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第十章 記憶を無くした少女
第470話 あなたと一緒に戦いたい
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(……あの~、ミレイさん? 何故にここへ?)
翌日、彼女が朝早く訪れた場所に、俺は大層困惑している。
「トールさん、にぶちんですねぇ」
(罵倒にはなれてるよ)
ゆっくりと朝食を味わった彼女が足を運んだ先は、なんとリレメンテのギルドだったのである。
昨日の流れからして、特大デートコースにでも付き合わされることを覚悟していたのだが、彼女の心境が全くもって理解できない。とは言え、今日は付き合うと言ってしまったわけだし、今は成り行きに任せるしかないか。
「やぁ、ミレイくん。昨日はぐっすりと眠れたかな?」
「はい! トールさんのおかげでバッチリですよ!」
「ハハハ、それは良かった。トールくんも、ご苦労さまだね」
ギルドの門をくぐり抜けると、受付嬢さんと会話をしていたエドガーさんがこちらに気が付き、話を切り上げながら俺達の方へと歩いてくる。爽やかな笑顔で挨拶を交わすエドガーさんに返事をすると、彼は両目を細めながら俺の柄頭を丁寧に撫で回してきた。
エドガーさんには俺の声は聞こえていないはずだけど、存在自体は理解してくれているのだろう。ミレイの性格を考えると、一緒にいるだけで苦労していると思われているんだろうな。
「それで、今日はどうしたのかな? シンやラナ君たちの様子を見に来たのなら案内できるが」
「いえ、二人のことも気になるですが……エドガーさん、奥の修練場、壊す覚悟でかしてくれませんかね!」
(!?)
シンやラナを気にかけてここを訪れたと思っていた俺も、真摯な彼女の態度からは想像もつかない真逆の発言に、エドガーさん共々驚かされ両目を見開かされる。
修練場を使うのはともかく、公共の場を破壊する覚悟とはいったいどういう事なのだろう? まさか、昨日受けたショックのせいで自暴自棄にでもなってしまったのではないだろうか?
「壊すとは、どういう意味なのかな?」
「私、トールさんを使いこなしたいです。トールさんと一緒に、戦いたいですよ! でも、本気を出したらきっと、周りに被害が及ぶです。誰かを傷つけたり、何かを壊したりするのは嫌ですけど、トールさんのために、もっともっと強くなりたいです!」
(ミレイ……)
そんな心配とは裏腹に、彼女はしっかりと現実を見据え、俺のためにその結論へと至ったらしい。剣を使った戦い方を知らないと言っていたミレイが一晩で思いを新たにし、俺と一緒に戦いたいと申し出てくれるとは夢にも思わず、言葉にできない気持ちが溢れる。
彼女が朝美であるかなんて、そんな事はもうどうでもいい。こんなにも尽くしてくれるミレイのために、俺は何かをしてあげたいとそう思ったのだ。
「確かに、ミレイ君の実力を考えれば何が起こるか想像もつかないだろうね」
「ですよね……」
けれども、彼女の力が未知数である事は俺もエドガーさんも承知のところで、それを理解した上で自らの敷地内で本気を出させるのは自殺行為に他ならない。
そもそも、シャーリーとか女神の皆様方は、いったいどこで修行をしていたのだろう? ギアナ高地のような修行のメッカさえわかればそういう場所に案内できるのだけれど、この世界の事を俺はまだ何も知らないからな。
今は、この国を救うという使命だけで手一杯だし、もしシャーリー達を助け出せてこの戦いも無事に終わった時は、世界を周るのもありなのかもしれないな。その場合、外交って形になるんだろうけどさ。
「わかった、私が何とかしよう」
「本当ですか!?」
「うむ。S級を想定した簡易結界というものがあってね、それがどこまでミレイくんの魔力を抑え込めるかはわからないが、私にも協力させて欲しい。この町を守る鍵は、君が握っていると私も思っているからね」
「そ、そんな、大げさですよ。でも、ありがとうございますです! トールさんやエドガーさん、それにシンくんやラナさん、皆さんのためにも頑張るですよ!」
「ライカくん、簡易結界を張るための、障壁装置の準備を手伝ってくれたまへ」
「障壁装置、ですか? は、はい! ただいま!」
そんな夢を叶えるためにも、目の前の問題に集中しなければならないと俺は気合を入れ直す。無理を承知の上でエドガーさんが許可を出してくれたのだ、ここは全力でミレイに協力しないと。
ライカと呼ばれた受付嬢さんとエドガーさんの後を追い修練場へと足を踏み入れると、加湿器のような機械が四方を囲み、青白い透明な膜が修練場を覆うように形成される。これで存分に、俺達二人の力を発揮できるはずだ。
「トールさん、私に力を貸してくださいですよ!」
