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第八章 真実を知る者
第376話 好きだからこそ
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(集中、集中、集中……あぁ! 駄目だ! どうにも上手く行かない)
皆が寝静まった夜、一人魔力の調整に勤しんでいたのだが、精霊との同調密度が全く高くなっていかない。シャーリーの呪印の件もあって、少しでも強くなりたいのに、俺はまたこんな所で伸び悩んでいた。
(……焦りすぎ、なのかな。けど、今は焦らないと駄目な時だし。なぁ、精霊様、俺に力を貸してくれよ)
見ているだけはもう沢山なのに、想いに力がついてこない。とは言え、精霊だって生き物なのだ、出会ったばかりの俺にニコニコ全力で力を貸してくれないのも、頭の中ではわかってる。それでも、力が欲しいと願わざるを得ないのは、俺の性分なのかもしれない。
「……トオル、無理しないでね」
(あぁ、起こしちまったか、悪い)
焦りに焦る俺の声が聞こえてしまったのか、寝ていたはずのシャーリーが、上半身を起こし俺に声をかけてくる。成長も出来ないくせに、彼女の安眠まで妨害して、今の俺はちょっとかっこ悪い。
「ううん、正直寝付けなくて、全部聞いてた」
けれど、彼女の方も気がはやり、布団の中でもがいていた様子。何かを話すきっかけが作れたのは良かったのかも知れないけれど、それって要するに今までのを全部、見られてたってことだよな。
(なんかさ、かっこ悪い所ばっかり、シャーリーに見せてるよな。俺)
「そんなことない! トオルはいつも、カッコいい」
(ありがと、お世辞でも嬉しいよ)
いつでも情けない俺を、本気でカッコいいと言ってくれる数少ない女の子。本当はとても嬉しいのだけど、褒められ慣れていない俺は、謙遜の構えをとってしまう。
黄色い声援を上げるシャーリーってのも想像つかないけど、大好きって言いながら俺に抱きつけたら、どんなに彼女も……って、あれ? 何度かそういう場面なかったっけ?
「トオルは何で、私なんかに、こんなにも尽くしてくれるの?」
(……今更それを聞くか? シャーリーが好きだから。それじゃ理由にならないかよ?)
「好きってだけなら、他にも素敵な女性なんて沢山いるでしょ? カーラとか、クルスとか」
彼女が自慢できるようなカッコいい男になりたい。そんなことを考えていると、悩ましげな表情のシャーリーが、か細い声で不安を口にする。
俺にとっては、この期に及んでな質問だけど、こんな時だからこそ、彼女も心配になっているのだろう。ストレートに気持ちを伝えたつもりだけど、彼女にとっては納得が行かないらしい。
(そりゃまぁ、今の俺は恵まれてると思うよ。けど、それはシャーリーがいたからであって、一人じゃ何も、始まってすらいなかった)
「始まりの女。そうよね、その程度にしか思われてないわよね」
(なぁ、シャーリー、どうしたんだよいきなり。いつもの俺みたいに、卑屈になったりして)
「……私にだって、不安になる時ぐらいあるわよ。あるって、あるって、そう言って……ッツ! わからない、怖いのよ! ここまで来たはずなのに、もう全部が怖くて、怖くて……」
彼女の気がかりを、どうにかして取り除いてあげたかったけど、半狂乱になるシャーリーを見ていたら何も言えなくなる。むしろ、何も言わないほうが良いと思ったんだ。
心の傷が深ければ深いほど、誰かに何かを言われるたび、どうしたら良いのかわからなくなるのは俺もよくわかっているつもりだ。必ずしも、これが正しい選択とは限らないけど、今は彼女が落ち着くまで、黙って待とうと俺は思う。
そして、彼女が次に発した言葉に、全ての本音が詰め込まれていた。
「愛を知ると、人間は弱くなる。そんな言葉、トオルは聞いたことある?」
(……それっぽい台詞は、聞いたことあるかな)
「そっか……私、弱くなっちゃったのかなって。トオルといると強くなれたはずなのに、今は私、震えてる。少しのミスがすごく怖くて、戦えなくなりそうなの」
彼女が見つめる小さな右手は、言葉通りに本当に震えていて、怯えている事が手にとるようにわかる。今まで誰も気づいてあげられなかっただけで、本当の彼女はきっと、こんなにも臆病なんだ。
「前に私、トオル以外の剣の名前を呼んだこと、覚えてる? あれはね、トオルの前の私の相棒。お父様からもらった、大切な剣だったの」
(……それってもしかして、シャーリーの、初恋だったりする?)
