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第三章 恋する駄女神
第94話 シャーリーの手のひらの中で
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「しぇんぱぁ~い」
左手を伸ばし泣き崩れる天道の姿を尻目に、俺を取り戻したシャーリーは、席へと戻り背もたれへと寄りかかった。それとほぼ同時に彼女は俺を膝の上へと乗せ、ペットのグルーミングでもするかのように、刀身の表面を優しく撫で始める。
天道は柄頭をワシャワシャとかき回す感じだけど、シャーリーはこっちのほうが多いんだよな。こういう小さな部分にも生まれの違いみたいなものが出てるのかね。
なんかこう、高貴さと言うか優雅さと言うか、彼女が自分とは縁遠い、本来触れることすらおこがましい雲の上の存在なんだよな。ということに気付かされると同時に、そんな彼女に触れてもらえる俺は、とても幸せ者なのだということも実感させられた。
クロエちゃんの柔らかな手の感触も良かったけど、断然! シャーリーにされるのが一番気持ち良いかな。うん、俺ってとっても幸せ者だ。
「あの、トオル様。先程金銭の話がございましたが、もしかしてお金に困っていたりはなさいませんか?」
(ん~? いんやぁ、別にぃ――)
「実は最近、近くの塔に金銀財宝があるという噂が広まっておりまして、よろしければ一緒に塔探索など如何でしょうかと思いまして」
シャーリーの巧みな手腕によって終始骨抜きにされる中、スクルドが提案を申し出た。たぶん俺が転生特典としてお金を受け取ってないことを見越してのことなのだろうが、今の俺はシャーリーの手のひらの感触を集中して感じていたいので、ぶっちゃけどうでもいい。答えたくない……というわけにもいかないか。
(その提案は大変嬉しいのだが、すまんなスクルド、俺は先程ヒモになったので金の問題は当分にゃい)
蕩けた声のままではかっこがつかないと平然を装ってみたが、結局最後にボロが出てしまった。そのぐらい、今日の撫で撫では気合が入っているのである。堕ちていく、シャーリーの腕のにゃかに。
「紐、ですか?」
「というわけで改めて自己紹介をば。明石先輩の愛人一号、件ヒモ付きになった天道朝美だよ。よろしく!」
シャーリーに俺を取り戻され落ち込んでいた天道だったが、その姿は見る影もなく、すでにいつもの明るい彼女へと戻っていた。一見ヤケクソのようにも見えるが、むしろシャーリーに対して自分の立場を主張する絶好のチャンス! なんてことを考えているに違いない。シャーリーの方はどこ吹く風といった面持ちではあるが、勢いだけの天道は天道で気にしていないのだろう。……嘆かわしい。
それに、ノリで言っては見たものの、そのままノってこられるとちょっと複雑な気分だったりもする。でも、シャーリーの手が気持ちよくて、やっぱりどうでもいい~。
「ねぇねぇ、ひもってなぁに?」
「紐……キツく縛り付ける……強い信頼で結ばれてるって意味じゃないかしら」
「しんらい?」
「とっても仲良しって意味よ」
シャーリーの魔力に逆らえず腑抜けていく意識の中、台所の方からはとんでもなくポジティブな意見が挙がっておりますが、セリーヌさん、そんな良いものではないです。……というか、流石の俺でもここまでヒモヒモ連発されると気分がよくないぞ。でも実際ヒモだからなぁ。何も言い返せないのが悲しい。そして、シャーリーの感触に抗えないのも悔しい。
「おまたせ、完成でーすよっと」
腹を見せて寝転がるだけの動物の気分に浸っていると、セリーヌさんの朗らかな声とともに香ばしい香りが近づいてきた。たぶんこれは肉料理だな。甘辛そうなタレの匂いも相まって、実に美味そうだ。とてつもなく食欲が湧いてくる……食べれんのだがな。
「……セリーヌ……手伝う」
なんて思っていると、突然シャーリーは立ち上がりテーブルの横へと俺を立てかけた。ああっ、もう辞めちゃうの。そんな物悲しい気持ちが心の底から押し寄せてくる。
うちの犬が、もっと遊んでくれとせがむのを見て、贅沢だ! なんて思ったものだが、今ならわかる。こいつはもっと欲しくなるぜ!
「……トオル……ハウス」
セリーヌさんから食器を受け取る直前、シャーリーはこちらへと振り向きそんな言葉を投げかけてきた。
(シャーロットさん! 僕は犬、犬扱いですか!?)
「……冗談」
衝撃的な彼女の言葉に咽び泣いていると、当の本人はお約束の言葉とともに粛々と食器を持ち帰り並べ始める。
全くもぅ……心を読んでいるからなのか、言葉選びが適切すぎるシャーリーの冗談は質が悪い。一人称が変わってしまうぐらい動揺してしまったじゃないか。
「セリーヌさん、今日のお肉は何かなぁ」
そしてこちら、シャーリーとは違い座ったままの天道は、まるで歌うようにリズムを刻みながらセリーヌさんへと問うている。俺と違って動けるんだから、お前も働け!
「腕によりをかけるとは言ったけど、そんなにいい食材じゃないよ。一応ワーウルフの肉を使ってるから、少しは奮発してるけど」
ワーウルフというと人狼か。こちらの世界のそれが人から変化したものなのか、もしくは人形をした狼のモンスターを指すのかはわからないが、きっと純粋なウルフとは違いスピードとパワーを兼ね揃えた厄介な相手なのだろう。故に値段も高いとか、そんなところか。
「……セリーヌ……ナイフ……ある?」
「ええ、有るわよ。はい」
「……ありがとう」
セリーヌさんから小さめのナイフを受け取ったシャーリーと笑顔のクロエちゃんが同時に席に着き、食事の準備が完了する。
「皆席についたわね。それじゃあ、いただきます」
皆が手を合わせていただきますと述べる中、一人天道はスタートダッシュで肉をほうばり始めた。
「はむはむ。わーうるひゅって、きんにくしちゅだか、もぐもぐ」
しかも美味だからなのか、食べながら会話を始める始末。
(天道……喋るか食べるかどっちかにしろ)
フライングゲットして更にそれとか……いっぱい食べる君は好きだけど、食べながら喋るのは本当に止めなさい。はしたないから。
「ごくん。ワーウルフの肉って筋肉質だから調理が大変って聞いてたけど、柔らかいし凄くジューシー。セリーヌってほんと料理うまいよね―。私も先輩の胃袋掴めるぐらいに頑張らないと」
「アサミも十分上手だと思うけど。シーラスさばくとか、私には無理だもの」
元気百倍な天道の発言と行動に、流石のセリーヌさんも苦笑いを浮かべている。
「いやいや、男の子はやっぱり肉が好きでしょ。魚がさばけるぐらいじゃ役不足ですって。肉の焼き加減ってどうもつかめなくて、固いか柔らかすぎるかなんだよね……よって、私なんかまだまだなわけですよ。それに、セリーヌの焼いたお肉の匂いで先輩嬉しそうなんだもん。正直言えばジェラシー感じてるんだぞ」
(てんどー。いくら料理が上手くなっても、胃袋は掴めないからなー。俺は何も食えないんだぞ―)
シーラスというのが魚の一種らしいということはわかったが、俺のツッコミに天道は一切の反応を見せようとしない。どうやら都合の悪い部分は華麗に回避していくつもりのようだ。
「……ねぇアサミ、その剣の人って、アサミの大切な人……なの?」
嫉妬しているとまで言われ、流石にセリーヌさんも俺のことが気になり始めたらしい。声に戸惑いの色を浮かべながらも天道に問いかけている。そして、彼女が言い淀む気持ちもわかる。剣に恋するとか、普通ありえんもんな。
