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第十一章 証と絆
第525話 俺は欲張りなんだ
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(トオル君の本質は、とても細い一本の糸。それこそ、触れるだけで壊れてしまいそうな小さな魔力の塊。そこに、アサミちゃんの力が大きな支えとなって埋め込まれた。その力こそが、貴方がここに呼ばれた理由。でも、その力はまがい物で、神ですら扱いを持て余したのよ。そこで、私達の研究に目をつけたってわけ。貴方の自我を極力そのままの状態で、なおかつ力を抑制し、それでいて都合の良い可能性としてこちらの世界に置いておけるようにってね)
(……それが、この剣の姿の正体。ってわけですか?)
(そう……まっ、ほとんどが私の推察だけどね~。ただ、貴方にはもう一つの因子があった。これについては私にもよくわからないのだけれど、様々な要因でそれが弾け飛んだおかげで、今のトオル君の歪さを形作っているんだと思う)
ヴァネッサさんの推察は、俺にとって想像以上の衝撃を与えたけれど、朝美の、あーちゃんの事を考えれば強く頷ける。
俺があの時死ななかったのが彼女の力だというのなら、神と言えど黙ってはいられなかったのであろう。しかも、こっちの世界の神の尖兵と同じ力を持っていたのだ、こんな平凡以下の一学生の俺が。
(じゃあ、あの時俺がカッコつけなくても、どうやっても俺は剣の姿になっていた。って、ことなんですかね?)
(さぁ、どうかしらね。それこそ、貴方が普通を求めていたら、存在ごと抹消させられていたかもしれないし……あいつら都合がいいとか考えたんじゃないかしら。まったく、人間っていうのは神を気取っても、本質自体は本当に変わらないものね。自分に対してのイレギュラーは一つ残らず排除するって考え方……まっ、仕方ないかしら。あれを作ったのが、そういう人間だったのだから)
何か、とても重要なことをヴァネッサさんはつぶやいているような気がするけど、今の俺にはきっと理解できない。それよりも、望まぬ形で手にした力か……なるほど。
(そういうことかよ)
シャーリーにあーちゃんに俺、バラバラになっていた物が一つになってこれで符号は一致した。総てを理解したわけじゃないかもしれないけれど、俺がここに居る理由はしっかりあって、やっぱりこれは運命なのだと確信できる。
あーちゃんが俺を助けてくれて、あーちゃんの力があったからこそ俺はシャーリーに呼ばれたんだ。そして、こうしてみんなと一つになれた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。わたしきづかなくて、とおるくんだってわからなくて、さんども、さんどもたすけられたのに。わたしなにも、なにもかえせなくて」
(いや、俺の方こそ忘れてたんだ。それも、結婚の約束までした女の子のこと忘れるなんて最低だよな。だから、ごめん!)
「そんなことない! そんなことないよ。ありがとう、とおるくん。今までありがとう」
運命とか、中二病ワロスって笑いたきゃ笑えばいい。それでもこれは、俺にとっての大切な道標で、覚悟は決まった。
(ったく、何言ってんだよ、勝手に結論付けやがって。ほんとそっくりだよな、お前ら)
シャーリーが俺を呼んだのなら、あーちゃんと俺が学校で出会ったのも運命で、俺が薙沙ちゃんを好きになったのも必然。だから、彼女が俺を追いかけてきたのも、二人の絆の証なんだ。
(誰が居なくなって良いって言った? 誰が嫁は一人しか取らないって言った? 誰が一人だけしか愛さないなんて言った? 俺はさ欲張りだからよ、お前みたいないい女何人居たって大歓迎なんだよ。それに、この話はお前達二人で勝手に付けた結論だろ。だから……俺が認める道理は無い!)
ほんの少し前までと言ってることが間逆な気もするけれど、結局のところ俺は皆が好きで、あーちゃんを失いたくない。
(そりゃさ、人間体裁ってもんがあるからな。いくらこの世界が一夫多妻制だとしても、表面上順番を付けなきゃいけないし、今の俺が最初に両思いになったのはシャーリーだ。だから、俺が彼女を一番として迎え入れるのは必然であり義務だと思ってる。だけど、お前達への愛情が彼女に劣っているのかと聞かれれば、答えは否だ。無茶苦茶な事を言ってるとは、いつも思ってる。それでも、俺は平等に扱う。ここに居る皆を、俺を好きだと言ってくれる人達を、俺は平等に愛し続ける!)
