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第一楽章 憑依

第十話 ダンジョン

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 俺達はダンジョンの地下1階にいた。
 地下1階は人が多かった。
 魔物は壁や床から生まれてくる。
 ここの魔物は、壁から生まれる前に倒されてしまっていた。
 しかも、どちらかと言えば人間同士の争いの方が激しい。
 そんなことを考えていると、前に青色の蛙がいた。
 するとソニアが火魔法で焼き払おうとしていた。

「ちょっと待ってくれ」
「何でですか?」
「いや、ソニアは戦いに慣れているだろ? 俺は経験が無いから浅い階層で戦おうと思ってさ」

 少し考えてからソニアは言った。

「……はい、わかりました。今回は譲ります」
「ありがとう、ソニア」

 そう言うと俺は、戦闘に集中し始めた。

 まず蛙が体当たりしてきた。
 俺はそれを避けると、近くの岩にぶつかった。
 その岩に亀裂が入った。
 一般人ステータスの俺だと一撃で死んでしまいそうだ。
 すると毒を放ってきた。
 俺は前進することで毒を躱し、蛙の左目を突き刺した。
 どんな生き物でも目は弱点である。
 目を刺しただけでは死ななかった。
 なのでそのまま右に振り抜いた。
 そうすると蛙は崩れ落ちた。

「えっ?」

 ソニアが驚いていた。
 急に魔物が死んだから疑問に思ったのだろう。

「どうやったんですか?」

 ほら、やっぱりな。

「脳幹を切ったんだ。脳幹ってのは重要な神経がたくさん集まってて、そこが損傷すると死んでしまうんだ」

 簡単に説明するとこうなるな。
 まぁ、俺も詳しいことは知らないんだがな。
 これが今の俺が出来る最高の戦い方だった。

「そうなんですか…… 凄いですね」
「いやいや、知っていれば誰でも出来るさ」

 知っていれば、な。
 多分この世界は、地球ほど医療が進んではいないと思う。
 体の外側の急所はある程度知られているだろう。
 だが内部については全然だと思う。
 ステータスが一般人な俺は、この知識が武器になる。

「あっ、早く魔石を回収しないと!」
「何かあるのか?」
「ここは人が多いじゃないですか。売れる魔石や素材を奪っていく奴がいました」

 いましたってことはさっき見たんだな。

「わかった。すぐに取り掛かろう」

 俺は腰についている剣で、蛙の腹を切り裂いた。
 魔石の位置はわからなかったが、開いてみるとだいたい心臓の位置にあることが判明した。
 蛙の使える素材がわからなかったので、取り敢えず魔石だけを回収した。

「今日はこの階層だけでいいか? 早めに帰ってスキルを試したいんだ」
「はい! いいですよ。その前にちょっとだけ闘ってきます」
「ああ、わかった」

 あれだけ戦いたがってたもんな。
 するといいところに赤色の蛙が生まれた。
 てか蛙しかいねぇのか、この階層。
 2回とも蛙ってどんな確率だよ。
 とか思っていたらソニアが右手を突き出していた。

「【火の玉ファイアーボール】」

 そう呟くと、右手から勢いよく直径15cmぐらいの火の玉が放たれた。
 ゲームで見るファイヤボールとは違い、熱量が凄かった。
 それが蛙に当たると、魔石すら残さずに灰になってしまった。
 ソニアの初級魔法は、中級魔法ぐらいの破壊力があった。
 知ってたけど、やっぱソニアさんマジパネェっす。
 その後、2、3匹の様々な色の蛙をソニアが瞬殺してから、ダンジョンを出た。
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