彼女の心の中に根付く小さな支えが顔を覗かせる中、俺と同じ剣の話に、小さな不安を感じてしまう。
「違うわよ、彼女は女性。それに、初恋は普通の人間よ。貴方と同じ、意思を持った剣、それがオルトリンデだった」
剣の精霊が初恋で、剣の男に再び恋してるとか、冷静に考えればありえない話なのに、なんでそれに気づけないのか今の自分をぶん殴りたい。けれど、改めてその話を聞いて、気付かされた事もあった。
(俺の声を聞いた時、シャーリーが驚かなかったのって……)
「そう、あれが初めてじゃ無かったから」
彼女の遠い目を見ると、いつだって不安に押し潰されそうになるけど、過去から逃げていたら未来にだって進めない。それに、恋敵ってわけじゃないんだ、心配しないで、彼女の話をしっかり聞こう。
「あの子と戦ってた頃はね、何のためらいも無かったの。もちろん、嫌ってたとかそういうんじゃなくて、戦友として信頼してた感じ。でも、トオルはね……大切な人だから、ためらいが出る時があるの。守りたいって、思っちゃうから。トオルと一緒だと、力が湧く、勇気が出てくる。けど、振るえなくなる時もあって……私、ちゃんと戦えるのかなって、少しだけ不安になるの。こんな呪印まで刻まれて、貴方に頼りすぎてるのかなって、何もかもが上手く行ってないように感じるのよ」
手も足も無いこんな体に転生しても、彼女が居てくれたから、俺は人間として生きていられる。大切に思ってもらえるのは凄く嬉しい事だけど、今の彼女を見ていると、少し前までの自分を見ているようで心が痛い。
「大切なものを守るために苦しんで生きていくことと、全てを投げ出してたったひとりの覇道を生きること。どっちが、幸せなのかしらね」
誰かを大切に思えば思うほど、相手の足を引っ張っているように感じたことは何度もあるし、昔の俺なら絶望して、彼女のように思い悩んでいたと思う。けれど、彼女が支えてくれたから、自分を知り、前に進もうと思えるようになった。だから、今度は俺の番。俺が彼女を支えて、助ける番なんだ。
(俺はさ、シャーリーと出会えて良かったと思ってる。俺自身、君と出会えたことで、少しだけだけど、強くなれたとも思ってるんだ。それはさ、俺が使われる側だから簡単に言える事なのかもしれないけれど、シャーリーを守りたい。その気持ちがあったから、前に進めるようになったんだと思う)
「トオル……」
(俺にもさ、シャーリーの前に持ち主が居たんだよ)
「えっと、カーラやアイリと一緒にいた……」
(そう、シンジって奴なんだけどさ、あいつはシャーリーみたいに俺の声は聞こえなくて、自己中心的で、鉄砲玉みたいに真っ直ぐで、心配が尽きないぐらいのアホだった。結果的に捨てられちゃったけどさ、俺は俺なりに頑張ろうとしてて……でも、あいつの手の中でナベリウスと出会ってたら、逃げ出してたかもしれない。あの時だって、シャーリーと一緒だったから……って、これじゃ俺、女の子しか助けないクソ野郎みたいだな)
シンジとじゃ魔神に勝てなかったなんて、今でも絶対思いたくないけど、シャーリーと出会う前の俺だったら、本当に何も出来なかったと思う。
それに、彼女はさっき、始まりの女程度の扱いって言ってたけど、始まりがなければ人間なんて何も出来ない。きっかけがあるから行動して、良くも悪くも何かを掴むのが人間なんだ。