「……かってだよ。とおるくん、かってすぎだよ。ばかぁ」
(我儘だってことはわかってる。それでも、俺は皆が好きだから。皆のことが、大好きだから。だから、ついてきて欲しい)
もしかしたら俺は、ここで皆に捨てられるかもしれない。それでも、示しておかなければならないんだ。男としての、真の覚悟を。
これは、シャーリーとあーちゃんがくれた、最後のチャンスなのだから。
「その問いかけは、愚問というものですよトオル様」
そんな俺の我儘に最初に笑顔を見せてくれたのは、幼女の姿をしたクルス姉。
「であるな。私たちはそのつもりで、お前に付いて来ているのだからな。トオルよ」
「そうですよ、パパ。私は、愛してもらえるだけで十分です」
「お兄の、側に、いたい」
「しょうがないわね……私も、ついていってあげるわよ」
彼女に続くようにフィルとリースが頷くと、アイリとカーラも俺に向かって微笑みかけてくれる。
「……全く、仕方がないわね。結局こうなるんだから」
(シャーリー……)
「それに、ここで私が拒絶したら、損をするのは私だけじゃない。トオルは、私のものよ」
「もちろん、僕もだよ。お兄ちゃん!」
そしてシャーリーも、全てを見透かしていたかのようにため息を吐きながらも俺の気持ちに賛同してくれた。
「……わたし、わたしは」
(……朝美?)
しかし、問題の渦中にいるはずの朝美は、戸惑うように両目を伏せている。真っ先に喜んでくれると思っていたのに、困り果てる彼女の姿に不安が募っていく。
やはり、こんな不誠実な男のことを、あーちゃんは嫌いなのだろうか……
「……ごめん、だめだよ。私はもう、徹くんの側には居られない」
「アサミ、なんで?」
絞り出すように漏らした彼女の言葉。その内容に驚きを隠せなかったが、シャーリーの問いかけに俺は二度驚かされる。
「あはは、まさかシャーロットに止められるとは思わなかったな。それは凄く嬉しいけど、だめ、なんだよ」
シャーリーに止められたことには朝美も驚いていたようだが、苦々しく笑う寂しそうな彼女の笑顔に俺は納得がいかない。
(何がだめなんだよ。理由ぐらい、説明できるだろ?)
だから、その理由を問いただしたいと、真剣な俺の眼差しに帰ってきた言葉はあまりにも突拍子もないものだったのである。
「だってさ、先輩の気持ちは幻。私の力が作り出してる、偽りの感情だから」
(……それが、この剣の姿の正体。ってわけですか?)
(そう……まっ、ほとんどが私の推察だけどね~。ただ、貴方にはもう一つの因子があった。これについては私にもよくわからないのだけれど、様々な要因でそれが弾け飛んだおかげで、今のトオル君の歪さを形作っているんだと思う)
ヴァネッサさんの推察は、俺にとって想像以上の衝撃を与えたけれど、朝美の、あーちゃんの事を考えれば強く頷ける。
俺があの時死ななかったのが彼女の力だというのなら、神と言えど黙ってはいられなかったのであろう。しかも、こっちの世界の神の尖兵と同じ力を持っていたのだ、こんな平凡以下の一学生の俺が。
(じゃあ、あの時俺がカッコつけなくても、どうやっても俺は剣の姿になっていた。って、ことなんですかね?)
(さぁ、どうかしらね。それこそ、貴方が普通を求めていたら、存在ごと抹消させられていたかもしれないし……あいつら都合がいいとか考えたんじゃないかしら。まったく、人間っていうのは神を気取っても、本質自体は本当に変わらないものね。自分に対してのイレギュラーは一つ残らず排除するって考え方……まっ、仕方ないかしら。あれを作ったのが、そういう人間だったのだから)
何か、とても重要なことをヴァネッサさんはつぶやいているような気がするけど、今の俺にはきっと理解できない。それよりも、望まぬ形で手にした力か……なるほど。
(そういうことかよ)
シャーリーにあーちゃんに俺、バラバラになっていた物が一つになってこれで符号は一致した。総てを理解したわけじゃないかもしれないけれど、俺がここに居る理由はしっかりあって、やっぱりこれは運命なのだと確信できる。
あーちゃんが俺を助けてくれて、あーちゃんの力があったからこそ俺はシャーリーに呼ばれたんだ。そして、こうしてみんなと一つになれた。
「ごめんなさい、ごめんなさい。わたしきづかなくて、とおるくんだってわからなくて、さんども、さんどもたすけられたのに。わたしなにも、なにもかえせなくて」
(いや、俺の方こそ忘れてたんだ。それも、結婚の約束までした女の子のこと忘れるなんて最低だよな。だから、ごめん!)