「うん、そうだよ。私の大切な人。ただ、あの人の本命はそっちのシャーロットだけどね。さっきも言ったけど、私は愛人一号」
「愛人って……あなたそれで良いの?」
本日二度目だが、愛人なんて言葉をあっけらかんと答える天道に対し、セリーヌさんは不安気な表情を見せていた。
「そうだなぁ、悔しいか悔しく無いかで言ったら悔しい……かな」
「なら――」
「でもいいんだ。あの人の隣に居られればどんな境遇だって耐えられる。それに、シャーロットには敵わないからね。色んな意味で」
綺麗なナイフさばきで静かに食事を続けるシャーリーに対して、今度は天道が苦笑いを浮かべる。そして、一瞬だけ見せた彼女の悲しげな表情が、俺の心に小さな痛みを残した。
「あの子そんなに凄いの?」
「う~ん、訳あって説明できないんだけど、私達とは少しばかり格の違うお方、とだけ言っておこうかな」
本来なら、彼女は王女様なんだ! なんて言いたいところだろうが、そこをぐっと堪えて我慢するなんて偉いぞ天道。セリーヌさんが言いふらすような人だとは思わないけど、ここでばらしたらきっと面倒なことになるだろうからな。
「王女様ですからねぇ。一庶民のアサミさんが勝てるなんてこと、万に一つも有りえませんよ」
しかし、そんな彼女の頑張りをあっさりと無駄にしていく女が一人。そう、空気を読まないスペシャリスト、スクルドその人である。
(おい……スクルドぉ!)
「おい……スクルドぉ!」
彼女のあまりの酷さに、俺と天道はまるで打ち合わせをしたかのように、同時に怒りをぶちまけた。どうしてこうなんだこいつは……と、心の中で頭を抱える。
「あ、秘密なんでしたっけ。てへへ」
そして、やはり悪びれた様子の無いスクルドに俺はがっくりと肩を落とし、こういう時にぶっ叩いて叱ることができないことへの悔しさに、俺は苛立ちを募らせた。
「!? えっと、セリーヌ! これはね! ……セリーヌ?」
そんな中、スクルドの失言に対し、セリーヌさんの気持ちを案じたであろう天道が慌ててフォローを入れようとするが、時既に遅くセリーヌさんの表情は引きつり、全身をワナワナと震わせていた……
左手を伸ばし泣き崩れる天道の姿を尻目に、俺を取り戻したシャーリーは、席へと戻り背もたれへと寄りかかった。それとほぼ同時に彼女は俺を膝の上へと乗せ、ペットのグルーミングでもするかのように、刀身の表面を優しく撫で始める。
天道は柄頭をワシャワシャとかき回す感じだけど、シャーリーはこっちのほうが多いんだよな。こういう小さな部分にも生まれの違いみたいなものが出てるのかね。
なんかこう、高貴さと言うか優雅さと言うか、彼女が自分とは縁遠い、本来触れることすらおこがましい雲の上の存在なんだよな。ということに気付かされると同時に、そんな彼女に触れてもらえる俺は、とても幸せ者なのだということも実感させられた。
クロエちゃんの柔らかな手の感触も良かったけど、断然! シャーリーにされるのが一番気持ち良いかな。うん、俺ってとっても幸せ者だ。
