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第四章後編 新生サタルニア魔女王国、移住30年後編

移住30年後

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 移住して30年が過ぎた頃、きな臭い噂が出てきた。
 20年前、イステリア王国で女王が崩御し、新しい王が即位した。
 しかし、当時まだ4歳。
 世継ぎ争いで継承順位第1位が毒殺され、第2位が暗殺説により失脚した為、
 継承順位第3位の王子が即位した。
 もう分かるように、碌なことにはならない。
 実質宰相が実権を握り、セツナ達を裏切った。
 支払いがそれからパタッと途絶え、実質踏み倒しにかかった。
 ユエ達は、なかなか面白いことをすると笑いながら傍観していた。
 イステリア王国は"人族至上主義"を掲げ、"下等な魔族は我々が支配し、教育しなければならない"
 など、どの口が言うという教育をしだす。
 それから異常な事が起こりだした。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      セツナ、もう知ってると思うが……

(セツナ)魔物の事ね。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      そうだ、巨大化した魔物が頻発しだした。
      中にはスタンピートまで起こり、壊滅した街や村まで出だしたな。
      うちの領地ではまだ無いが、隣りでは、
      スタンピートによる壊滅した街と、
      巨大なスライムに飲み込まれ壊滅した村が1件づつ出たな。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      ヤマト様!


 メイド長のコアラが慌ててヤマトの部屋へ駆け込んできた。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      どうした。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      ついに我が領地にも出ました、巨大種が。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      場所は分かるか?

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      はっきりとは……
      北部の洞窟という情報だけです。
      北部東地区とも中央地区とも西地区とも言われており、情報が錯綜しております。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      そうか……どう思う?

(セツナ)最悪、3ヵ所かもしれないと思う。
    用心に越したことはない。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      そうだな。なら討伐隊を組もう、3ヵ所同時につぶす。
      セツナは東地区を私は……

(セツナ)ヤマトは出ちゃダメ、屋敷を守って。
    この近くに居ないという保証はないから。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      分かった、中央地区と西地区は領軍を送る。

(セツナ)領軍?

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      警ら隊の連中だ。有事の際には領軍になる。

(セツナ)警ら隊でいいやん。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      まぁそう言うな、形式美だ(ニヤリ)

(セツナ)はいはい(笑)


 警ら隊改め領軍は、4部隊に分かれる。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      これから巨大種の討伐にはいる。
      隊長、お前は西地区だ。副隊長のお前は中央、お前はセツナの支配下に入り東だ。
      そして、お前たちはここに残り、俺と共に屋敷近辺を守る、いいな!

(隊長&副隊長)はっ!

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      では、行け!

(警ら隊員一同)はっ!

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      セツナ、無茶するなよ。

(セツナ)はい(笑)


 続々と出発する3部隊。
 各々の討伐地区に向かう。

(セツナ)空から索敵しよう。


 そう言うと、魔動飛行船を出した。

(セツナ)皆んな乗って。


 セツナ達は一足先に東地区へ行き、索敵を開始する。

(セツナ)5ヵ所も反応がある。順番に潰していこう。

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      はい。


 順調に潰していくが、セツナには疲労が溜まりだしていた。
 戦いながら、味方を守っていたからだ。
 危ない、やられた、と思うタイミングで結界が発動し、守られる。
 中には気づく者も居たが、まさかセツナ1人がカバーしてるとは思っていなかった。
 5ヵ所目に行ったとき、

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      なっ、これは……

(セツナ)人質が居るな。

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      相手はゴブリンです、無事ならいいのですが……

(セツナ)だよなぁ。


 索敵にはいる。

(セツナ)居た、ここはゴブリンエンペラーだわ。
    ゴブリンエンペラーを任せていい(笑)

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      えっ?

(セツナ)嘘だよぉ~ん(笑)
    ゴブリンは任せた、ゴブリンエンペラーを殺る

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      はっ!


 セツナ達は突入する。
 警ら隊員たちはゴブリンを殲滅にかかる。
 セツナはゴブリンエンペラーへ

(セツナ)    【アースバインド】
     【ライトニングランス】


 極太のランスが貫き、雷魔法が炸裂する。
 セツナの魔力で発動すると、もはや瞬殺。一撃必殺である。
 人質のところへ近づく。

(人質 ふたなり 熊獣人)
      ひっ!

(セツナ)なんでお前がビビるんだよ!

(人質 ふたなり 熊獣人)
      うるさい!私だって怖いものは怖いんだ。

(セツナ)そのナリで?

(人質 ふたなり 熊獣人)
      私は繊細なんだ、見た目で判断するな!

(セツナ)繊細?あゝ、食事で一番最初に出てくるやつね。

(人質 ふたなり 熊獣人)
      それは"前菜"よ!

(セツナ)じゃあ、スープに入ってるつるつるした野菜?

(人質 ふたなり 熊獣人)
      それは"蓴菜"だ!

(セツナ)えっ?蓴菜あるの?

(人質 ふたなり 熊獣人)
      無いのか?

(セツナ)売ってる?

(人質 ふたなり 熊獣人)
      あゝ、ちょっと探さないと無いかな。
      その辺の八百屋には無い。

(セツナ)今度紹介してくれる?

(人質 ふたなり 熊獣人)
      いいけど、好きなの?

(セツナ)大好き、あのつるっとした食感が良いよね。

(人質 ふたなり 熊獣人)
      そうそう、あれがいいのよねぇ。

(人質 男装 豹獣人)なぁお前ら、何の話してるんだ?

(二人)蓴菜の話。

(人質 男装 豹獣人)
      今?!

(セツナ)これも何かの縁かなって。

(人質 ふたなり 熊獣人)
      そうそう、あの良さ、分かる人少ないから。

(人質 男装 豹獣人)
      ここでする??

