208 / 526
第四章 地底に眠りし幼竜姫
第207話 見捨てたりなんかしない
しおりを挟む
(ゴモリーの時さ)
「……うん」
(ゴモリーと戦った時の俺はさ、あんな状況にも関わらず、襲われそうになったシャーリーの顔を見て、不覚にも欲情した。当然、お前の体にもめちゃくちゃビンビンになって、自分がおかしくなりそうだったのをよく覚えてる。でも、ベリトの時はさ、なーんも興奮しなかったんだ。シャーリーの匂いとか、胸の感触とか、少しぐらいの誘惑はあったけど、あの時みたいに背徳的に感じるものは全然なくて……なんか、自分を正当化してるみたいで、嫌なんだよ)
両方共、同じ襲われている状況なのに、命の危険が無い時は、獣みたいに興奮して、彼女が死にかけている時は、子供みたいに駄々をこねる。そんな自分が、最低のクズに思えてきて、彼女への思いが全部嘘なんじゃないかって、自分がもっと嫌いになった。
「えーと、とりあえず言うね。私に興奮してくれたのは、素直に嬉しい」
苦しくて苦しくて、深刻な話のはずなのに、目の前ではにかむ淫魔の笑顔が、地獄から俺を救ってくれる。
「それに、一応あの人色欲の魔神だし、私が出してたサキュバスフェロモンだってあるでしょ? だから、あの時の先輩は、あれでしょうがなかったんだと、私は思うんだよね」
(でも、俺の性癖は、お前も知ってんだろ)
「うん! 先輩がファンタジーエロス大好きで、超非現実的な事に興奮する変態さんなのは、存じるところだよ」
(だろ? そんな俺だから、ゴモリーにもお前にも抗えなくて……二次元と三次元の区別もつかない、ブタ野郎なんだよ、きっと)
でも、心の奥の根付きは深くて、そんな自分は何なんだろう、生きてて良いのかなって思いは、一つの笑顔で消えるようなものじゃない。
「んー、要するに先輩は、怖いんだよね。いつか自分の欲に負けて、どんなにむごい状況でも、私達に手を出すんじゃないかって。で、その感情を払拭できないまま変わっていく自分が、更に怖くてたまらない、と」
とぼけた顔してるくせに、なんでこいつは、すぐにわかってくれるのか。俺からすれば、そっちの方が怖いぐらいだ。
「でも、それってさ、考えようによっては、成長してるってことなんじゃないかな?」
(成長?)
「うん。先輩はさ、色欲に流された時、大切な人を壊しちゃうんじゃないかって、ずっと思って来たんだよね? 自分の中にある妄想みたいに、苦しんでる私達を、いつか辱めちゃうんじゃないかって。でも、二度目の同じ状況を味わって、同じ感情がわかなくなった事に戸惑ってる。どこまでが自分で、どこまでが自分じゃないのか。何が理性で、何が欲望なのかってさ」
彼女が言葉にした事は、大方合っていると思う。自分の中の獣の欲と、彼女達へのおしみない愛。どれが本当の自分なのか、俺自身よくわからない。
「私も上手く説明できないけど、二回目が、本当の先輩なんじゃないかな。一回目はほら、エロくなっちゃう要素いっぱいあったし。それに、エロい欲望をはねのけて、純粋にシャーロットを守りたくなった。そういう心の成長もあるんじゃないかなって、私は思ったりするんだよね」
(変われてるのかな、俺)
「うん! 先輩は少しずつ、成長してると思う」
嘘偽りのない、彼女の純粋な笑顔。その輝きに、俺はまた涙を流しそうになる。嬉しかったんだ。彼女の言葉が本当なら、知らず知らずのうちに、俺は成長できていたんだって。
「人間ってさ、不思議だよね。悪いと思ってることでも、案外あっさりできちゃったり、自分で考えてる事と真逆のことしちゃったりさ。真面目に考えると、悩みのタネはほんとに尽きない」
そして、時たま見せる、哲学的な彼女の顔。その言葉は、今の自分を見透かされているようで、少しだけ怖い。
「先輩は、確かに変態さんだけど、それをシャーロットにしたいとか、私にしたいとか、普段からは考えて無いんだよね?」
