気持ち悪い令嬢

ありのある

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すけべらしいです

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服を選んでいる途中で、店員の男性が話しかけてきました。

「お客さん、どんな服を探していますか?これなんかどうです、今かなり流行っているんですよ」

と言って見せてきたのは、大きく胸元の開いた服。
これでは防御が著しく低下しますし、たまに冷える夜に耐えられません。

「私たち、旅をしているのです。最低限の防寒と、防御のある服を探しております」
「えー!でもファルメン!この服、すっごく良いよ!可愛い!」

ヤナギヤは胸元の開いた服が気に入ったようで、試着まで始めました。あなた、乙女の設定はどこにいったのですか。
試着したヤナギヤを、男性の店員が褒めております。アレンの体ですもの、似合わないはずがありません。

「どう、ファルメン!私にすごく似合ってるでしょう!?」
「確かに、似合いますね」

思えばアレンはこんな格好をしたことがないので、少々新鮮かもしれません。

「……これも着てみては」

そういって差し出したのは、太ももにスリットが入った派手な服でした。
このような服は人を選びますが、アレンならば似合うでしょう。きっと美しく映えると思います。
ですが、ヤナギヤはなかなか服を受け取りませんでした。代わりに、ジロジロと私を不躾な目で見てきます。

「今、ファルメン、私じゃなくてアレンを見ているでしょう?」
「……そんなことはありませんよ」
「嘘!嘘つき!この服着たアレンを見たいからって私を利用しようとしてるでしょう!?」
「早く着てみては?きっとあなたにとても似合うでしょうね」
「この体、アレンなんだから、私に似合うかなんて分かるはずないじゃない!」

ついさっき、自分に似合うと豪語していたのは、どこの誰だったのでしょう。

「もうやめた!お洒落な服なんていらない!ファルメンのすけべ!」

機嫌が良いと思えば、次の瞬間頰を膨らませて、本当に面倒な女です。
男性の店員が丈夫な素材と肌を見せない最適な防御服を持ってきてくれたので、それを二着買い、元の着物は下取りに出して店を出ました。
着物はここらでは見ない珍しい型だったので高く売れました。
華の街での稼ぎも残っているので、しばらく金銭面での心配はしなくて良いかもしれません。

「ファルメン、私あれ食べたい」

まださっきのやり取りを引き摺っているヤナギヤが、膨れっ面で甘味屋を指差しています。
冷えた乳製品に砂糖を入れ、滑らかなクリーム状になるまで混ぜたものを、果物と一緒に平べったい生地で包んだ異国の食べ物です。
そういえば、アレンもあれが好きでした。嬉しそうに食べていた彼女の笑顔をまた見たいものです。

「良いですよ」
「本当!?ありがとう!私だけじゃなくて、ファルメンと一緒に食べたいなぁ……」

アレンは、自分一人で食べるのは恥ずかしいからと、私にも一緒に食べることを勧めていました。
甘いものはそれほど得意ではありませんが、アレンに言われたなら、断る理由はありませんでした。

「良いですよ。食べましょう」
「やった!……ちょっと待って」
「なんですか?」

店の前まで来たというのに、ヤナギヤは足を止めてしまいます。
そして、見覚えがあるじとっとした目で私を見てきました。

「なんかまた私をアレンとして見ている気がする。やっぱ食べるのやめる」

本当に面倒な女ですね。いっそのこと海に投げ捨ててしまおうかしら。







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