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学園長室での後、チェリッシュは気を失った様で、気付くと寮の自分の部屋におり、側にはメイドとなぜか可愛い可愛い弟がいた。
「姉様が心配でしたので来てしまいました!」とうるうるした瞳で見つめられるとそれ以上質問は出来なかったが、その後説明された事はなかなか納得できる物では無かった。
第二王子は我が家に婚約の申込みをし、ジャンは何故か私の騎士になりたいと懇願し、弟はこのまま体調不良を理由に私を連れ帰ると言っている。
まだ1日にしか通っていない学園をもう辞めることになるのかしら。
「姉様、すぐ帰りましょう。そして療養を理由に王子はつっぱねましょう。王命にだって僕は姉様の為なら逆らいます。」
とんでもない事を言い出した弟はどう見ても真剣な様子で、諌めながらも自分でもどうするべきか分からず悩んだ。
当初の目的であった前世の諸々は、一番知りたかったことは知れたが、今回学園に魔物が現れたことなど新たな疑問も出来てしまった。
本心ではクラウス様と前世のお話がしたかった、私が死んだ後の王都はどうなったのか、今も同じ名前の国が存続しているということは王族は生き延びれたのか、魔物は誰が倒したのか。
《貴方は苦しまずに過ごせましたか》どう考えてもそんなはずは無いのに、そうあって欲しかったという願望を聞きたくなってしまう。
しかし彼は私の前世をベアトリス様と勘違いしたまま、あろうことか身命の誓いを立て求婚までしてしまっている。
ここで「えへへー本当は孤児の平民でしたー」なんて暴露する勇気はとても無い、私の次の世が始まってしまうかもしれない。
明日時間が欲しいと先触れは届いているが恐怖で震えが止まらないし、いっそもう弟の案が1番かもと思っていると、
「だっ、だっ、だっ、だっ、だっ!」
ノックも無しに突然部屋に寮長が入ってきて、吃りながら何かを伝えようとしてくれているようだ。
メイドが水差しからコップにうつした水を受け取ると一気に飲み込み、一気に叫んだ。
「第二王子殿下がお越しです!」
その声と共にドアの後ろから、私にとっては気絶ぶりの第二王子殿下が現れた。
先触れは明日だったのでは???てかここ女子寮では???困惑する我々に殿下は眩しすぎる笑顔で
「なんだかこのまま領地に帰られるような気がしてしまって。
つい先触れを破って来てしまいました、申し訳ございません。」
とおっしゃった。
なんと我々のような下々のものの考えはお見通しだったのか、そして全く申し訳なさそうな感じもない、さすが統治者の血である。
「とんでもございません、この様な場所までわざわざご足労頂きまして有り難く存じます。」
動揺を見せない様に、そしてとても尊いご身分の方々を見る目ではない弟の顔が見えない様に体勢を変えて丁寧に挨拶を返す。
「体調のすぐれない中、申し訳ないがどうしても2人だけでお伝えたしたい事があります。
人払いをお願いしても?」
拒否権など無い圧がひしひしと感じられる中、弟が叫び出す前に「すぐ終わりますからお隣のお部屋で待っていてくれるかしら。」と伝え、必ず呼ぶからねと笑顔で追い出し、顔面蒼白となりながらも王子と向き合った。
王子は切なさを滲ませた表情でチェリッシュの顔を見つめて、懇願した。
「もう伝わっておられるかもしれませんが、あなたに婚約を申し込ませて頂きました。
今世こそ命に変えても必ず貴方だけをお守りしたいのです。
どうか私に貴方のそばにいる栄誉を与えて頂けないでしょうか。」
見目は麗しく、身分は王族、そして中身は前世でお慕いしていた騎士様。
そんな方に求めて頂いて、チェリッシュは顔が火照るのを止めることなど出来なかった。
記憶が戻ってから、ずっとクラウス様の事が気になっていたのだ。
彼はどうなったのか、もう生きているはずなどない、2度と会えるはずもないと思っていた彼が目の前で動いている、その事実に涙が溢れてきそうだった。
でもこの求婚に素直に頷く訳には到底いかない、チェリッシュの赤く染まった顔は即座に青くなり、どう辞退すべきか思案しだすが上手い断り方など思いつくはずもなく、ただ目線を逸らして下を向く。
膝に置いた手を見つめて何も言えずにいると、突然その手が握られ、下から心配した表情の王子に声をかけられる。
「ではとりあえず、私と共に城へ参りましょう。貴方の部屋は用意させました。
今日からはそこで生活して頂きますので。」
「え?」
驚きを発すると共に王子の手は、腰と膝裏に回され有無を言わさず横抱きにされてしまった。
「お待ちください!!
