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第七章 復讐と裏切りの円舞曲(ワルツ)
第332話 デリカシーが足りない
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「……結局、声一つかけてくれないわけね。意気地なし」
「キューウ!」
女の子達との関係に、悶々としながら頭を抱えていると、お風呂上がりのシャーリーにそんな言葉を叩きつけられ、俺はますます困惑する。しかも、リースにまでテレパシーで意気地なしと言われて、我慢しているはずの俺の方がめっきりへこんでしまう。
全く、女の子の風呂を覗くとか、ヘタレの俺に出来るわけないだろに。これじゃ、まるで天道みたいだ。いっそ、無理やり連れ込んでくれたほうが、俺が緊張するだけでよっぽど良いよ。
「ねぇ、トオルはやっぱりアサミが好きなの? アサミの方が、好き、なの?」
そんな事を考えていた矢先、彼女の口から飛び出した質問に危うく俺はむせ返りそうになる。
(な、なんでそうなるんだよ)
「だって貴方、いつもいつも、アサミの事心配してるじゃない」
平常心を乱さぬよう、なるべく冷静に振る舞おうとはしてみたが、バスタオル一枚の怯えたような彼女の瞳に頭の中は簡単に空っぽにさせられる。
(いや、それは、その……シャーリーには俺が付いてるけど、あいつの場合、すぐに無茶するからさ)
「そうね。私への信頼の裏返しだって、それぐらいのことはわかってるつもり。それでも、不安なものは不安なのよ。だからね、あんまり私を一人にすると、触手で興奮するような変態、すぐ嫌いになっちゃうんだから」
「キュウ、キュウー!」
(あ、いや、その)
しかも、彼女にはまだ打ち明けていない特殊な性癖まで言及されて、思考が完全にリセットされた。
そう言えばあいつ、シャーリーの覚悟を問うために、俺の性癖全部ぶちまけてたっけ……って事は、これから俺は彼女のために、自分の中の変態性と正面から向き合っていくしかないのか。もう少し時間が欲しかったけど、俺も男だ!
(それに関して言い訳はしない。確かに俺は、触手とかの官能絵巻が大好きだよ。その、非現実性に興奮したことも沢山ある。けど、現実で見たら、やっぱり怖かった。そりゃ、天道のエロい顔には興奮したけどさ、あんなのにあいつがグチャグチャにされるのかと思うと、怖くてすくんだ。ああ言うのはやっぱり、妄想の中だけで、リアルにあっちゃいけないんだなって。まっ、当たり前の事だけどさ。もちろん、それは天道だからってわけじゃなくて、シャーリーでもクルスでも、もちろんフィルだってそうだ。俺の大切な人達が襲われるなんて、耐えられねぇよ)
自分の中の歪んだ欲と、現実とのギャップ。あり得るはずがないと思っていたからこそ楽しめたものが、こうして目の前に現れた瞬間、恐怖とともに音を立てて崩れていく。それでも、本能的に反応するこの体が憎くて憎くて仕方がなくて、何を言っても建前にしか聞こえない虚無感に、心の底が震えて凍った。
普通の人間とは違うこんな自分が、誰かを愛してはいけないのではないのかと、言いようのない不安に駆られていくのだ。
「それもわかってる。わかってるつもり。そうやって、トオルは悩んでいるのよね。自分の中にある闇といつも戦っている。だから私も、あなたをもっと信頼しなくちゃいけないのに……難しいわね。ほんとに」
人間にとっての当たり前は、動物にとってのおかしな事。フィルの昔話のように、本能的に行動するのが自然の摂理にそっているのかも知れないけど、人間としてはやっぱりおかしくて、誰かのためと強く願えば乗り越えられるはずなんだ。
だから頑張ろう。シャーリーや皆のために、心の底から男として強くなるんだ。
(まったく、シャーリーには勝てる気がしないな)
「当然。トオルのことなら、何でもお見通しなんだから」
(さっき天道にも言ったけどさ、お前らってほんと、よく似てるよな)
自身に満ちたシャーリーの表情が、どことなく天道の見せるそれに見えて、思わず口を滑らせてしまう。すると、穏やかだった彼女の表情に殺気が混ざり、反射的に俺の体はすくみ上がった。
(ど、どうした?)
「……二人のときに……アサミの話……しないで」
(え? いや、話の流れ……的……に……あっ、はい。すみませんでした!)
曲げる背中も無いのに俺は、地面スレスレまで心の中で謝罪をし、出来得る限りの誠意を見せる。
「トオルは、デリカシーなさすぎ。女の子の気持ち、全然わかってない」
(そう、なのかな?)
「そうなの!」
「キュー!」
子供のように頬を膨らませるリースとシャーリーの二人をかわいいと思いながらも、このままでは不味いと思い、頭の中を高速で回転させる。
(悪かったよ。それじゃあ、わがままとか願い事とか、一つだけ叶えて……って、俺には何もしてやれないか)
「……そうやって、物で釣れば女はほいほい付いてくるとか、貴方もそう思ってる訳?」
(そ、そんな訳無いだろ! どうしたら良いのか、わかんないんだよ)
ただ、俺の貧相な頭では、まともな案が出てくるはずもなく、ただひたすらに肩を落とすしかなかった。
「まったく、どうしてこんな男、好きになっちゃったのかしらね……でも、どうせなら一つ、叶えてもらおうかしら」
(な、なんでも言ってくれ! 俺にできることなら何だってするから!!)
