし、泣き喚くつもりもない。
むしろ、自由になれてラッキー! これで平穏な人生を――
そう思っていたのに。
「お前が王子との婚約を解消したと聞いた時、心が震えたよ」
「これで、ようやく君を手に入れられる」
王都一の冷徹貴族と恐れられる公爵・レオンハルトが、なぜか私に異常な執着を見せ始めた。
それどころか、王子が私に未練がましく接しようとすると――
「君を奪う者は、例外なく排除する」
と、不穏な笑みを浮かべながら告げてきて――!?
(ちょっと待って、これって普通の求愛じゃない!)
冷酷無慈悲と噂される公爵様は、どうやら私のためなら何でもするらしい。
……って、私の周りから次々と邪魔者が消えていくのは気のせいですか!?
自由を手に入れるはずが、今度は公爵様の異常な愛から逃げられなくなってしまいました――。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。アメリアは真実を確かめるため、3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる