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第一楽章 憑依

第二十三話 蜂、堪能

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 蜂と戦闘を終えた俺達は、少しの休息をとっていた。
 蜂の素材を手に入れる為に解体していると、中に直径1メートルぐらいの茶色と色が混ざった大きな塊があった。
 それを壊すと、黄色と黒の何かが大量にいた。
 そう、こいつらは通常サイズの蜂だ。
 ほとんどが死んでいるが、数匹だけ生きていた。
 おそらくだが、巨大蜂はこいつらと同じサイズだったのだろう。
 しかしこいつは魔石の純度が高かったのか、成長が大きくなりすぎたらしい。
 そのときに共喰いでもしたのだろう。
 運良く生きていた数匹が巣を作ったと思う。
 まぁそんなことはどうでもいい。
 俺はもしやと思い、蜂の巣を層ごとに分ける。
 そこには蜂の子……と蜂蜜があった。
 花もないのにどうやって蜂蜜を作るのかは分からないが、これは幸運だった。
 まず、蜂の子を取る。
 ……でも俺はあれは触りたくない。
 そこで【錬成】の出番だ。
 石を【錬成】で六角形の細い棒を作る。
 これで蜂の子だけを取り除く。
 器と細かな穴の空いた板を作る。
 ちなみに穴は1ミリほどで、かなり細部まで【錬成】することができるようになったのである。
 棒を使って蜂蜜を板の上に出す。
 そしてそれをこすと出来上がりだ。
 一口舐めてみる。
 おおっこれは美味しい。
 味にコクがあって、まろやかな口当たりだ。

「ウォードも食うか?」
「いや、俺はマナを食ってっから食事は必要ねぇんだ」

 便利な体だな。
 ……ちょっと、いやかなり気が引けるけど食事を取っとく方がいいよな……
 はぁ嫌だなぁ。

「ウォード、火だせるか?」
「それぐらいなら。……ほい、これでいいか」

 地面に焚き火ぐらいの火がつく。

「ありがとう」

 そして俺は……棒に蜂の子を刺していく。
 うわぁ気持ち悪。

「ちょっ、おまっ、そんなの食うのかよ」

 珍しくウォードが驚いている。

「いや、俺だって食いたくない。でも食べれる時に食べとかないといけないだろ」

 数分焼くと大きさが半分位の大きさになっていた。
 覚悟を決めて、1匹食べてみた。
 モグモグガリっモグモグ
 ……結論から言うと、結構美味しい。
 濃厚なのにクリーミーだった。
 それにこのガリっとした噛みごたえもあって良かった。
 ……………………は?
 いやいやいやいやガリって何?
 普通無いよね。
 まさか、な……
 魔石ってことないよな。

「これって魔石入ってる?」
「当たり前だろ、一応そいつらも魔物だぞ」
「魔石って食べれるのか?」
「普通の人が食べたら、まず身体中の魔力が暴れるな」

 えっ…………
 やばいよやばいよ。
 滑舌の悪い芸人の真似じゃなくて。

「落ち着けって、普通の人って言っただろ。お前は普通じゃない、魔王の魔力を受け継いでるんだぞ。逆に魔力が回復してだろ」

 そういえばさっきより体が軽い。
 なんだ良かったのか。
 俺は独特な食感の蜂の子(と魔石)を食べ続けた。
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