(セツナ)ここで会ったから。

(人質 ふたなり 熊獣人)
      だよねぇ。

(人質 男装 豹獣人)
      その前にやることあるだろ!


 二人で顔を見合わせ、

(二人)何?


 どしゃぁ~ん!!
 他の人質10人がぶっ倒れる。

(人質 男装 豹獣人)
      じゃあ、お前、なんで来たんだよ!!(涙目)

(セツナ)あっ!

(人質 男装 豹獣人)
      あっ!じゃあねぇ~!!(半泣)

(セツナ)皆さん、大丈夫ですか?助けに来ました。

(人質 男装 豹獣人)
      今更かよ!(涙)

(セツナ)じゃあ、帰る。

(人質 男装 豹獣人)
      待て待て待て!待ってくれ!悪かったから、待ってくれ!

(セツナ)なんで?

(人質 男装 豹獣人)
      助けろよ!

(セツナ)アンタ以外?

(人質 男装 豹獣人)
      なんでだよ!助けろよ!!

(セツナ)やっぱり?

(人質 男装 豹獣人)
      当たり前だろ(泣)

(セツナ)よちよち、おしゃぶりでちゅよぉ~。

(人質 男装 豹獣人)
      やったぁ~!……って、違うだろ!!(涙)

(セツナ)ノリの良いヤツ、好きだぜ(微笑み)

(人質 男装 豹獣人)
      そ、そうかぁ……(照)


 場違いな空気が流れる。

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      あ、あのぉ~、セツナ様?何をされているんです?

(セツナ)なんだろ?

(人質 ふたなり 熊獣人)
      蓴菜の話ですよ。

(セツナ)あゝ、そうそう、その話。

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      いや、救出しましょうよ、人質。

(セツナ)あっ!

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      忘れないでくださいよ!!

(セツナ)まあまあ。

(人質 男装 豹獣人)
      もう、コイツらなんとかしてくれ(泣)


 無事全員救出するが、悲壮感というよりセツナらに対する呆れがデカく、意外に元気だった。
 未だに蓴菜の話で盛り上がるセツナと人質だったふたなり熊獣人。
 終いには、このレシピがどうとか、お茶会始めて盛り上がっていた。

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      セツナ様、撤退を(呆)

(セツナ)あっ!

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      なんで忘れるんですか!お茶会ですよね、それ(ため息)

(セツナ)まぁ、細かいことは……

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      気にします!

(セツナ)この三叉亭のスイーツあけるから。

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      えっ?良いんですか!……いや、そうじゃないです!

(セツナ)要らないの?

(警ら隊副隊長 ふたなり 狐獣人)
      要ります!ください!いただきます!でも、後にしてください。撤退します!

(セツナ)はい。じゃあ後で。

(人質 ふたなり 熊獣人)
      はい!お待ちしています。


 セツナは全員、魔動飛行船に乗せ、ヤマト邸に戻る。
 ヤマト達の出迎えを受け、報告をする。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      分かった、後は任せろ。

(セツナ)他は?

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      中央は終わったと連絡があった。

(セツナ)じゃあ、迎えに行ってくる。


 そう言うと、セツナは迎えに行った。

(セツナ)お疲れぇ~。

(警ら隊副隊長 男装 猫獣人)
      あっ!セツナ様。

(セツナ)迎えに来たよ~。みんな大丈夫?

(警ら隊副隊長 男装 猫獣人)
      怪我人はいるが、大丈夫です。

(セツナ)じゃあ、治そうか。
      【エリアギガヒール】
      【エナジーチャージ】


 怪我人が治り、疲れが取れていく。

(警ら隊副隊長 男装 猫獣人)
      流石です、セツナ様。

(セツナ)じゃあ、帰ろ…………


 セツナがふらつく。

(警ら隊副隊長 男装 猫獣人)
      だ、大丈夫ですか!セツナ様。

(セツナ)ごめん、ごめん、大丈夫。帰ろう(微笑み)


 そう言うと、皆んなを魔動飛行船に乗せ、ヤマト邸へ。

(セツナ)ただいま。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      お帰り。

(セツナ)後、西地区よね。どうなん?

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      それが、さっきから呼びかけてるんだが、応答がない。

(セツナ)いつから?

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      お前が中央地区に向かった後だ。
      今から洞窟に突入すると連絡があったきり、応答がない。

(セツナ)分かった、行ってくる。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      大丈夫か?お前、顔色悪いぞ?

(セツナ)大丈夫、大丈夫。それで最後でしょ?なら行ってくる。
    取りこぼしが無いかも索敵してくるから。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      分かった、気をつけて行けよ。

(セツナ)うん。


 そう言うと、セツナは西地区に向かう。
 向かうと同時に索敵をする。
 どうやら、途切れた洞窟が最後のようだ。

(セツナ)皆んな無事で居てくれよ……


 そう祈るセツナだった。

 洞窟に到着する。

(セツナ)     【サーチ】


 赤い点と青い点、黄色い点が表示される。

(セツナ)赤と青が超接近、戦闘中か、奥にも赤がいるが……ほとんど動きがない。
    奥の赤と黄色って人質か。
    敵は、うわっ、アントか(涙目)、スライムはまぁ好きだけど(照)


 何故、スライムで照れる?(笑)

(セツナ)しかし、ザコがジャイアントアントとジャイアントスライムって、
    ボスはエンペラーアントとスライムエンペラーね。


 セツナは虫が嫌いだ。
 中に入っていく。

(セツナ)居た!


 激しい戦闘中で、怪我人も出ている。

(セツナ)皆んな下がって。
       【ライトニングアロー】

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      せ、セツナ様!

(セツナ)早く下がって、遺体があるなら、それも回収して、早く!!
        【ウィンドカッター】


 次々倒すが、なんせ数が多い。
 アントは集団で居るらだ。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      撤収、終わりました!

