大好きなりあへ

ありのある

文字の大きさ
上 下
10 / 11

一体誰がおかしいのでしょう

しおりを挟む


 すみこさんが体育教師を呼び、姫路が意識を失っていることがバレてしまったので、急遽保健室へ運ぶことになりました。
 すみこさんに、あんたも手伝え!とすごい剣幕で怒られてしまったので、みんなで姫路の体を支えながら保健室へ向かいます。
 それにしても、私のスパイクは良いところへ入ったみたいです。骨は折れていなさそうですが、姫路の顔は赤く腫れ上がっています。モデルの仕事、しばらく休んだ方が良いんじゃないかしら?

 体育教師が、養護教諭に姫路の具合のことを話している間、すみこさんに不躾な視線で見られます。まだ私を怒っているようでした。

「屋上で、私が死ぬって言った時、目をキラキラさせながら笑っているのを見て、普通じゃないって思ったけど、あんたやっぱりおかしいよ」
「そうですか?一人を囲んで攻撃的なスパイクを打ち込む方がおかしいのでは」
「そ、それは、そうなんだけど」

 良かったです。私よりおかしい姫路が居て。

「そうじゃなくて、姫路のことは理解できるのよ。私が憎いって気持ちでいじめてるんだから。でも、あんたの気持ちは分からない。何で屋上で笑ったのか、なんであんなに躊躇いもなく姫路に全力でスパイクをぶつけられたのか」
「私も姫路に全力でスパイクを当てられましたが?」

 というか、そもそもの話、あの時はスパイクの練習の時間でしたので、姫路の行為も、私の行為も、間違ってはいないはずですが……。
 すみこさんはそこが抜け落ちてしまっているようで、話が通じません。これはもう、姫路が目を覚ました時に、答えあわせをするのが良いのでは……。きっと、誰も間違っていないと言ってくれるのではないかしら?

「姫路は、あんたが「りあ」だってこと分かっていれば、絶対にスパイクをぶつけなかった筈だよ。でも、あんたは違うよね。相手が友達の姫路って知りながらあんな風にした。おかしいよ」
「はぁ……あの、それって、では、すみこさんの体ならば、スパイクをぶつけられても、おかしくはないということでしょうか……。すみこさん、あんなにいじめを嫌がっていたのに、その行為を随分と肯定的に見ているのですねぇ……」

 嫌なのではなかったのかしら?

「それっておかしなことでは?」
「私がおかしいっていうの?」

 おかしくはないのでしょうか?

「なんか、あんたと話していると、頭おかしくなってくる。こんな人だと思わなかった。姫路や照に囲まれて、毎日、お上品に過ごしているのかと思っていたけど」
「私も、あなたがあんなゴミ屋敷に住んでいるとは思わなくて。最初は戸惑ってしまいました。でも、今は綺麗に掃除しておきましたよ。新しく、犬も飼い始めましたの」
「犬?叔父さん、動物アレルギーだった気がするんだけど、違ったかな……」
「機会があれば、見て欲しいです。ちゃんと従順に躾けておきましたから、すごくお利口さんですよ」

 今も、私の帰りを待ちわびてくんくん鳴いているのではないかしら。
 体育教師が来て、念の為姫路を病院に搬送して検査してもらうと言ってきました。私もそれが良いと思っていたので、賛成しました。
 この時、何故姫路は意識を失って倒れたのかと問われましたが、私が言う前にすみこさんが「ボール回し中に自分で足首を捻って倒れた」と嘘だらけの説明をし、先生は納得して戻って行きました。面白すぎて笑ってしまいます。

「嘘ばかりついて良かったのですか?」
「だって、その体私のだし……」

 戻らないと言っておきながら、戻ることを想定して動いているのも面白いですし、非道だなんだのと私を糾弾しておきながら、保身のために真実を告げない偽善っぷりも好みです。
 やはり、可愛らしい方ですね。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

視える棺2 ── もう一つの扉

中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、"視えてしまった"者たちの記録である。 影がずれる。 自分ではない"もう一人"が存在する。 そして、見つけたはずのない"棺"が、自分の名前を刻んで待っている——。 前作 『視える棺』 では、「この世に留まるべきではない存在」を視てしまった者たちの恐怖が描かれた。 だが、"視える者"は、それだけでは終わらない。 "棺"に閉じ込められるべきだった者たちは、まだ完全に封じられてはいなかった。 彼らは、"もう一つの扉"を探している。 影を踏んだ者、"13階"に足を踏み入れた者、消えた友人の遺書を見つけた者—— すべての怪異は、"どこかへ繋がる"ために存在していた。 そして、最後の話 『視える棺──最後の欠片』 では、ついに"棺"の正体が明かされる。 "視える棺"とは何だったのか? 視えてしまった者の運命とは? この物語を読んだあなたも、すでに"視えている"のかもしれない——。

足が落ちてた。

菅原龍馬
ホラー
これは実際に私が体験した話です。 皆さん、夜に運転する時は気を付けて下さい。

SHAGGAI〜シャッガイ〜

顎(あご)
ホラー
◆super higherdimension aggression adaptability intelligence(超高次元侵略的適応性知性体)……通称:SHAGGAI(シャッガイ)人間に憑依し、その肉体と記憶を自分のものにする事が出来る。  普通のサラリーマンである桑畑耕一は、少女が謎の男に襲われている場面に出くわす。人間離れした身体能力を見せる男に桑畑自身も窮地に立たされるが、桑畑の肉体にも異変が生じ始め……

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

ルッキズムデスゲーム

はの
ホラー
『ただいまから、ルッキズムデスゲームを行います』 とある高校で唐突に始まったのは、容姿の良い人間から殺されるルッキズムデスゲーム。 知力も運も役に立たない、無慈悲なゲームが幕を開けた。

りんこにあったちょっと怖い話☆

更科りんこ
ホラー
【おいしいスイーツ☆ときどきホラー】 ゆるゆる日常系ホラー小説☆彡 田舎の女子高生りんこと、友だちのれいちゃんが経験する、怖いような怖くないような、ちょっと怖いお話です。 あま~い日常の中に潜むピリリと怖い物語。 おいしいお茶とお菓子をいただきながら、のんびりとお楽しみください。

視える棺―この世とあの世の狭間で起こる12の奇譚

中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、「気づいてしまった者たち」 である。 誰もいないはずの部屋に届く手紙。 鏡の中で先に笑う「もうひとりの自分」。 数え間違えたはずの足音。 夜のバスで揺れる「灰色の手」。 撮ったはずのない「3枚目の写真」。 どの話にも共通するのは、「この世に残るべきでない存在」 の気配。 それは時に、死者の残した痕跡であり、時に、境界を越えてしまった者の行き場のない魂でもある。 だが、"それ"に気づいた者は、もう後戻りができない。 見てはいけないものを見た者は、見られる側に回るのだから。 そして、最終話「最期のページ」。 読み進めることで、読者は気づくことになる。 なぜ、この短編集のタイトルが『視える棺』なのか。 なぜ、彼らは"見えてしまった"のか。 そして、最後のページに書かれていたのは—— 「そして、彼が振り返った瞬間——」 その瞬間、あなたは気づくだろう。 この物語の本当の意味に。

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

処理中です...