明石徹と言う名の剣の物語は、シャーロット・リィンバースがいたから始まって、ここまでの苦難を乗り越えてきている。シャーリーの存在は、俺にとって無くてはならない母親のようなもの。そういう意味では、リースが俺達をパパ、ママと呼ぶのも理解できる。リースにとっては、俺達が始まりで、俺にとってのシャーリーは、命みたいなものなんだ。
(でも、それぐらいシャーリーの存在は大きくて、シャーリーがいてくれたから生きたいと思った。たぶん、シンジの次に拾ったのがまたシンジみたいのだったら、この世界にまで俺、絶望してたと思う。だから、俺を拾ってくれたのがシャーリーで、本当に良かった)
「トオル、私……」
(とにかくその、上手く言えないけどさ、シャーリーのことが死ぬほど好きってことだけは信じて欲しい。俺の底に居るのはシャーロットだって、それだけは、胸を張って言えるから)
抽象的で口下手で、大した知識も無い俺の言葉が、どれだけ彼女に届いてるのかはわからないけれど、これで少しでも安心してくれたなら、俺は凄く嬉しい。
(そうそう、俺の知ってる言葉には続きがあってさ。人を愛する弱さは恥ずかしがることじゃない。それは本当の弱さじゃなくて、弱さを知る人間だけが本当に強くなれるんだって。シャーリーの中にはさ、いろんな感情があると思う。国のためとか、守るためとか、復讐のため……とかさ)
「そうね……復讐って感情は消えないと思う。民のため、一刻も早く国を取り戻さないと。でもね、あくまでそれは王女シャーロットとしてであって、ひとりの女の子、シャーロット・リィンバースとしては違うのよ?」
(それって、どんな?)
「それはね……秘密」
それから、彼女の戦う理由について覚えていたことを口にすると、彼女は少し微笑みながら言葉を返してくれる。
一人の女の子として、シャーリーが何を考えているのかには興味があったけど、冗談が言えるようになっただけで今は十分か。
皆が寝静まった夜、一人魔力の調整に勤しんでいたのだが、精霊との同調密度が全く高くなっていかない。シャーリーの呪印の件もあって、少しでも強くなりたいのに、俺はまたこんな所で伸び悩んでいた。
(……焦りすぎ、なのかな。けど、今は焦らないと駄目な時だし。なぁ、精霊様、俺に力を貸してくれよ)
見ているだけはもう沢山なのに、想いに力がついてこない。とは言え、精霊だって生き物なのだ、出会ったばかりの俺にニコニコ全力で力を貸してくれないのも、頭の中ではわかってる。それでも、力が欲しいと願わざるを得ないのは、俺の性分なのかもしれない。
「……トオル、無理しないでね」
(あぁ、起こしちまったか、悪い)
焦りに焦る俺の声が聞こえてしまったのか、寝ていたはずのシャーリーが、上半身を起こし俺に声をかけてくる。成長も出来ないくせに、彼女の安眠まで妨害して、今の俺はちょっとかっこ悪い。
「ううん、正直寝付けなくて、全部聞いてた」
けれど、彼女の方も気がはやり、布団の中でもがいていた様子。何かを話すきっかけが作れたのは良かったのかも知れないけれど、それって要するに今までのを全部、見られてたってことだよな。
(なんかさ、かっこ悪い所ばっかり、シャーリーに見せてるよな。俺)
「そんなことない! トオルはいつも、カッコいい」
(ありがと、お世辞でも嬉しいよ)
いつでも情けない俺を、本気でカッコいいと言ってくれる数少ない女の子。本当はとても嬉しいのだけど、褒められ慣れていない俺は、謙遜の構えをとってしまう。
黄色い声援を上げるシャーリーってのも想像つかないけど、大好きって言いながら俺に抱きつけたら、どんなに彼女も……って、あれ? 何度かそういう場面なかったっけ?