(セツナ)分かった。
      【煉獄】
      【トルネード】

 凄まじい炎が上がり、そこへ風魔法、"トルネード"が重なる。
 もはや地獄の業火が可愛く見える。

(セツナ)はぁはぁはぁはぁ。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      だ、大丈夫か?セツナ様。

(セツナ)虫、嫌いぃぃぃっ!!

(警ら隊員たち)・・・。

(セツナ)皆んなは?

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      はっ!死者2名、怪我人8名です。

(セツナ)では、まず死者から、
        【リボーン】
        【魂魄】
    そして皆んな。
        【テラヒール】
        【リカバリー】
        【エナジーチャージ】

(警ら隊員たち)おおぉ~!!

(セツナ)皆んな大丈夫?

(警ら隊員たち)はい!

(セツナ)では、進もう。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      は?

(セツナ)奥にまだ居るよ?人質も居る。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      マジか……

(セツナ)明るくします。
      【エリアライト】


 周りが一気に明るくなるが……

(セツナ)行き止まり?

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      おい!

(警ら隊員)はい!
 

 3人が偵察に行く。

(警ら隊員 女 狐獣人)
      報告します!奥は広場の様になっており、そこで行き止まりです!

(セツナ)そうなん?おかしいなぁ~。これ見て。
         【サーチ】
         【リフレクト】
    この赤が敵。青が味方、黄色が保護対象。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      なるほど、何か居ますね。

(セツナ)行ってみよう。
    それと、ここを探索した時、アントとスライムって出た。ちょっと気になる。
    痕跡があったってことだし。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      先程のボスが、エンペラーアントですから……

(セツナ)スライムなら、スライムエンペラーになる可能性がある。


 更に緊張が走る。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      ここか……

(セツナ)ここの左側に……無いな?魔法か?
        【サーベイ】
    違う、物理の"壁"だ。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      壊しましょう。

(セツナ)待って、中には敵も居る。慎重に。

(警ら隊員たち)はっ!


 魔法と物理で慎重に崩していく。

(警ら隊員 ふたなり 狐獣人)
      居ました、アントの巣です。

(セツナ)嫌ぁ~!!!皆んな下がって!!
       【聖壁】
       【煉獄】


 凄まじい炎が撃ち込まれる。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      あ、あのう……セツナ様?

(セツナ)大丈夫、魔物以外には結界張ったから。


 中に入ると、先程の光景が嘘のように痕跡が全くなく、単なる洞窟になっている。

(セツナ)もう少しだ、おかしいな?また赤が付いたな……うえっ!オロロォ~(嘔吐)
         【魂魄】
    皆んな大丈夫?

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      セツナ様はほんとお嫌いなのですね。

(セツナ)虫はダメ(涙目)


 そこには数十人の捕虜がボテ腹で、アントの卵を産んでいた。
 中には既に死んでいる者も居る。

(セツナ)とりあえず、
      【聖壁】
      【ファイアー】


 産まれてきた卵と孵化したアントを焼き殺す。

(セツナ)これ、助けます?大丈夫かな??

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      ダメでしょう。アントに孕まされ産まされているだけに、もはや廃人同然。
      思い出せは発狂するでしょうし、ここで死なせてやった方が幸せかと。

(セツナ)だよな……ゴブリン相手でもなるヤツはいる。ましてアントとなるとね……
    ただ、意思確認はして、助けられるなら助けたい。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      はっ!


 警ら隊員たちが確認に回る。もはや確認が不可能な者も居るが、その処遇に困る。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      意思確認が不可能な者は、死なせてあげましょう。
      生活不可能なら、処刑することになりますから。

(セツナ)そうか……そうだな。これ以上、苦しむ必要はない……か……。分かった。


 生存を望む者は居なかった。
 セツナは叫ぶ。

(セツナ)分かりました。
    もうこれ以上、苦しまないでください。
    亡骸は手厚く埋葬いたします。
    さよなら、安らかな眠りを(叫ぶ)

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      敬礼!


 一斉に敬礼をする。

(セツナ)   【ハイファイアー】


 苦しめることなく、一瞬で灰にした。
 泣き崩れるセツナ。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      ありがとうございます。よくやっていただきました。


 号泣するセツナを抱きしめ、隊長はお礼を言った。
 警ら隊員達は遺骨を集める。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      骨1本残すな、必ず回収しろ!

(警ら隊員たち)はい!


 遺骨を回収した後、調査をする。
 おそらく今回の原因であろう、手掛かりを見つける。

(警ら隊員 女 猫獣人)
      奥に壊れた魔法陣があります!


 早速、調査に行く。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      これは!

(セツナ)召喚魔法陣。しかも、召喚物を強化する魔法陣も組み込まれてるな(射殺す目)

(警ら隊員 男装 牛獣人)
      これはイステリア王国の仕業ですね、我々では書けない文字が含まれていま、ひっ!(恐怖)

(セツナ)イステリア、潰す!地図から消し去ってやる(感情の消えた目)

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      待て待て、待ってください。まだ確定ではございません!
      書き写しただけかもしれませんし、内通者の可能性も……

(セツナ)しかし、元凶はイステリアだよね?裏切り者が居たとしても。
    そうか、内通者ねぇ……新生サタルニア魔女王国を売ったか、
    面白い、じつに面白い、いい度胸だ。
    誰に喧嘩売ったか、教える必要があるよね(感情の消えた目)

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      落ち着いてください。おい!早くヤマト様に連絡を、急げ!

(警ら隊員 男装 牛獣人)
      は、はい!


 慌ててヤマトに連絡を取る。事の次第を聞いたヤマトは、セツナに急いで代われと指示を出す。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      落ち着け、セツナ!気持ちは分かる。
      だがまだ確定じゃない。
      下手に手を出して国際問題になれば、分が悪い。
      まだ動くな。

(セツナ)地図から消せば問題ない。でしょ?

