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第十一章 証と絆
第489話 心に貯まる色な気持ち
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俺は今、人生の岐路に立たされている。
「……トオル」
「……お兄ちゃん」
目の前には二人の女性、シャーロットとシャーロットが俺に向かって迫ってきているのだ。しかも、全裸で。
といっても、片方は正確には妹のメイベルらしく、幼女なシャーリーの見た目をしていた。
即ち、もう一人のシャーリーは本来の大人な女性の姿をしているわけで、美少女姉妹の裸体に興奮しないわけがない。倫理的な話で言えば、メイに興奮するのは事案なわけだが、彼女の体もシャーリーなわけで低身長な二十代女性と認識して欲しい。
むしろ、どう見てもただの幼女だろ! と言いたい人達は、百四十センチぐらいの成人女性達に殴られる覚悟をしておくといいだろう。
というのは冗談として、俺も俺で現実逃避をしている場合じゃない。何故か人間に戻っているこの体も含めて、何か対策を考えねば……
「ダメだよシャーロット。先輩は、私のものなんだから」
しかも、今度は朝美まで現れて、この三人に弄ばれるとかいくら命があっても足りる気がしない。美少女からのお誘いは魅力的で、据え膳食わぬは男の恥とも言うけど、ここは何としても逃げなければ。
でないと、精力的に俺が殺される。
「……って、うお! な、なんじゃこりゃ。う、腕が……う、うごけない」
自らの命を守るため防衛策を行おうとした瞬間、俺の両手は拘束され身動きが取れなくなる。
「トオル様、逃しませんよ。クルスお姉ちゃんのも、たっぷりと楽しんでください」
どうやら、精なる女神のイタズラにより俺の自由は奪われてしまったらしい。浅ましくもがいてみるも、鋼鉄の鎖に縛られた俺は逃げ出す事ができず、知らぬうちに両足も地面に縫い付けられていた。
妖艶に微笑むフィル辺りがやったのだろうが、これで完全に詰み。リースにカーラとアイリまで現れたのを見て、俺は死を覚悟する。これから始まる美女達の狂演、皆が一斉に俺の裸に飛びついた瞬間……俺は意識を取り戻した。
(……ゆ、夢かぁ)
魔神アガレスが作り出し呪いの霧を浴び、一度人間の姿に戻ってからというもの、頻繁に俺は夢を見るようになった。人間の感覚を取り戻すことは、決して悪いことと思ってはいないものの、見る夢の大半がこういうアダルティーなものなのだからたまらない。それだけ、心の奥底では色々と溜まっているのかも知れないが、流石にこう毎日は勘弁して欲しい。
まぁ、それもそうか。これだけの美少女に囲まれて、キスは愚か手の一つも繋げないんだから、フラストレーションも溜まるというもの。それでも皆、俺が頼めば快くやってくれるのだろうけれど、男の俺からせがむと言うのもなんだかやっぱり気が引ける。
ここ数日、エッチなものしか見ないのは、おそらく朝美の影響なんだろうな……しかも、良く考えてみればうちのパーティーって、姫様に、神様に、女神様と、神々しい人達ばかりだし。
それに、シャーロットに対する後ろめたさと言うか、二人以上の女性を愛している背徳感が抜けきらないのも理由のひとつなのだろうな……むぅ、情けない。
(そういう事なら~、手取り足取り~、お姉さんが処理してあげるわよ~?)