(あ、当たり前だろ! 誰が好き好んで、好きな女に触手けしかけるんだよ)
「触手って、も~、先輩は本当に、先輩なんだから」
そんな彼女の質問に、慌てて真面目に答えた俺は、困り笑いを浮かべる淫魔に、少しだけ不満を覚える。
「なら大丈夫。先輩は、妄想と現実の区別がついてるよ。偶発的に起きるエロイベントは、とりあえず楽しんじゃえ!」
女の子に肯定してもらえるのは嬉しかったけど、自分からエロを楽しめっていうのは、倫理的にどうかと思う。それに、天道の起こすエロイベントを楽しんだら、確実に彼女の思う壺で、俺の貞操がヤバい。
「それに、妄想ってのはそれを抑えるためのはけ口だったりするわけだし、夢の中でぐらい、悪い事したいじゃん。私だってほら、先輩のことヒィヒィ泣かせてみたいとか、少しぐらいは考えたことあるし。まぁ、実際今ならできるんだけど……ね、してないっしょ」
だってほら、こんなこと言ってるんですよ。遠慮なく楽しんだら、付け込まれて、ボロ雑巾になるぐらい、魔力を搾り取られること間違いなし。
わかっていた事だけど、こいつが本気を出したら、俺なんてすぐ、喘ぐだけの魔剣に成り果てるんだろうな。四肢もないから抵抗のしようもないし、そういう意味ではちょっと怖い。
けど、彼女の恐ろしさは、俺の想像の斜め上を、駆け抜けて行くのである。
「ダイジョブダイジョブ、怖いって思えてるなら、現実じゃ絶対しないって。それに、もしその一線を超えたくなったら、私が全部受け止めてあげる。先輩が、私の声をおかずにしてたみたいにね!」
絶句した。何故って? 俺が一番知られたくなかったことを、一番知られたくなかった本人に、知られていたからである。
「フフフッ、先輩が私のダメボと悲鳴で興奮してたのは知ってるんだからね~。因みに、二年目の頭ぐらいから質上がったでしょ。あれ、先輩に聞かせるために気合い入れたかんね!」
世の女性の皆様方からは、軽蔑の眼差しを向けられる事と思いますが、声優さんの演技というのは本当に凄くてですね、悲鳴にまで魂がこもっているせいか、やけに艶かしく、エロく聞こえるものなんですよ。
その声が、ふと遺伝子レベルで琴線に触れると、男として覚醒したりする訳で……だって、しょうがないじゃないか! あの大好きな薙沙ちゃんの声で、キャアとかアンとか真に迫った演技で言われたら、体が反応するんですよ、反射的に! しかも、それを本人が理解してやってたとか、恥ずかしすぎて、もうお婿にイケない。
「も~、私だから良いけどさ、他の子でするのはやめなよ。そういう目的でお仕事してるわけじゃないんだから」
すいません、すいません。もう色んな意味で弁明の余地もございません。
「でもま、悲鳴って喘ぎ声に近いところあるし、無意識レベルで生物としての支配欲が高まるのも、理解はできるんだよね。知り合いにもさ、少年漫画のアニメなのに、あのキャラの負け試合そそられるよね、とか、あの人の悲鳴が最高で、とか言っちゃう女性の方もおりましたし。男だから―とか、女だから―なんて言うつもり、私はないよ。因みにその人、普段はめっちゃ常識人で、めっちゃ優しい」
そんな慰めで安心してはいけないのだろうけど、異性にも同族がいると聞かされると、そこはやっぱり安心する。理解の深い後輩を持ったことも、ある意味幸運だったのかもしれない。
まぁ、その後輩も、ある意味俺より酷かったり、業界人であることがネックだったりするんだけどさ。憧れのアイドルが俺のストーカーとか、喜ぶべきか、悲しむべきか、思い出す度に、未だに複雑な気持ちになる。
「だから、あんまり深く考えなくていいと思うなー。確かに、他の人に聞かれたら恥ずかしい事かもしんないけど、だいたい皆一つぐらいはそういうの持ってるし、先輩は、先輩らしくいればいいんだよ。もちろん! 思考停止してリアルに持ち込むのは駄目だかんね!」
