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第九章 己の使命
第415話 ドージン誌
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(おまえらぁ! 特に、クルス! どうして俺のプライベートを、そんなに簡単に教えちゃうかね!)
「トオル様の素晴らしさを、是非教えて欲しいという、シャーロットさんの従者様からのご依頼とお聞きしましたもので……ですが、トオル様の性癖は、何者にも動じない素晴らしいものと自負しております! 並の感性の持ち主であれば、触手やスライムにまみれた異性に近づこうなどと、簡単には出来ないはずです! 触手にぐちょぐちょにされる、うら若き乙女達の姿が描かれている薄い本を大量に熟読し、耐性を付けようなどと誰が考えましょう! それに、ゴモリーと戦っていた時のシャーロットさんの痴態を見て、トオル様も内心、ビンビンだったじゃないですか! そこだけは、否定できませんよね!」
クルス姉の思考が一般人のそれからかなりズレているのはともかく、特殊なエロ本を前向きに捉えられるのも、なんかシンドイ。
しかも、ビーチでの朝美の一件から、最近やっと克服してきた話を、何でここで蒸し返そうとしてくれるんですかね、この堕女神は!
朝美と言い、お前と言い、人の部屋を無断で覗いて……更には、天界に居た時から心の奥まで覗かれていたとか、俺にプライベートは無いのか!
(確かにな、確かに俺は、女の子にドン引きされるような性癖の持ち主だよ。けどな、そういうのは創作の中だけで、俺は現実に持ち込むつもりは――)
「でも、シャーロットさんの痴態を見て、ビンビンでしたよね?」
(頼む、頼むから、それを蒸し返さないでくれぇ! しょうがないだろ、俺は男なんだよ、なんだかんだで男の子なんだよ。エロ可愛いシャーリーの姿と声なんか聞かされたら、否が応でも勝手に体は反応しちまうんだ!)
おかしい……怒っているのは俺のはずなのに、ものすごい笑顔でクルス姉は俺に圧力をかけてくる。彼女を不愉快にさせるような事、最近した覚えなんて無いのに……いや、何もしていないからこそ、機嫌が悪いのかクルス姉は。
金輪際離れないと宣言した彼女が、シャーリーに気を使ってこの一週間、いや、俺が眠ってた分を含めたら二週間も我慢しているわけで、そりゃ不機嫌にもなるってもんだ。
ただ、あの時湧き出た感情は、俺にとっての完全な汚点な訳で。洗脳された朝美に体をまさぐられながら、辱められているシャーリーの目の前で何もできないあの時以来、久々に殺してくれと俺は心の中で願ってしまっていた。
「ご安心ください、トオル様」
(サ、サラさん)
「わたくしめも、同じ状況に遭遇いたしましたら、お嬢様を助ける前に、存分に鼻血を吹き出す所存でございます」
心から崩れ落ちる俺に対し、大量の血液を鼻から吹き出しながら優しい言葉をかけてくれるメイドのサラさん。
自分自身を棚に上げるようで嫌だけど、想像したんですね、想像だけで、鼻血を吹き出しているんですね貴方は。わかります、わかりますけど……そんなフォローは、全く嬉しくないです。この人はどうしてこう、真っ直ぐなぐらいに、自分の変態癖を隠そうとしないのだろう? あまりにオープンな彼女のエロスに、ある種の尊敬を覚え始めている自分がいた。
「それに致しましても、トオル様は、古の書物の内容にえらく正通しているようでして。是非一度、それらについて話し合ってみたいものです」
とまぁ、ここまでも大概やばいトークの連続だったのだが、ここに来てサラさんは更に強烈な地雷をそこら中に撒き始める。むしろ、地雷の正体に気づいているのは、この中では俺だけなんじゃないか?
それに、何でアレが中世のこんな異世界に存在しているのか……一応、確かめてみるか。
(あのー、サラさん? シャーリーのちょっと偏った知識とか、さっきの世界線の話とか……もしかして、古の書物に書いてあった内容だったりします?)
「流石はトオル様、お察しの通りでございます。あれらの書物からは、人知を超えた何か素晴らしいものを感じております故、大変希少な資料かと。一冊における書面の枚数の少なさにも、重要性を感じているのですが、トオル様は如何でしょう?」
あぁ、うん。どうやら俺の予想は、当たっていて欲しくなかったけど、当たっていたようである。一纏めにするのは大変反感を買いそうだけど、今までの流れからしてサラさんが読んでいたのは、間違いなくこれだろうな。
(って、知識の収拾元って、全部エロ同人かよ!)
