上 下
30 / 54
あいつとBLしたい編

30.イベント前夜の成長ぶり

しおりを挟む
 
 モリエスにゃんのアフターケアをバッチり終えた私は再び聖王都へ。

 腐女子ナカーマたちはどうしてますかねえ。
 夕飯時、矛盾食堂へ顔をニョッキリ生やしたらば、私の分霊体が枝芽をニョキニョキ動かして皿を運んでいた。
 ふむふむ、ようやっとるね。

 ────ホモカプは撮れましたか?
 ────現在六組。それぞれのプロフも調べたよ。

 なんと優秀な……よろり。分霊体の優秀な働きぶりに眩暈がしたわ。普段のお手伝いだけでなくホモカプリサーチまで完璧とはね。引いては私が優秀ということで。やだ聖樹たんすごい。自分で自分を褒めるスタイルです。

「おう、聖樹様おかえり」
「テンチョ、ただいまです」

 駆けつけに一杯のジュースをいただいた。何も言わなくとも無言で出てくるジュース。ピルスナー(ビール)くださいとは言えなかった。言ってもきっとジュース出てくるだろうな。なんかそんな気がする。

「聖樹さまぁぁんんん」

 ボインなヤルシュカがボインを揺らしてボインボインやって来た。男の目に毒だと思うんですよね。けしからん。
 股間にアレが生えた今、私も男なはずですが…………普通に前から好きだな、おっぱい。
 ただちょっと、今日は触ってみたけど。

「ヤルシュカって、母乳でます?」とも、訊いてみたけど。

「急にどうしました聖樹さまぁ? 私の聖樹さまは可愛くあどけなく純粋ピュアで天使なんですよぉ。そんなこと言っちゃいけませぇん」

 触ってたボインを外されてしまう。
 ああ、おっぷぁい……ペニョにあげたかったのに…………。
 しょぼんしてたらデニサに「あれえ?」と首を傾げられた。

「ちょっと大きくなった? 聖樹さまと身長……あたし、同じくらいなんだけど?」

 並ぶデニサと目線が合う。小柄な彼女は女の子の中でも小さい方。そんな彼女と身長と体格が同じくらいに成長していた私。メトジェのペロペロのせいだ。

「本当だ。前は私の胸より下だったけど、胸上越してるよ」

 バルボラの胸……はじけるおっぷぁい……あれも母乳出ないでしょうか。誰かペニョのために乳出してくれないでしょうか。

「あららぁ~衣装どういたしましょおぉ……」

 ヤルシュカごめん。成長しちゃったら用意してくれているコスプレ衣装、着れないよね。

「肩出しだから、丈を手直しすれば大丈夫よ。上着は……あたしと背丈一緒だし……うん、なんか工夫すれば、いけるイケル」

 針子担当デニサ、ちょっと遠い目で代替え案をヤルシュカと検討している。お手を煩わせてすまねえです。
 ところでマリエの姿が見えませんが?

「マリエなら、コピー本作成でMP0だよ」

 と、バルボラが教えてくれる。
 ああ、本当にコピー本作ったんだ。で、複製魔法と保存魔法を何度も使わなきゃいけないから魔力尽きたんだね。それはしばし動けないねえ。
 この世界ではMPと表される魔力値。MP0は気絶状態のこと。

 マリエ……冒険者なのに、どんだけ命かけてんの同人誌づくりに…………。

 しかし夢にまで見た同人誌。その同人誌が売っている同人誌即売会。通称イベントに、もうすぐ行けるわけですね。開催まで後一週間ですよ。

 バルボラが注文したピルスナーを横から拝借しまして、シュニッツェルに似たカツレツをもぐもぐする。肉はカトブレパス肉だって。牛だね。牛だ。牛だと思えば食える食える。
 脂身の少ない赤身だから硬いかと思いきや下処理きちんとしてあるから柔らかくてジューシー。かけるソースも濃厚ソースと塩ダレと二種類あって好きな方をかける。どっちも試してみて、どっちも美味しかった。両方かけちゃえ。ダバー。
 肉をもぐもぐしていると米食べたくなるなあ。代わりの茹でパン食べる。うめえ。
 腐女子たちと留守の間の出来事を喋りながら、食事を終えた。皆で食べるご飯はまっことうまいですねえ。

