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第九章 己の使命
第445話 合体しましょ?
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「はぁぁぁぁぁぁ!!」
剣戟一閃。気合の乗ったシャーリーの雄叫びと同時に、光り輝く俺の体が魔神めがけて振り下ろされる。
邪悪を払い除ける破邪の閃光が悪しき神の左腕を捉えるも、安々と弾き返され彼女は元の位置へと戻る。
流石は筋肉魔神、アガレスの名を持つだけのことはある。変化を司るその力を、自らの筋肉にまで回していると言うわけか……動きもかなり機敏だし、どのタイミングで全力を仕掛けるか悩みどころだ。
「拳風! 閃派・爆裂脚!!」
「その爆炎をもって、全ての邪悪を破砕せよ。エクスプロード!!」
遠距離の敵を拳の波動で牽制し、必殺の足技で近くの魔獣を粉砕するカーラと、広範囲の魔法攻撃で一気呵成を仕掛けるクルス姉。お互い、立ち回りこそ違うものの、着々とラインバッハの作り出した合成魔獣の数を減らしていく。
しかし、やはりと言うべきか、足元に描かれた魔法陣から次々と増援は現れ、イタチごっこの様相を示していた。
このままだとクルス姉はともかく、人間であるカーラの体力がリースとの合体も含めてどこまで持つかが心配だ。フィルも絶えず戦闘を続けているし、アイリの援護があるとは言え少なからず限界は訪れる。ヴァネッサさんという新しいカードも加わりどこで手札を切るか、ここが俺の勝負の見せ所だ。
「ホホホ、どうですかな姫様。私を倒すには、あまり時間がありませぬぞ?」
そしてこの、ラインバッハの余裕の表情……シャーリーの全てを理解しているからか、自らの力を誇示しつつも彼女に精神的圧力をかけてくる。
このまま呑まれても思うツボだが、迅速に対応しなければジリ貧なのも間違いない。ここは一つ、奴の挑発に乗ってみるか? ……いや、まてよ? 奴がなぜ、決着を急ごうとしているのかよく考えるんだ。
今、俺達の中で、奴にとっての不確定要素な存在と言えば……もしかして、ヴァネッサさんか? ラインバッハが唯一動揺したのも彼女の名前を聞いた時だし、俺達に彼女を使わせない作戦なのかも。
「自幻流、六の太刀 六節 紅蓮輪舞曲!」
二振りの剣に焔を纏わせ、踊るように六連撃を繰り出すも、ラインバッハは軽々とその全てを避けてしまう。自幻流の中に二刀流のモーションを仕込ませている亮太さんにも驚きだが、その動きに対応するラインバッハにも言わずもがな脱帽させられ勝機を見失いそうになる。
必殺技を決めるにしてもある程度の隙は作らなくてはならないし、適当に打ち込めばあの時の二の舞になりかねない。やはりここは、ヴァネッサさんの力を借りるしか無いのか。
「さぁさぁ、姫様。このままですと、お友達の皆様が危ないですぞ。爺に本気を見せてくだされ!」
「くっ!」
(うふふ、そろそろ~、私の出番みたいね~)
ラインバッハの豪腕に押され、防戦一方となり始めたシャーリー。そんな彼女が距離を取り、ラインバッハと仕切り直すと、左手に構えたヴァネッサさんが小さな輝きを放ち始める。
(トオルくん、私と、合体しましょ?)
この流れは、元神聖使者であるヴァネッサさんの超パワーで魔神を圧倒する流れ。と思いきや、いきなりの予想外な展開に俺の思考は停止させられる。俺とヴァネッサさんが合体するって、一体全体どういうことなの!?
(大丈夫よトオル。だって私達、こんなにも近い存在なんですもの)
豹変するヴァネッサさんの態度に動揺し、彼女と二人きりになった時のことを思い出してしまったが、逆にそれが一つのヒントへと繋がっていく。
俺の体は、ヴァネッサさんの写し身みたいなものと彼女は言っていた。となると、バル兄が作り出してくれていた剣達と同じように、彼女と俺も一つになれると言うことなのでは?
というよりも、シャーリーのご先祖様、しかもあんなに綺麗な人と心身共に合体できるなんて……
「……言いましたよね、ヴァネッサ様。トオルに何かしたら、ご先祖様であろうと叩き折るって」
「そうだよ! お兄ちゃんにちょっかい出したら、ぼく許さないんだから!」
(あら~? 私はただ、一番効率のいい提案をしているだけよ? トオルくんと私、凄く相性が良さそうなんですもの)
しかし、そんな背徳的な想像をしている間に、ヴァネッサさんとシャーリーの間に恋の火花が散り始める。
シャーリーとメイにとって、他の女性と俺が一つになると言うことは浮気と同義。むしろ、繋がるというところまで考えれば彼女の先を行くことになるわけで、シャーリーが反対するのも頷けると言うもの。
とは言え、ここで俺達三人が仲間割れしている時間はない。なんとか仲裁しながらも、ヴァネッサさんの力を借りなくては。
(えっと、その。二人共、今は争ってる場合じゃ――)
「トオルは黙ってて!」
「お兄ちゃんは黙ってて!」
(トオルくんは黙ってなさい!)
そして、いつもどおりに怒鳴りつけられた俺は、三人の怖さに萎縮してしまう。いくら相手が変わろうと俺の立場が弱いことに変わりはなく、男ってやっぱり辛いよなぁ……
「……そうね。あなたにトオルを渡すぐらいなら、この国一つぐらい安いものよね」
しかも、俺のためなら国一つ手放すなんて言ってるし……これって結構やばくね?
