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すみこさんと仲良くお散歩しました
しおりを挟む午後の授業になっても、結局自習でした。
帰る用意をしていた時、照が私の横を通り過ぎて、「りあ」とすみこさんを呼びました。
「今日の夜、暇?話したいことがあるから、訪ねに行っても良い?」
すみこさんは、笑顔で承諾しておりました。私はそれを見て、悪口がたくさん書かれた鞄を肩に背負い、そして廊下へ出ました。
靴箱には、蓮花くんが先客で居ました。
「蓮花くん、いつも放課後はすぐ帰ってしまいますよね。何か用事でも?」
「……」
話してくれません。ああ、そういえば、人の目がある時は会話してくれない方でした。私たちの他にも生徒はチラホラと居るので、配慮されたのでしょう。
もうすでに苛烈ないじめに遭っているすみこさんには、とても的外れな配慮で全く意味のないことですが。
また今回も、靴の中に入っていた沢山の画鋲を、全て裏返します。朝と同じように、画鋲は地面に叩きつけられて、色んなところに散らばりました。
「うわっ」
隣の靴箱を使用していた蓮花くんが驚いた声をあげます。
「あらごめんなさい。怪我はなかったですか?」
「ちょっ、これ……やばいだろ。今朝のもお前のだったのか?……お前、大丈夫なのか?」
あら?会話しないのではなかったのでしょうか。
蓮花くんに怪我はなかったようなので、先に帰らせて頂きました。
夜になり、すみこさん宅を出て、夢乃宅へと向かいます。
部活から帰ってきた照は、お風呂に入った後、食事を取る前に「夢乃りあ」を訪ねます。
その前に、夢乃宅の呼び鈴を鳴らしました。
出てきたのは母です。
母は、私の顔を見て目を丸くしました。
「あら、りあの友達?」
「はい。りあさんは、ご在宅ですか?」
「ええ。呼ぶから、少し待っていてね」
母が、すみこさんを呼ぶ声がします。すみこさんは、こころなしか嬉しそうに走ってきました。まさか、私を照だと思ったのでしょうか。
すみこさんは、訪ねてきたのが私だと分かった瞬間、化物でも見るような顔をして後ずさりました。
「りあ?どうしたの、せっかくお友達が訪ねてきたのに」
「りあさん、遊びましょ」
「で、でも」
「遊んでらっしゃいよ。お友達に失礼よ」
「う、うん……」
私の母は、自分の子供よりも体裁を気にする方なので、こんな夕暮れというおかしな時間帯に尋ねる友人が来ても、そして自分の子供が乗り気ではなくても、それを察していても、助けようとせず、相手を優先させます。
そんな母の性格をよく知っていたので、断られない自信はありました。
家から連れ出したすみこさんと歩いていたら、段々と日が暮れてきます。辺りが真っ暗になった頃、それまで黙っていたすみこさんが「ちょっと」と言いました。
「何か話があって連れ出したんじゃないの?このままずっと無言で歩く気?」
「話とは?」
「こっちが聞いているのよ。体が入れ替わったことか、私があなたを助ける気はないこととか、文句を言いに来たんじゃないの?」
「体が入れ替わったことについては、このままで良いと私は考えておりますよ?」
「絶対嘘よ!あなたの体と私の体を天秤に掛けて、誰が私の体なんて取るのよ!」
そろそろ、お風呂から上がった照が、夢乃宅へ訪ねる時間です。ですが、居ないと分かり、今日は諦めるでしょうね。
「それに、私は助けて欲しいと考えてはおりません。できれば、このまま入れ替わりのことは誰にもバレず、お互い不干渉のまま生きていきたいと思っています」
「そうやって私を騙そうとしているんでしょう?」
「そろそろ帰りましょうか」
すみこさんは目を丸くしました。
「一体あんた何しに来たの?」
「ただのお散歩です」
「何よそれ……照と約束してたのに」
「照は……彼は人気者ですが、少々ナルシストなところがあるので、あまり傾倒しない方が良いですよ」
「ナルシスト……?そうなの?でも、照ぐらい顔が良かったら、そうなっても仕方ないんじゃない?なんでいきなりそんなこと……あ、もしかして、私が照と仲良くなるの嫌なの?」
ちょっと面白くて笑いが出てしまいます。
「一度目なので助けました。ですが、二度目は助けませんよ。夜更けの誘いには、くれぐれも用心なさってください」
「それって照のこと言ってるの?」
「それでは、また明日」
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