ミレイが俺を正面に構えると、微弱な魔力が刀身へと注ぎ込まれ発光を始める。この町とシャーリー達を救うための、二人の修行が始まった。
翌日、彼女が朝早く訪れた場所に、俺は大層困惑している。
「トールさん、にぶちんですねぇ」
(罵倒にはなれてるよ)
ゆっくりと朝食を味わった彼女が足を運んだ先は、なんとリレメンテのギルドだったのである。
昨日の流れからして、特大デートコースにでも付き合わされることを覚悟していたのだが、彼女の心境が全くもって理解できない。とは言え、今日は付き合うと言ってしまったわけだし、今は成り行きに任せるしかないか。
「やぁ、ミレイくん。昨日はぐっすりと眠れたかな?」
「はい! トールさんのおかげでバッチリですよ!」
「ハハハ、それは良かった。トールくんも、ご苦労さまだね」
ギルドの門をくぐり抜けると、受付嬢さんと会話をしていたエドガーさんがこちらに気が付き、話を切り上げながら俺達の方へと歩いてくる。爽やかな笑顔で挨拶を交わすエドガーさんに返事をすると、彼は両目を細めながら俺の柄頭を丁寧に撫で回してきた。
エドガーさんには俺の声は聞こえていないはずだけど、存在自体は理解してくれているのだろう。ミレイの性格を考えると、一緒にいるだけで苦労していると思われているんだろうな。
「それで、今日はどうしたのかな? シンやラナ君たちの様子を見に来たのなら案内できるが」
「いえ、二人のことも気になるですが……エドガーさん、奥の修練場、壊す覚悟でかしてくれませんかね!」
(!?)
シンやラナを気にかけてここを訪れたと思っていた俺も、真摯な彼女の態度からは想像もつかない真逆の発言に、エドガーさん共々驚かされ両目を見開かされる。
修練場を使うのはともかく、公共の場を破壊する覚悟とはいったいどういう事なのだろう? まさか、昨日受けたショックのせいで自暴自棄にでもなってしまったのではないだろうか?
「壊すとは、どういう意味なのかな?」
「私、トールさんを使いこなしたいです。トールさんと一緒に、戦いたいですよ! でも、本気を出したらきっと、周りに被害が及ぶです。誰かを傷つけたり、何かを壊したりするのは嫌ですけど、トールさんのために、もっともっと強くなりたいです!」
(ミレイ……)
そんな心配とは裏腹に、彼女はしっかりと現実を見据え、俺のためにその結論へと至ったらしい。剣を使った戦い方を知らないと言っていたミレイが一晩で思いを新たにし、俺と一緒に戦いたいと申し出てくれるとは夢にも思わず、言葉にできない気持ちが溢れる。
彼女が朝美であるかなんて、そんな事はもうどうでもいい。こんなにも尽くしてくれるミレイのために、俺は何かをしてあげたいとそう思ったのだ。
「確かに、ミレイ君の実力を考えれば何が起こるか想像もつかないだろうね」
「ですよね……」
けれども、彼女の力が未知数である事は俺もエドガーさんも承知のところで、それを理解した上で自らの敷地内で本気を出させるのは自殺行為に他ならない。
そもそも、シャーリーとか女神の皆様方は、いったいどこで修行をしていたのだろう? ギアナ高地のような修行のメッカさえわかればそういう場所に案内できるのだけれど、この世界の事を俺はまだ何も知らないからな。
今は、この国を救うという使命だけで手一杯だし、もしシャーリー達を助け出せてこの戦いも無事に終わった時は、世界を周るのもありなのかもしれないな。その場合、外交って形になるんだろうけどさ。
「わかった、私が何とかしよう」
「本当ですか!?」
「うむ。S級を想定した簡易結界というものがあってね、それがどこまでミレイくんの魔力を抑え込めるかはわからないが、私にも協力させて欲しい。この町を守る鍵は、君が握っていると私も思っているからね」
「そ、そんな、大げさですよ。でも、ありがとうございますです! トールさんやエドガーさん、それにシンくんやラナさん、皆さんのためにも頑張るですよ!」
「ライカくん、簡易結界を張るための、障壁装置の準備を手伝ってくれたまへ」
「障壁装置、ですか? は、はい! ただいま!」
そんな夢を叶えるためにも、目の前の問題に集中しなければならないと俺は気合を入れ直す。無理を承知の上でエドガーさんが許可を出してくれたのだ、ここは全力でミレイに協力しないと。
ライカと呼ばれた受付嬢さんとエドガーさんの後を追い修練場へと足を踏み入れると、加湿器のような機械が四方を囲み、青白い透明な膜が修練場を覆うように形成される。これで存分に、俺達二人の力を発揮できるはずだ。
「トールさん、私に力を貸してくださいですよ!」
ミレイが俺を正面に構えると、微弱な魔力が刀身へと注ぎ込まれ発光を始める。この町とシャーリー達を救うための、二人の修行が始まった。
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