「なるほど、あれらはエロドージンというのですね。他にもいろいろと、是非詳しく」
その後、オタク女子の片鱗を見せるメイドからの、根掘り葉掘りとした質問を的確な答えで打ち崩していくこと数十分。俺の頭の中でも想像できないくらいに、彼女の趣味はとても濃かった。
しかも、ある程度は自分で理解しているらしく、シャーリーに教えたのは触りだけと胸を張っていたが、わかっているならやめてください。
まぁ、戦う相手が魔物なら、そういう覚悟もしておかなければならない訳だし、実際、被害に合う女性冒険者や、男性だってアラクネやサキュバスの発情期に遭遇すれば、ミイラになって発見された事例もかなりの件数上がっていると、サラさんは言っている。それをこう書面で、わかりやすく描いてある同人誌たちは、こちらの世界では十分なほどの教材なんだとかなんとか。
熱心に話すメイドの言葉を聞いてると、先程のクルス姉の発言も半分は本心なのかもと思えてくるし、元絵師の転生者がこっちの世界で描いたとか、メイドカフェもどきの件もあるし、在り得るのかなと思っておくことにする。
途中でフィルが混ざってきた辺り、人間を使って繁殖する魔物も本当に居るようで、女神やセイクリッドは魔力量の豊富さから、一部の凶暴な魔物に狙われやすい……これ以上はやめておこう。じゃないと、俺の精神が崩壊しそうだ。
「という訳ですのでお嬢様、目の前で魔物にブスリとされても、すでに非処女でも問題ないそうです。良かったですね」
「良かったですね。じゃないわよ! 他のせっ、せかいせんの私は知らないけど、私は処女よ! 髪の毛一本だって、膜を通したことなんて無いんだから!」
極めつけはこの、シャーリーを自由に転がす密偵メイドの話術。女神や天使の話題の中、貴方様に言い聞かせているのですよ? と言わんがばかりにシャーリーに視線を送っていて、魔物達からそういう目で見られているのだぞと刷り込む姿は、ある意味魔神と同等レベルの驚異。
フィルも悪ノリしたおかげで、王女としての品性なんてものは、今のシャーリーに欠片も残されていなかったのである。
「そうでございましたか。わたくしの目が届かぬ間も、魔物に散らされるような悲劇は無かったのですね。それは、何よりでした」
「!? ばか……ばかばかばかばかばかばか、ばかー!!」
そして、メイドに手痛い追い打ちをかけられた彼女は、俺の柄を勢い良く掴み上げると、全速力で亮太さんの家を飛び出して行ってしまうのであった。
「トオル様の素晴らしさを、是非教えて欲しいという、シャーロットさんの従者様からのご依頼とお聞きしましたもので……ですが、トオル様の性癖は、何者にも動じない素晴らしいものと自負しております! 並の感性の持ち主であれば、触手やスライムにまみれた異性に近づこうなどと、簡単には出来ないはずです! 触手にぐちょぐちょにされる、うら若き乙女達の姿が描かれている薄い本を大量に熟読し、耐性を付けようなどと誰が考えましょう! それに、ゴモリーと戦っていた時のシャーロットさんの痴態を見て、トオル様も内心、ビンビンだったじゃないですか! そこだけは、否定できませんよね!」
クルス姉の思考が一般人のそれからかなりズレているのはともかく、特殊なエロ本を前向きに捉えられるのも、なんかシンドイ。
しかも、ビーチでの朝美の一件から、最近やっと克服してきた話を、何でここで蒸し返そうとしてくれるんですかね、この堕女神は!
朝美と言い、お前と言い、人の部屋を無断で覗いて……更には、天界に居た時から心の奥まで覗かれていたとか、俺にプライベートは無いのか!
(確かにな、確かに俺は、女の子にドン引きされるような性癖の持ち主だよ。けどな、そういうのは創作の中だけで、俺は現実に持ち込むつもりは――)
「でも、シャーロットさんの痴態を見て、ビンビンでしたよね?」
(頼む、頼むから、それを蒸し返さないでくれぇ! しょうがないだろ、俺は男なんだよ、なんだかんだで男の子なんだよ。エロ可愛いシャーリーの姿と声なんか聞かされたら、否が応でも勝手に体は反応しちまうんだ!)