わたくしには分不相応といいますか、、、
尊い王族の方々のお住まいにお邪魔するなどとても考えられません!!」
このまま連れていかれる訳にはいかない、不敬罪という言葉が頭にちらつきながらもつい大声をだしてしまう。
「貴方は私の誓いを受けてくれたので、私を害そうとする場合、貴方をまず狙う人が増えるでしょう。
尊い王族を守る為にも城へ来ていただけると大変助かるのですが。」
そう言われてしまうと争う術は私にはなかった。
号泣する可愛い弟を置いて、姉はこれから初の登城が決まってしまったのだ。
「姉様が心配でしたので来てしまいました!」とうるうるした瞳で見つめられるとそれ以上質問は出来なかったが、その後説明された事はなかなか納得できる物では無かった。
第二王子は我が家に婚約の申込みをし、ジャンは何故か私の騎士になりたいと懇願し、弟はこのまま体調不良を理由に私を連れ帰ると言っている。
まだ1日にしか通っていない学園をもう辞めることになるのかしら。
「姉様、すぐ帰りましょう。そして療養を理由に王子はつっぱねましょう。王命にだって僕は姉様の為なら逆らいます。」
とんでもない事を言い出した弟はどう見ても真剣な様子で、諌めながらも自分でもどうするべきか分からず悩んだ。
当初の目的であった前世の諸々は、一番知りたかったことは知れたが、今回学園に魔物が現れたことなど新たな疑問も出来てしまった。
本心ではクラウス様と前世のお話がしたかった、私が死んだ後の王都はどうなったのか、今も同じ名前の国が存続しているということは王族は生き延びれたのか、魔物は誰が倒したのか。
《貴方は苦しまずに過ごせましたか》どう考えてもそんなはずは無いのに、そうあって欲しかったという願望を聞きたくなってしまう。
しかし彼は私の前世をベアトリス様と勘違いしたまま、あろうことか身命の誓いを立て求婚までしてしまっている。
ここで「えへへー本当は孤児の平民でしたー」なんて暴露する勇気はとても無い、私の次の世が始まってしまうかもしれない。
明日時間が欲しいと先触れは届いているが恐怖で震えが止まらないし、いっそもう弟の案が1番かもと思っていると、
「だっ、だっ、だっ、だっ、だっ!」
ノックも無しに突然部屋に寮長が入ってきて、吃りながら何かを伝えようとしてくれているようだ。
メイドが水差しからコップにうつした水を受け取ると一気に飲み込み、一気に叫んだ。
「第二王子殿下がお越しです!」
その声と共にドアの後ろから、私にとっては気絶ぶりの第二王子殿下が現れた。
先触れは明日だったのでは???てかここ女子寮では???困惑する我々に殿下は眩しすぎる笑顔で
「なんだかこのまま領地に帰られるような気がしてしまって。
つい先触れを破って来てしまいました、申し訳ございません。」
とおっしゃった。
なんと我々のような下々のものの考えはお見通しだったのか、そして全く申し訳なさそうな感じもない、さすが統治者の血である。
「とんでもございません、この様な場所までわざわざご足労頂きまして有り難く存じます。」
動揺を見せない様に、そしてとても尊いご身分の方々を見る目ではない弟の顔が見えない様に体勢を変えて丁寧に挨拶を返す。
「体調のすぐれない中、申し訳ないがどうしても2人だけでお伝えたしたい事があります。
人払いをお願いしても?」
拒否権など無い圧がひしひしと感じられる中、弟が叫び出す前に「すぐ終わりますからお隣のお部屋で待っていてくれるかしら。」と伝え、必ず呼ぶからねと笑顔で追い出し、顔面蒼白となりながらも王子と向き合った。
王子は切なさを滲ませた表情でチェリッシュの顔を見つめて、懇願した。
「もう伝わっておられるかもしれませんが、あなたに婚約を申し込ませて頂きました。
今世こそ命に変えても必ず貴方だけをお守りしたいのです。
どうか私に貴方のそばにいる栄誉を与えて頂けないでしょうか。」
見目は麗しく、身分は王族、そして中身は前世でお慕いしていた騎士様。
そんな方に求めて頂いて、チェリッシュは顔が火照るのを止めることなど出来なかった。
記憶が戻ってから、ずっとクラウス様の事が気になっていたのだ。
彼はどうなったのか、もう生きているはずなどない、2度と会えるはずもないと思っていた彼が目の前で動いている、その事実に涙が溢れてきそうだった。
でもこの求婚に素直に頷く訳には到底いかない、チェリッシュの赤く染まった顔は即座に青くなり、どう辞退すべきか思案しだすが上手い断り方など思いつくはずもなく、ただ目線を逸らして下を向く。
膝に置いた手を見つめて何も言えずにいると、突然その手が握られ、下から心配した表情の王子に声をかけられる。
「ではとりあえず、私と共に城へ参りましょう。貴方の部屋は用意させました。
今日からはそこで生活して頂きますので。」
「え?」
驚きを発すると共に王子の手は、腰と膝裏に回され有無を言わさず横抱きにされてしまった。
「お待ちください!!
わたくしには分不相応といいますか、、、
尊い王族の方々のお住まいにお邪魔するなどとても考えられません!!」
このまま連れていかれる訳にはいかない、不敬罪という言葉が頭にちらつきながらもつい大声をだしてしまう。
「貴方は私の誓いを受けてくれたので、私を害そうとする場合、貴方をまず狙う人が増えるでしょう。
尊い王族を守る為にも城へ来ていただけると大変助かるのですが。」
そう言われてしまうと争う術は私にはなかった。
号泣する可愛い弟を置いて、姉はこれから初の登城が決まってしまったのだ。
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