俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎

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第十一章 証と絆

第488話 第十一章プロローグ 少女の記憶と夢の少年

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 少女は夢に埋没する。それは、記憶の底に封印されていた彼女を形作る過去。大切な人との約束の記憶、セピア色に彩られたおぼろげな思い出が、毎夜毎夜少女の脳裏を駆け巡り続けていた。

「はぁ、はぁ、……また、あの夢か。やっぱり、そうなのかな? そう、何だよね」

 確証のない記憶。しかし、見覚えのある少年の姿が彼女の心を苦しめる。喜びと後悔、不安と慈しみ。正反対の感情が少女の胸中に渦巻き、彼女の瞳には一筋の涙が溢れ落ちた。

「どうしよう……でも、違ったら、間違ってたら、私……」

 そんな彼女に芽生えた感情は、恐怖。少女の思い描く少年と、記憶の中の彼が別人だとしたらそれは彼への裏切りであり、自身の中にある想いもきっと壊れてしまう。何より、自分が自分を許せなくなりそうで、心が怖気づいてしまっていたのだ。

 それに、彼女にとっては叶わぬ夢、叶わぬ恋。ならばいっそ、忘れてしまえれば……

「なんて、簡単に割り切れるなら、こんな所にいないか」

 少女にとっては初めての恋、初めてと思っていた二度目の恋。そのどちらであろうと、彼女にとっては忘れられないとても大切な記憶。

「でも、昔から本当に忘れっぽいなぁ私。この間も、記憶喪失になってたし。そんなにあの人のこと、忘れたかったのかな……って、違う違う! そんなわけないない! だって、そうしないといけなかったんだから。私の気持ちは本物だもん!」

 だが、彼女の辿る運命のレールは苦難の上にあり、大切なものは全て粉雪のように彼女の手からすり抜け落ちていく。それでも諦めきれないと、すがり続ける少女の想いを否定することは、きっと誰にも出来ないであろう。

 大切な人のため、体と記憶を捧げた少女の献身を笑い飛ばすことなど出来はしない。もし、そんな者が居るとすれば、他人を支配し蹴落とすことを生きがいとする魔神と呼ばれる悪魔達だけだ。

「まぁ、悩んでても仕方ないか。そういうの柄じゃないしね」

 いつでも前向きに、あの人のために生きていく。それが彼女のポリシーであり、彼に与えてもらった希望。されど、この想いを打ち明けた瞬間今の関係は終わり、その全てが変わってしまうのも事実。

 彼だけではなく、彼女たちと築き上げてきた絆や想いも。

「よし、決めた! それはまた今度にしよう! 確証があるわけでもないしね。それに、みんなのことも大切だもん」

 異世界に流れ着き、十八年という人生の中で初めて出来た大切な仲間達。少女はそれを大事にしたいと、自らの想いを再び胸の中へとしまい込む。初恋と友情を天秤にはかけられないと彼女は一つ背伸びをし、少し硬いベッドから飛び降りた。

「さてと、そろそろ支度して先輩を起こしに行かないと。うかうかしてるとまた、みんなに心配されちゃうもんね」

 一人のんびり休んでいただけで、心配そうに部屋を訪れる仲間たちの笑顔を思い浮かべながら、お気に入りとなった新たな衣装へと彼女は手を通すのであった。
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