おかしい……怒っているのは俺のはずなのに、ものすごい笑顔でクルス姉は俺に圧力をかけてくる。彼女を不愉快にさせるような事、最近した覚えなんて無いのに……いや、何もしていないからこそ、機嫌が悪いのかクルス姉は。
金輪際離れないと宣言した彼女が、シャーリーに気を使ってこの一週間、いや、俺が眠ってた分を含めたら二週間も我慢しているわけで、そりゃ不機嫌にもなるってもんだ。
ただ、あの時湧き出た感情は、俺にとっての完全な汚点な訳で。洗脳された朝美に体をまさぐられながら、辱められているシャーリーの目の前で何もできないあの時以来、久々に殺してくれと俺は心の中で願ってしまっていた。
「ご安心ください、トオル様」
(サ、サラさん)
「わたくしめも、同じ状況に遭遇いたしましたら、お嬢様を助ける前に、存分に鼻血を吹き出す所存でございます」
心から崩れ落ちる俺に対し、大量の血液を鼻から吹き出しながら優しい言葉をかけてくれるメイドのサラさん。
自分自身を棚に上げるようで嫌だけど、想像したんですね、想像だけで、鼻血を吹き出しているんですね貴方は。わかります、わかりますけど……そんなフォローは、全く嬉しくないです。この人はどうしてこう、真っ直ぐなぐらいに、自分の変態癖を隠そうとしないのだろう? あまりにオープンな彼女のエロスに、ある種の尊敬を覚え始めている自分がいた。
「それに致しましても、トオル様は、古の書物の内容にえらく正通しているようでして。是非一度、それらについて話し合ってみたいものです」
とまぁ、ここまでも大概やばいトークの連続だったのだが、ここに来てサラさんは更に強烈な地雷をそこら中に撒き始める。むしろ、地雷の正体に気づいているのは、この中では俺だけなんじゃないか?
それに、何でアレが中世のこんな異世界に存在しているのか……一応、確かめてみるか。
(あのー、サラさん? シャーリーのちょっと偏った知識とか、さっきの世界線の話とか……もしかして、古の書物に書いてあった内容だったりします?)
「流石はトオル様、お察しの通りでございます。あれらの書物からは、人知を超えた何か素晴らしいものを感じております故、大変希少な資料かと。一冊における書面の枚数の少なさにも、重要性を感じているのですが、トオル様は如何でしょう?」
あぁ、うん。どうやら俺の予想は、当たっていて欲しくなかったけど、当たっていたようである。一纏めにするのは大変反感を買いそうだけど、今までの流れからしてサラさんが読んでいたのは、間違いなくこれだろうな。
(って、知識の収拾元って、全部エロ同人かよ!)
「なるほど、あれらはエロドージンというのですね。他にもいろいろと、是非詳しく」
その後、オタク女子の片鱗を見せるメイドからの、根掘り葉掘りとした質問を的確な答えで打ち崩していくこと数十分。俺の頭の中でも想像できないくらいに、彼女の趣味はとても濃かった。
しかも、ある程度は自分で理解しているらしく、シャーリーに教えたのは触りだけと胸を張っていたが、わかっているならやめてください。
まぁ、戦う相手が魔物なら、そういう覚悟もしておかなければならない訳だし、実際、被害に合う女性冒険者や、男性だってアラクネやサキュバスの発情期に遭遇すれば、ミイラになって発見された事例もかなりの件数上がっていると、サラさんは言っている。それをこう書面で、わかりやすく描いてある同人誌たちは、こちらの世界では十分なほどの教材なんだとかなんとか。
熱心に話すメイドの言葉を聞いてると、先程のクルス姉の発言も半分は本心なのかもと思えてくるし、元絵師の転生者がこっちの世界で描いたとか、メイドカフェもどきの件もあるし、在り得るのかなと思っておくことにする。
途中でフィルが混ざってきた辺り、人間を使って繁殖する魔物も本当に居るようで、女神やセイクリッドは魔力量の豊富さから、一部の凶暴な魔物に狙われやすい……これ以上はやめておこう。じゃないと、俺の精神が崩壊しそうだ。
「という訳ですのでお嬢様、目の前で魔物にブスリとされても、すでに非処女でも問題ないそうです。良かったですね」
「良かったですね。じゃないわよ! 他のせっ、せかいせんの私は知らないけど、私は処女よ! 髪の毛一本だって、膜を通したことなんて無いんだから!」
極めつけはこの、シャーリーを自由に転がす密偵メイドの話術。女神や天使の話題の中、貴方様に言い聞かせているのですよ? と言わんがばかりにシャーリーに視線を送っていて、魔物達からそういう目で見られているのだぞと刷り込む姿は、ある意味魔神と同等レベルの驚異。
フィルも悪ノリしたおかげで、王女としての品性なんてものは、今のシャーリーに欠片も残されていなかったのである。
「そうでございましたか。わたくしの目が届かぬ間も、魔物に散らされるような悲劇は無かったのですね。それは、何よりでした」
「!? ばか……ばかばかばかばかばかばか、ばかー!!」
そして、メイドに手痛い追い打ちをかけられた彼女は、俺の柄を勢い良く掴み上げると、全速力で亮太さんの家を飛び出して行ってしまうのであった。
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