俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎

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第十一章 証と絆

第504話 仁義なき容姿

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(でも~、トオルくんが一番興奮してくれるのって、私を見た時よね~)

「「……は?」」

 各々の胸中に秘めたる想いを確固とし、俺を見つめる少女たちを一通り見まわすと、俺は覚悟を決める。その瞬間、今まで黙っていたはずの剣の女王様が、呟くように口を開いた。

 喧嘩を売るような彼女の発言に場は一触即発、二人の少女が詰め寄ると闘気の渦が酒場の中心へと巻き起こる。

 行動へと移したシャーリーや朝美だけでなく、静観している少女たちの顔にも青筋が浮かび上がり、いつ爆発してもおかしくないこの状況。ヴァネッサさんは一体、何を考えているのだろうか……

(だって~、私が夢に出ていくと、喜んでくれるのよ~、彼。シャーロットちゃんたちは、大人の魅力が足りないんじゃないかしら~?)

 確かに、ヴァネッサさんは魅力的な女性だ。大人のシャーリーをこう、もっとおっとりとした感じで、包容力がある。シャーリーを王女とするなら、彼女は王妃といった感じで、並んだら間違いなく祖先というより親子に見えることだろう。

 そう考えると、彼女の母親に欲情している感じにも見えるわけで……俺の性癖って、実は相当に業が深いのではないだろうか? 

「別に、大人の魅力がなくたって、私達には私達なりのやり方があるんで。ね、シャーロット!」

「そうね。悪いけど、ヴァネッサにだけは、負けるわけにはいかないわ」

「うんうん、こんなおばさんに負けてたら、同じ女として恥ずかしいしね!」

(おば!? メイちゃん? 流石にそれは、お姉さんでも傷つくのだけれど~)

「だって、おばさんでしょ? ぼくたちより全然、昔に生まれてる訳だし」

 ヴァネッサさんの挑発に意気投合したシャーリー達。そんな中、加減を知らないメイの本音がヴァネッサさんに炸裂する。

 彼女の言う通り、俺達から見ればヴァネッサさんは確実に歳上なのだが、俺の感覚としては本当に綺麗で美しい女性であり、そういうイメージは無いんだがな。

(フィルからも、なにか言ってあげて~!)

「我に振られてもな……まぁ、年老いておるのは事実であるし、諦めるしかないのではないか?」

(でもでも~)

 同年代、もしくはそれ以上のフィルに助けを乞うも、彼女は今の年齢を事実として受け入れているらしく、全くもって助けようという気配はない。

(ねぇ、クルスちゃんも同じ女神なわけだし、お姉さんの気持ち、わかるでしょ?)

「いえ、その……申し訳ないのですが、私、生まれてから十年にも満たない女神なので、どちらかと言えばシャーロットさん達寄りで」

(う、裏切り者!)

 そこで、同じ女神であるクルス姉にすがるヴァネッサさんであったが、見た目にそぐわない実年齢によって逆に追い打ちをかけられる形となった。

 そうだよな。俺の周りの女の子って、見た目からは想像もつかない年齢をしている子が多いもんな。

 シャーリーは、若返りの秘薬の様なものを使われているから当然として、クルス姉はちっこい方が実年齢に近いのにお姉ちゃんだし、リースなんか……うん、珍しくうちの娘の目が笑っていないので、この話題はこの辺でやめておこう。

 ただ、このままだと、ヴァネッサさんがとても不憫な感じがするので、少しぐらいフォローを入れておくとするか。

(えっと、女性の魅力は外見とか年齢だけじゃないですから。心とか、振る舞いとか、そういう総合的なものですし)

(トオルくん……嘘でも、そういう事言ってくれる所が、お姉さん大好き!)

 当たり障りがなさすぎて、若干真実味にかける様に聞こえたみたいだけど、一応喜んでくれたから良しとしよう。というか、いきなり精神体で現れて、抱きついてくるの辞めてもらえませんかね? 

「でもさ、そうは言っても、第一印象の参考ぐらいにはするでしょ?」

(そりゃ、ゼロとは言わんけども……)

「ほーらね。もう、これだから男ってやつは」

(そういうお前だって、見た目ぐらいは……やめておこう。ここでそれを言及すると、自分で自分をイケメンだと言ってるような気がして来て嫌だ)

 精神体のヴァネッサさんに抱きつかれながら、朝美の問へと答えを返す俺。そんな中、自分を対象として考えることにむずがゆさを覚えた俺の心は、自己嫌悪へと落ち込んでいく。

 第一印象は見た目って言うけど、今の俺の外見は一番それに当てはまらないわけで、だからこそ自分を納得させられて来たけど、朝美の場合は生身で会ってるんだよな。

 まぁ、無意識に彼女を励ましたのが原因だけど、酷い顔だと思われてたら百年の恋も一瞬のうちに冷めるわけで、やっぱり複雑な心境だ。

「ん~、そうだな~。一般的に言う超イケメンって感じじゃないけど、私は普通に先輩の顔好きだよ?」

「そうね。トオルの顔はどっちかって言うと、守ってあげたくなるような感じよね」

「ですです。トオル様はとても、可愛らしいです」

「お兄ちゃんと居ると、胸のあたりがキュンとなって、幸せって感じなんだよね!」

(お姉さんも、トオルくんならいくら食べても大丈夫! って感じよ~)

(えっと、その……ありがとう)

 それぐらいには、自分の容姿に自信を持てない俺だけど、これだけの女の子に褒められて悪い気はしないし、少しは自分を認めても良いのかも知れない。
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