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思わず殺してしまうところでした
しおりを挟む更に用心棒が集まり、騒がしくなってきたので、ヤナギヤを担いで、窓に足をかけます。
「ま、待って!もしかして」
「飛び降ります」
ヤナギヤのうるさい悲鳴を耳に受けながら、飛び降り、風魔法を発動させて着地します。どうせ着地できるのに、いちいちうるさい女です。
「私、ジェットコースター得意じゃなかったの!」
また意味の分からないことを。
用心棒達が、魔法を弓矢に変えて撃ってくるものですから、こちらからも応戦すると、何人かに炎の魔法矢が当たり、建物に燃え移った火があっという間に広がって、大火事になっていきました。
ここまで大ごとにするつもりはなかったのですが。恩を仇で返すとは、この事かもしれませんね。
街全体が、火消しに必死になっているのを尻目に、無事脱出することができました。
「アレンの意識がどこにあるのか分かりませんが、もしこの状況を見ていたら、苦言されるかもしれませんね。優しい人でしたから」
「アレンがそうだったとしても、私はそう思わないよ。助けてくれてありがとう」
「アレンの話をしていたのに、何故あなたの意見が出るのでしょうか。関係のない話は控えてください」
「関係なくないもん!」
関係ないでしょう。
アレンの顔に、煤が付いていることに気付いて、拭ってあげます。白い肌が汚れているのは、いけませんものね。
おとなしく拭われた後、ヤナギヤは小さく言いました。
「私も、ファルメンの友達になりたい」
華の街で得た路銀を数え、懐に入れます。上々の稼ぎでした。
あの付き人が言っていた、金払いの良い客というのは、本当だったようです。
「聞いてる?私も、ファルメンの友達になりたいんだけど」
そろそろ日が暮れます。今日はどこで休もうかと思案していたところ、小さな小屋がありました。
この小屋は旅人用に設置されていて、先客がいなければ、誰でも使って良いとされています。
「ねぇ!聞いてる!?」
「今日はあそこで休みましょう」
「ファルメンってば!」
小屋の中に入ると、毛布が一枚だけありました。
「ここら辺は、夜になると冷えます。あなたはこれを使ってください」
「え、でも、一枚しかないよ?ファルメンは?」
「私は良いです。アレンの体が風邪を引いてはいけませんから」
「またアレン……」
呟いたヤナギヤは、その場に毛布を投げ捨てました。
「いらない!ファルメンが使えば?」
魔法剣を呼び出す呪文を半分まで唱え、ハッと我に帰ります。
危ない。思わず殺してしまうところでした。
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