俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎

文字の大きさ
上 下
493 / 526
第十一章 証と絆

第492話 没収

しおりを挟む
「それはそうかもしれないね。で、ちょっとぐらい良いでしょ? 先輩かーして」

 そして、遂にしびれを切らした朝美は、折れるつもりのないシャーロットに対し実力行使に出る。

「言ってるでしょ、彼は私のものだって」

「かせって言ってんの」

「駄目って言ってるのよ」

 互いに俺の上と下、柄と剣先を持ち合うと、一切加減すること無く全力で俺の体を引っ張り合う。

(痛い、痛いから! 折れる! 折れないけど、折れちゃうゥゥゥゥゥっ!!)

 いくら二人が人間離れしていようと、俺の体が引っ張られたぐらいで神具を宿すこの刀身が折れるわけもないのだが、無駄に神経の通うこの体だと痛いものは痛いし、あまりに醜い争いに心の方が折れそうになってもうヘトヘトだ。

(トオルくんは、本当に愛されてるわね~)

 だと言うのに、からかい半分に微笑むヴァネッサさんを俺は今猛烈に恨まざるお得ない。彼女がいなければ今の俺の体はなく、朝美ことミレイに出会うこともなく途方に暮れていた事だろう。

 だが、彼女が性的に俺に対してちょっかいをかけることで、シャーリーの悩みが増えているのも事実。このまま喧嘩が絶えないのであれば、シャーリー以外の皆をいっそ切り捨ててしまおうか……

「いい加減にしなさいよあんた達!」

 ハーレムという結果より、シャーリーを一番に考えた純愛という結末を選ぼうと模索し始めた瞬間、ここ数日全く口を挟まなかったカーラがテーブルの上に拳を叩きつける。

「私が言えた義理じゃないけど、トオルの事愛してるなら可哀想とか思わないわけ?」

 殴り飛ばされたりすることもあった気がするが、彼女のそれはあくまで愛情の裏返しなわけで、手荒に扱われていたとは感じない。むしろ、今まで傍観に徹してくれた我慢強さや、ここぞという時に止めに入る対応力は尊敬に値するほどで、むしろ高評価であると言える。

 まぁ、何もできない俺が上から目線で言える立場でもないのだが。

「「むっ、そ、それは……」」

 それに、こういう時だけ無駄に言葉をハモらせる二人の方が好感度は低いかも……仲良しっぷりを披露してくれるなら、もっとこう楽しく和気あいあいとしてほしいものである。

「という訳で、一旦没収!」

 そんな二人の態度にカーラも不満を募らせていたようで、シャーリーの手から彼女はすかさず俺を取り上げると自分の席へと戻っていく。

(ふぅ。ありがとうな、カーラ)

「見てらんない性分なだけよ、こういうのはね」

 彼女は一見ぶっきらぼうで、必要なこと以外首を突っ込みたがらない性格をしているように感じるが、その実、優しく涙もろくて面倒見のいいお姉さんなのである。

「……またライバルが増えてる」

「別に、そういうんじゃないわよ。当たり前のことを思っただけ」

 しかも、俺に興味が無さそうな態度を取る割には、感謝すると満更でもない顔をするんだよな。その意地っ張りなところがまた武闘派って感じがして、凄くかわいい。

「……ほら、先輩がかわいいって言ってる」

「!? あ、あんたねぇ! そんなことばっか考えてるから、話がややこしくなるんでしょうが!」

 カーラに救出されて安心したのも束の間、油断した隙を突かれた俺は朝美に思考を読まれ、慌てたカーラに鍔を絞め上げられる。

 俺が彼女を好きだと思わなければ側になんか置かないわけで、可愛いと思うなという方が無理な話なのだが、全てが筒抜けってのはこういう時に辛い。

 それと、勢いがつくと容赦ないのは、貴方も変わらないですよカーラさん。流石に両腕で絞め上げるのは、結構痛いです。

「あんた達って、本当に面白いねぇ。剣に名前をつけて、皆で取り合いし始めるんだからさ。あたしも、混ぜてもらおうかね」

「見苦しいところをお見せした。ほら、三人とも止めぬか」

 それに、彼女達が行っている行為は、普通の人から見ればおかしな光景にしか映らないわけで、三人が仲睦まじく遊んでいるように見えるのだろう。はつらつな女子に混ざろうとする女将さんを何とかフィルが食い止めるが、少し不機嫌な様子に俺は苦笑いを浮かる。

 別に、熟女が嫌いとか言うつもりはないけど、何も知らない一般人を変な世界に引っ張り込むのは抵抗がある。でも、元気な女の子達を見ると、いくつになっても女性っていうのは混ざりたくなるものなのかね……フィルやヴァネッサさんもそうだし。

 まぁ、男はいつまでも子供、なんて言われるし、女子はいつまでも乙女とか、そんな感じなのかも。いやー、気持ちが若いってのは良いですなぁ……なんて、これじゃおじさんか。

「トオル様は、凄い方なんですよ!」

「へぇ、そうなんだ!」

 クルス姉はクルス姉で、女将さんの娘に変なことを刷り込んでるし。この忙しない中に男一人放り込まれてたら、老け込みもするわ。アニメやラノベを見てると、主人公ってみんなのらりくらりとかわしてるけど、ハーレムって大変なんだなぁ。逃げるって選択肢を取れないこの体が、一番の問題な気もするけど。

