気持ち悪い令嬢

ありのある

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パンだいすきになったそうです

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何やら、ヤナギヤは「友達になりたい」発言から、目に見えて媚びてくるようになりました。

「ファルメン、疲れてない?休憩する?」
「疲れてないです」
「疲れていたら言ってね。私、ファルメンのことが心配だから。本当だよ?さっきからずっと、ファルメンのことばかり考えてる」

私のことを思うのならば、しつこく話しかけてこないで欲しいのですが。

「心配などと言いつつ、あなた自分が休みたいだけなのでは?」
「そ、そんなことないよ?全然疲れてないよ?」
「疲れたのですね」
「そんなことないって!私、ファルメンを心配して聞いたのに」

余計なお世話です。
聞かれずとも、休みたいときは自分で言いますし。

「後になって疲れたと泣かれるのも困りますし、休憩しましょうか」

袋からパンを取り出し、ヤナギヤに渡します。
ヤナギヤはパンを嬉しくなさそうに受け取ると、一口かじって「おえ」と舌を出しました。

「このパン、いつもどこで買ってるの?硬くてパサパサで味しなくて本当にまずいんだけど。一瞬で口の中の水分が取られちゃう」
「確かに味は良くないですが、これだけで一食分の栄養を補給できように作られています。文句を言わずに食べなさい」
「はぁー…い」

もそもそと口を動かし、かじるごとに顔を顰め、何もかも諦めたように溜息を漏らしています。

「まぁ、確かにずっと同じ食事というもの体に良くないかもしれません」
「え?」

手に魔力を込めて魔法弓を精製し、狙いを定めて撃ちます。
魔法の矢はまっすぐに飛んでいき、空を飛んでいた鳥を撃ち抜きました。ボトリと落ちた鳥の足を掴み、魔力で形作った刃物で解体していきます。

「きゃ、きゃああああああ何してるのファルメン!」
「何って、あなたが言うから希望通りにしてあげるのです」
「私、鳥を捌けなんて言ってない!」
「わがままですね」

付け根に切り込みを入れ、足の関節を取り外した時、またもやヤナギヤから悲鳴が上がります。
人間を殺したところだって見ているくせに、今更何を恐れているのでしょう。

「いや、嫌だああ」
「この鳥の肉は煮込むと美味しいのですが、器具がないので今回は焼きましょう」
「血がぶしゅって……!内臓がぶりゅって!おえっ、いやああ」

この女、どうにかならないのでしょうか。
うるさすぎて集中できません。
手元が狂って、ヤナギヤを解体してしまいそうです。

「ごめん、ごめん……!私が悪かった、もうやめて、やめてぇ」
「あれはダメこれはダメって、あなた一体何なら良いのですか」
「もうわがまま言わない!パンでいい、パンでいいから……!」
「パン  いい?」
「パンがいい、パンだいすき!!」



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