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第十一章 証と絆
第503話 ショートだと、萌えないかな?
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「いやー、鉱石も無事回収できて、一件落着って感じですな」
「全く、オークキングを倒したってのにこれだからな。アサミの図太い神経には感心するぜ」
「ちょっと、シン! ごめんなさいね、アサミさん」
「いやいや、良いって良いって。それだけ褒められてるって事なんだろうから」
鉱山に巣食うオークを撃退、説得し、頼まれていた鉱石を持ち帰った俺達は、シンやラナと一緒にギルドの提携する酒場で小さなパーティーを開いている。
冒険者達にとってもオークキングはかなりの強敵らしく、朝美の株がまた一つ上がってしまったようだ。
「えっと、ありがとうございますアサミさん。私達のために」
「それは言いっこ無し無し。恋のキューピッドとしては、困った男女の頼みごとは見過ごせないしね。それに、私の大切な人のことを考えたら、無下にもできないわけですよこれが」
頭を下げるラナに対し、楽しそうに答える朝美。笑顔なのは結構だが、一般人の前で俺を引き合いに出すのはたいへんよろしくない。
「アサミさんの大切な人って、どんな人なんですか?」
「えっとね……この人!」
しかも、何の躊躇もなくテーブルに立てかけられた俺を二人の前に差し出すし……一体何を考えているのだか。
「……剣?」
「流石にそれはネタだろ」
俺の声は聞こえないし、二人からしてみれば、からかわれている意外の何者でもないだろう。
「二人共、人を見た目で判断しちゃダメだよ。先輩は優しくて、カッコいいんだから!」
(朝美……)
異性にカッコいいと言われて嫌がる男はそう居ないと思うが、この状況で言われてもな……明らかに二人の眼差しが、遺失な物を見るような瞳に変わってるし。
「それにさ、この前、物理的な意味で私のこと追いかけられないって言われちゃった訳だし。人間、出来ることと出来ないことってのがあるわけで……それでも、愛する人のためになんとかしたいって言われたら、手伝いたくなるのが人情ってものですよ。まぁ、一億貸せとか言われたら、流石の私もぶん殴るけどね。先輩と同じで、シンが真面目で不器用なのは私にもわかるからさ」
「……アサミさんにとっては、大切な人なんですね」
「人っていうか、剣だけどな。それに俺、不器用じゃね―し」
「だったら、この場で好きって私に言える?」
「……そ、それとこれとは話が別だろ!」
ただ、彼女なりの俺への熱は二人にも伝わっているようで、ラナもシンも朝美の言葉を信じてくれたようである。まぁ、俺の存在そのものを認めてくれたのかはわからないけどな。
「そう言えば先輩。私、髪型変わっちゃったけど、嫌……かな?」
(ん? なんだよ、突然?)
「だって、先輩ロングが好きだったじゃん。ショートだと萌えないかなって」
確かに、俺が好むキャラの半数は黒髪ロングの女の子が多かったのは事実だが、ファンタジー作品のキャラだとピンクとか青とか全然いたし、髪型だけで女子を選ぶとかそんなつもりは無いのだけれども……なるほど、朝美の地毛が黒髪ロングだったのは、俺の好みも考慮してたって訳か。
「と、トオル様が黒髪ロングフェチだったなんて……髪型までは気にしていませんでした! クルスお姉ちゃん、一生の不覚です!」
しかも、衝撃の事実でも突きつけられたかのように両手をテーブルへと叩きつけるクルス姉であったが、お店の迷惑になるから物理的に何かに当たるのはやめてほしい。
とは言え、気にしないふりをしつつも、さり気なく皆が俺の方を見てるからな。何か答えを出さないと、後で面倒くさいことになりそうだ。
(えっとな、それはあくまで昔の話。昔は、清楚なのが好きだったってだけだよ。それに、そんな事ぐらいで、俺がお前のこと嫌いになるわけ無いだろ? お前の記憶が戻った時だって……んー、特に何も無かったか)
「何も無かったは酷いなー。私の事、朝美! って、呼んでくれたじゃん。嬉しかったな~」
そのせいで、俺が泣いてる暇すら無かったのだが、本人が喜んでるみたいだし良しとしよう。
「あら? 私がトオルに愛称で呼んでもらったのは、出会ってすぐのことだったけど。随分と遅い進展よね」
「それってさ、喧嘩でもお売りになっていらっしゃいます? シャーロットさん?」
しかし、俺と朝美の間に流れる空気が気に入らなかったようで、彼女に喧嘩を売りつけるシャーロット。相変わらずというか何というか、俺への愛が重いです。
「私達の中だと、誰が見た目的にパパの好みなのでしょう? 私、気になります!」
「もちろん、クルスお姉ちゃんですよね! ね!!」
「いやいやいや、ここで負けたらアイドルとしての立つ瀬がないでしょ。先輩の一番は、私だよね。せーんぱい!」
「私は、その、見た目とか気にしないし。トオルは、私が一番好きって、わかってるもの」
今まで誰もそんな話題を持ち出した事は無かったが、リースの提案によって血みどろの戦いが始まろうとしている。
俺の周りにいる女子って全員綺麗だし、見た目とか極力意識しないようにしてきたのだけれど、やっぱりそういうのって気になるんだろうな皆。
声を上げたリースとクルス姉に朝美意外も、気にしないふりをしながら俺の方を見てくるし。シャーリーに限ってはあんな事を言ってるけど、彼女以外の誰かを選んだら間違いなく遺恨を残すだろうしな。
「とか言いながら、選ばれなかったらどうしようって、内心びくびくしてるよねお姉さま!」
「……めーいー」
そんな内情を吐露してくれたメイに、感謝するべきかしないべきか……とにかくこれで後に引けなくなったわけだが、今までで最悪の戦いになるかも知れない。
「全く、オークキングを倒したってのにこれだからな。アサミの図太い神経には感心するぜ」
「ちょっと、シン! ごめんなさいね、アサミさん」
「いやいや、良いって良いって。それだけ褒められてるって事なんだろうから」
鉱山に巣食うオークを撃退、説得し、頼まれていた鉱石を持ち帰った俺達は、シンやラナと一緒にギルドの提携する酒場で小さなパーティーを開いている。
冒険者達にとってもオークキングはかなりの強敵らしく、朝美の株がまた一つ上がってしまったようだ。
「えっと、ありがとうございますアサミさん。私達のために」
「それは言いっこ無し無し。恋のキューピッドとしては、困った男女の頼みごとは見過ごせないしね。それに、私の大切な人のことを考えたら、無下にもできないわけですよこれが」
頭を下げるラナに対し、楽しそうに答える朝美。笑顔なのは結構だが、一般人の前で俺を引き合いに出すのはたいへんよろしくない。
「アサミさんの大切な人って、どんな人なんですか?」
「えっとね……この人!」
しかも、何の躊躇もなくテーブルに立てかけられた俺を二人の前に差し出すし……一体何を考えているのだか。
「……剣?」
「流石にそれはネタだろ」
俺の声は聞こえないし、二人からしてみれば、からかわれている意外の何者でもないだろう。
「二人共、人を見た目で判断しちゃダメだよ。先輩は優しくて、カッコいいんだから!」
(朝美……)
異性にカッコいいと言われて嫌がる男はそう居ないと思うが、この状況で言われてもな……明らかに二人の眼差しが、遺失な物を見るような瞳に変わってるし。
「それにさ、この前、物理的な意味で私のこと追いかけられないって言われちゃった訳だし。人間、出来ることと出来ないことってのがあるわけで……それでも、愛する人のためになんとかしたいって言われたら、手伝いたくなるのが人情ってものですよ。まぁ、一億貸せとか言われたら、流石の私もぶん殴るけどね。先輩と同じで、シンが真面目で不器用なのは私にもわかるからさ」
「……アサミさんにとっては、大切な人なんですね」
「人っていうか、剣だけどな。それに俺、不器用じゃね―し」
「だったら、この場で好きって私に言える?」
「……そ、それとこれとは話が別だろ!」
ただ、彼女なりの俺への熱は二人にも伝わっているようで、ラナもシンも朝美の言葉を信じてくれたようである。まぁ、俺の存在そのものを認めてくれたのかはわからないけどな。
「そう言えば先輩。私、髪型変わっちゃったけど、嫌……かな?」
(ん? なんだよ、突然?)
「だって、先輩ロングが好きだったじゃん。ショートだと萌えないかなって」
確かに、俺が好むキャラの半数は黒髪ロングの女の子が多かったのは事実だが、ファンタジー作品のキャラだとピンクとか青とか全然いたし、髪型だけで女子を選ぶとかそんなつもりは無いのだけれども……なるほど、朝美の地毛が黒髪ロングだったのは、俺の好みも考慮してたって訳か。
「と、トオル様が黒髪ロングフェチだったなんて……髪型までは気にしていませんでした! クルスお姉ちゃん、一生の不覚です!」
しかも、衝撃の事実でも突きつけられたかのように両手をテーブルへと叩きつけるクルス姉であったが、お店の迷惑になるから物理的に何かに当たるのはやめてほしい。
とは言え、気にしないふりをしつつも、さり気なく皆が俺の方を見てるからな。何か答えを出さないと、後で面倒くさいことになりそうだ。
(えっとな、それはあくまで昔の話。昔は、清楚なのが好きだったってだけだよ。それに、そんな事ぐらいで、俺がお前のこと嫌いになるわけ無いだろ? お前の記憶が戻った時だって……んー、特に何も無かったか)
「何も無かったは酷いなー。私の事、朝美! って、呼んでくれたじゃん。嬉しかったな~」
そのせいで、俺が泣いてる暇すら無かったのだが、本人が喜んでるみたいだし良しとしよう。
「あら? 私がトオルに愛称で呼んでもらったのは、出会ってすぐのことだったけど。随分と遅い進展よね」
「それってさ、喧嘩でもお売りになっていらっしゃいます? シャーロットさん?」
しかし、俺と朝美の間に流れる空気が気に入らなかったようで、彼女に喧嘩を売りつけるシャーロット。相変わらずというか何というか、俺への愛が重いです。
「私達の中だと、誰が見た目的にパパの好みなのでしょう? 私、気になります!」
「もちろん、クルスお姉ちゃんですよね! ね!!」
「いやいやいや、ここで負けたらアイドルとしての立つ瀬がないでしょ。先輩の一番は、私だよね。せーんぱい!」
「私は、その、見た目とか気にしないし。トオルは、私が一番好きって、わかってるもの」
今まで誰もそんな話題を持ち出した事は無かったが、リースの提案によって血みどろの戦いが始まろうとしている。
俺の周りにいる女子って全員綺麗だし、見た目とか極力意識しないようにしてきたのだけれど、やっぱりそういうのって気になるんだろうな皆。
声を上げたリースとクルス姉に朝美意外も、気にしないふりをしながら俺の方を見てくるし。シャーリーに限ってはあんな事を言ってるけど、彼女以外の誰かを選んだら間違いなく遺恨を残すだろうしな。
「とか言いながら、選ばれなかったらどうしようって、内心びくびくしてるよねお姉さま!」
「……めーいー」
そんな内情を吐露してくれたメイに、感謝するべきかしないべきか……とにかくこれで後に引けなくなったわけだが、今までで最悪の戦いになるかも知れない。
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