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(その提案は大変嬉しいのだが、すまんなスクルド、俺は先程ヒモになったので金の問題は当分にゃい)
蕩けた声のままではかっこがつかないと平然を装ってみたが、結局最後にボロが出てしまった。そのぐらい、今日の撫で撫では気合が入っているのである。堕ちていく、シャーリーの腕のにゃかに。
「紐、ですか?」
「というわけで改めて自己紹介をば。明石先輩の愛人一号、件ヒモ付きになった天道朝美だよ。よろしく!」
シャーリーに俺を取り戻され落ち込んでいた天道だったが、その姿は見る影もなく、すでにいつもの明るい彼女へと戻っていた。一見ヤケクソのようにも見えるが、むしろシャーリーに対して自分の立場を主張する絶好のチャンス! なんてことを考えているに違いない。シャーリーの方はどこ吹く風といった面持ちではあるが、勢いだけの天道は天道で気にしていないのだろう。……嘆かわしい。
それに、ノリで言っては見たものの、そのままノってこられるとちょっと複雑な気分だったりもする。でも、シャーリーの手が気持ちよくて、やっぱりどうでもいい~。
「ねぇねぇ、ひもってなぁに?」
「紐……キツく縛り付ける……強い信頼で結ばれてるって意味じゃないかしら」
「しんらい?」
「とっても仲良しって意味よ」
シャーリーの魔力に逆らえず腑抜けていく意識の中、台所の方からはとんでもなくポジティブな意見が挙がっておりますが、セリーヌさん、そんな良いものではないです。……というか、流石の俺でもここまでヒモヒモ連発されると気分がよくないぞ。でも実際ヒモだからなぁ。何も言い返せないのが悲しい。そして、シャーリーの感触に抗えないのも悔しい。
「おまたせ、完成でーすよっと」
腹を見せて寝転がるだけの動物の気分に浸っていると、セリーヌさんの朗らかな声とともに香ばしい香りが近づいてきた。たぶんこれは肉料理だな。甘辛そうなタレの匂いも相まって、実に美味そうだ。とてつもなく食欲が湧いてくる……食べれんのだがな。
「……セリーヌ……手伝う」
なんて思っていると、突然シャーリーは立ち上がりテーブルの横へと俺を立てかけた。ああっ、もう辞めちゃうの。そんな物悲しい気持ちが心の底から押し寄せてくる。
うちの犬が、もっと遊んでくれとせがむのを見て、贅沢だ! なんて思ったものだが、今ならわかる。こいつはもっと欲しくなるぜ!
「……トオル……ハウス」
セリーヌさんから食器を受け取る直前、シャーリーはこちらへと振り向きそんな言葉を投げかけてきた。
(シャーロットさん! 僕は犬、犬扱いですか!?)
「……冗談」
衝撃的な彼女の言葉に咽び泣いていると、当の本人はお約束の言葉とともに粛々と食器を持ち帰り並べ始める。
全くもぅ……心を読んでいるからなのか、言葉選びが適切すぎるシャーリーの冗談は質が悪い。一人称が変わってしまうぐらい動揺してしまったじゃないか。
「セリーヌさん、今日のお肉は何かなぁ」
そしてこちら、シャーリーとは違い座ったままの天道は、まるで歌うようにリズムを刻みながらセリーヌさんへと問うている。俺と違って動けるんだから、お前も働け!
