気持ち悪い令嬢

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小癪なヤナギヤ

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毛布を床に捨てたヤナギヤは、腕を組んでそっぽを向きました。
今までヤナギヤに対し、数々の殺意を抱いたことはありますが、ここまで高まったのは初めてかもしれません。

「意地を張るのはやめてください。あなた、さっきからブルブル震えているではありませんか。今すぐにでも毛布に包まれて横になりたいのでは?」
「そんなことないもん!」

そんなことあるでしょう。

「いい?この体は人質なのよ!友達になってくれないのなら、私はこの体を大事にしてあげない!今日だって寒い思いをしながら寝るんだから!」

呆れて何も言えません。いつにも増してヤナギヤが愚かに見えます。

「それで損をするのはあなたでしょう。体がアレンだといっても、寒さの記憶は、あなたにしか引き継がれないのですから」
「もしかしたら、アレンと神経が繋がっていて、寒いって思ってるかもしれないじゃない!一言友達になるって言ってくれるだけでいいのに!」

手が冷えて赤くなっても毛布を気にする素振りは見せません。
そこまで意固地になる気持ちが分かりません。ここで私が友達になると言ったところで、本当にその約束を守るかどうかも分からないのに。

「あなた、今まで私の何を見ていたのですか?私があなたの良い友達になるとでも思っているのですか?」

殺し、盗み、脅し。人に見られてまずいものは全てやってきました。
もしも咎める者が居たらその方は殺して、これからもやり続けます。
そんな私と友達など。頭が悪いとは思っていましたが、これほどとは。

「私と友達になるなど、破滅の道を進むようなものです。あなたのような人にはおすすめしません」
「私は断るのに、アレンはどうして受け入れるの?破滅の道に進むと言いながら、アレンはその道に進ませても良いの?」
「段々と小癪な言い方をするようになりましたね」

ヤナギヤは得意げな顔をしましたが、全く褒めていないです。むしろ、殺意が高まりました。

「確かに、アレンは私の大切な人です。破滅の道にだって進ませたくはないです。けれど、アレンを生かすためだったら、私は何でもします。殺し、盗み、脅し。そんな私を見て、アレンはきっと構わないと言ってくれるでしょうね」
「構わない?アレンが殺しや盗みや脅しを見過ごすとは思わないけど」
「見過ごすとは言っていないですよ。全て見た上で、受け入れます。そういう人なのです」

ヤナギヤは、まだ納得がいかないというように、ムスリとしております。
美しいアレンの顔でここまで不細工に見せれるのは、もはや才能かもしれません。

「私だって、ファルメンに慣れたよ?もう何をしていても驚かない」
「そもそも、一枚しかない毛布を床に投げ捨て、寝る前にあれこれと言い募る女に私は興味を持てません。持つのは殺意だけです。一体どれだけの殺意を私が我慢していると」
「わ、わかったよ!ごめん!じゃあ、毛布もらうね。本当にいいの?」
「さっさと寝なさい」

ヤナギヤは、しばらく寒さで震えておりましたが、段々と落ち着いてきて、静かな寝息を立て始めました。






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