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      待て!お前はいつも民を思っていたじゃないか!
      その気持ちはどこへ行った。
      こんな事ができるのは、中央と軍部の仕業だろ。
      庶民は関係ない。
      クズ国にも民は居る。
      ソイツらを見てから判断しようよ!

(セツナ)優しいね。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      違う!お前、サナとかいうヤツの知り合いだろ?
      ソイツはギルド街セツナに来て楽しんでんだろ?
      そういうヤツも居るんだ、落ち着け。

(セツナ)……分かった、ごめんなさい。


 周りもホッとした。
 あまりの狂気に腰を抜かしてチビった者も居た。
 そして、嫌というほど理解した。
 セツナ様はどこまでもサタルニア側、決して人族の味方ではないと。
 そこへ見張りが駆け込んできた。

(警ら隊員 女 蛇獣人)
      申し上げます。魔物です。大量のスライムと、おそらく巨大なスライムはスライムエンペラーかと。

(セツナ)任せてくれる?ちょっと……ね(ニヤリ)

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      は、はい。どのような作戦を。

(セツナ)全てあの広間に誘い込み、一網打尽にする。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      はっ!


 隊長は思った。
 キレてる、キレておられる。
 ただし、全てを誘い込んだら、厳しい戦いになる。
 そう思って広間に戻りかけると。

(セツナ)危ないから、広間に出ないでね。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      は?


 そう言って広間に出たセツナは、皆を守る為に結界を張る。

(セツナ)      【聖壁】

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      えっ?


 大量のスライムが入ってくる。
 セツナは仁王立ちのまま動かない。
 襲ってくるスライムを全て殴り迎撃する。
 全てが広間に集まった事を確認すると。

(セツナ)      【聖壁】


 結界で入り口を塞いだ。

(セツナ)     【煉獄】
     【ハリケーン】


 極大魔法が炸裂する。
 一瞬にして全てを灰塵にした。
 そりゃそうだ、"煉獄"ですらオーバーキル、それを"ハリケーン"で威力を増大したんだ。
 灰が残る方がおかしい。

(セツナ)      【解除】


 結界が解除され、皆が出てくる。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      す、凄い!凄すぎる!!


 魔道士なんか、震え上がっていた。
 それこそ書物でしか聞いた事がない、超神級と言われる魔法をぶっ放したんだ。
 しかも2連発で。
 それを合わせ技で即席のオリジナル魔法よろしく威力を増大。
 2種混合をさせた。
 その所業、もはや人にあらず、神の領域である。
 この時、味方で良かったと魂に刻みこんだ。
 そこへドラゴンが急襲してきた。
 しかも、ドラゴンエンペラー。
 これは厄災級の魔物。
 1頭で国が滅ぶ、それが4頭。
 誰もが死を覚悟して固まった。

(セツナ)危ない!
      【聖壁】
    早く元の場所へ。


 セツナの呼びかけに我に返って、元の場所に走り込む。

(セツナ)    【聖壁】


 結界で塞ぐ。
 しかし、今度は厄災級が4頭。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      セツナ様ぁ~!!


 その叫びにセツナはニコッと笑う。

(セツナ)鬱陶しいんだよ!
        【アースバインド】
        【煉獄】
        【ハリケーン】


 ガッチリ固定した後、
 先程の混合魔法が炸裂する。
 だから、オーバーキルですって。
 かなりお怒りのようですな。

 厄災級が一瞬にして灰塵となった。

(セツナ)しまった!
     【リボーン】

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      えっ?


 セツナは先程の4頭を生き返らせた。

(セツナ)     【アースバインド】
      【ライトニングスピア】


 セツナは4頭を一撃でたおす。
     
(セツナ)      【ウィンドカッター】
      【ストリップ】


 セツナは貴重な部位を種類別に剥ぎ取った

(セツナ)    【解除】
    もう大丈夫だよぉ~(笑顔)

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      ど、どうしたんですか?

(セツナ)貴重なドラゴンの素材、もうちょっとで無駄にするとこだった。


 がしゃぁ~ん!!
 一斉にズッコケた。
 そりゃそうだわな(笑)

(セツナ)ドラゴンの肉って美味しいよねぇ~。
    このクラスになると、かなり期待できるよね(笑顔)

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      そ、そうかもしれませんね(滝汗)


 それから、これ高く売れるかなぁ~。
 これで武器や防具作ったら、かなり高く売れるはず!
 この血は絶対、薬師が高く買うよ!
 肉、にくぅ~!
 と笑顔で物色しているセツナを見て、恐怖を通り越して、呆れていた。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      あのお方の感覚を、我々のレベルで考えてはいけない……

(警ら隊員 ふたなり 狐獣人)
      ですよねぇ~(遠い目)


 すると、洞窟の入り口に、この世の終わりのような顔をした不審者を見つける。
 逃げようとする不審者を、

(警ら隊員 女 牛獣人)
      待て!

(セツナ)ん?
      【アースバインド】


 そのままセツナの前に持ってくる。

(セツナ)ちょっと待ってね。
       【ストレージ】


 ちゃっかり獲物を収納する。

(セツナ)で、なぁ~にしてたのかなぁ~。聞かせてくれる?(笑顔)


 満面の笑顔で尋問を始めるセツナ。

(不審者)ひっ!化け物!(恐怖)

(セツナ)えぇ~。こんなか弱い乙女に失礼よねぇ~。


 ガラガラがっしゃあぁ~ん!
 一斉にズッコケた。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      どこがですか!俺たちでも怖えぇ~よ!アンタが味方で良かったと心底ホッとしてるよ!

(セツナ)酷ぉ~い!後で抱いて慰めてね(ニコッ)


 ガン!
 隊長は地面で顔面を打った。

(セツナ)で、話してもらおうかなぁ、お姉さんに(笑顔)

(不審者)その笑顔が怖えぇ~よ!
    それに俺はこの領地のモンじねぇ~。
    他領のモンに手を出したらどうなるか、分かってんのか?