「トオルは何で、私なんかに、こんなにも尽くしてくれるの?」
(……今更それを聞くか? シャーリーが好きだから。それじゃ理由にならないかよ?)
「好きってだけなら、他にも素敵な女性なんて沢山いるでしょ? カーラとか、クルスとか」
彼女が自慢できるようなカッコいい男になりたい。そんなことを考えていると、悩ましげな表情のシャーリーが、か細い声で不安を口にする。
俺にとっては、この期に及んでな質問だけど、こんな時だからこそ、彼女も心配になっているのだろう。ストレートに気持ちを伝えたつもりだけど、彼女にとっては納得が行かないらしい。
(そりゃまぁ、今の俺は恵まれてると思うよ。けど、それはシャーリーがいたからであって、一人じゃ何も、始まってすらいなかった)
「始まりの女。そうよね、その程度にしか思われてないわよね」
(なぁ、シャーリー、どうしたんだよいきなり。いつもの俺みたいに、卑屈になったりして)
「……私にだって、不安になる時ぐらいあるわよ。あるって、あるって、そう言って……ッツ! わからない、怖いのよ! ここまで来たはずなのに、もう全部が怖くて、怖くて……」
彼女の気がかりを、どうにかして取り除いてあげたかったけど、半狂乱になるシャーリーを見ていたら何も言えなくなる。むしろ、何も言わないほうが良いと思ったんだ。
心の傷が深ければ深いほど、誰かに何かを言われるたび、どうしたら良いのかわからなくなるのは俺もよくわかっているつもりだ。必ずしも、これが正しい選択とは限らないけど、今は彼女が落ち着くまで、黙って待とうと俺は思う。
そして、彼女が次に発した言葉に、全ての本音が詰め込まれていた。
「愛を知ると、人間は弱くなる。そんな言葉、トオルは聞いたことある?」
(……それっぽい台詞は、聞いたことあるかな)
「そっか……私、弱くなっちゃったのかなって。トオルといると強くなれたはずなのに、今は私、震えてる。少しのミスがすごく怖くて、戦えなくなりそうなの」
彼女が見つめる小さな右手は、言葉通りに本当に震えていて、怯えている事が手にとるようにわかる。今まで誰も気づいてあげられなかっただけで、本当の彼女はきっと、こんなにも臆病なんだ。
「前に私、トオル以外の剣の名前を呼んだこと、覚えてる? あれはね、トオルの前の私の相棒。お父様からもらった、大切な剣だったの」
(……それってもしかして、シャーリーの、初恋だったりする?)
彼女の心の中に根付く小さな支えが顔を覗かせる中、俺と同じ剣の話に、小さな不安を感じてしまう。
「違うわよ、彼女は女性。それに、初恋は普通の人間よ。貴方と同じ、意思を持った剣、それがオルトリンデだった」
剣の精霊が初恋で、剣の男に再び恋してるとか、冷静に考えればありえない話なのに、なんでそれに気づけないのか今の自分をぶん殴りたい。けれど、改めてその話を聞いて、気付かされた事もあった。
(俺の声を聞いた時、シャーリーが驚かなかったのって……)
「そう、あれが初めてじゃ無かったから」
彼女の遠い目を見ると、いつだって不安に押し潰されそうになるけど、過去から逃げていたら未来にだって進めない。それに、恋敵ってわけじゃないんだ、心配しないで、彼女の話をしっかり聞こう。
「あの子と戦ってた頃はね、何のためらいも無かったの。もちろん、嫌ってたとかそういうんじゃなくて、戦友として信頼してた感じ。でも、トオルはね……大切な人だから、ためらいが出る時があるの。守りたいって、思っちゃうから。トオルと一緒だと、力が湧く、勇気が出てくる。けど、振るえなくなる時もあって……私、ちゃんと戦えるのかなって、少しだけ不安になるの。こんな呪印まで刻まれて、貴方に頼りすぎてるのかなって、何もかもが上手く行ってないように感じるのよ」
手も足も無いこんな体に転生しても、彼女が居てくれたから、俺は人間として生きていられる。大切に思ってもらえるのは凄く嬉しい事だけど、今の彼女を見ていると、少し前までの自分を見ているようで心が痛い。