それに、釘を刺されなくても、そんな事はわかってるさ。実際に女の子が泣く所なんて、見たって何も楽しくないし、苦しいだけって、俺は十二分に味合わされたんだから。
「でも、本当に悩んでるのはそこじゃないっしょ?」
自分のネジ曲がった部分、それが女の子に対する引け目になっているのは間違いない。けど、俺が今悩んでいるのはそれじゃない。
「大丈夫、何があっても、あの子は先輩を見捨てないよ」
肉付きの良い、彼女のムッチリとした包容力。それに優しく包まれて、俺はまた妖艶の世界へ堕ちていく。
(天道……)
「いつも言ってるじゃんか、先輩の声は全部聞こえてるって」
シャーリーもたまにそんな事を言うけど、天道のそれは比じゃなくて、俺の全てを掌握されているような、そういった次元の狂気を感じる。
「それに、あの子がこの程度のへんたいで、先輩の事を見限るなら好都合。だって~、私が変わりに、先輩のこと拾っちゃうんだから! ね、安心っしょ!」
怖い。そう思いながらも、彼女の笑顔を見ていると、言いしれない不安にかられていく。見えないんだ、彼女の本音が。
俺の全てがわかるからこそ、役者と言う名の仮面を被っているような気がして、彼女の行動が、全て嘘なのではないかと思えてしまう。
「しかも、ひろうのは捨てられた時だけっていうね。二番手ってのはちゃんと守るんだから! フッふーん。こんなに寛大な愛人を持ったことを、少しは感謝してくたまえよ、先輩君」
けれど、こんなにも真っ直ぐな笑みなのだから、彼女の事を、俺は信じてみようと思う。もし、偽りの仮面なら、彼女がそれを外して、心から甘えられる時まで、俺は騙され続けてやる……って、それはそれで不味いのか。サキュバスに本気で甘えられたら、理性を繋ぎ止められる自信がない。
やっぱりこの関係って、複雑。
「……うん」
(ゴモリーと戦った時の俺はさ、あんな状況にも関わらず、襲われそうになったシャーリーの顔を見て、不覚にも欲情した。当然、お前の体にもめちゃくちゃビンビンになって、自分がおかしくなりそうだったのをよく覚えてる。でも、ベリトの時はさ、なーんも興奮しなかったんだ。シャーリーの匂いとか、胸の感触とか、少しぐらいの誘惑はあったけど、あの時みたいに背徳的に感じるものは全然なくて……なんか、自分を正当化してるみたいで、嫌なんだよ)
両方共、同じ襲われている状況なのに、命の危険が無い時は、獣みたいに興奮して、彼女が死にかけている時は、子供みたいに駄々をこねる。そんな自分が、最低のクズに思えてきて、彼女への思いが全部嘘なんじゃないかって、自分がもっと嫌いになった。
「えーと、とりあえず言うね。私に興奮してくれたのは、素直に嬉しい」
苦しくて苦しくて、深刻な話のはずなのに、目の前ではにかむ淫魔の笑顔が、地獄から俺を救ってくれる。
「それに、一応あの人色欲の魔神だし、私が出してたサキュバスフェロモンだってあるでしょ? だから、あの時の先輩は、あれでしょうがなかったんだと、私は思うんだよね」
(でも、俺の性癖は、お前も知ってんだろ)
「うん! 先輩がファンタジーエロス大好きで、超非現実的な事に興奮する変態さんなのは、存じるところだよ」
(だろ? そんな俺だから、ゴモリーにもお前にも抗えなくて……二次元と三次元の区別もつかない、ブタ野郎なんだよ、きっと)
でも、心の奥の根付きは深くて、そんな自分は何なんだろう、生きてて良いのかなって思いは、一つの笑顔で消えるようなものじゃない。
「んー、要するに先輩は、怖いんだよね。いつか自分の欲に負けて、どんなにむごい状況でも、私達に手を出すんじゃないかって。で、その感情を払拭できないまま変わっていく自分が、更に怖くてたまらない、と」
とぼけた顔してるくせに、なんでこいつは、すぐにわかってくれるのか。俺からすれば、そっちの方が怖いぐらいだ。
「でも、それってさ、考えようによっては、成長してるってことなんじゃないかな?」
(成長?)
