大好きなりあへ

ありのある

文字の大きさ
上 下
6 / 11

すみこさんと仲良くお散歩しました

しおりを挟む


 午後の授業になっても、結局自習でした。
 帰る用意をしていた時、照が私の横を通り過ぎて、「りあ」とすみこさんを呼びました。

「今日の夜、暇?話したいことがあるから、訪ねに行っても良い?」

 すみこさんは、笑顔で承諾しておりました。私はそれを見て、悪口がたくさん書かれた鞄を肩に背負い、そして廊下へ出ました。
 靴箱には、蓮花くんが先客で居ました。

「蓮花くん、いつも放課後はすぐ帰ってしまいますよね。何か用事でも?」
「……」

 話してくれません。ああ、そういえば、人の目がある時は会話してくれない方でした。私たちの他にも生徒はチラホラと居るので、配慮されたのでしょう。
 もうすでに苛烈ないじめに遭っているすみこさんには、とても的外れな配慮で全く意味のないことですが。
 また今回も、靴の中に入っていた沢山の画鋲を、全て裏返します。朝と同じように、画鋲は地面に叩きつけられて、色んなところに散らばりました。

「うわっ」

 隣の靴箱を使用していた蓮花くんが驚いた声をあげます。

「あらごめんなさい。怪我はなかったですか?」
「ちょっ、これ……やばいだろ。今朝のもお前のだったのか?……お前、大丈夫なのか?」

 あら?会話しないのではなかったのでしょうか。
 蓮花くんに怪我はなかったようなので、先に帰らせて頂きました。

 夜になり、すみこさん宅を出て、夢乃宅へと向かいます。
 部活から帰ってきた照は、お風呂に入った後、食事を取る前に「夢乃りあ」を訪ねます。
 その前に、夢乃宅の呼び鈴を鳴らしました。
 出てきたのは母です。
 母は、私の顔を見て目を丸くしました。

「あら、りあの友達?」
「はい。りあさんは、ご在宅ですか?」
「ええ。呼ぶから、少し待っていてね」

 母が、すみこさんを呼ぶ声がします。すみこさんは、こころなしか嬉しそうに走ってきました。まさか、私を照だと思ったのでしょうか。
 すみこさんは、訪ねてきたのが私だと分かった瞬間、化物でも見るような顔をして後ずさりました。

「りあ?どうしたの、せっかくお友達が訪ねてきたのに」
「りあさん、遊びましょ」
「で、でも」
「遊んでらっしゃいよ。お友達に失礼よ」
「う、うん……」

 私の母は、自分の子供よりも体裁を気にする方なので、こんな夕暮れというおかしな時間帯に尋ねる友人が来ても、そして自分の子供が乗り気ではなくても、それを察していても、助けようとせず、相手を優先させます。
 そんな母の性格をよく知っていたので、断られない自信はありました。
 家から連れ出したすみこさんと歩いていたら、段々と日が暮れてきます。辺りが真っ暗になった頃、それまで黙っていたすみこさんが「ちょっと」と言いました。

「何か話があって連れ出したんじゃないの?このままずっと無言で歩く気?」
「話とは?」
「こっちが聞いているのよ。体が入れ替わったことか、私があなたを助ける気はないこととか、文句を言いに来たんじゃないの?」
「体が入れ替わったことについては、このままで良いと私は考えておりますよ?」
「絶対嘘よ!あなたの体と私の体を天秤に掛けて、誰が私の体なんて取るのよ!」

 そろそろ、お風呂から上がった照が、夢乃宅へ訪ねる時間です。ですが、居ないと分かり、今日は諦めるでしょうね。

「それに、私は助けて欲しいと考えてはおりません。できれば、このまま入れ替わりのことは誰にもバレず、お互い不干渉のまま生きていきたいと思っています」
「そうやって私を騙そうとしているんでしょう?」
「そろそろ帰りましょうか」