「腕によりをかけるとは言ったけど、そんなにいい食材じゃないよ。一応ワーウルフの肉を使ってるから、少しは奮発してるけど」
ワーウルフというと人狼か。こちらの世界のそれが人から変化したものなのか、もしくは人形をした狼のモンスターを指すのかはわからないが、きっと純粋なウルフとは違いスピードとパワーを兼ね揃えた厄介な相手なのだろう。故に値段も高いとか、そんなところか。
「……セリーヌ……ナイフ……ある?」
「ええ、有るわよ。はい」
「……ありがとう」
セリーヌさんから小さめのナイフを受け取ったシャーリーと笑顔のクロエちゃんが同時に席に着き、食事の準備が完了する。
「皆席についたわね。それじゃあ、いただきます」
皆が手を合わせていただきますと述べる中、一人天道はスタートダッシュで肉をほうばり始めた。
「はむはむ。わーうるひゅって、きんにくしちゅだか、もぐもぐ」
しかも美味だからなのか、食べながら会話を始める始末。
(天道……喋るか食べるかどっちかにしろ)
フライングゲットして更にそれとか……いっぱい食べる君は好きだけど、食べながら喋るのは本当に止めなさい。はしたないから。
「ごくん。ワーウルフの肉って筋肉質だから調理が大変って聞いてたけど、柔らかいし凄くジューシー。セリーヌってほんと料理うまいよね―。私も先輩の胃袋掴めるぐらいに頑張らないと」
「アサミも十分上手だと思うけど。シーラスさばくとか、私には無理だもの」
元気百倍な天道の発言と行動に、流石のセリーヌさんも苦笑いを浮かべている。
「いやいや、男の子はやっぱり肉が好きでしょ。魚がさばけるぐらいじゃ役不足ですって。肉の焼き加減ってどうもつかめなくて、固いか柔らかすぎるかなんだよね……よって、私なんかまだまだなわけですよ。それに、セリーヌの焼いたお肉の匂いで先輩嬉しそうなんだもん。正直言えばジェラシー感じてるんだぞ」
(てんどー。いくら料理が上手くなっても、胃袋は掴めないからなー。俺は何も食えないんだぞ―)
シーラスというのが魚の一種らしいということはわかったが、俺のツッコミに天道は一切の反応を見せようとしない。どうやら都合の悪い部分は華麗に回避していくつもりのようだ。
「……ねぇアサミ、その剣の人って、アサミの大切な人……なの?」
嫉妬しているとまで言われ、流石にセリーヌさんも俺のことが気になり始めたらしい。声に戸惑いの色を浮かべながらも天道に問いかけている。そして、彼女が言い淀む気持ちもわかる。剣に恋するとか、普通ありえんもんな。
「うん、そうだよ。私の大切な人。ただ、あの人の本命はそっちのシャーロットだけどね。さっきも言ったけど、私は愛人一号」
「愛人って……あなたそれで良いの?」
本日二度目だが、愛人なんて言葉をあっけらかんと答える天道に対し、セリーヌさんは不安気な表情を見せていた。
「そうだなぁ、悔しいか悔しく無いかで言ったら悔しい……かな」
「なら――」
「でもいいんだ。あの人の隣に居られればどんな境遇だって耐えられる。それに、シャーロットには敵わないからね。色んな意味で」
綺麗なナイフさばきで静かに食事を続けるシャーリーに対して、今度は天道が苦笑いを浮かべる。そして、一瞬だけ見せた彼女の悲しげな表情が、俺の心に小さな痛みを残した。
「あの子そんなに凄いの?」
「う~ん、訳あって説明できないんだけど、私達とは少しばかり格の違うお方、とだけ言っておこうかな」
本来なら、彼女は王女様なんだ! なんて言いたいところだろうが、そこをぐっと堪えて我慢するなんて偉いぞ天道。セリーヌさんが言いふらすような人だとは思わないけど、ここでばらしたらきっと面倒なことになるだろうからな。
「王女様ですからねぇ。一庶民のアサミさんが勝てるなんてこと、万に一つも有りえませんよ」
しかし、そんな彼女の頑張りをあっさりと無駄にしていく女が一人。そう、空気を読まないスペシャリスト、スクルドその人である。
(おい……スクルドぉ!)
「おい……スクルドぉ!」
彼女のあまりの酷さに、俺と天道はまるで打ち合わせをしたかのように、同時に怒りをぶちまけた。どうしてこうなんだこいつは……と、心の中で頭を抱える。
「あ、秘密なんでしたっけ。てへへ」
そして、やはり悪びれた様子の無いスクルドに俺はがっくりと肩を落とし、こういう時にぶっ叩いて叱ることができないことへの悔しさに、俺は苛立ちを募らせた。
「!? えっと、セリーヌ! これはね! ……セリーヌ?」
そんな中、スクルドの失言に対し、セリーヌさんの気持ちを案じたであろう天道が慌ててフォローを入れようとするが、時既に遅くセリーヌさんの表情は引きつり、全身をワナワナと震わせていた……
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