116 / 526
第三章 恋する駄女神
第115話 頑張る男の子は可愛い
しおりを挟む
「……もう……ダ・メ……エッチ……アサミは……ハウス」
小さくとても柔らかそうなシャーリーの唇、そこから漏れ出る単語を聞く限りどうやらそれは寝言のようで、俺は心の底から安堵した。
危ねぇ、こんな状況見られたら何言われるかわかったもんじゃない。というか、こっちはこっちでいったいどんな夢を見てるんですかね。後、天道の扱いがすっげぇ気になる。
「なんだ寝言か」
そんなシャーリーを見て俺と同じように安堵する天道であったが、俺達の会話がシャーリーの夢に影響を与えているのは明らかであろう。
(だから言ってるだろ、大声出すなって。次は本当に起きちまうぞ)
「ご、ごめん。気をつける」
再び俺に怒られた途端、天道はまたまたしゅんとなり落ち込んでしまう。これはこれでなんだかペースが乱れされるんだよなぁ。こいつの快活な部分、それはとても魅力的だと思うけどTPOだけはわきまえて欲しい。
因みに、TPOとはタイム・プレイス・オケージョンの略で、時間と場所と場合という意味である……いや、なんとなく説明してみたくなっただけだ、気にしないでくれ。
とにかく、何でも良いから話を進めよう。しょぼくれたこいつの顔を見てると何故か俺がいたたまれない気持ちになる。
(にしてもお前、よく俺の妄想に気がついたな。かなり抑え込んでたつもりなのに)
「ああ、それ。実は私、結構、寝・た・ふ・り、してるんだよね」
おぉ、さっきまで落ち込んでいたのに、主導権を握り返した途端いつもの元気いっぱい天道さんに戻ったぞ。この切替の早さだけは本当に感心する。う~ん、しょうがない、少し話を合わせるか。びっくりどっきりで騒がれたり、またすぐに落ち込まれても困るしな。
(なんだ、ずっと起きてたのか。なかなかいい狸寝入りだったぞ。完全に騙されたぜ)
……やばい、棒読みとまではいかないが喋り方に胡散臭さが……
「フフフ、現役声優をなめないでくれたまえ、寝息をたてるなど簡単なことだよワトソンくん」
どうやら褒められたことが嬉しいようで、細かいとこまで気が回っていないようだ。それよりも、ワトソンくんって誰だよ。シャーロットホームズとでも言いたいのかお前は。そもそも発言してるの天道だし。
「それに、先輩が何考えてるか聞くの結構楽しいからね。頑張ってるのもよくわかるし」
楽しいって……覗かれる側のこっちとしては、たまったもんじゃないんですけどね。
にしてもこいつ、本当に楽しそうに会話するよな。今だって終始笑顔だし。
「だ、だって、先輩と会話してるんだよ? 嬉しくないわけないじゃんか」
すると、今度は何故か薄っすらと頬を赤くしながら目を細めてくる。本当にコロコロと表情の変わるやつだ。それに、いくら天道が相手とは言え、はにかみながらそういう発言をされると何も言い返せなくなる。だってほら、そんなこと言われたら俺だって一応嬉しいし。ってか、心の中をさらっと読むなと。
「それに私、そんなに悩まなくてもいいと思うんだけどな。今の先輩は剣なんだし、いろんな苦労もあるんだろうからさ、もっと私たちに頼ってくれていいんだよ?」
その申し出は大変嬉しいのだが、頼ってくれと言われても何をどうしたら良いのかわからないし、俺は十分なぐらい皆を頼ってるつもりだ。こんな木偶の坊相手に世話を焼き、変態として捨てられることもなく、オマケに人間扱いまでしてくれる。ここまでされてこれ以上を望むとか我儘すぎるだろ。
まぁ、強いて不満をあげるとすれば、もうちょっと平穏に過ごしたいってことぐらいか。主に性的な意味で。
(そう言われてもなぁ。一応このパーティの中じゃ唯一の男って扱いなわけだし、お前らに頼りっきりってわけにもいかんだろ)
そんな風に皆が俺に良くしてくれてる。だからこそもっと頑張りたいと思うし、男の子として少しでも頼って貰えるようになりたいって思うんだ。
