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BLしているのを見たい編

23.マブダチーとの再会

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 ベヘモスは天に召されました。
 結果を先に述べるスタイル。

 だって聖樹たん機嫌悪かったのですよ。
 せっかく『朝のモリエスにゃん、その、しどけない喘ぎ声』をミニ放映クリスタルに録音して着ボイスにしようとしたのに、絞殺されそうになったのですからね。
 あれくらいじゃ私死なないけども。でも、コレジャナ~イ!

 ヘソ曲げた私は腹いせにモリエスにゃんの神官服の裾をめくってから、「へ? 聖樹様?!」この先の街道に現れたというベヘモス探して一直線。
 朝のセクハラお疲れさまです! 本日の紐パンはサーモンピンク色でした! ひゃはー!
 テンション高く私がにょっきり生えたところは、ここから先は危ないよと荒縄が張られた最前線でした。

「ベヘモスはこの先ですか?」

 荒縄を越えて前にいた冒険者っぽい人に訊きます。ベヘモスどこ?

「おお……て、子供が何でここに?」
「入るな。危ないぞ」

 冒険者っぽい人たち二人に止められる。
 一人は剣士風のイケメン。もう一人はゴツイおっさん。

 ――――ちょっと黙っててくんないかなあ。

 でも……あれ? この二人どっかで見たことありますね。

「あ、思い出しました。コンラートとフーゴ!」

 以前、私の前でまぐわってくれたホモカプ!
 二人共、驚いた顔のまま固まってますね。

 ――あ、やべ。無意識で【聖なる言霊】発動しちゃってました。ごめんごめん。「黙れ」って思念を乗せちゃってたかもですね。早くベヘモスぶん殴りたいばかりに。

「こんなところで会うなんて奇遇ですね。私は聖樹ですよ。久しぶり!」

 再度、おしゃべりしましょ~という友好的な思念を乗せて名乗る。

「そうか、聖樹サマか。どっかで聞いた声だと思った。そんな姿にもなれるんだな」

 ほっとしたような表情のコンラート。いやいや、ほんと、ごめん。
 コンラートたちは、野宿していたところでベヘモス来襲に気づき、近隣の町へ伝令を飛ばし、ベヘモスを逃がさない結界を敷いて、ここでも一般人が誤って入らないよう歩哨に突っ立っていたという。

 えーと、ベヘモス狩らなくて、いいの?

「血気盛んなやつらが息まいて先駆けちまった。応援を待てと止めたんだがな……。この人数じゃ潰されるのがオチだ」
「コンラートが、あいつらの為に汚れてやることは、しなくていい」

 おおっとお、重戦士フーゴさんが情熱的にシャベッタアァァ! ここ来た時に注意の言葉を聞いてはいたけれど、それ以外は黙していたし、前に会った時も淡々と述べることはあっても感情乗せてしゃべることはしていなかった。
 でね、その情熱的なお言葉。コンラートを戦わせたくないって……過保護か! いやでも、冷静に判断してるってことだよね。少人数で大型モンスターに挑むのは無謀ってものです。特に相手は世界三大食用モンスター。肉は超絶うまいし狩れたら億万長者らしいのですが、狩れたらの話です。
 簡単に狩れるほどベヘモスは弱いモンスターじゃないですよ。最低でもモンスターレベル300はあるやつなんで。本来なら一個師団で挑むレベルです。

 そういえば初日にテンチョがもたせてくれた【海のリヴァイアサン】を使ったお弁当、もんどりうつうまさでしたが、あれも狩った人はお肉やら素材やら売って億万長者になったってさ。
 希少な海の肉を手に入れたテンチョの伝手も凄いなと思いましたけども。

「フーゴは可愛いなあ」

 コンラート、デレる。
 フーゴさんは決して可愛い見た目ではありません。ゴツムキしたオッサン顔です。
 コンラートの目、腐ってんじゃないかと思うよね。しかしあれは愛ゆえにだ。愛ゆえにオッサン顔を愛でてしまうのです。
 そんな愛は盲目コンラートが重戦士なフーゴさんの頬にちゅっちゅっしまくってるのを横目に、私はベヘモスがいる方へ移動します。

