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第十章 記憶を無くした少女
第455話 魔性の膨らみ
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「私、記憶が無いですよ。探して探して、旅してたです」
(え?)
その時、少女が呟いた言葉に俺の胸は締め付けられる。
「短い間でしたけど、沢山の人達に助けられたですよ。なんだか、記憶喪失も悪くないです~」
明朗快活な彼女の姿に悩みなんて無いものと思いこんでいたけれど、少女の明かす秘密に俺は言葉を失った。
(ごめん)
「気にしなくていいです~。こんな事話せたの、トールさんが始めてですよ~」
少女が何を思って俺を拾ってくれたのかはわからないけれど、彼女の記憶に関係しているのであれば助けになりたい。それが彼女にできる、俺の数少ない感謝の気持ちだと思うから。
「それに、トールさんと居ると、体が火照るで~すよ。もしかしてトールさん魔剣です? 淫魔剣です?」
(……一応、聖剣だよ)
彼女の境遇を知り軽率な自分の態度を改めようとしていると、頬を赤らめながら彼女は俺を抱きしめてくる。状況そのものは慣れたものだが、その呼ばれ方には少々堪えるものがあった。
だって、そんな風に呼ばれると、シャーリーの事を思い出すから……
「ほへー、トールさんって聖剣さんだったですか。だからこんなに暖かいですね。納得です」
そんな彼女の弾ける笑顔は、本当にあいつによく似ている。幸せな私をいつも見ていて欲しいと言った、天道朝美のあの笑顔に。
(なぁ――)
そこで俺は、彼女の名前を聞いていなかった事に初めて気がつく。
「どうか、しましたです?」
記憶喪失の女の子が自分の名前を覚えているとは思えないけど、名前を知らなければこの先呼び方に困るしどうしたものか……
(えっと……名前って、覚えてるか?)
「名前……あ! そう言えば、名乗ってなかったですです。記憶が無いので本当の名前は知らないですけど、ミレイと言う名を頂きましたです」
(ミレイか……いい名前だな)
「えへへ、そう言われるとなんだか嬉しいです。改めてよろしくですよトールさん」
恐る恐る少女に名前を尋ねると、彼女は笑顔で自分の名前を教えてくれる。それは本当の彼女の名前ではなかったけれど、ミレイは嬉しそうに俺の体を強く抱いた。
それにしてもでかいな……って、その発想はナンセンスか。でも、確実に彼女の膨らみ、朝美より大きいぞ。
「ではでは、まずはギルドに行くですよ。そこで、情報収集するです!」
等と、女の子の体を品定めするような最低の行為に耽っていると、ミレイは行き先を定め鼻歌まじりに歩き出す。思いの外しっかりとした彼女の思想に、自らの浅はかさを嘆いた俺は心の底で涙した。
いくらこの体勢とは言え初対面の女の子の胸に埋もれ喜ぶだけの置物とか、可愛い女の子を見かけたら誰にでも飛びつく、中身オヤジの可愛いマスコットレベルかよと……
「トールさんの持ち主さん達も、見つかるといいですねー」
(そう、だな)
こんな状況にも関わらず、性的欲求に忠実な自分を恥ずかしく思っていると、憂いを含んだ眼差しでミレイは俺を見下ろしてくる。
「……トールさん、元気ないです?」
(え?)
「もしかしてこれ、苦しかったですか?」
俺の口数が減ったことに対し、何を思ったのか彼女は細い腕に力を込める。ただでさえ弾力のある柔らかな彼女の部位に俺の刀身が深く埋まり、流石に呼吸が困難になってきた。
(い、いや、そんな事ないから)
「そうですか。なら、良かったです~!」
痛みと快楽の間に揺れる不毛な煩悩を解き放つため微笑みながらミレイに声をかけると、彼女の腕からゆっくりと力が抜けていく。しかし、安心したのも束の間、彼女が再び笑顔になると俺の刀身ははちきれんほどの力に締め付けられていた。
全ての事象に対し彼女は全力で取り組む性分らしく、一喜一憂するたびにミレイは俺を抱きしめたくなるようだ。
「はふ、トールさんといると、何だか胸がドキドキするですよ。ずーっと、こうしていたい気分ですぅ」
思春期の男子としては、女の子の温もりを感じつつ過ごす日々も悪くはないのだけれど、興奮しすぎるのはやはり体に良くない。そういうのはサキュバスの専売特許で、ミレイの体に溺れるようでは悪魔のシャーリーに勝てるはずがないのだ……等と、それらしい理由をつけてはみたものの、このままでは俺の精神が持ちそうにない。
大きさだけで興奮したとか知られたら、後でシャーリーに殺される。
(それは嬉しいけどその……やっぱり、恥ずかしいから)
「あ……ご、ごめんなさいです! トールさんを見てると、他人のような気がしませんで、つい」
付き合いたてのカップルの如く、初々しく恥じらう俺達が互いに苦笑いを浮かべていると、大きな建物に突き当たる。
「えっと、到着したみたいですね」
そこには俺達の目的地、リレメンテのギルド本部があった。
(え?)