(セツナ)分かんなぁ~い。お姉さんに教えてくれる?
    それに他領のモンってことは、そこの領主が裏切り者ってこと??

(不審者)違う、領主は関係ねぇ~。俺たちの独断だ。

(セツナ)へぇ~、俺たちの独断?

(不審者)誰がお前……


 次の瞬間、右腕が飛んだ。

(不審者)ぎぁ~!!

(セツナ)ごめん、止血しなきゃ!
       【ファイアー】

(不審者)ぐきぁ~!!


 傷口を焼いて止血した。

(セツナ)どうしたの?

(不審者)どうしたの?じゃねぇ~!!腕斬り落としたじゃねぇ~か!!

(セツナ)ん?もう1本あるよ?
       【ファイアー】

(不審者)ぎゃぁ~!!
 

 今度は斬り落とさずに灰にした。

(セツナ)今度は斬ってないよ?
       【ライトニング】


(不審者)ぐおぉ~!!
 
 今度は右足を電撃で焼いた。

(セツナ)ねえねぇ~、喋る気になった?
       【ライトニングミニ】

(不審者)ぎゃっ!

(セツナ)          【ライトニングミニ】

(不審者)ぎゃん!

(セツナ)しぶといね。
       【ファイアーランス】


 今度は不審者の身体を焼き貫いた。

(不審者)ぐぼっ!がっ!

(セツナ)死んだ?
      【リボーン】
    ほら大丈夫。

(不審者)はっ!

(セツナ)これは?


 今度は剣で胸を軽く刺し、抉る。

(不審者)ぐぼがぁ~!!

(セツナ)もうすぐ死ぬよ?怖い?(ニコッ)

(不審者)ぐがぁ~!!


 不審者は暴れるが、それが逆効果で傷口が広がる。

(セツナ)あはは。暴れるから、逆に傷口が広がってるよ?早く死にたい?


 不審者はコクコクと頷く。

(セツナ)ダぁ~メ(ニコッ)


 笑顔で剣を突き立てるセツナに周りはどん引きする。

(不審者)がああぁぁぁぁぁっ!がっ!(ガクン)


 不審者が死ぬ。

(セツナ)もう仕方ないなぁ~。
       【リボーン】

(不審者)がっ!はぁはぁはぁはぁ、あっ?


 血まみれの服に状況を理解する。

(セツナ)まだ足りないかな?(笑顔)

(不審者)い、嫌だ!死にたくない!なんでも喋る!全部喋る!だから、殺さないでくれ!

(セツナ)いや、死んでも生き返ってるでしょ?まだ喋らなくていいよ(ニコッ)

(不審者)い、嫌だ、もう死にたくない!なんでも喋るからぁ~!!(泣叫ぶ)

(セツナ)じゃあ、教えて。あなたの家はどこ?

(不審者)へっ?


 セツナは剣を構える。

(不審者)わ、私の家は隣のエリンゲ領の領都エレンゲです。

(セツナ)結婚は?

(不審者)してます。妻と子供が2人居ます。

(セツナ)じゃあ、好きな手料理は?

(不審者)くず野菜とくず肉が入ったポトブです。

(セツナ)じゃあ、奥さんの手料理食べたいよねぇ~、子供にも会いたい。

(不審者)もちろんです。

(セツナ)死後の世界で4人で幸せに暮らす?

(不審者)嫌です。それだけは許してください。

(セツナ)嘘よ。多分。本当のことを全て話したらね。

(不審者)はい!話します!全て話します。

(セツナ)ちなみに爵位は?

(不審者)騎士爵です。

(セツナ)貴族なのにもったいないことするねぇ~。どうして?

(不審者)それは成功したら、子爵の地位と小さいながらも領地を与えると言われたからです。

(セツナ)ちなみに仲間は?

(不審者)4人です。私を含めると5人になります。

(セツナ)4人とも同じ待遇?

(不審者)いえ、4人は私が誘いました。子爵になれば、今の給金の3倍払うと。

(セツナ)で、その話はどこから?

(不審者)ギルド街セツナで滞在中にイステリア王国の使者からです。

(セツナ)ギルド街セツナにはよく行くの?

(不審者)度々です。あそこの娼館のサナって人族の子が目当てで。
    でもなかなか居ないので、相手にはしてもらえなくて。

(セツナ)太客になればいいやん。

(不審者)そんな、騎士爵風情ではとてもとても。
    だから子爵になって太客になろうと。
    身請けは無理でしょうが、せめて太客ぐらいには。

(セツナ)で、イステリア王国の使者ってサナのこと?

(不審者)サナの従者って名乗る男からです。
    人族でしたから間違いないと。

(セツナ)で、内容は?

(不審者)この魔法陣を目立たないところに書くことです。
    場所の指定はなかったです。
    だから、身近な隣りの領地にと。

(セツナ)で、ウチを選んだわけね。理由は?

(不審者)はい、まず隣りであること。
    領都エレンゲから離れていること。
    ギルド街セツナに行く途中にあるので、ある程度土地勘があることです。

(セツナ)隣りだと危ないとは考えなかったの?

(不審者)真っ先に考え、不安でした。しかし、
    その使者は、書いた領地から魔物は出ない細工はしてある。と。
    だから、協力者は皆、手軽な隣り領でやっていると。

(セツナ)皆とは?

(不審者)今まで50人以上スカウトして、誰も捕まっていないと。
    頃合いを見て、宣戦布告をせず騙し討ちするので、戦争が始まったら逃げて来い。
    身の安全は保証すると言われました。

(セツナ)で、美味しいと乗ったわけね。

(不審者)はい。騎士爵から子爵なんて、尋常ではない功績を残すか、王族の中の王族、
    マリア女王やミリア王女、もしくは王配のセツナ様を救って死ぬぐらいしかない昇進です。

(セツナ)非常に魅力的ね。

(不審者)はいそうです。申し訳ございません。

(セツナ)もう一度、確認ね。あり得ないほどの良い話に乗った。
    誘ってきたのはサナの従者って名乗ったヤツ。
    今までに50人に誘いをかけている。
    これで合ってる?

