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第一章 剣になった少年
第7話 店名 一人はみんなのために
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広大な森を抜け、ベルシュローブと呼ばれる小さな町へとたどり着いた俺とシャーロットは、休憩とこれからの相談もかねて酒場へとやって来ていた。
時刻は夕飯時、ウルフなどの野良モンスターと何度か遭遇することもあったが、それにしては早い到着だったのではないだろうか。
時間にして約二時間弱。シンジ達が拠点としていた町とはほぼ真逆に位置する町だが、俺の感覚としては距離はほぼ同じぐらい、戦闘を含めて彼らの歩幅で二時間強かかっていた。シャーロットの身長と歩幅を考えると正直ありえないぐらいのスピードとなるわけだが……あんまり考えないことにしよう。
ここは剣と魔法の異世界、歩行速度を飛躍的にあげる魔法とかそういったものがあるのかもしれない。因みに遭遇した野良モンスターの皆様方は、シャーロットの鮮やかな剣さばきの元に一撃で斬り伏せられていた。こんななりをしているが、彼女はもしかしたら凄腕の剣士様なのかもしれない。
しかしこの酒場、店名一人はみんなのために、は時間的な問題もあるのだろうが大層繁盛していた。席はカウンターも含めて全て埋まり、どんちゃん騒ぎをしているグループもいくつかある。その中でも羽振りの良さそうな客の何名かが周りの客に奢っている光景も見える。まさしく一人はみんなのために、といったところだろうか。
生活の柱の一つを失った街だとは到底思えない光景なのだが。もしかしたら特産品とか、他にも儲かる何かがこの街にはあるのかもしれない。
「……食べる?」
(……あー、遠慮しておく)
俺は内心驚愕していた。この店に入ってからのシャーロットの第一声が、剣に食事をするか確認するというまさかの質問だったからだ。
裏を返せば人間扱いされているということなのかもしれないが、剣に食事を薦めるその光景は流石に痛い子のような気がしてならなかった。
この世界の魔剣の中には悪食のような、食剣の類いの武器が存在するのかもしれないが、あいにく俺にはそんな機能はついていない。意思は持っているが食事はしない。定期的な魔力供給も必要としない。とても経済的な一振りなのである。
でも何故か匂いは感じ取れるんだよなあ。さっきから香ばしい肉の香りが鼻をついてたまらない。お腹が空いてきたような錯覚にとらわれてしまう。
「……ん」
俺の言葉を肯定してから、さっと手を上げるシャーロット。しかし店は大繁盛の大忙し。小さな少女が手を上げていることに気がつく店員はいなかった。
「……あの」
気づいてもらおうと声を上げるが、彼女のこの抑揚のない小さな声が店員に届くはずもなく、延々と無視され続ける。俺が声を出せるなら変わりに呼ぶこともできるのだが、あいにくムリなものはムリだ。
さて、これからどうするのだろうかと彼女を見つめていると、徐々に眉がひくついて来ていることに気がついた。
嫌な予感がした。仕草で伝わらない、声を出しても聞こえない、そんな彼女が次にとりそうな行動は、まさしくその通り、行動で示すだ。俺を振り回してテーブルの一つも叩き割れば、否が応にも視線は集中する。主に店内の人間全員が……だ。しかしそれは色んな意味でリスキーな行動だ。最悪お尋ね者か刑務所行きまで考えなくてはならない。
まさかそんなことはしないだろう。そう思った次の瞬間、テーブルの向かい側に座っていたシャーロットが、その小さな体を乗り出し、俺の柄を掴もうとしてきた。
(ちょ、ま、待った)
最悪だった。まさか本当にそんな暴挙に出るとは思わなかったのだ。まずい、なんとしても止めなくてはいけない。分解さよならエンドもごめんだが、刑務所にぶち込まれたり、見ず知らずの金持ちに高額で取引されるのもまっぴらごめんだ。
しかし俺の静止など聞く耳持たずと言わんばかりに柄をガッチリと掴むと、真上に勢い良く振り上げてしまうシャーロット。もうだめだと半ば諦めかけたその時だった。