 ちょっと行ったところで硝煙が上がっている。
 ふむ? 誰か爆弾でも投げましたかね?
 ドンドンボカン ドッカーン と、派手な音がして火煙が見える。
 ふむふむ。あれはもう、みんなでタコ殴りというやつですな。ベヘモスは数多の冒険者っぽい戦闘職ですがなにか的な人たちに囲まれて、バグオオォと吼えている。

 ベヘモスのシルエットは象よりだ。耳でかくて鼻が長い。四つ足は太く毛深い。マンモスかな?
 牙が八本ある。ご飯食べ辛そう。皮膚が硬いのか攻撃もあまり入らないようだ。
 油断したのか、ベヘモスの足下に手足もげた人たちが何人か転がっている。どいつもこいつもへんじがない。ただのしかばねだろうか。
 その、ただのしかばねかもしれない人たちが邪魔で、他の人たちもうまいこと攻撃できないでいるみたいだ。
 爆弾は投げちゃったようだけど……ああ、もしかして、ただのしかばねの誰かが投げたのかもです。爆弾投げてベヘモスが怒って長い鼻で手足もいでただのしかばね行きに。
 ご愁傷様です。

「バゴグオォォーー!!」

 さらに強力な吠え声を響かせ、長い鼻をぶん回し、手当たり次第に攻撃し出しました。
 冒険者たちは防御や素早さを上げているから攻撃は当たる前に避けるか、当たってしまっても平気なようですが、地面に転がってるしかばねたちは踏みつぶされていますね。

 何トンか知らないベヘモスに全力で踏まれた人を想像してみてください。
 はい、ぐちゃぐちゃになっちゃうね。
 その前に、見るも無残な姿になってしまうのも可哀相なので、私も参戦しますよ。

「えーと、前にアーテュグ浄化したやつ、あれ、でろー!」

 と、私が発した瞬間、ベヘモスが聖なる光に包まれる。
 地下茎から一斉に聖光がパワヮヮヮ☆
 光の粒に変わったベヘモスは、完全に浄化されました。ええ、すべて消えました。

 しぃまったああぁぁ美食モンスターを消してしまったあああああ超絶うまい肉をおおおお

 そのことに気づいたのは、お肉もといベヘモスが「バホォォン♡」って、とっても良い顔して天に召された時でした。
 あいつ、イってなかったか?
 私の魔法にはそんな副作用が……? まさかね……。

 さらに、モンスター退治して洗滌せんできしたら出てくるはずのアイテムとお金も浄化してしまったらしく、辺りはきれいさっぱりなにも残っていない。
 そういえばアーテュグ浄化した時も戦利品みてないけど、てっきり、ヨナーシュが洗滌して持って行ったものとばかり……違った?
 もしかして浄化したら何もかも消える……?
 だから、パーティーに神官って見かけないの?
 癒しより、戦利品を無かったことにしちゃう清らかな人はいらないってこと……?

 こりゃあ……やっちまったあ…………。

 戦利品と貴重なお肉様を浄化してしまい、必死で狩ろうとしてた冒険者の皆様にさぞド叱られるだろうと思ってたら、「うわああ死ぬなああ」「ポーションじゃ追いつかない……!」「手、どこ? くっつけ、くっつけ……!」阿鼻叫喚しか聞こえなかったのでした。

 ベヘモスに踏みつぶされて、ただのしかばねっぽかった人たちが本当にしかばねになりつつある現場です。凄惨だね。辺りは血の海。息も絶え絶えな人たちが転がって、仲間たちが必死に蘇生を試みてます。

「案の定これだよ。やっぱり助けるべきだったかなあ」
「きかなかった連中だ。仕方あるまい」

 コンラートとフーゴも現場に到着しました。
 二人が止めたのにベヘモスに挑んで散った冒険者たちを目の当たりにして、コンラートは直接の手助けをしなかったこと、後悔しているようです。

