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第一楽章 憑依

第十二話 キツネ耳

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「ふわぁぁぁ」

 間抜けな声とともに、俺は起きた。
 あれ?
 何でベッドで寝てるんだっけ。
 痛っっ!
 頭ガンガンする。
 えーと、確か俺は……スキルの確認をしていて……短刀を作って……
 あっ!
 脚が動かなくなって、それからの記憶が無い。
 そうか、俺は気絶したのか。
 じゃあなんで俺はベッドにいるんだ?
 って1つしかないか。
 ソニアが運んでくれたのか。
 じゃあソニアは?
 横を見るとソニアが寝ていた。
 そして肌色の何かに捕まっていた。
 それを辿っていく。
 ……って俺の右腕じゃねぇか!
 …………えっ?
 お・れ・の・み・ぎ・う・で・?
 っておい。
 どうしようどうしようどうしようどうしよう。
 動かすとソニアが起きてしまう。
 本当にどうしよう。
 結局、解決策が思い付かなかったので、ソニアを眺めてよう。
 まぁそれはそれでおかしいんだけどね。
 ソニアはマジ超絶美少女だと思う。
 そんな子が自分の横、でスースーと寝息をたてていたらどうだろう。
 確実に理性ゲージが削られていく。
 ちょっとぐらいならいいよね。
 えっなに?止めろって?
 やだなぁ~何を勘違いしてんの?
 ただキツネ耳をもみもみするだけだよ!
 空いている左手でキツネ耳に手を伸ばす。
 ………………。
 おぉ、これは凄い。
 柔らかいのに、しっかりとした感触を感じることができる。
 そしてこの毛がまた気持ちいい。
 あぁ癒しだ。

「……んっ……あっ……」

 ソニアから可愛らしい声が出ている。
 おぅ……やべぇよ、止めらんなくなった。
 しばらくの間、キツネ耳をもみもみしていると、ソニアと目が合った。
 数秒後、自分の耳が触られているのに気がついたのだろう。
 みるみるうちに、顔が真っ赤に染まっていく。

「あ、あの。大丈夫ですか?」
「ああ、ソニアがここまで運んでくれたんだろ。本当にありがとう」

 俺のことを真っ先に気にしてくれるなんて、本当に優しいな。

「……そろそろ、いいですか?」
「ん? 何がだ?」

 あれ?
 俺、何かしたかな。
 まったくわかんない。

「あの、耳を……」
「ああ、これか。いやーあまりにもソニアが可愛くてね」

 もみもみ。

「……あっ、あの」

 もみもみもみ。

「……んっ……あっ……」

 もみもみもみもみ。

「……あっ…… も、もう、や、止めてください!」

 お、おう。
 ソニアが声を大きくしたのは初めてだった。

「すまなかった。気分が悪くなったか?」
「いえ、むしろ気持ち良くなりすぎたんです」

 ほう。
 人の耳は性感帯だ。
 空狐の耳はもっと感じやすいらしい。

「わかった。今度からはもっと配慮してやるから」
「することは確定なんですか!!」
「まぁな。ところで俺が倒れてから何時間ぐらいたったんだ?」
「えっと、倒れたのが昨日の夕方だから、13時間ぐらいですね。原因は魔力切れだそうです」

 半日近くも寝てたのか。

「誰かに見てもらったのか?」
「この宿の人に尋ねると、薬までくれました」
「あとで感謝を伝えないとな。それはそうとソニア夕食と朝食食べたのか?」
「いえ、まだですね」

 俺が倒れたから食べてなかったのか?
 だとしたらとても嬉しいね。

「ソニア、今日は盛大に食べよう。昨日の分、今日は豪華にいこう」
「……はい! じゃあちょっとお風呂に入ってきますね」

 ソニアは風呂場にスキップしながら向かっていった。
 ……俺は本当にソニアに迷惑かけてばっかだな。
 せめて何か恩返しをしよう。
 そう心に決めたのだった。
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