そんな中、与えられたチャンスに俺が飛びつくと、熱を帯びた視線でシャーリーが俺を見つめ返す。
「トオルの……トオルの一番でいたい。それが私の一番のわがまま」
「キューウ!」
女の子達との関係に、悶々としながら頭を抱えていると、お風呂上がりのシャーリーにそんな言葉を叩きつけられ、俺はますます困惑する。しかも、リースにまでテレパシーで意気地なしと言われて、我慢しているはずの俺の方がめっきりへこんでしまう。
全く、女の子の風呂を覗くとか、ヘタレの俺に出来るわけないだろに。これじゃ、まるで天道みたいだ。いっそ、無理やり連れ込んでくれたほうが、俺が緊張するだけでよっぽど良いよ。
「ねぇ、トオルはやっぱりアサミが好きなの? アサミの方が、好き、なの?」
そんな事を考えていた矢先、彼女の口から飛び出した質問に危うく俺はむせ返りそうになる。
(な、なんでそうなるんだよ)
「だって貴方、いつもいつも、アサミの事心配してるじゃない」
平常心を乱さぬよう、なるべく冷静に振る舞おうとはしてみたが、バスタオル一枚の怯えたような彼女の瞳に頭の中は簡単に空っぽにさせられる。
(いや、それは、その……シャーリーには俺が付いてるけど、あいつの場合、すぐに無茶するからさ)
「そうね。私への信頼の裏返しだって、それぐらいのことはわかってるつもり。それでも、不安なものは不安なのよ。だからね、あんまり私を一人にすると、触手で興奮するような変態、すぐ嫌いになっちゃうんだから」
「キュウ、キュウー!」
(あ、いや、その)
しかも、彼女にはまだ打ち明けていない特殊な性癖まで言及されて、思考が完全にリセットされた。
そう言えばあいつ、シャーリーの覚悟を問うために、俺の性癖全部ぶちまけてたっけ……って事は、これから俺は彼女のために、自分の中の変態性と正面から向き合っていくしかないのか。もう少し時間が欲しかったけど、俺も男だ!
(それに関して言い訳はしない。確かに俺は、触手とかの官能絵巻が大好きだよ。その、非現実性に興奮したことも沢山ある。けど、現実で見たら、やっぱり怖かった。そりゃ、天道のエロい顔には興奮したけどさ、あんなのにあいつがグチャグチャにされるのかと思うと、怖くてすくんだ。ああ言うのはやっぱり、妄想の中だけで、リアルにあっちゃいけないんだなって。まっ、当たり前の事だけどさ。もちろん、それは天道だからってわけじゃなくて、シャーリーでもクルスでも、もちろんフィルだってそうだ。俺の大切な人達が襲われるなんて、耐えられねぇよ)
自分の中の歪んだ欲と、現実とのギャップ。あり得るはずがないと思っていたからこそ楽しめたものが、こうして目の前に現れた瞬間、恐怖とともに音を立てて崩れていく。それでも、本能的に反応するこの体が憎くて憎くて仕方がなくて、何を言っても建前にしか聞こえない虚無感に、心の底が震えて凍った。
普通の人間とは違うこんな自分が、誰かを愛してはいけないのではないのかと、言いようのない不安に駆られていくのだ。
「それもわかってる。わかってるつもり。そうやって、トオルは悩んでいるのよね。自分の中にある闇といつも戦っている。だから私も、あなたをもっと信頼しなくちゃいけないのに……難しいわね。ほんとに」
人間にとっての当たり前は、動物にとってのおかしな事。フィルの昔話のように、本能的に行動するのが自然の摂理にそっているのかも知れないけど、人間としてはやっぱりおかしくて、誰かのためと強く願えば乗り越えられるはずなんだ。
だから頑張ろう。シャーリーや皆のために、心の底から男として強くなるんだ。
(まったく、シャーリーには勝てる気がしないな)
「当然。トオルのことなら、何でもお見通しなんだから」
(さっき天道にも言ったけどさ、お前らってほんと、よく似てるよな)
自身に満ちたシャーリーの表情が、どことなく天道の見せるそれに見えて、思わず口を滑らせてしまう。すると、穏やかだった彼女の表情に殺気が混ざり、反射的に俺の体はすくみ上がった。
(ど、どうした?)
「……二人のときに……アサミの話……しないで」
(え? いや、話の流れ……的……に……あっ、はい。すみませんでした!)
曲げる背中も無いのに俺は、地面スレスレまで心の中で謝罪をし、出来得る限りの誠意を見せる。
「トオルは、デリカシーなさすぎ。女の子の気持ち、全然わかってない」
(そう、なのかな?)
「そうなの!」
「キュー!」
子供のように頬を膨らませるリースとシャーリーの二人をかわいいと思いながらも、このままでは不味いと思い、頭の中を高速で回転させる。
(悪かったよ。それじゃあ、わがままとか願い事とか、一つだけ叶えて……って、俺には何もしてやれないか)
「……そうやって、物で釣れば女はほいほい付いてくるとか、貴方もそう思ってる訳?」
(そ、そんな訳無いだろ! どうしたら良いのか、わかんないんだよ)
ただ、俺の貧相な頭では、まともな案が出てくるはずもなく、ただひたすらに肩を落とすしかなかった。
「まったく、どうしてこんな男、好きになっちゃったのかしらね……でも、どうせなら一つ、叶えてもらおうかしら」
(な、なんでも言ってくれ! 俺にできることなら何だってするから!!)
そんな中、与えられたチャンスに俺が飛びつくと、熱を帯びた視線でシャーリーが俺を見つめ返す。
「トオルの……トオルの一番でいたい。それが私の一番のわがまま」
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