その時、少女が呟いた言葉に俺の胸は締め付けられる。
「短い間でしたけど、沢山の人達に助けられたですよ。なんだか、記憶喪失も悪くないです~」
明朗快活な彼女の姿に悩みなんて無いものと思いこんでいたけれど、少女の明かす秘密に俺は言葉を失った。
(ごめん)
「気にしなくていいです~。こんな事話せたの、トールさんが始めてですよ~」
少女が何を思って俺を拾ってくれたのかはわからないけれど、彼女の記憶に関係しているのであれば助けになりたい。それが彼女にできる、俺の数少ない感謝の気持ちだと思うから。
「それに、トールさんと居ると、体が火照るで~すよ。もしかしてトールさん魔剣です? 淫魔剣です?」
(……一応、聖剣だよ)
彼女の境遇を知り軽率な自分の態度を改めようとしていると、頬を赤らめながら彼女は俺を抱きしめてくる。状況そのものは慣れたものだが、その呼ばれ方には少々堪えるものがあった。
だって、そんな風に呼ばれると、シャーリーの事を思い出すから……
「ほへー、トールさんって聖剣さんだったですか。だからこんなに暖かいですね。納得です」
そんな彼女の弾ける笑顔は、本当にあいつによく似ている。幸せな私をいつも見ていて欲しいと言った、天道朝美のあの笑顔に。
(なぁ――)
そこで俺は、彼女の名前を聞いていなかった事に初めて気がつく。
「どうか、しましたです?」
記憶喪失の女の子が自分の名前を覚えているとは思えないけど、名前を知らなければこの先呼び方に困るしどうしたものか……
(えっと……名前って、覚えてるか?)
「名前……あ! そう言えば、名乗ってなかったですです。記憶が無いので本当の名前は知らないですけど、ミレイと言う名を頂きましたです」
(ミレイか……いい名前だな)
「えへへ、そう言われるとなんだか嬉しいです。改めてよろしくですよトールさん」
恐る恐る少女に名前を尋ねると、彼女は笑顔で自分の名前を教えてくれる。それは本当の彼女の名前ではなかったけれど、ミレイは嬉しそうに俺の体を強く抱いた。
それにしてもでかいな……って、その発想はナンセンスか。でも、確実に彼女の膨らみ、朝美より大きいぞ。
「ではでは、まずはギルドに行くですよ。そこで、情報収集するです!」
等と、女の子の体を品定めするような最低の行為に耽っていると、ミレイは行き先を定め鼻歌まじりに歩き出す。思いの外しっかりとした彼女の思想に、自らの浅はかさを嘆いた俺は心の底で涙した。
いくらこの体勢とは言え初対面の女の子の胸に埋もれ喜ぶだけの置物とか、可愛い女の子を見かけたら誰にでも飛びつく、中身オヤジの可愛いマスコットレベルかよと……
「トールさんの持ち主さん達も、見つかるといいですねー」
(そう、だな)
こんな状況にも関わらず、性的欲求に忠実な自分を恥ずかしく思っていると、憂いを含んだ眼差しでミレイは俺を見下ろしてくる。
「……トールさん、元気ないです?」
(え?)
「もしかしてこれ、苦しかったですか?」
俺の口数が減ったことに対し、何を思ったのか彼女は細い腕に力を込める。ただでさえ弾力のある柔らかな彼女の部位に俺の刀身が深く埋まり、流石に呼吸が困難になってきた。
(い、いや、そんな事ないから)
「そうですか。なら、良かったです~!」
痛みと快楽の間に揺れる不毛な煩悩を解き放つため微笑みながらミレイに声をかけると、彼女の腕からゆっくりと力が抜けていく。しかし、安心したのも束の間、彼女が再び笑顔になると俺の刀身ははちきれんほどの力に締め付けられていた。
全ての事象に対し彼女は全力で取り組む性分らしく、一喜一憂するたびにミレイは俺を抱きしめたくなるようだ。
「はふ、トールさんといると、何だか胸がドキドキするですよ。ずーっと、こうしていたい気分ですぅ」
思春期の男子としては、女の子の温もりを感じつつ過ごす日々も悪くはないのだけれど、興奮しすぎるのはやはり体に良くない。そういうのはサキュバスの専売特許で、ミレイの体に溺れるようでは悪魔のシャーリーに勝てるはずがないのだ……等と、それらしい理由をつけてはみたものの、このままでは俺の精神が持ちそうにない。
大きさだけで興奮したとか知られたら、後でシャーリーに殺される。
(それは嬉しいけどその……やっぱり、恥ずかしいから)
「あ……ご、ごめんなさいです! トールさんを見てると、他人のような気がしませんで、つい」
付き合いたてのカップルの如く、初々しく恥じらう俺達が互いに苦笑いを浮かべていると、大きな建物に突き当たる。
「えっと、到着したみたいですね」
そこには俺達の目的地、リレメンテのギルド本部があった。
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