「大切なものを守るために苦しんで生きていくことと、全てを投げ出してたったひとりの覇道を生きること。どっちが、幸せなのかしらね」
誰かを大切に思えば思うほど、相手の足を引っ張っているように感じたことは何度もあるし、昔の俺なら絶望して、彼女のように思い悩んでいたと思う。けれど、彼女が支えてくれたから、自分を知り、前に進もうと思えるようになった。だから、今度は俺の番。俺が彼女を支えて、助ける番なんだ。
(俺はさ、シャーリーと出会えて良かったと思ってる。俺自身、君と出会えたことで、少しだけだけど、強くなれたとも思ってるんだ。それはさ、俺が使われる側だから簡単に言える事なのかもしれないけれど、シャーリーを守りたい。その気持ちがあったから、前に進めるようになったんだと思う)
「トオル……」
(俺にもさ、シャーリーの前に持ち主が居たんだよ)
「えっと、カーラやアイリと一緒にいた……」
(そう、シンジって奴なんだけどさ、あいつはシャーリーみたいに俺の声は聞こえなくて、自己中心的で、鉄砲玉みたいに真っ直ぐで、心配が尽きないぐらいのアホだった。結果的に捨てられちゃったけどさ、俺は俺なりに頑張ろうとしてて……でも、あいつの手の中でナベリウスと出会ってたら、逃げ出してたかもしれない。あの時だって、シャーリーと一緒だったから……って、これじゃ俺、女の子しか助けないクソ野郎みたいだな)
シンジとじゃ魔神に勝てなかったなんて、今でも絶対思いたくないけど、シャーリーと出会う前の俺だったら、本当に何も出来なかったと思う。
それに、彼女はさっき、始まりの女程度の扱いって言ってたけど、始まりがなければ人間なんて何も出来ない。きっかけがあるから行動して、良くも悪くも何かを掴むのが人間なんだ。
明石徹と言う名の剣の物語は、シャーロット・リィンバースがいたから始まって、ここまでの苦難を乗り越えてきている。シャーリーの存在は、俺にとって無くてはならない母親のようなもの。そういう意味では、リースが俺達をパパ、ママと呼ぶのも理解できる。リースにとっては、俺達が始まりで、俺にとってのシャーリーは、命みたいなものなんだ。
(でも、それぐらいシャーリーの存在は大きくて、シャーリーがいてくれたから生きたいと思った。たぶん、シンジの次に拾ったのがまたシンジみたいのだったら、この世界にまで俺、絶望してたと思う。だから、俺を拾ってくれたのがシャーリーで、本当に良かった)
「トオル、私……」
(とにかくその、上手く言えないけどさ、シャーリーのことが死ぬほど好きってことだけは信じて欲しい。俺の底に居るのはシャーロットだって、それだけは、胸を張って言えるから)
抽象的で口下手で、大した知識も無い俺の言葉が、どれだけ彼女に届いてるのかはわからないけれど、これで少しでも安心してくれたなら、俺は凄く嬉しい。
(そうそう、俺の知ってる言葉には続きがあってさ。人を愛する弱さは恥ずかしがることじゃない。それは本当の弱さじゃなくて、弱さを知る人間だけが本当に強くなれるんだって。シャーリーの中にはさ、いろんな感情があると思う。国のためとか、守るためとか、復讐のため……とかさ)
「そうね……復讐って感情は消えないと思う。民のため、一刻も早く国を取り戻さないと。でもね、あくまでそれは王女シャーロットとしてであって、ひとりの女の子、シャーロット・リィンバースとしては違うのよ?」
(それって、どんな?)
「それはね……秘密」
それから、彼女の戦う理由について覚えていたことを口にすると、彼女は少し微笑みながら言葉を返してくれる。
一人の女の子として、シャーリーが何を考えているのかには興味があったけど、冗談が言えるようになっただけで今は十分か。
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