「うん。先輩はさ、色欲に流された時、大切な人を壊しちゃうんじゃないかって、ずっと思って来たんだよね? 自分の中にある妄想みたいに、苦しんでる私達を、いつか辱めちゃうんじゃないかって。でも、二度目の同じ状況を味わって、同じ感情がわかなくなった事に戸惑ってる。どこまでが自分で、どこまでが自分じゃないのか。何が理性で、何が欲望なのかってさ」
彼女が言葉にした事は、大方合っていると思う。自分の中の獣の欲と、彼女達へのおしみない愛。どれが本当の自分なのか、俺自身よくわからない。
「私も上手く説明できないけど、二回目が、本当の先輩なんじゃないかな。一回目はほら、エロくなっちゃう要素いっぱいあったし。それに、エロい欲望をはねのけて、純粋にシャーロットを守りたくなった。そういう心の成長もあるんじゃないかなって、私は思ったりするんだよね」
(変われてるのかな、俺)
「うん! 先輩は少しずつ、成長してると思う」
嘘偽りのない、彼女の純粋な笑顔。その輝きに、俺はまた涙を流しそうになる。嬉しかったんだ。彼女の言葉が本当なら、知らず知らずのうちに、俺は成長できていたんだって。
「人間ってさ、不思議だよね。悪いと思ってることでも、案外あっさりできちゃったり、自分で考えてる事と真逆のことしちゃったりさ。真面目に考えると、悩みのタネはほんとに尽きない」
そして、時たま見せる、哲学的な彼女の顔。その言葉は、今の自分を見透かされているようで、少しだけ怖い。
「先輩は、確かに変態さんだけど、それをシャーロットにしたいとか、私にしたいとか、普段からは考えて無いんだよね?」
(あ、当たり前だろ! 誰が好き好んで、好きな女に触手けしかけるんだよ)
「触手って、も~、先輩は本当に、先輩なんだから」
そんな彼女の質問に、慌てて真面目に答えた俺は、困り笑いを浮かべる淫魔に、少しだけ不満を覚える。
「なら大丈夫。先輩は、妄想と現実の区別がついてるよ。偶発的に起きるエロイベントは、とりあえず楽しんじゃえ!」
女の子に肯定してもらえるのは嬉しかったけど、自分からエロを楽しめっていうのは、倫理的にどうかと思う。それに、天道の起こすエロイベントを楽しんだら、確実に彼女の思う壺で、俺の貞操がヤバい。
「それに、妄想ってのはそれを抑えるためのはけ口だったりするわけだし、夢の中でぐらい、悪い事したいじゃん。私だってほら、先輩のことヒィヒィ泣かせてみたいとか、少しぐらいは考えたことあるし。まぁ、実際今ならできるんだけど……ね、してないっしょ」
だってほら、こんなこと言ってるんですよ。遠慮なく楽しんだら、付け込まれて、ボロ雑巾になるぐらい、魔力を搾り取られること間違いなし。
わかっていた事だけど、こいつが本気を出したら、俺なんてすぐ、喘ぐだけの魔剣に成り果てるんだろうな。四肢もないから抵抗のしようもないし、そういう意味ではちょっと怖い。
けど、彼女の恐ろしさは、俺の想像の斜め上を、駆け抜けて行くのである。
「ダイジョブダイジョブ、怖いって思えてるなら、現実じゃ絶対しないって。それに、もしその一線を超えたくなったら、私が全部受け止めてあげる。先輩が、私の声をおかずにしてたみたいにね!」
絶句した。何故って? 俺が一番知られたくなかったことを、一番知られたくなかった本人に、知られていたからである。
「フフフッ、先輩が私のダメボと悲鳴で興奮してたのは知ってるんだからね~。因みに、二年目の頭ぐらいから質上がったでしょ。あれ、先輩に聞かせるために気合い入れたかんね!」
世の女性の皆様方からは、軽蔑の眼差しを向けられる事と思いますが、声優さんの演技というのは本当に凄くてですね、悲鳴にまで魂がこもっているせいか、やけに艶かしく、エロく聞こえるものなんですよ。
その声が、ふと遺伝子レベルで琴線に触れると、男として覚醒したりする訳で……だって、しょうがないじゃないか! あの大好きな薙沙ちゃんの声で、キャアとかアンとか真に迫った演技で言われたら、体が反応するんですよ、反射的に! しかも、それを本人が理解してやってたとか、恥ずかしすぎて、もうお婿にイケない。