そりゃ、今の世の中男が女より頑張るのが当たり前、なんて時代遅れな考え方かもしれないけど、それでも女の子に少しはカッコいい所見せたいと思うのが男ってもんだ。特に俺みたいなひ弱な男は、異世界でぐらい誰かを守りたいって願うのは当然のことだと思う。
「そっかそっか、男の子には意地があるってやつなわけか。そうだよね、そんな体だけど先輩も男の子だもんね。うん、かわいい」
かわいい。そんな言葉を惜しげもなく、それも笑顔で伝えてくる天道の姿が俺に告白してきた時のシャーリーとダブって見えて、心の中に戸惑いが生じてしまう。
だって、不意打ち過ぎんだろ。最愛の人と同じ言葉、それも俺にしか言わないなんて言った言葉をこいつは簡単に言ってくるんだから。
(かわいいって、お前までそんなこと言うのかよ)
だめだ、天道と目が合わせられない。意識しすぎで心がおかしくなる。
「お前までってことは、シャーロットにも言われたの?」
(ああ、出会ってすぐの頃にな)
でも、今のこの気持ち、こいつには、こいつにだけは絶対にバレたくないと無理やり平静を装ってみせた。それに、今だからこそ、あの時を思い出すと気恥ずかしくなってしまう。
なんだよ、告白の言葉で盛大に噛むとかさ。シャーリーに言われた言葉一つ一つだって、思い出せば思い出すだけ嬉しくて顔がにやけそうになるし。ううっ、羞恥心で死にたい。
……そう言えば、あれ以来大人の姿のシャーリーとまともに会話してないんだよな。
別に、今のシャーリーに満足してないわけじゃないしディアインハイトが気軽に使えない代物なのもわかってる。けど、あの姿のシャーリーとまた話がしたい。突然そんな物悲しさが……ってあれ? なんだろう。今まで気づかなかったけど、俺ってばもしかして年上好き?
「でもシャーロットの気持ちもわかるな。できないことを頑張ろうとする姿って応援したくなるし、凄くかわいいんだもん。頭抱えて必死に悩んでる姿なんか、朝美ちゃんの母性本能バリバリに刺激してくるしね!」
だってほら、これだけ上から目線で褒められてるのに、天道に言われてもさっきと違って全然心が揺れ動かない。
まぁ、別のものなら目の前でたゆんたゆん激しく揺れ動いてるけど。
という冗談は置いておくとして、やっぱり威厳の問題なのかね。例えば今の台詞、シャーリーに言われたと想像してみる事にしよう。
「できないことを頑張ろうとする姿、とても可愛らしいと思うし応援したくもなるわ。必死に悩んでる姿だって私の母性本能を刺激して、今すぐにでもそんなトオルを抱きしめたくなっちゃうもの」
……うん、やっぱりそうだ。ただの妄想だというのに今すぐにでもシャーリーに抱きしめられたいと思ってしまう。う~む、まさか知らず知らずのうちに属性という名の守備範囲が広がっているとは。人生何が起こるかわからないもんだ。そこ、妄想だから都合が良いだけとか言わない。
それに、天道の言葉が全く響かないってわけでもない。こいつが俺を大切に想ってくれている、そのことだけはしっかりと伝わってくるから。
(全く、こんな自分に自身も持てない、怖がりなだけの臆病者のどこが良いんだか)
だからこそこんな自分が許せないし、好きだと言ってくれる彼女達に不誠実な気持ちで向き合うなんてこと、俺にはできない。
「はいはい、そうやってすーぐ卑屈にならないの。それに、怖いって思えるのは悪いことじゃないんだよ。それだけ見極めができて冷静でいられるってことなんだから。それにほら、シャーロットって無鉄砲なとこ結構あるっぽいじゃん。だからさ、先輩ぐらい臆病な人が隣りにいてくれたほうが安心できると思うんだよね」
(天道……)
「もちろん! 私も後先考えない性格だから先輩にフォローしてもらわないと駄目駄目だけどね!」
ただ、こいつをどう扱ったら良いのかそれだけは本当にわからない。わからなすぎて涙が出てくる。それに、自分の主張だけは本当に忘れないよな。その点だけは呆れを通り越して感心するよ。駄目人間っぷりをアピールするのはどうかと思うけど。
まぁ、俺の場合は――
「ダメな所をアピールするのって甘えたがりの常套句だと思うんだけどな~。先輩のもそうでしょ?」
(お、俺のはそういうんじゃねーよ!)
「またまた。そういう所もまるっと受け入れてくれる女の子を探してるのはわかってるんだぞ」
(だからそういうのじゃ……そういうのじゃねーんだよ)
そう、そういうのじゃないんだ。俺の場合、誰かを失望させたくないだけ。
俺みたいな駄目人間はどうやっても完璧になれない事を知っていて、だからこそ皆が寄せてくれる期待を裏切らないという自信がない。自信が無いから予防線を張って逃げることを考えてしまう。
こんな自分が誰かを幸せにするなんてこと、本当にできるのだろうか……
小さくとても柔らかそうなシャーリーの唇、そこから漏れ出る単語を聞く限りどうやらそれは寝言のようで、俺は心の底から安堵した。
危ねぇ、こんな状況見られたら何言われるかわかったもんじゃない。というか、こっちはこっちでいったいどんな夢を見てるんですかね。後、天道の扱いがすっげぇ気になる。
「なんだ寝言か」
そんなシャーリーを見て俺と同じように安堵する天道であったが、俺達の会話がシャーリーの夢に影響を与えているのは明らかであろう。
(だから言ってるだろ、大声出すなって。次は本当に起きちまうぞ)
「ご、ごめん。気をつける」
再び俺に怒られた途端、天道はまたまたしゅんとなり落ち込んでしまう。これはこれでなんだかペースが乱れされるんだよなぁ。こいつの快活な部分、それはとても魅力的だと思うけどTPOだけはわきまえて欲しい。
因みに、TPOとはタイム・プレイス・オケージョンの略で、時間と場所と場合という意味である……いや、なんとなく説明してみたくなっただけだ、気にしないでくれ。
とにかく、何でも良いから話を進めよう。しょぼくれたこいつの顔を見てると何故か俺がいたたまれない気持ちになる。
(にしてもお前、よく俺の妄想に気がついたな。かなり抑え込んでたつもりなのに)
「ああ、それ。実は私、結構、寝・た・ふ・り、してるんだよね」
おぉ、さっきまで落ち込んでいたのに、主導権を握り返した途端いつもの元気いっぱい天道さんに戻ったぞ。この切替の早さだけは本当に感心する。う~ん、しょうがない、少し話を合わせるか。びっくりどっきりで騒がれたり、またすぐに落ち込まれても困るしな。
(なんだ、ずっと起きてたのか。なかなかいい狸寝入りだったぞ。完全に騙されたぜ)
……やばい、棒読みとまではいかないが喋り方に胡散臭さが……
「フフフ、現役声優をなめないでくれたまえ、寝息をたてるなど簡単なことだよワトソンくん」
どうやら褒められたことが嬉しいようで、細かいとこまで気が回っていないようだ。それよりも、ワトソンくんって誰だよ。シャーロットホームズとでも言いたいのかお前は。そもそも発言してるの天道だし。
「それに、先輩が何考えてるか聞くの結構楽しいからね。頑張ってるのもよくわかるし」
楽しいって……覗かれる側のこっちとしては、たまったもんじゃないんですけどね。
にしてもこいつ、本当に楽しそうに会話するよな。今だって終始笑顔だし。
「だ、だって、先輩と会話してるんだよ? 嬉しくないわけないじゃんか」
すると、今度は何故か薄っすらと頬を赤くしながら目を細めてくる。本当にコロコロと表情の変わるやつだ。それに、いくら天道が相手とは言え、はにかみながらそういう発言をされると何も言い返せなくなる。だってほら、そんなこと言われたら俺だって一応嬉しいし。ってか、心の中をさらっと読むなと。
「それに私、そんなに悩まなくてもいいと思うんだけどな。今の先輩は剣なんだし、いろんな苦労もあるんだろうからさ、もっと私たちに頼ってくれていいんだよ?」
その申し出は大変嬉しいのだが、頼ってくれと言われても何をどうしたら良いのかわからないし、俺は十分なぐらい皆を頼ってるつもりだ。こんな木偶の坊相手に世話を焼き、変態として捨てられることもなく、オマケに人間扱いまでしてくれる。ここまでされてこれ以上を望むとか我儘すぎるだろ。
まぁ、強いて不満をあげるとすれば、もうちょっと平穏に過ごしたいってことぐらいか。主に性的な意味で。
(そう言われてもなぁ。一応このパーティの中じゃ唯一の男って扱いなわけだし、お前らに頼りっきりってわけにもいかんだろ)
そんな風に皆が俺に良くしてくれてる。だからこそもっと頑張りたいと思うし、男の子として少しでも頼って貰えるようになりたいって思うんだ。
そりゃ、今の世の中男が女より頑張るのが当たり前、なんて時代遅れな考え方かもしれないけど、それでも女の子に少しはカッコいい所見せたいと思うのが男ってもんだ。特に俺みたいなひ弱な男は、異世界でぐらい誰かを守りたいって願うのは当然のことだと思う。
「そっかそっか、男の子には意地があるってやつなわけか。そうだよね、そんな体だけど先輩も男の子だもんね。うん、かわいい」
かわいい。そんな言葉を惜しげもなく、それも笑顔で伝えてくる天道の姿が俺に告白してきた時のシャーリーとダブって見えて、心の中に戸惑いが生じてしまう。
だって、不意打ち過ぎんだろ。最愛の人と同じ言葉、それも俺にしか言わないなんて言った言葉をこいつは簡単に言ってくるんだから。
(かわいいって、お前までそんなこと言うのかよ)
だめだ、天道と目が合わせられない。意識しすぎで心がおかしくなる。
「お前までってことは、シャーロットにも言われたの?」
(ああ、出会ってすぐの頃にな)
でも、今のこの気持ち、こいつには、こいつにだけは絶対にバレたくないと無理やり平静を装ってみせた。それに、今だからこそ、あの時を思い出すと気恥ずかしくなってしまう。
なんだよ、告白の言葉で盛大に噛むとかさ。シャーリーに言われた言葉一つ一つだって、思い出せば思い出すだけ嬉しくて顔がにやけそうになるし。ううっ、羞恥心で死にたい。
……そう言えば、あれ以来大人の姿のシャーリーとまともに会話してないんだよな。
別に、今のシャーリーに満足してないわけじゃないしディアインハイトが気軽に使えない代物なのもわかってる。けど、あの姿のシャーリーとまた話がしたい。突然そんな物悲しさが……ってあれ? なんだろう。今まで気づかなかったけど、俺ってばもしかして年上好き?
「でもシャーロットの気持ちもわかるな。できないことを頑張ろうとする姿って応援したくなるし、凄くかわいいんだもん。頭抱えて必死に悩んでる姿なんか、朝美ちゃんの母性本能バリバリに刺激してくるしね!」
だってほら、これだけ上から目線で褒められてるのに、天道に言われてもさっきと違って全然心が揺れ動かない。
まぁ、別のものなら目の前でたゆんたゆん激しく揺れ動いてるけど。
という冗談は置いておくとして、やっぱり威厳の問題なのかね。例えば今の台詞、シャーリーに言われたと想像してみる事にしよう。
「できないことを頑張ろうとする姿、とても可愛らしいと思うし応援したくもなるわ。必死に悩んでる姿だって私の母性本能を刺激して、今すぐにでもそんなトオルを抱きしめたくなっちゃうもの」
……うん、やっぱりそうだ。ただの妄想だというのに今すぐにでもシャーリーに抱きしめられたいと思ってしまう。う~む、まさか知らず知らずのうちに属性という名の守備範囲が広がっているとは。人生何が起こるかわからないもんだ。そこ、妄想だから都合が良いだけとか言わない。
それに、天道の言葉が全く響かないってわけでもない。こいつが俺を大切に想ってくれている、そのことだけはしっかりと伝わってくるから。
(全く、こんな自分に自身も持てない、怖がりなだけの臆病者のどこが良いんだか)
だからこそこんな自分が許せないし、好きだと言ってくれる彼女達に不誠実な気持ちで向き合うなんてこと、俺にはできない。
「はいはい、そうやってすーぐ卑屈にならないの。それに、怖いって思えるのは悪いことじゃないんだよ。それだけ見極めができて冷静でいられるってことなんだから。それにほら、シャーロットって無鉄砲なとこ結構あるっぽいじゃん。だからさ、先輩ぐらい臆病な人が隣りにいてくれたほうが安心できると思うんだよね」
(天道……)
「もちろん! 私も後先考えない性格だから先輩にフォローしてもらわないと駄目駄目だけどね!」
ただ、こいつをどう扱ったら良いのかそれだけは本当にわからない。わからなすぎて涙が出てくる。それに、自分の主張だけは本当に忘れないよな。その点だけは呆れを通り越して感心するよ。駄目人間っぷりをアピールするのはどうかと思うけど。
まぁ、俺の場合は――
「ダメな所をアピールするのって甘えたがりの常套句だと思うんだけどな~。先輩のもそうでしょ?」
(お、俺のはそういうんじゃねーよ!)
「またまた。そういう所もまるっと受け入れてくれる女の子を探してるのはわかってるんだぞ」
(だからそういうのじゃ……そういうのじゃねーんだよ)
そう、そういうのじゃないんだ。俺の場合、誰かを失望させたくないだけ。
俺みたいな駄目人間はどうやっても完璧になれない事を知っていて、だからこそ皆が寄せてくれる期待を裏切らないという自信がない。自信が無いから予防線を張って逃げることを考えてしまう。
こんな自分が誰かを幸せにするなんてこと、本当にできるのだろうか……
0
お気に入りに追加
123
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる