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私のナイトさん

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 翌日も、画鋲が入った上履きをその場で裏返し、ぼたぼたと落ちていく鉄クズを見ながら、これ何かに使えないかしら、と思案します。
 ただ捨てるだけではもったいないですものね。

「六寺路、おはよう」

 昨日よりもはっきりした声で、蓮花くんが挨拶してきました。

「おはようございます、蓮花くん。ですが、珍しいですね。あなたこの時間は登校していない時間では?」
「今日は、母さんが妹を連れて行ってくれたから」
「妹さんがいらっしゃるのですか?」
「ああ。朝は妹を幼稚園に連れて行ってから、登校してるんだ。放課後も、妹を迎えに行くために早く帰ってる。昨日、聞かれたのに答えられなくてごめん」

 へえ、だから毎回遅刻していたのですね。危ない人と付き合いがあるから、学校に来ていないという噂は何だったのかしら?どこの誰が流したのでしょう。
 それにしても。

「蓮花くん?私と話しても良いのかしら?」

 昨日、自分と話すといじめられるから話しかけるな、と言い放った蓮花くんは、たくさんの人が上履きに履き替えている前で、私と話しています。
 蓮花くんが話すのは珍しいので、皆さんさっきからじろじろと見ています。よろしいのでしょうか?
 蓮花くんは、膝を曲げると地面に落ちている画鋲を一つ掴み、痛ましそうに私を見ました。

「今まで気づかなくてごめん。出来る限り、守ってやるから」

 あら……何の冗談かしら。もしかして、私のナイトになろうとしているのかしら。蓮花くんって、意外と正義感があるのですね。

「こんなことしている奴ら、誰だ?」
「さぁ……?」

 ちょっと面倒ですね。
 私のナイトになるよりも、この無数に落ちている画鋲の使い道を考えてくれた方がよっぽど有意義だと思うのですが。

「りあ」

 その時、わざとらしいくらいの存在感を出しながら、照が現れました。

「寝癖、ついてるよ」
「あ、ありがとう、照」

 りあの後ろ髪を照が触り、りあがお礼を言う朝の光景。見慣れた景色です。
 周りから、「美男美女ね……」などと言われながら、私たちの横を通りすぎる時、チラリとすみこさんが私を見ました。まるで、化物でも見るかのような目です。怯えているのだと思います、私がいつ正体をバラすのかと。そんなこと、しませんのに。
 すみこさんが私の体を楽しんでいるように、私もすみこさんの体で楽しいことをしております。お互い様、というものです。

「六寺路さん、りあに何か用かな?」

 通り過ぎるかと思いきや、照が私に話しかけてきました。

「さっきからりあばかり見ていないかい?今朝、りあに教えてもらったんだ。最近、六寺路さんが見てきて怖いって。ねえ、りあ?」
「う、うん……」

 あら。
 あらあらあら。
 ここにもナイトが?
 それにしてもすみこさん、照にそんなことを言ったのですね。確かに、人気者の照に助けを求めるのは良い判断かもしれません。ですが、傾倒するなと忠告したのに。あんまり意味はなかったみたいです。

「見ていませんよ、勘違いではないかしら?あなたお得意の」
「は?」

 照が怪訝な顔をします。意外としつこく、それでいて鋭い男なので、それ以上の口論は避けて、階段をさっさと上りました。
 あの時の照の顔、水鉄砲を食らったような衝撃を受けていて面白かったです。今まで言いたくても言えなかった言葉を言えてスッキリしてしまいました。
 ああ、やはりこの体は最高ですね!





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