(不審者)はい。

(セツナ)その従者の名前は?

(不審者)ベルガー・サーメン子爵と名乗りました。
    同じ貴族で相手は子爵、信用していいと考えました。

(セツナ)なるほどね。まず、絶望してもらう。
    その話はあり得ない。

(不審者)そんな……全て話しました。

(セツナ)だからだよ。
    イステリア王国は"人族至上主義"を掲げ"下等な魔族は支配して教育する必要がある"
    と唱えてる国家だ。
    魔族のアンタを子爵にするなんてあり得ない。

(不審者)そ、そんな……

(セツナ)知らなかった?社交界は?

(不審者)私の居る領では、男爵からが社交界です。
    いくら爵位があると言っても騎士爵は相手にされません。
    騎士団で幅が利くぐらいです。

(セツナ)なるほど。
    で、次だが、サナは遊びにくる。
    娼館でも有名な一流娼婦だが、あくまで遊びの小遣い稼ぎ。
    というか、遊びだな。
    太客がついて、喜んでいたよ。
    で、その知り合いが、ギルド街セツナの名前の由来になっている、私、セツナ・テレシアだ。
    名前の通り、私はマリア女王とミリア王女の王配だ。
    で、サナはお忍びで来ているから、従者は居ない。
    サナの正体はイステリア王国筆頭魔道士だ。
    そして、従者と名乗ったベルガー・サーメンは別人だ。
    アイツはサーメン伯爵家の三男で爵位はまだ無い。
    そしてイステリア王国近衛騎士団団長だ。
    でだ、サナとベルガーは、私と先代魔王を討伐した、勇者一行だよ。
    どう?絶望した?(ニヤリ)

(不審者)あっ、あっ、あっ、そ、そんなぁ~……俺は一体……


 項垂れる不審者。もはやこの世の地獄を味わっているようだった。
 もう、誰も助けてはくれない。
 それどころか、王配に無礼どころか、命を狙った事になる。
 もはやこれまで、生きていれば、家名に関わる。
 自害して、家にお情けをかけていただけることを望むしかない。

(不審者)セツナ・テレシア様、私の命で家名を、家を守ってはいただけないでしょうか?
    今回の件は家の者は誰も知りません。
    もちろん妻子もです。
    なんとか家を救っていただけないでしょうか?
    家だけは、どうか、家だけは、お救いくださいませ。
    私はどうなっても構いません。

(セツナ)そうか、いい心がけだ。


 そう言うと、剣を抜き、斬った。髪を。

(不審者)は?

(セツナ)1つ取り引きをしよう、乗るかどうかはお前次第だ。

(不審者)はい。

(セツナ)このままここで死ぬか、
    それとも、家名も妻子も捨てて、私の犬になるか、
    選べ。
    犬の命は飼い主次第。なにかやらかしたら、その場で斬り捨てる。
    犬になるなら、この髪を遺髪として、幾ばくかの金貨と共に家に送ろう。
    イスティ領領主の嫁、セツナの盾となり、散っていったと伝えてな。
    どうする?

(不審者)お心遣い、ありがたき幸せ。今から私、フランツ・セルハートは家名を捨て、
    ただのフランツ、セツナ・テレシア様の忠実なる犬でございます。


 そう言うと、枷から外された途端。セツナに歩み寄り、つま先にキスをした。

(セツナ)では、最初の任務だ。
    4人を捕縛して連れ来い。場所はヤマト邸だ。
    魔法陣を書いたなら、その場所と持っているこの紙も一緒にな。

(セツナの犬 ふたなり ダークエルフ フランツ)
      はっ!


 そう言うと、セツナに敬礼をし任務に向かって行った。

(セツナ)ダメだったかな?甘い?

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      いえ、お見事です。セツナ様。

(セツナ)良かった。じゃ……


 セツナは倒れかける。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      セツナ様!


 警ら隊長が慌てて支える
 
(セツナ)ごめん、ごめん、ちょっと魔力を使いすぎだか……


 そのまま、警ら隊長に倒れこんだ。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      セツナ様!おい!ヤマト様に連絡だ!我々もすぐに出発するぞ!

(警ら隊員たち)はっ!


 連絡を聞いたヤマトは、居ても立っても居られなくなっていた。
 それを聞いたセナも同じだった。
 セツナを抱いた警ら隊長の早馬が到着する。

(ふたなり 熊獣人 ヤマト・イスティ男爵)
      セツナ!!お前、また無茶しやがって!!

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      師匠!死んじゃ嫌だぁ~!!


 お姫様抱っこで抱えられた、セツナに走りよる。

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      即治療よ!私の部屋に。原因は?

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      魔力を使いすぎたと申されておりました。

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      分かったわ、早く。

(牢番 ふたなり 鬼族 アキラ)
      私が預かります、あなたは警ら隊を。

(警ら隊隊長 ふたなり 熊獣人)
      分かった。


 アキラが引き継ぎ、セツナをセナの部屋へ運ぶ。

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      えーっと、えーっと、これじゃない、これでもない、あった!
      これと、これと、これ。
      今から調合するから待っててね、師匠!

 
 セナは慌てて調合を開始する。
 慌ててたが故に、致命的なミスを犯す。

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      出来た!師匠、これ飲んで。


 セナはセツナの口に容器を付け、ゆっくり飲ませる。

(セツナ)うっ!

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      師匠!

(セツナ)ぶっ!ぶはっ!(吐血)

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      えっ?

