異世界でもギターしかなかった

bbbcat

文字の大きさ
上 下
25 / 28
第1巻 異世界でもギターしかなかった ~迷わずの森とバーウの村~

「ライブへのお誘い②」

しおりを挟む
**************************************



「あっ!!
 あの子達、バーウの悪ガキ6人組!」
キヨラが指を差しながら言う。


 そこにいたのは、ツーヤ、ブーノ、カイセ、キーア、ロタン、そしてリーダー格のタックだった。

「お前ら何してんだよ。
 何諦めてんだよ。
 ライブするんだろ?」
タックが“サササッ”とステージに上がり腕を組んで見下ろしながら言う。

「君たちは……。」

幸がつぶやく。


「石投げて悪かったな。
 これをわびってことにしてくれよ。
 その紙切れをこの村中にばらまきゃいいんだろ?
 そんなもん簡単だよ。
 俺達も協力する。」
タックはそういうとチケットを“バッ”と奪い取り、仲間に数十枚ずつ配り始めた。

 悪ガキ達も村人達に好かれているとは思えないが、どうするつもりなのか……。

「こうするんだよ。」
ブーノが大きく振りかぶり何かを投げた。


                  “バリン”

 
 なんと家の窓に向かって投げたのだった。



「いいのそれ!?」
キヨラが叫ぶ。

 良いわけはない。

「あっありがとうとは素直に言えない……。」
幸も結果的にチケットは村人の手に届く行為に複雑な心境。

「この村の奴らはビビりの逃げ腰野郎達ばかりだから、《《窓の側《そば》には絶対立たねぇ》》。
 だからケガなんかしやしねぇよ。」
ツーヤがぶっきらぼうに言った。


「こんなやり方もあるぜ。
 おいそこの
 俺を掴んで空飛んでくれよ。」
タックがピーネに言う。

「俺はピーネだ!!
 なんだぁ?
 そしたらチケット渡せるのか?」
鳥女と言われムッとするピーネ。

「そうだよ。
 任せろって言っただろ。」
タックは胸をどんと叩き自信満々。

「分かった。
 飛んでやる!」

 ピーネがタックの背中を鷲掴み、タックはスーパーマンの様な形で空を飛ぶ。

「おおっ!!
 なかなかいいじゃねえかぁ!!
 たぁのしいー!!l」
気取った口調で通していたのに、空を飛ぶという初体験に、つい子供が出てしまった。

「おっといけねぇ……。
 見とけよ、煙突に入れたいんだろ?」

                   “シュッ”

 タックも何かを投げた。
それは綺麗な弧を描いて、“スポッ”と煙突に吸い込まれていった。
 そしてその何かとは紛れもなくチケットであった。


「凄い!!
 どうやって入れたんだ!?
 俺がやってもちっとも入らなかったんだぞ!」
ピーネが驚きの声をあげる。

「これさ。」
タックがピーネに見せたのはチケット。しかし複雑に織り込まれている。

現実世界で言うであった。

「先端の重さ調整と羽の曲げ具合で簡単に煙突に入るんだぜ。
 まぁ俺にしか出来ない芸当だがな。」
タックが“えへん”と自負する。


「さぁ、ピーネ!
 このままじゃんじゃん投げてくぞ!
 おら!
 お前らもどんどん石投げろ!」
タックが仲間に指示する。


            「「「「「おう!!」」」」」


                 “パリン”

 
                 “ガン”


                “バリーン”


 みるみるうちに窓からチケットが入って行く。

 こんなに悪ガキ達にめちゃくちゃにやられているのに、村人は家から一人として出てこなかった。
 この村の人々はピーネが村に入った時も部屋に閉じこもって出てこなかった。

 何かの時の対処の方法がこういう慣習である村人なのだ。

 こういう形で渡されたチケットに果たして意味があるのかという所であるが、それは後々分かることになる。


 「チケット全部の家に渡せたね……。」
キヨラはあっけにとられいる。


「でも手伝ってくれようとする気持ちは嬉しいよ……。」
幸が言う。


「あははっ!!!
 幸!!
 タック凄かったぞ!!」
空からタックと降りてきたピーネは楽しそう。



 おまえの音楽なら。
 伝わるから。
 ライブ楽しみにしてるぜ」
タックが背中で語って行く。


 6人は役目が終わると、さっさと歩いて消えて行った。
またライブの時には見に来るのであろう。


「とにかく!!」


「「「あとはライブするだけだー!!!」」」


3人は最高のライブにするために勇んでステージへ上がって行った。


**************************************
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...