(う、うわ!? ヴァ、ヴァネッサさん)
等と、男としての立場に悩んでいると、耳元から囁く声が一つ。俺の精神世界に入り込んだヴァネッサさんが、背中から声をかけてきたのだ。
ゼパルとの戦いの折、完全に彼女の事を忘れてしまっていたわけなのだが、その事にはさほど触れられず逆に気に入られてしまったようで、シャーリーが寝ている時の当たりが強い。
どうやら、一人で居ることにかなりのコンプレックスを抱いているらしく、ゼパルの隠れ家の端っこに保管されていたことが相当に寂しかったようだ。
(おはようトオル君。良い夢、見てたみたいね~。お姉さん、ちょ~っとだけ、妬けちゃうわ~)
それからと言うもの、俺を虜にする算段なのか綺麗なドレスを身にまとい精神の中に表れるので思わずドキッとしてしまう。そして、彼女の大人の魅力に俺は、思わず二歩後ずさってしまった。
(も~、そんなに緊張しちゃって、かわいいんだから)
このままではまずい。具体的に何がまずいかと言うと、ここは俺の精神世界で俺に逃げ場は無い。しかも、相手はこれでもセイクリッド、それも魔王を退治した女神のような存在だ。彼女を拒む障壁のような術技をいくら学んでも、俺の魔力では大きなえびせんが一枚並ぶようなものだろう。彼女が少し力を入れて殴れば、簡単に突破されてしまう。
それに、拒絶するような行為をとれば、この人はきっと悲しむだろうからな。
(や、やめてください!)
(あん)
とは言え、彼女の好き勝手にさせるわけにもいかず、俺の太ももに右手を這わせる繊細な指先の気持ちよさに、たまらず俺は彼女の体を突き飛ばした。
尻餅をつく瞬間のしなやかな腰の捻りだけでなく、突き飛ばされた時の悲鳴もまたエロい……じゃなくて!
(全く、何なんですかもう! 痴女ですか貴方は!)
(ふふっ、トオルくんってほんと初ね。跡継ぎさんのお婿さんじゃなかったら、今すぐ押し倒しちゃうのに)
……さっきの台詞、少しだけ訂正させてくれ。完全に痴女だこの人。年上の女上司にセクハラされる男性の気持ちが、なんとなくわかった気がするよ。正直、夢の中の皆より、目の前の貴方のほうが怖いですよヴァネッサさん。
それに、良い夢と言えばそうではあるが、俺的には結構困ってるんだけどな。
「……トオル」
「……お兄ちゃん」
目の前には二人の女性、シャーロットとシャーロットが俺に向かって迫ってきているのだ。しかも、全裸で。
といっても、片方は正確には妹のメイベルらしく、幼女なシャーリーの見た目をしていた。
即ち、もう一人のシャーリーは本来の大人な女性の姿をしているわけで、美少女姉妹の裸体に興奮しないわけがない。倫理的な話で言えば、メイに興奮するのは事案なわけだが、彼女の体もシャーリーなわけで低身長な二十代女性と認識して欲しい。
むしろ、どう見てもただの幼女だろ! と言いたい人達は、百四十センチぐらいの成人女性達に殴られる覚悟をしておくといいだろう。
というのは冗談として、俺も俺で現実逃避をしている場合じゃない。何故か人間に戻っているこの体も含めて、何か対策を考えねば……
「ダメだよシャーロット。先輩は、私のものなんだから」
しかも、今度は朝美まで現れて、この三人に弄ばれるとかいくら命があっても足りる気がしない。美少女からのお誘いは魅力的で、据え膳食わぬは男の恥とも言うけど、ここは何としても逃げなければ。
でないと、精力的に俺が殺される。
「……って、うお! な、なんじゃこりゃ。う、腕が……う、うごけない」
自らの命を守るため防衛策を行おうとした瞬間、俺の両手は拘束され身動きが取れなくなる。
「トオル様、逃しませんよ。クルスお姉ちゃんのも、たっぷりと楽しんでください」
どうやら、精なる女神のイタズラにより俺の自由は奪われてしまったらしい。浅ましくもがいてみるも、鋼鉄の鎖に縛られた俺は逃げ出す事ができず、知らぬうちに両足も地面に縫い付けられていた。