「どうかしたのかなお嬢さん」
テーブルの前へと現れた優男がシャーロットへと声をかけてきたのだ。
時刻は夕飯時、ウルフなどの野良モンスターと何度か遭遇することもあったが、それにしては早い到着だったのではないだろうか。
時間にして約二時間弱。シンジ達が拠点としていた町とはほぼ真逆に位置する町だが、俺の感覚としては距離はほぼ同じぐらい、戦闘を含めて彼らの歩幅で二時間強かかっていた。シャーロットの身長と歩幅を考えると正直ありえないぐらいのスピードとなるわけだが……あんまり考えないことにしよう。
ここは剣と魔法の異世界、歩行速度を飛躍的にあげる魔法とかそういったものがあるのかもしれない。因みに遭遇した野良モンスターの皆様方は、シャーロットの鮮やかな剣さばきの元に一撃で斬り伏せられていた。こんななりをしているが、彼女はもしかしたら凄腕の剣士様なのかもしれない。
しかしこの酒場、店名一人はみんなのために、は時間的な問題もあるのだろうが大層繁盛していた。席はカウンターも含めて全て埋まり、どんちゃん騒ぎをしているグループもいくつかある。その中でも羽振りの良さそうな客の何名かが周りの客に奢っている光景も見える。まさしく一人はみんなのために、といったところだろうか。
生活の柱の一つを失った街だとは到底思えない光景なのだが。もしかしたら特産品とか、他にも儲かる何かがこの街にはあるのかもしれない。
「……食べる?」
(……あー、遠慮しておく)
俺は内心驚愕していた。この店に入ってからのシャーロットの第一声が、剣に食事をするか確認するというまさかの質問だったからだ。
裏を返せば人間扱いされているということなのかもしれないが、剣に食事を薦めるその光景は流石に痛い子のような気がしてならなかった。
この世界の魔剣の中には悪食のような、食剣の類いの武器が存在するのかもしれないが、あいにく俺にはそんな機能はついていない。意思は持っているが食事はしない。定期的な魔力供給も必要としない。とても経済的な一振りなのである。
でも何故か匂いは感じ取れるんだよなあ。さっきから香ばしい肉の香りが鼻をついてたまらない。お腹が空いてきたような錯覚にとらわれてしまう。
「……ん」
俺の言葉を肯定してから、さっと手を上げるシャーロット。しかし店は大繁盛の大忙し。小さな少女が手を上げていることに気がつく店員はいなかった。
「……あの」
気づいてもらおうと声を上げるが、彼女のこの抑揚のない小さな声が店員に届くはずもなく、延々と無視され続ける。俺が声を出せるなら変わりに呼ぶこともできるのだが、あいにくムリなものはムリだ。
さて、これからどうするのだろうかと彼女を見つめていると、徐々に眉がひくついて来ていることに気がついた。
嫌な予感がした。仕草で伝わらない、声を出しても聞こえない、そんな彼女が次にとりそうな行動は、まさしくその通り、行動で示すだ。俺を振り回してテーブルの一つも叩き割れば、否が応にも視線は集中する。主に店内の人間全員が……だ。しかしそれは色んな意味でリスキーな行動だ。最悪お尋ね者か刑務所行きまで考えなくてはならない。
まさかそんなことはしないだろう。そう思った次の瞬間、テーブルの向かい側に座っていたシャーロットが、その小さな体を乗り出し、俺の柄を掴もうとしてきた。
(ちょ、ま、待った)
最悪だった。まさか本当にそんな暴挙に出るとは思わなかったのだ。まずい、なんとしても止めなくてはいけない。分解さよならエンドもごめんだが、刑務所にぶち込まれたり、見ず知らずの金持ちに高額で取引されるのもまっぴらごめんだ。
しかし俺の静止など聞く耳持たずと言わんばかりに柄をガッチリと掴むと、真上に勢い良く振り上げてしまうシャーロット。もうだめだと半ば諦めかけたその時だった。
「どうかしたのかなお嬢さん」
テーブルの前へと現れた優男がシャーロットへと声をかけてきたのだ。
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