 ベヘモスを逃がさないよう結界を張ったのはコンラートだって聞いてます。あの冒険者たちにも沢山の補助魔法が掛かっていました。全部、コンラートの魔力だって【真贋芽】で見て知ってますよ。
 彼はきちんと助けてる。直接一緒に戦うだけが手助けじゃないはずです。

「私もフーゴさんに賛成ですよ。いのちだいじに。これ冒険者の鉄則なのです」

 冒険者は無謀なこともしますが、それだって挑戦の範囲内。
 己の命を懸けることもしますが、それも名誉のため。
 はっきり言って今回の冒険者たちの行動は犬死にだし、無謀通り越して無茶です。あんたアホなの死にたいの?なレベル。

「聖樹サマ……」
「コンラートはフーゴさんと一緒にいなきゃ駄目ですね。一人だと、この人たちを守るために飛び出してったんじゃないですか? あそこで歩哨に立ってたのも、結界破って出てきたベヘモスを迎え討つつもりだったからでしょ?」

 うんうん全くもってその通りだと頷くフーゴさんを見て、やっぱりかと思いました。これまでの苦労が偲ばれるよフーゴさん。
 コンラート、鼻の頭搔いてる場合じゃないですよ。自分が情けないと思うのなら、もっと強くなればいいんです。ベヘモスなんか一人で倒せるくらいに!
 ……それ英雄っていうけどね(ぽそり)

 阿鼻叫喚な人たちは、とうとうすすり泣いてます。どうやったって、手足もげた人たちを元に戻すことができないって痛感したからです。
 この世界の魔法薬いわゆるポーションというのは傷薬なのですね。傷の治りを早くし、血止め・化膿止めの効果もあります。
 広い範囲の傷を治すには上級ポーション。更に酷い傷、それこそ手足欠損を治せる特級ポーションとかあるみたいですけど、一介の冒険者が携帯してることはまずないです。べらぼーにお高いものですし。
 あとは神官がいれば回復の魔法(ポーション並)で治してもらえるのですが、ここにいる冒険者たちの中に神官はいないようだ。
 無理もない。神官は戦利品を消しちゃうから神官を戦わせると儲けがでないのだ。ポーション購入して携帯していた方が安上がりってことですね。
 理由があるとはいえ、神官の仲間もいないのにベヘモスに挑むとか、ほんと無謀でしたね……。

「聖樹サマ、こいつら治してやれないか?」

 ほ……?

 コンラートに言われるまで気づかなかったよ。あら私、聖樹。冒険者登録時に確認したステータスだと、【神級聖魔術】が使えるはずです。聖魔術だと上級ポーション並みの傷癒魔術がかけれるそうで。そこに神級とか付いちゃってる私なら、なんとかできるかもですね。

「よっしゃ、やってみる!」

 えー、ファンタジーな漫画とかでお馴染みのポーズ、両手かざしてみる。怪我してる人たちの前で。
 で、念じてみる。いたいのいたいのとんでけ~~。

「すごい眩しい!」「お、おおお治って、る……!」「きれいになったぞ……?!」

 手足もげてた人たちは無事にくっついたようだ。ははは。やればできるね聖樹たん。ついでに血の海も綺麗に浄化しました。血生臭いまま放っておくと、また他のモンスター来るかもだからね。

「全員一気に完全回復させてしまうとは……」

 フーゴさんが目玉まんまるにして驚いてます。そんな顔できるんじゃないですか。ちょっと若く見えますよ。

「すげーカッコイイな聖樹サマはー!!」

 コンラートが私の両脇に手を入れて持ち上げました。おお、どうしたコンラートこのまま高い高いですか? いいですよ。きゃっきゃっ! 高い高いとグルグル回転も合わさって空飛んでるみたいです。わーい楽しい!

 冒険者たちにも感謝されました。
「ありがとう聖樹様!」はわかる。「ちっちゃいのにすごい!」という褒め方はどうかと思ったけどね! けどね! ベヘモス肉を台無しにしてしまった負い目があるから、喜んだふりしときましたよ。私ったら大人ですね。

 この後、意気揚々と町へ帰ったら、モリエスにゃんにド叱られた件へつづく。
 ベヘモス肉ではド叱られなかったのにいぃぴえん!
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