「も~、私だから良いけどさ、他の子でするのはやめなよ。そういう目的でお仕事してるわけじゃないんだから」
すいません、すいません。もう色んな意味で弁明の余地もございません。
「でもま、悲鳴って喘ぎ声に近いところあるし、無意識レベルで生物としての支配欲が高まるのも、理解はできるんだよね。知り合いにもさ、少年漫画のアニメなのに、あのキャラの負け試合そそられるよね、とか、あの人の悲鳴が最高で、とか言っちゃう女性の方もおりましたし。男だから―とか、女だから―なんて言うつもり、私はないよ。因みにその人、普段はめっちゃ常識人で、めっちゃ優しい」
そんな慰めで安心してはいけないのだろうけど、異性にも同族がいると聞かされると、そこはやっぱり安心する。理解の深い後輩を持ったことも、ある意味幸運だったのかもしれない。
まぁ、その後輩も、ある意味俺より酷かったり、業界人であることがネックだったりするんだけどさ。憧れのアイドルが俺のストーカーとか、喜ぶべきか、悲しむべきか、思い出す度に、未だに複雑な気持ちになる。
「だから、あんまり深く考えなくていいと思うなー。確かに、他の人に聞かれたら恥ずかしい事かもしんないけど、だいたい皆一つぐらいはそういうの持ってるし、先輩は、先輩らしくいればいいんだよ。もちろん! 思考停止してリアルに持ち込むのは駄目だかんね!」
それに、釘を刺されなくても、そんな事はわかってるさ。実際に女の子が泣く所なんて、見たって何も楽しくないし、苦しいだけって、俺は十二分に味合わされたんだから。
「でも、本当に悩んでるのはそこじゃないっしょ?」
自分のネジ曲がった部分、それが女の子に対する引け目になっているのは間違いない。けど、俺が今悩んでいるのはそれじゃない。
「大丈夫、何があっても、あの子は先輩を見捨てないよ」
肉付きの良い、彼女のムッチリとした包容力。それに優しく包まれて、俺はまた妖艶の世界へ堕ちていく。
(天道……)
「いつも言ってるじゃんか、先輩の声は全部聞こえてるって」
シャーリーもたまにそんな事を言うけど、天道のそれは比じゃなくて、俺の全てを掌握されているような、そういった次元の狂気を感じる。
「それに、あの子がこの程度のへんたいで、先輩の事を見限るなら好都合。だって~、私が変わりに、先輩のこと拾っちゃうんだから! ね、安心っしょ!」
怖い。そう思いながらも、彼女の笑顔を見ていると、言いしれない不安にかられていく。見えないんだ、彼女の本音が。
俺の全てがわかるからこそ、役者と言う名の仮面を被っているような気がして、彼女の行動が、全て嘘なのではないかと思えてしまう。
「しかも、ひろうのは捨てられた時だけっていうね。二番手ってのはちゃんと守るんだから! フッふーん。こんなに寛大な愛人を持ったことを、少しは感謝してくたまえよ、先輩君」
けれど、こんなにも真っ直ぐな笑みなのだから、彼女の事を、俺は信じてみようと思う。もし、偽りの仮面なら、彼女がそれを外して、心から甘えられる時まで、俺は騙され続けてやる……って、それはそれで不味いのか。サキュバスに本気で甘えられたら、理性を繋ぎ止められる自信がない。
やっぱりこの関係って、複雑。
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
最強執事の恩返し~大魔王を倒して100年ぶりに戻ってきたら世話になっていた侯爵家が没落していました。恩返しのため復興させます~
榊与一
ファンタジー
異世界転生した日本人、大和猛(やまとたける)。
彼は異世界エデンで、コーガス侯爵家によって拾われタケル・コーガスとして育てられる。
それまでの孤独な人生で何も持つ事の出来なかった彼にとって、コーガス家は生まれて初めて手に入れた家であり家族だった。
その家を守るために転生時のチート能力で魔王を退け。
そしてその裏にいる大魔王を倒すため、タケルは魔界に乗り込んだ。
――それから100年。
遂にタケルは大魔王を討伐する事に成功する。
そして彼はエデンへと帰還した。
「さあ、帰ろう」
だが余りに時間が立ちすぎていた為に、タケルの事を覚えている者はいない。