(セツナ)ゲフォゲフォゲフォ、ぶはっ!(吐血)

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      な、なんで?なんでよ!なんでなの!(泣)

(セツナ)ゲフォゲフォゲフォ、ぶはっ!ち、調合を間違えたんだ。確認してみろ。

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      えっ?えっ?えっ?

(セツナ)早く、半刻と持たな、ぶはっ!(吐血)

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      待って、待って、待って、待って…………

(セツナ)落ち着けセナ、お前なら出来る、ぶはっ!(吐血)

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      分かった、分かったから、もう喋っちゃダメ。
      誰か、誰か来て!早く!

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      どうしたんです?セ……セツナ様!セナ!これはどういう事ですか!

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      調合を間違えた!早く水とお湯をお願い!今から調合しなおす!
      それには水とお湯が必要なの!(叫ぶ)

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      分かりました、すぐ用意します。
 

 屋敷の中は大騒ぎになった。
 セナが調合を間違えた。
 セツナ様が吐血して命が危うい。
 メイド達は居ても立っても居られなくなり、セナの部屋へ押し掛ける。

(メイド達)セツナ様ぁ~!!

(メイド ふたなり 鬼族 ラム)
      セナ!お前、何やった!

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
       うるさい!時間が無いの、邪魔しないで!


 もはや収拾がつかないほどの騒がしさ。

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      あっ!そうだ!あれだ!

(メイド ふたなり 狼獣人 アーニャ)
      なんだ?あれって。

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      秘薬よ。代々伝わる秘薬!あれなら助かるかも。

(警ら担当メイド主任 ふたなり 熊獣人 ガイナ)
      それがあった!皆んな、かき集めるぞ!

(メイド達)はい!


 一斉に部屋に戻る。
 サキュバス族の、エルフ族に伝わる、ダークエルフ族の引き継がれる、
 古来狐獣人に、牛獣人に、馬獣人に、熊獣人に、猫獣人に、犬獣人に……
 ありとあらゆる秘薬が集まる。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      早くこれを飲ましょう。私たちが時間を稼ぎます、セナは早く調合を!

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      はい!


 メイド達は少ししか無い秘薬をセツナに次々に飲ませ、祈る。
 なんとか全部飲み終わらしたが……

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      メイド長、脈が……(涙目)

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      えっ?と、止まった……

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      セツナ様?セツナ様!嫌だ!セツナ様ぁ~!死んじゃ嫌だぁ~!!(泣叫ぶ)

(メイド ふたなり 鬼族 ラム)
      嘘……だろ??(涙目)

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      皆さん!祈りましょう!今、私たちに出来ることはそれしかありません!
      セツナ様に戻っていただけるように、祈りましょう!

 
 メイド達は祈った。
 一心不乱に祈った。
 祈りまくった結果、奇跡が起こった。

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      脈が、脈が戻った!!(叫ぶ)


 歓喜の声が上がった。
 飛び跳ねて喜ぶ者、嬉し泣きする者。
 愛されてるなぁ~セツナ。
 次の瞬間、セツナの身体が光る。

(魔道士 ふたなり サキュバス セナ)
      えっ?

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      セツナ様がサキュバスになってる?


 騒然とする周り。

(メイド ふたなり サキュバス)
      退いて、退いて!えっ?……

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      どういう事ですか?

(メイド ふたなり サキュバス)
      セツナ様が神になられた。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      は?

(メイド ふたなり サキュバス)
      これはサキュバスじゃない、サキュバスの神、"ナイトメア"よ!


 また、セツナの身体が光り、形を変える。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      こ、これって……

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      我々、獣人の神、"天狐"です。


 しばらくして、また光る。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      ひょっとして……

(メイド長 ふたなり ダークエルフ)
      我々の神、"エンシェント・ダークエルフ"だ。


 また光る。

(メイド ふたなり エルフ)
      退いて、ひょっとして……


 色が変わった。

(メイド ふたなり エルフ)
      私たちの神、"エンシェント・エルフ"よ!

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      セツナ様のお身体に神が降臨した?

(メイド ふたなり 鬼族 ラム)
      となると、四神一体だな。
      いや、まだ変わりそうだ!


 光り形が変わった。

(メイド ふたなり 鬼族 ラム)
      私たちの神、"閻魔"だ!
      じゃあ、いや、まだだ。

 
 まだ光り変わる。

(警ら担当メイド ふたなり 蛇獣人 シャーク)
      私たちの神、"メデューサ"よ!
      という事は、六神一体?

(メイド ふたなり 悪魔)
      まだですよ。ほら、私たちの神、"サタン"です。
      七神一体ですね。

(メイド 男装 牛獣人)
      神降臨です。

(セツナ)う、うううぅぅぅっ。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      セツナ神様、お目覚めですか?


 すると、一斉に跪いた。

(セツナ)は?


 慌てて起きたセツナ。

(セツナ)ど、どういう……あっ!


 セツナの身体は最初の"ナイトメア"になっていた。
 そして、セツナは泣いた。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      どうされました!セツナ神様。

(セツナ)これで、やっと人族を捨てられた。
    皆んなと同じ仲間になれた。
    よく分からんけど、ありがとう(号泣)


 セツナ、魔族化であった。
 この知らせを聞いた、ユエ達はぶち切れたが……

(ティオ)しかし、婿殿が喜んでいるなら良いではないか。
    性別を捨て、名を捨て、種族を捨てた。
    もはや柵などどこにもないではないか。
    婿殿が一番望んでいた事じゃろ、妾達は温かく迎えてあげようではないか、のう。

(シア)そうですね、私たちが一番の理解者になるべきです。

(フィル)私と同じ、ダークエルフ(嬉)

(エルム)それを言うなら、同じエルフにもなる。

(フェロ)フェロちゃんと同じ、サキュバスもね。

(レム)じゃあ、私も同じ、鬼族じゃん。

(シア)ちょっと違うけど同じ獣人の天狐もいます。

(ティオ)残念ながら、竜神はおらぬな。

(ユエ)吸血神も居ない。

(シア)皆さん、神って言われてますけど合ってます?
   "天狐"は合ってます、特に狐人族には、こちらでは狐獣人ですね。
   彼等にとっては神中の神です。

(フィル)"エンシェント・ダークエルフ"、正解。

(エルム)私も合ってますね、"エンシェント・エルフ"

(フェロ)フェロちゃんも合ってるよぉ~"ナイトメア"

(レム)"閻魔"は正解です。
   という事は、残りの2つも?