「そんなことない! そんなことないよ。ありがとう、とおるくん。今までありがとう」
運命とか、中二病ワロスって笑いたきゃ笑えばいい。それでもこれは、俺にとっての大切な道標で、覚悟は決まった。
(ったく、何言ってんだよ、勝手に結論付けやがって。ほんとそっくりだよな、お前ら)
シャーリーが俺を呼んだのなら、あーちゃんと俺が学校で出会ったのも運命で、俺が薙沙ちゃんを好きになったのも必然。だから、彼女が俺を追いかけてきたのも、二人の絆の証なんだ。
(誰が居なくなって良いって言った? 誰が嫁は一人しか取らないって言った? 誰が一人だけしか愛さないなんて言った? 俺はさ欲張りだからよ、お前みたいないい女何人居たって大歓迎なんだよ。それに、この話はお前達二人で勝手に付けた結論だろ。だから……俺が認める道理は無い!)
ほんの少し前までと言ってることが間逆な気もするけれど、結局のところ俺は皆が好きで、あーちゃんを失いたくない。
(そりゃさ、人間体裁ってもんがあるからな。いくらこの世界が一夫多妻制だとしても、表面上順番を付けなきゃいけないし、今の俺が最初に両思いになったのはシャーリーだ。だから、俺が彼女を一番として迎え入れるのは必然であり義務だと思ってる。だけど、お前達への愛情が彼女に劣っているのかと聞かれれば、答えは否だ。無茶苦茶な事を言ってるとは、いつも思ってる。それでも、俺は平等に扱う。ここに居る皆を、俺を好きだと言ってくれる人達を、俺は平等に愛し続ける!)
「……かってだよ。とおるくん、かってすぎだよ。ばかぁ」
(我儘だってことはわかってる。それでも、俺は皆が好きだから。皆のことが、大好きだから。だから、ついてきて欲しい)
もしかしたら俺は、ここで皆に捨てられるかもしれない。それでも、示しておかなければならないんだ。男としての、真の覚悟を。
これは、シャーリーとあーちゃんがくれた、最後のチャンスなのだから。
「その問いかけは、愚問というものですよトオル様」
そんな俺の我儘に最初に笑顔を見せてくれたのは、幼女の姿をしたクルス姉。
「であるな。私たちはそのつもりで、お前に付いて来ているのだからな。トオルよ」
「そうですよ、パパ。私は、愛してもらえるだけで十分です」
「お兄の、側に、いたい」
「しょうがないわね……私も、ついていってあげるわよ」
彼女に続くようにフィルとリースが頷くと、アイリとカーラも俺に向かって微笑みかけてくれる。
「……全く、仕方がないわね。結局こうなるんだから」
(シャーリー……)
「それに、ここで私が拒絶したら、損をするのは私だけじゃない。トオルは、私のものよ」
「もちろん、僕もだよ。お兄ちゃん!」
そしてシャーリーも、全てを見透かしていたかのようにため息を吐きながらも俺の気持ちに賛同してくれた。
「……わたし、わたしは」
(……朝美?)
しかし、問題の渦中にいるはずの朝美は、戸惑うように両目を伏せている。真っ先に喜んでくれると思っていたのに、困り果てる彼女の姿に不安が募っていく。
やはり、こんな不誠実な男のことを、あーちゃんは嫌いなのだろうか……
「……ごめん、だめだよ。私はもう、徹くんの側には居られない」
「アサミ、なんで?」
絞り出すように漏らした彼女の言葉。その内容に驚きを隠せなかったが、シャーリーの問いかけに俺は二度驚かされる。
「あはは、まさかシャーロットに止められるとは思わなかったな。それは凄く嬉しいけど、だめ、なんだよ」
シャーリーに止められたことには朝美も驚いていたようだが、苦々しく笑う寂しそうな彼女の笑顔に俺は納得がいかない。
(何がだめなんだよ。理由ぐらい、説明できるだろ?)
だから、その理由を問いただしたいと、真剣な俺の眼差しに帰ってきた言葉はあまりにも突拍子もないものだったのである。
「だってさ、先輩の気持ちは幻。私の力が作り出してる、偽りの感情だから」
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長く続けているだけのような作品ですが、気に入っていただけているようであれば、これからも応援よろしくおねがいします。
退会済ユーザのコメントです
感想ありがとうございます。
お褒めの言葉を頂けてとても嬉しいです!
これからも楽しんで頂けるよう更新を続けますので、応援よろしくお願いします!
毎日楽しく読ませて頂いております。
何故か感想を書きたくなるような内容が81話にありまして笑
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しかも、結構好きな代のやつだったので、これは共有しなくては!と思った次第であります。
今後とも更新楽しみにしております。
感想ありがとうございます。
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