それでも彼は満足していた。
何故なら、コーガス家を守れたからだ。
そう思っていたのだが……
「コーガス家が没落!?そんな馬鹿な!?」
これは世界を救った勇者が、かつて自分を拾い温かく育ててくれた没落した侯爵家をチートな能力で再興させる物語である。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
26番目の王子に転生しました。今生こそは健康に大地を駆け回れる身体に成りたいです。
克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー。男はずっと我慢の人生を歩んできた。先天的なファロー四徴症という心疾患によって、物心つく前に大手術をしなければいけなかった。手術は成功したものの、術後の遺残症や続発症により厳しい運動制限や生活習慣制限を課せられる人生だった。激しい運動どころか、体育の授業すら見学するしかなかった。大好きな犬や猫を飼いたくても、「人獣共通感染症」や怪我が怖くてペットが飼えなかった。その分勉強に打ち込み、色々な資格を散り、知識も蓄えることはできた。それでも、自分が本当に欲しいものは全て諦めなければいいけない人生だった。だが、気が付けば異世界に転生していた。代償のような異世界の人生を思いっきり楽しもうと考えながら7年の月日が過ぎて……
【画像あり】転生双子の異世界生活~株式会社SETA異世界派遣部・異世界ナーゴ編~
BIRD
ファンタジー
【転生者モチ編あらすじ】
異世界を再現したテーマパーク・プルミエタウンで働いていた兼業漫画家の俺。
原稿を仕上げた後、床で寝落ちた相方をベッドに引きずり上げて一緒に眠っていたら、本物の異世界に転移してしまった。
初めての異世界転移で容姿が変わり、日本での名前と姿は記憶から消えている。
転移先は前世で暮らした世界で、俺と相方の前世は双子だった。
前世の記憶は無いのに、時折感じる不安と哀しみ。
相方は眠っているだけなのに、何故か毎晩生存確認してしまう。
その原因は、相方の前世にあるような?
「ニンゲン」によって一度滅びた世界。
二足歩行の猫たちが文明を築いている時代。
それを見守る千年の寿命をもつ「世界樹の民」。
双子の勇者の転生者たちの物語です。
現世は親友、前世は双子の兄弟、2人の関係の変化と、異世界生活を書きました。
画像は作者が遊んでいるネトゲで作成したキャラや、石垣島の風景を使ったりしています。
AI生成した画像も合成に使うことがあります。
編集ソフトは全てフォトショップ使用です。
得られるスコア収益は「島猫たちのエピソード」と同じく、保護猫たちのために使わせて頂きます。
2024.4.19 モチ編スタート
5.14 モチ編完結。
5.15 イオ編スタート。
5.31 イオ編完結。
8.1 ファンタジー大賞エントリーに伴い、加筆開始
8.21 前世編開始
9.14 前世編完結
9.15 イオ視点のエピソード開始
9.20 イオ視点のエピソード完結
9.21 翔が書いた物語開始
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
魔術師リュカと孤独の器 〜優しい亡霊を連れた少女〜
平田加津実
ファンタジー
各地を流れ歩く旅芸人のリュカは、訪れた小さな町で、亜麻色の髪をした自分好みの少女アレットを見かける。彼女は中世の貴族のような身なりの若い男と、やせ細った幼女、黒猫の三体の亡霊を連れていた。慌てて彼らを除霊しようとしたリュカは、亡霊たちを「友達だ」と言い張るアレットに面食らう。リュカは、黒猫の亡霊に彼女を助けてほしいと頼まれ、なりゆきで一人暮らしの彼女の家に泊まることに。彼女らの状況をなんとかしようとするリュカは、世間知らずで天然な彼女と、個性的な亡霊たちにふりまわされて……。
「魔術師ロラと秘された記憶」の主人公たちの血を引く青年のお話ですが、前作をお読みでない方でもお楽しみいただけます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる