俺と幼女とエクスカリバー

鏡紫郎

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第九章 己の使命

第434話 激しい誘惑

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「でも……だめ」

 しかし、一つのある事実を俺は失念していたのである。

「私が、我慢できない」

 彼女が体を浮き上がらせると、俺は瞬時に馬乗りされ身動きが取れなくなる。反論したいはずなのに、いつの間にか開かれた彼女の胸元が吸い込むように俺の心を離さない。

 このままだと俺は、間抜けな一男子として彼女に全てを委ねてしまう……だって彼女は、弱きを守る天使であり、欲望に身を任せる悪魔でもあるのだから。

「トオルが欲しい、トオルが欲しい、私は、トオルが欲しい!」

 彼女の両目が赤く染まると、悪魔としての本能が解放され俺に襲いかかる。何もしなければ俺は、一週間前の夜のようにシャーリーから恥辱の限りを受けてしまうだろう。

 あの時は、たまたま彼女を驚かせることが出来たけど今度はきっとそうはいかない。今のシャーリーならきっと、それすらも快楽に変えてしまうと思うから。

「しゃ、シャーリー、だめだって」

「やっぱり、やっぱり嫌なの? この体じゃ、トオルのお嫁さんにはなれないの?」

「ち、違う! 違うくて!」

 シャーリーの体は魅力的で、今にも襲ってしまいたい衝動に俺はずっと駆られている。小ぶりな山も、エッチな顔も俺を掴んで放さないけど、彼女を知ったら俺は絶対に戻れなくなるし、今の彼女を貫いたら……とても痛いような気がする。

 だから、できることなら、大人の姿の彼女としたい訳だけど、何故、変身しないのか……って、変身されたらされたで俺が困るんだよ! 後、未経験だってお嫁さんにはなれる!

「なら、幼児体型の女の子は、いつまでもエッチなことしちゃいけないの? 大人に戻れなかったら、トオルと一生できないの?」

「そ、そんな事は、ないけどさ」

 ダメだ、彼女を説き伏せるだけの言の葉が、今の俺には紡げない。本音を言えば俺だってしたい訳だし、こういう時のお約束って誰かが乱入してきてくれるおかげで事なきを得るのが大半で、知識がなさすぎる。

 俺はまた、何も出来ずに流されて、決意も全て暗転とともに闇の中に葬られてしまうのだろうか……

「ん~、お姉さまが二十一歳だと、ぼくは、いくつになるんだろ? 同じ、二十一歳なのかな?」

 男と女の一触即発、彼女に食われることを覚悟したその時、目の前の野獣のとぼけた声が部屋の中をこだまする。まるで他人事のように、姉の中から一部始終を見続けていたメイベルだったが、それをずっと考えていたから会話に混じって来なかったのか。

 けれど、ここで彼女が考えるのを止めたら、俺はこれから天使のような悪魔の姉妹を同時に相手にすることになる。そんな事になったら二百パーセント、清い体のままこの部屋を出ることは出来ない。

 何か方法は、本当に何も無いのか? 

「……トオル、やっぱりおあずけ」

「え、な、なんで!?」

 しかし、最高に有利なこの状況に攻めることを止めた彼女は、何故か俺の体から離れていく。あまりに予想外な状況に慌てて声を荒げてしまったが、これではまるで俺が残念がっているようではないか。

 ……まぁ、半分くらい残念なのは事実なんだけど。

「メイにはまだ、刺激が強すぎる」

 彼女が俺を拒んだ理由、それはメイの精神年齢を考慮した結果らしい。生きた年月だけで言えば、生後数ヶ月であろう彼女に大人の階段を登らせるのはな……

「そんなことないもん! メイだって知ってるもん!」

「じゃあ、子供はどうやってできるのかしら?」

「えっと……雌しべと雄しべがくっついて」

 それに、彼女の口からは、とても可愛らしい答えが返ってきた。

「というわけで、ね」

「そうだな。ちょっと残念だけど」

「むー、メイ大丈夫だよ! ちゃんと痛いの我慢できるもん!」

 いくら彼女が悪魔の血を引いていたとしても、妹の人間性を切り捨てることは出来なかったらしく、心から俺は安堵する。

 痛いという知識だけは、小さいながらにあるらしいが、片方が二十一、片方が年齢不詳のこんな喋り方の女の子相手にしたら……うん、犯罪だわ、確実に。

「でも、本音を言うとね……トオルの味を知ったら、戻れなくなるような気がして。ほら、トオルって淫魔剣だから、トオルに突かれたらエッチなことしか考えられない淫乱な王女様になって、私もきっと戦えなくなっちゃう。そうなったら、トオルも困るでしょ?」

「確かにな、性欲中毒の廃悪魔にシャーリーをしちまったら、それこそ悔やんでも悔やみきれない」

 そんな中、これを最後にしたくないと心の中ではシャーリーも思ってくれていたようで、冗談を交えながらも彼女は全てを受け入れてくれる。

「そんなことないもん! お姉さまと違って、メイは大丈夫だもん」

 しかし、どうにもメイは俺とエッチがしたいようで、頑なに彼女は引き下がろうとしない。

「トオルに今気持ちいいことされたら、メイだって、また、してもらいたくなっちゃうでしょ?」

「もちろんだよ! ……って、あれ? お兄ちゃんが剣に戻ったら、これから一生そういうこと、出来ないんだよね?」

「たぶんね。どんなに求めても手に入らない、私の中から私を見てメイがヤキモキしていた状況が、未来永劫ずっと続くの」

「ん~、それは、メイもいや!」

「だから、ね。今日は、トオルに抱きしめられるだけで、我慢しましょ」

「うん、わかったよお姉さま。それに、今でも十分幸せだもんね!」

「そうね、幸せね」

 これも悪魔の性かと、メイをなだめる方法を試行錯誤していると、シャーリーが彼女を説き伏せ二人は俺に抱きついてくる。

 一度だけなんて言葉に従えないのが人間で、悪魔になれば尚のこと欲望には逆らえなくなる。それをわかっているからこそ、メイも姉に従ったのだ。

「でも、なんだかんだで、トオルもしたかったんじゃない」

「当たり前だろ。大好きな女の子に迫られて、本心から嫌がる男なんてどこにもいないよ」

 衝動に逆らえる時点で純粋な悪魔とは何かが違うけど、そういうメイやシャーリーだから俺は二人を好きでいられる。だから、せめてこの温もりだけは刻みつけたいと、覆いかぶさる小さな彼女を布団の中でギュッと抱きしめた。

「ありがとうな二人とも、この一週間、本当に幸せだった。だから、それを含めてこれからも、存分に俺を使ってくれ」

「えぇ、頼りにさせてもらうわ、私の王子様」

 その後、エッチなことにはならなかったが、全身を使った彼女の激しい擦りつけに、眠れない時を俺は過ごすのであった。
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