「じゃ、聖樹さま明後日またここで待ち合わせようね」
「今夜は徹夜だなあ」
「聖樹さまのお衣装のためですものぉ~がんばるわぁ」

 同人誌即売会へ出発する日は明後日だ。開催日の五日前には出発しないと、間に合わないらしい。イベント会場そんなに遠いの?と思うだろう。私も思った。
 会場は色々と事情があって、毎回違うんだそうだ。会場へは指定のゲートを通ることで辿り着く。ゲートというのは門のことであり、門がどこにあるかはサーチケに記されたヒントで見つける。
 そう、まずは門を探し当てるところからは始まるのだ。

 出発の明後日までに、デニサとヤルシュカは徹夜で針仕事をするらしい。バルボラはそれに付き合うと。
 腐女子ナカーマって、いいね。私の衣装ってどんなんだろうね。前世でもコスプレは経験しなかった。コスプレイヤーさんを愛でることはしていたけれど、自分が着飾るとなると、何だかこっぱずかしい。でも、わくわくする。なにこの矛盾した気持ち。

 私はペニョをスイングに抱え、帰宅した。
 聖樹本体じゃないですよ。私の部屋には、まだイチャコラするホモカプが2カップルもいるからね万歳。
 トーヴァと陽生さんの家へ行きます。洒落た小径の奥にあるウェーブ状の階段を登りきった先にあるサーモンピンク色の漆喰が愛らしいおうちです。

 勝手にお邪魔。勝手にベッド使う。勝手に寝る。おやすみぃ。
 寝なくてもいい聖樹ですが、今は眠りたい気分だったのです。
 翌朝、目が覚めたら鳥顔どあっぷ。

「ギビィーィ」
 ────おっぷぁいうまうまさせろ

 ペニョ……お前は口を開けばおっぷぁいおっぷぁいと……。
 腹の上に乗るペニョは昨日より一回りは大きくなっていた。ペニョの外見は鳥。汚こい鼠色の産毛が抜け始めて、ところどころ剥げている。やだこれ禿げ鼠とはお前のことだよペニョ。私はお館様だね。

「ほ~れほれ、これが欲しいかい」

 指先から樹液を滴らせてペニョの口元に持って行ってあげる。ペニョ、黒いくちばしを鋭く光らせガブツンンッッと食らいついた。
 痛覚ないから痛くはないけど、その勢いに飲まれて、またベッドへと背中からダイブしてしまう。おろろん。ペニョめ、お館様を押し倒すとはなにごとだ。

 私の指先をチュパチュパチュパチュパして樹液を飲むペニョ。鳥の癖にチュパチュパだと……? 舌がいちおうあるらしい。鳥は下嘴で液体を掬って、嚥下で飲み物を飲むと思っていたけど、ペニョはひと味違う。吸引力が凄まじく、私の樹液管をストローに、ジュルジュル吸い上げていく。ゴックンゴックン喉鳴らして飲んでいる。
 勢いついて嘴から樹液こぼれて口周りをべとべとにしても止まらない。

「めちゃくちゃ飲みますねえ」

 昨日の比じゃなく飲んでいて成長を感じる。昨日は小さな濡れ鼠だった。でも今日はでかい禿げ鼠になっていた。この調子で毎日おいしい牛乳のごとく樹液を飲み続けたら巨大な怪鳥になることうけあい。ジズだジズだ正にジズだ。楽しみだなあ。

 ペニョが一頻り満足するまで授乳して、それからまた矛盾食堂へと出掛けますお。私の朝食タイムです。
 時刻はブランチの時間ですけども、いつも通りのジュースをじゅごーしてお粥さんをいただきます。例の謎のお出汁が効いた野菜入り雑穀粥です。なんか色んな穀物入ってる。うめえうめえ。

 お粥さん食べていたら、「聖樹さま、お久しぶりです」とマリエが入店。傍に来ました。

「マリエ、体調だいじょうぶですか?」
「あーご心配をおかけしまして~だいたい、大丈夫です」

 だいたいって……。見るからに青白い顔をしているので本調子じゃないのは見て取れますが、その姿は修羅場明け前世友人の姿に酷似しています。海帆浬ちゃんも眠眠打破で三徹乗り切った後はあんな顔色でした。
 私はジュースをマリエの前に差し出します。おごりです。たんと飲んでくれなされ。

「コピー本できたんですね」
「はい、おかげさまで。聖樹さまに捧げる上質な一品がこちらです」

 そう言って差し出したコピー本は最初の原典。複写したものではなく、複写の対象となった最初の一冊である。
 こ、これは……!