妖艶に微笑むフィル辺りがやったのだろうが、これで完全に詰み。リースにカーラとアイリまで現れたのを見て、俺は死を覚悟する。これから始まる美女達の狂演、皆が一斉に俺の裸に飛びついた瞬間……俺は意識を取り戻した。
(……ゆ、夢かぁ)
魔神アガレスが作り出し呪いの霧を浴び、一度人間の姿に戻ってからというもの、頻繁に俺は夢を見るようになった。人間の感覚を取り戻すことは、決して悪いことと思ってはいないものの、見る夢の大半がこういうアダルティーなものなのだからたまらない。それだけ、心の奥底では色々と溜まっているのかも知れないが、流石にこう毎日は勘弁して欲しい。
まぁ、それもそうか。これだけの美少女に囲まれて、キスは愚か手の一つも繋げないんだから、フラストレーションも溜まるというもの。それでも皆、俺が頼めば快くやってくれるのだろうけれど、男の俺からせがむと言うのもなんだかやっぱり気が引ける。
ここ数日、エッチなものしか見ないのは、おそらく朝美の影響なんだろうな……しかも、良く考えてみればうちのパーティーって、姫様に、神様に、女神様と、神々しい人達ばかりだし。
それに、シャーロットに対する後ろめたさと言うか、二人以上の女性を愛している背徳感が抜けきらないのも理由のひとつなのだろうな……むぅ、情けない。
(そういう事なら~、手取り足取り~、お姉さんが処理してあげるわよ~?)
(う、うわ!? ヴァ、ヴァネッサさん)
等と、男としての立場に悩んでいると、耳元から囁く声が一つ。俺の精神世界に入り込んだヴァネッサさんが、背中から声をかけてきたのだ。
ゼパルとの戦いの折、完全に彼女の事を忘れてしまっていたわけなのだが、その事にはさほど触れられず逆に気に入られてしまったようで、シャーリーが寝ている時の当たりが強い。
どうやら、一人で居ることにかなりのコンプレックスを抱いているらしく、ゼパルの隠れ家の端っこに保管されていたことが相当に寂しかったようだ。
(おはようトオル君。良い夢、見てたみたいね~。お姉さん、ちょ~っとだけ、妬けちゃうわ~)
それからと言うもの、俺を虜にする算段なのか綺麗なドレスを身にまとい精神の中に表れるので思わずドキッとしてしまう。そして、彼女の大人の魅力に俺は、思わず二歩後ずさってしまった。
(も~、そんなに緊張しちゃって、かわいいんだから)
このままではまずい。具体的に何がまずいかと言うと、ここは俺の精神世界で俺に逃げ場は無い。しかも、相手はこれでもセイクリッド、それも魔王を退治した女神のような存在だ。彼女を拒む障壁のような術技をいくら学んでも、俺の魔力では大きなえびせんが一枚並ぶようなものだろう。彼女が少し力を入れて殴れば、簡単に突破されてしまう。
それに、拒絶するような行為をとれば、この人はきっと悲しむだろうからな。
(や、やめてください!)
(あん)
とは言え、彼女の好き勝手にさせるわけにもいかず、俺の太ももに右手を這わせる繊細な指先の気持ちよさに、たまらず俺は彼女の体を突き飛ばした。
尻餅をつく瞬間のしなやかな腰の捻りだけでなく、突き飛ばされた時の悲鳴もまたエロい……じゃなくて!
(全く、何なんですかもう! 痴女ですか貴方は!)
(ふふっ、トオルくんってほんと初ね。跡継ぎさんのお婿さんじゃなかったら、今すぐ押し倒しちゃうのに)
……さっきの台詞、少しだけ訂正させてくれ。完全に痴女だこの人。年上の女上司にセクハラされる男性の気持ちが、なんとなくわかった気がするよ。正直、夢の中の皆より、目の前の貴方のほうが怖いですよヴァネッサさん。
それに、良い夢と言えばそうではあるが、俺的には結構困ってるんだけどな。
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