(ユエ)正解でしょう。
   そのうち降ろしてやる、"吸血神"

(ティオ)なら、妾も"竜神"を頑張るかのう(笑)


 その頃。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      あのう、お姿が色々変わられたんですが……

(セツナ ナイトメアVer.)
      そうなん!っていうか、その喋り方やめて、壁感じるから。いつも通りでお願い(涙目)

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      分かりました。

(セツナ ナイトメアVer.)
      姿が変わった?

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      はい、我々の神が代わる代わる降臨されたのです。
      今が、サキュバスの神、ナイトメア
      他にも、我ら獣人の神、天狐
      ダークエルフの神、エンシェント・ダークエルフ
      エルフの神、エンシェント・エルフ
      鬼族の神、閻魔
      蛇獣人の神、メデューサ
      悪魔族の神、サタン

(セツナ ナイトメアVer.)
      マジで?

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      はい、マジです。

(セツナ ナイトメアVer.)
      じゃあ、種族をイメージしたら変わるとか?
      例えば、ダークエルフなんちゃって、ってマジか?

(メイド ふたなり 鬼族 ラム)
      マジだな。

(セツナ エンシェント・ダークエルフver.)
      だね。

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
     じゃあ、人族をイメージしたら、なんちゃって。

(セツナ 人族Ver.)
      ねぇ~。あっ!

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      なりましたね。

(セツナ 人族Ver.)
      なんかね。嫌だ、変える。えーっと、これ!

(メイド 男装 ダークエルフ)あっ!エンシェント・ダークエルフですか!

(セツナ:エンシェント・ダークエルフver.)
      これもいいなぁ。

(メイド ふたなり サキュバス)ナイトメア!かっこいいです、セツナ様。

(セツナ ナイトメアVer.)日替わりで変えてみるとか、あはは。怒られるね。

(メイド達)全然!

(セツナ ナイトメアVer.)
      えっ?いいの?

(メイド達)はい!

(メイド ふたなり 鬼族 ラム)
      あのう、お願いがあるんだが……

(セツナ ナイトメアVer.)
      なに?

(メイド ふたなり 鬼族 ラム)
      姦る時は人族で居てくれねぇ~か?

(セツナ ナイトメアVer.)
      なんで?

(メイド達)滾る!(血走り目)

(セツナ ナイトメアVer.)
      は、はい(汗)

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      では、こうしましょう。
      セツナ様が手が空いている時は人族で居てもらいましょう。
      その方が分かりやすいです。
      それ以外は神で。
      他はあります?

(メイド ふたなり エルフ)
      神の姿で姦るのも背徳的かと(照)

(警ら担当メイド ふたなり 牛獣人 ホープ)
      怒られるかもだけど、天狐が可愛いかった。
      もふもふしながら姦りたい。

(メイド ふたなり 狐獣人 シエラ)
      ダークエルフも"お姉様"だった。

(メイド ふたなり 鬼族 ラム)
      エルフはお嬢様だったしな。

(警ら担当メイド主任 ふたなり 熊獣人 ガイナ)
      ガチムチ閻魔もいいぞぅ。

(メイド 女 ダークエルフ)
      それを言うなら、サタンも負けてないわ。

(メイド 男装 悪魔族)
      ガチムチでヨガるセツナ様、斬新!

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      ここは、その時のリクエストという事で。
      よろしいでしょうか?セツナ様(ニヤリ)

(セツナ ナイトメアVer.)
      は、はい……

(メイド長 ふたなり 犬獣人 コアラ)
      ただし、決まりですよ。
      姦って良いのは人族の時だけ。
      で、姦る時にリクエストはOK!良いですか?

(メイド達)はい!

(セツナ ナイトメアVer.)
      あはは(汗)


 
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パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

勇者に闇討ちされ婚約者を寝取られた俺がざまあするまで。

飴色玉葱
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王都にて結成された魔王討伐隊はその任を全うした。 隊を率いたのは勇者として名を挙げたキサラギ、英雄として誉れ高いジークバルト、さらにその二人を支えるようにその婚約者や凄腕の魔法使いが名を連ねた。 だがあろうことに勇者キサラギはジークバルトを闇討ちし行方知れずとなってしまう。 そして、恐るものがいなくなった勇者はその本性を現す……。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

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私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

奴隷と呼ばれた俺、追放先で無双する

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「レオ、お前は奴隷なのだから、勇者パーティから追放する!」 王子アレンは鋭い声で叫んだ。 奴隷でありながら、勇者パーティの最強として君臨していたレオだったが。 王子アレンを中心とした新たな勇者パーティが結成されることになり レオは追放される運命に陥った。 王子アレンは続けて 「レオの身分は奴隷なので、パーティのイメージを損なう! 国民の前では王族だけの勇者パーティがふさわしい」 と主張したのだった。

幼馴染の彼女と妹が寝取られて、死刑になる話

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幼馴染が俺を裏切った。そして、妹も......固い絆で結ばれていた筈の俺はほんの僅かの間に邪魔な存在になったらしい。だから、奴隷として売られた。幸い、命があったが、彼女達と俺では身分が違うらしい。 俺は二人を忘れて生きる事にした。そして細々と新しい生活を始める。だが、二人を寝とった勇者エリアスと裏切り者の幼馴染と妹は俺の前に再び現れた。

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