「どうぞお納めください。ツンデレ受けケンカップル幼馴染ものです」

 なにそれ涎でる……!!!!!
 その場で貪り読んだのは言うまでもない。

「ふふっ……聖樹さまに読んでいただけている……ふふ…………」

 マリエが虚ろな瞳で笑いだしたので、こりゃやべえと思って『矛盾食堂を訪れるホモカプたち六組。その秘話』を放映クリスタルに流してあげました。嬉々として映像にかぶりつくマリエ。目が爛々です。よかったよかった生気の炎が灯りましたね。

 人の多い食堂などで放映クリスタルを観るのはマナー違反ですが、私の魔改造バージョンは隠蔽魔法バッチリで音もミュートに、更に音を聞きたい人には集音魔法でイヤホンのように音が聞こえるという機能付き。便利だぁね。だからここでホモカプ映像堪能しても大丈夫です。
 こっそり路地裏で始まったアンアン映像まで隠し撮りしていた私の分霊体マジパネェ。現代日本なら犯罪者だね。いや犯罪樹木か……ごろが悪い。

 私はコピー本原典でむっふっふ。
 マリエは秘めたるホモたちの隠し撮りでふへへへへ。
 お昼時で混雑してきた矛盾食堂。テンチョの奥さんも行ったり来たり。そんな中、笑顔の怪しいやつらが食堂の一角にあるテーブルを占領しております。ごめんよテンチョ。私の分霊体がこっそりお手伝いしてますから見逃して下さい。

 尚、この日は記念すべき七組目のホモカプもハケーンし、今日も午後からウキウキウォッチング。幸せな日だ。

 明日から、とうとうイベント会場を探すというイベントが始まります。
 まるで冒険クエストのように壮大な冒険が始まるとは……この時の私は萌え心に支配されていたので想像もできなかったのでした。

 まさかジュース屋の息子とパン屋の息子が恋仲だったなんて……!
 出入りの業者同士なんて盲点だったわー。しかも私が求めていたショタ×ショタじゃないですか。かわいいかわいいこっそり見守った! どんどん見守った! 初キスまで見届けた! ぴぎゃぁ尊い……!(ぷるぷる)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

エロゲ世界のモブに転生したオレの一生のお願い!

たまむし
BL
大学受験に失敗して引きこもりニートになっていた湯島秋央は、二階の自室から転落して死んだ……はずが、直前までプレイしていたR18ゲームの世界に転移してしまった! せっかくの異世界なのに、アキオは主人公のイケメン騎士でもヒロインでもなく、ゲーム序盤で退場するモブになっていて、いきなり投獄されてしまう。 失意の中、アキオは自分の身体から大事なもの(ち●ちん)がなくなっていることに気付く。 「オレは大事なものを取り戻して、エロゲの世界で女の子とエッチなことをする!」 アキオは固い決意を胸に、獄中で知り合った男と協力して牢を抜け出し、冒険の旅に出る。 でも、なぜかお色気イベントは全部男相手に発生するし、モブのはずが世界の命運を変えるアイテムを手にしてしまう。 ちん●んと世界、男と女、どっちを選ぶ? どうする、アキオ!? 完結済み番外編、連載中続編があります。「ファタリタ物語」でタグ検索していただければ出てきますので、そちらもどうぞ! ※同一内容をムーンライトノベルズにも投稿しています※ pixivリクエストボックスでイメージイラストを依頼して描いていただきました。 https://www.pixiv.net/artworks/105819552

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

ヒロイン不在の異世界ハーレム

藤雪たすく
BL
男にからまれていた女の子を助けに入っただけなのに……手違いで異世界へ飛ばされてしまった。 神様からの謝罪のスキルは別の勇者へ授けた後の残り物。 飛ばされたのは神がいなくなった混沌の世界。 ハーレムもチート無双も期待薄な世界で俺は幸せを掴めるのか?

とある美醜逆転世界の王子様

狼蝶
BL
とある美醜逆転世界には一風変わった王子がいた。容姿が悪くとも誰でも可愛がる様子にB専だという認識を持たれていた彼だが、実際のところは――??

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

処理中です...