剣戟一閃。気合の乗ったシャーリーの雄叫びと同時に、光り輝く俺の体が魔神めがけて振り下ろされる。
邪悪を払い除ける破邪の閃光が悪しき神の左腕を捉えるも、安々と弾き返され彼女は元の位置へと戻る。
流石は筋肉魔神、アガレスの名を持つだけのことはある。変化を司るその力を、自らの筋肉にまで回していると言うわけか……動きもかなり機敏だし、どのタイミングで全力を仕掛けるか悩みどころだ。
「拳風! 閃派・爆裂脚!!」
「その爆炎をもって、全ての邪悪を破砕せよ。エクスプロード!!」
遠距離の敵を拳の波動で牽制し、必殺の足技で近くの魔獣を粉砕するカーラと、広範囲の魔法攻撃で一気呵成を仕掛けるクルス姉。お互い、立ち回りこそ違うものの、着々とラインバッハの作り出した合成魔獣の数を減らしていく。
しかし、やはりと言うべきか、足元に描かれた魔法陣から次々と増援は現れ、イタチごっこの様相を示していた。
このままだとクルス姉はともかく、人間であるカーラの体力がリースとの合体も含めてどこまで持つかが心配だ。フィルも絶えず戦闘を続けているし、アイリの援護があるとは言え少なからず限界は訪れる。ヴァネッサさんという新しいカードも加わりどこで手札を切るか、ここが俺の勝負の見せ所だ。
「ホホホ、どうですかな姫様。私を倒すには、あまり時間がありませぬぞ?」
そしてこの、ラインバッハの余裕の表情……シャーリーの全てを理解しているからか、自らの力を誇示しつつも彼女に精神的圧力をかけてくる。
このまま呑まれても思うツボだが、迅速に対応しなければジリ貧なのも間違いない。ここは一つ、奴の挑発に乗ってみるか? ……いや、まてよ? 奴がなぜ、決着を急ごうとしているのかよく考えるんだ。
今、俺達の中で、奴にとっての不確定要素な存在と言えば……もしかして、ヴァネッサさんか? ラインバッハが唯一動揺したのも彼女の名前を聞いた時だし、俺達に彼女を使わせない作戦なのかも。
「自幻流、六の太刀 六節 紅蓮輪舞曲!」
二振りの剣に焔を纏わせ、踊るように六連撃を繰り出すも、ラインバッハは軽々とその全てを避けてしまう。自幻流の中に二刀流のモーションを仕込ませている亮太さんにも驚きだが、その動きに対応するラインバッハにも言わずもがな脱帽させられ勝機を見失いそうになる。
必殺技を決めるにしてもある程度の隙は作らなくてはならないし、適当に打ち込めばあの時の二の舞になりかねない。やはりここは、ヴァネッサさんの力を借りるしか無いのか。
「さぁさぁ、姫様。このままですと、お友達の皆様が危ないですぞ。爺に本気を見せてくだされ!」
「くっ!」
(うふふ、そろそろ~、私の出番みたいね~)
ラインバッハの豪腕に押され、防戦一方となり始めたシャーリー。そんな彼女が距離を取り、ラインバッハと仕切り直すと、左手に構えたヴァネッサさんが小さな輝きを放ち始める。
(トオルくん、私と、合体しましょ?)
この流れは、元神聖使者であるヴァネッサさんの超パワーで魔神を圧倒する流れ。と思いきや、いきなりの予想外な展開に俺の思考は停止させられる。俺とヴァネッサさんが合体するって、一体全体どういうことなの!?
(大丈夫よトオル。だって私達、こんなにも近い存在なんですもの)
豹変するヴァネッサさんの態度に動揺し、彼女と二人きりになった時のことを思い出してしまったが、逆にそれが一つのヒントへと繋がっていく。
俺の体は、ヴァネッサさんの写し身みたいなものと彼女は言っていた。となると、バル兄が作り出してくれていた剣達と同じように、彼女と俺も一つになれると言うことなのでは?
というよりも、シャーリーのご先祖様、しかもあんなに綺麗な人と心身共に合体できるなんて……
「……言いましたよね、ヴァネッサ様。トオルに何かしたら、ご先祖様であろうと叩き折るって」
「そうだよ! お兄ちゃんにちょっかい出したら、ぼく許さないんだから!」
(あら~? 私はただ、一番効率のいい提案をしているだけよ? トオルくんと私、凄く相性が良さそうなんですもの)
しかし、そんな背徳的な想像をしている間に、ヴァネッサさんとシャーリーの間に恋の火花が散り始める。
シャーリーとメイにとって、他の女性と俺が一つになると言うことは浮気と同義。むしろ、繋がるというところまで考えれば彼女の先を行くことになるわけで、シャーリーが反対するのも頷けると言うもの。
とは言え、ここで俺達三人が仲間割れしている時間はない。なんとか仲裁しながらも、ヴァネッサさんの力を借りなくては。
(えっと、その。二人共、今は争ってる場合じゃ――)
「トオルは黙ってて!」
「お兄ちゃんは黙ってて!」
(トオルくんは黙ってなさい!)
そして、いつもどおりに怒鳴りつけられた俺は、三人の怖さに萎縮してしまう。いくら相手が変わろうと俺の立場が弱いことに変わりはなく、男ってやっぱり辛いよなぁ……
「……そうね。あなたにトオルを渡すぐらいなら、この国一つぐらい安いものよね」
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