「さて、朝食も取り終えた事であるし、まずは、ギルドに顔を出しに行くとしようかの。朝美だけでなく、我等も呼ばれていたはずだからな」

「そうね。とりあえずは、そうしましょうか。朝美も、良いわね?」

「そりゃ良いけども……カーラ~、先輩返してよぉ~」

「返してって、返すなら私でしょ?」

「なにおぅ!」

「はぁ……当分私が持ってるけど、良いわよねトオル」

(……そうしてくれ)

「全く、お姉さまはもう」

 フィルの提案もあり、俺達は一路ギルドを目指すことになったのだが、あいも変わらず口喧嘩を続けるシャーリーと朝美に、カーラとメイがため息を吐くのであった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……

【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~

BIRD
ファンタジー
【転生者モチ編あらすじ】 異世界を再現したテーマパーク・プルミエタウンで働いていた兼業漫画家の俺。 原稿を仕上げた後、床で寝落ちた相方をベッドに引きずり上げて一緒に眠っていたら、本物の異世界に転移してしまった。 初めての異世界転移で容姿が変わり、日本での名前と姿は記憶から消えている。 転移先は前世で暮らした世界で、俺と相方の前世は双子だった。 前世の記憶は無いのに、時折感じる不安と哀しみ。 相方は眠っているだけなのに、何故か毎晩生存確認してしまう。 その原因は、相方の前世にあるような? 「ニンゲン」によって一度滅びた世界。 二足歩行の猫たちが文明を築いている時代。 それを見守る千年の寿命をもつ「世界樹の民」。 双子の勇者の転生者たちの物語です。 現世は親友、前世は双子の兄弟、2人の関係の変化と、異世界生活を書きました。 画像は作者が遊んでいるネトゲで作成したキャラや、石垣島の風景を使ったりしています。 AI生成した画像も合成に使うことがあります。 編集ソフトは全てフォトショップ使用です。 得られるスコア収益は「島猫たちのエピソード」と同じく、保護猫たちのために使わせて頂きます。 2024.4.19 モチ編スタート 5.14 モチ編完結。 5.15 イオ編スタート。 5.31 イオ編完結。 8.1 ファンタジー大賞エントリーに伴い、加筆開始 8.21 前世編開始 9.14 前世編完結 9.15 イオ視点のエピソード開始 9.20 イオ視点のエピソード完結 9.21 翔が書いた物語開始

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る

Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される ・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。 実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。 ※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。

ジャンヌ・ガーディクスの世界

西野 うみれ
ファンタジー
近くで戦闘勝利があるだけで経験値吸収。戦わずして最強になる見習い僧侶ジャンヌの成長物語。 オーガーやタイタン、サイクロプロス、ヘカトンケイレスなど巨人が治める隣国。その隣国と戦闘が絶えないウッドバルト王国に住むジャンヌ。まだ見習い僧兵としての彼は、祖父から譲り受けた「エクスペリエンスの指輪」により、100メートル以内で起こった戦闘勝利の経験値を吸収できるようになる。戦わずして、最強になるジャンヌ。いじめられっ子の彼が強さを手に入れていく。力をつけていくジャンヌ、誰もが無意識に使っている魔法、なかでも蘇生魔法や即死魔法と呼ばれる生死を司る魔法があるのはなぜか。何気なく認めていた魔法の世界は、二章から崩れていく。 全28話・二章立てのハイファンタジー・SFミステリーです。

秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話

嵐華子
ファンタジー
【旧題】秘密の多い魔力0令嬢の自由ライフ。 【あらすじ】 イケメン魔術師一家の超虚弱体質養女は史上3人目の魔力0人間。 しかし本人はもちろん、通称、魔王と悪魔兄弟(義理家族達)は気にしない。 ついでに魔王と悪魔兄弟は王子達への雷撃も、国王と宰相の頭を燃やしても、凍らせても気にしない。 そんな一家はむしろ互いに愛情過多。 あてられた周りだけ食傷気味。 「でも魔力0だから魔法が使えないって誰が決めたの?」 なんて養女は言う。 今の所、魔法を使った事ないんですけどね。 ただし時々白い獣になって何かしらやらかしている模様。 僕呼びも含めて養女には色々秘密があるけど、令嬢の成長と共に少しずつ明らかになっていく。 一家の望みは表舞台に出る事なく家族でスローライフ……無理じゃないだろうか。 生活にも困らず、むしろ養女はやりたい事をやりたいように、自由に生きているだけで懐が潤いまくり、慰謝料も魔王達がガッポリ回収しては手渡すからか、懐は潤っている。 でもスローなライフは無理っぽい。 __そんなお話。 ※お気に入り登録、コメント、その他色々ありがとうございます。 ※他サイトでも掲載中。 ※1話1600〜2000文字くらいの、下スクロールでサクサク読めるように句読点改行しています。 ※主人公は溺愛されまくりですが、一部を除いて恋愛要素は今のところ無い模様。 ※サブも含めてタイトルのセンスは壊滅的にありません(自分的にしっくりくるまでちょくちょく変更すると思います)。

処理中です...