 すみこさんは目を丸くしました。

「一体あんた何しに来たの?」
「ただのお散歩です」
「何よそれ……照と約束してたのに」
「照は……彼は人気者ですが、少々ナルシストなところがあるので、あまり傾倒しない方が良いですよ」
「ナルシスト……?そうなの?でも、照ぐらい顔が良かったら、そうなっても仕方ないんじゃない?なんでいきなりそんなこと……あ、もしかして、私が照と仲良くなるの嫌なの?」

 ちょっと面白くて笑いが出てしまいます。

「一度目なので助けました。ですが、二度目は助けませんよ。夜更けの誘いには、くれぐれも用心なさってください」
「それって照のこと言ってるの?」
「それでは、また明日」






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

視える棺2 ── もう一つの扉

中岡 始
ホラー
この短編集に登場するのは、"視えてしまった"者たちの記録である。 影がずれる。 自分ではない"もう一人"が存在する。 そして、見つけたはずのない"棺"が、自分の名前を刻んで待っている——。 前作 『視える棺』 では、「この世に留まるべきではない存在」を視てしまった者たちの恐怖が描かれた。 だが、"視える者"は、それだけでは終わらない。 "棺"に閉じ込められるべきだった者たちは、まだ完全に封じられてはいなかった。 彼らは、"もう一つの扉"を探している。 影を踏んだ者、"13階"に足を踏み入れた者、消えた友人の遺書を見つけた者—— すべての怪異は、"どこかへ繋がる"ために存在していた。 そして、最後の話 『視える棺──最後の欠片』 では、ついに"棺"の正体が明かされる。 "視える棺"とは何だったのか? 視えてしまった者の運命とは? この物語を読んだあなたも、すでに"視えている"のかもしれない——。

静寂の訪問者

グランマレベル99
ホラー
私は小説初心者なのでご意見ご指摘がございましたら軽い気持ちでコメントしてください

秘密の仕事

桃香
ホラー
ホラー 生まれ変わりを信じますか? ※フィクションです

終焉の教室

シロタカズキ
ホラー
30人の高校生が突如として閉じ込められた教室。 そこに響く無機質なアナウンス――「生き残りをかけたデスゲームを開始します」。 提示された“課題”をクリアしなければ、容赦なく“退場”となる。 最初の課題は「クラスメイトの中から裏切り者を見つけ出せ」。 しかし、誰もが疑心暗鬼に陥る中、タイムリミットが突如として加速。 そして、一人目の犠牲者が決まった――。 果たして、このデスゲームの真の目的は? 誰が裏切り者で、誰が生き残るのか? 友情と疑念、策略と裏切りが交錯する極限の心理戦が今、幕を開ける。

りんこにあったちょっと怖い話☆

更科りんこ
ホラー
【おいしいスイーツ☆ときどきホラー】 ゆるゆる日常系ホラー小説☆彡 田舎の女子高生りんこと、友だちのれいちゃんが経験する、怖いような怖くないような、ちょっと怖いお話です。 あま~い日常の中に潜むピリリと怖い物語。 おいしいお茶とお菓子をいただきながら、のんびりとお楽しみください。

ルッキズムデスゲーム

はの
ホラー
『ただいまから、ルッキズムデスゲームを行います』 とある高校で唐突に始まったのは、容姿の良い人間から殺されるルッキズムデスゲーム。 知力も運も役に立たない、無慈悲なゲームが幕を開けた。

四人の鎧武者

やざき わかば
ホラー
旅行先で見た、血まみれの四人の鎧武者。彼らは何を伝えたいのか…。

百物語 厄災

嵐山ノキ
ホラー
怪談の百物語です。一話一話は長くありませんのでお好きなときにお読みください。渾身の仕掛けも盛り込んでおり、最後まで読むと驚くべき何かが提示されます。 小説家になろう、エブリスタにも投稿しています。

処理中です...