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第1巻 異世界でもギターしかなかった ~迷わずの森とバーウの村~
第25話「ライブへのお誘い①」
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【バーウの村】
バーウの村は人々で溢れかえっていた。
村の名産であるピーマンをまるまま焼いた"ピーマン焼き"。
その屋台に並ぶ人々。その他も様々なお店も並ぶ。
多種多様な店が立ち並んでいる中央の通りは、賑やかであった。
幸とキヨラが村のエントランスに入った時、村人は2人の存在にすぐに気付き始める。
昨日の今日であるから、警戒していたようだ。
すると、うじゃうじゃといた人々は、まるで蜘蛛の子を散らすように自宅へ帰って行く。
あっという間に伽藍堂の中央通りになってしまった。
バーウの村は、中央通りから綺麗に左右に店と家が並んでいる村だ。
村の入り口から通りを行き切った先の、最奥にあるステージがポツンと取り残されている。
「……今の間に屋台の食べ物、食べちゃおうか。」
これもまたポツンと取り残された屋台に捨て置かれた食べ物達を見て言う。
日頃から羨ましくみていたのであろう、ほかほかと湯気立つ肉まんのようなものや、宝石の様にキラキラした果実を見つめながら冗談をのたまうキヨラ。
「……駄目だよ。
一件一件、扉を叩いて開けてもらうしかない……。
頑張ろう。」
幸の決意はまだまだ折れなかった。
「冗談だよ……。
そうだね!
幸なら大丈夫。行こう!!」
キヨラはそう言うとまずは私が切り込む!と勢い良く右側の道に並んだ家々の扉を一件一件叩いて行く。
「すいません!
開けてください!!
とても素晴らしい催し物が今夜、ステージで開催されます!
そのチケットをプレゼントしたいだけなんです!」
キヨラの懸命な訴えは、居留守で応えられる。
夜のライブは、今はほとんど使われていない、村の最奥に鎮座するステージで行う予定である。
その使われていないステージに気づけば、2人の人影が……。
それはキヨラ以外にこの村にいた男性の"楽奴"の2人であった。
スネアを叩く男と、ウッドベースを弾く男、リズム隊と呼ばれる楽器を担当する2人。
最奥のステージからの声は最手前にいる幸達には届かないが、
何かを叫び、こちらに向けて大きく手を振っていた。
その顔は笑顔である。
「あぁ!
すっかり忘れてた!
2人のこと!!
あの感じは私達のライブに参加するつもりね。
大丈夫。
あの人達ならどんな曲でもアドリブで合わせることが出来るよ。」
キヨラは無表情に話す。
楽奴達は長い間、楽しくない合奏を続けていたわけだ。
お互いの関係は冷え切っているそう。
なので、キヨラが幸を追っかけて走り出した時も特に止める事もなかったのだ。
それでも、その2人は、村人達と同じように、明日も来るかも?と期待して(期待のベクトルは真逆だが)、そして次はステージで!と、ホコリやチリなどを昨日のうちから片付け、掃除し、ピカピカのステージに仕上げていた。
幸達にはまだその熱意は伝わっていないが、扉を順に叩いて行った先に気付くことになる。
「しゅっしゅみません!
さっ、佐倉幸でふ!!
今日の夜、素敵な催し物があります!
そっそのチケットです!!
どうか受け取ってください!!」
速攻噛むが幸の精一杯である。
しかし、こちらもやはり、出て来てはくれない。
―シューッ―
空を切って地上に舞い降りたのはピーネ。
「だめだチケット、ヒラヒラして煙突に入ってくれない。」
空から煙の立ってない煙突目掛けて、チケットを落とすものの、目定められるはずもなく風に飛ばされてどこかへ飛んで行く。
「頑張ろう!
絶対成功させるんだ!」
幸は折れない。
3人は、どれだけ冷たくあしらわらても、風に飛ばされてもめげずに、右翼左翼、順番に扉を叩き、そしてピーネはチケットを落とした。
そして、一枚もチケットを手渡せる事なく、最奥のステージまで辿り着いてしまった。
「だっ駄目だ……。
このままじゃ、夜になっちゃう……。」
ついに心が折れる幸。弱音が垂れる。
「大丈夫!
幸!絶対なんとかなる!」
一枚として手渡せてないが、キヨラがにこりと笑いかける。
「そうだ!
大丈夫だ!!
俺もまだ飛べる!!」
ピーネも諦めない。
3人が気持ちを絶やさぬよう、鼓舞し合う中、ステージの上から声がする。
「おーい!キヨラ!
ステージ、ピカピカに掃除しといたぜ!!
俺達も混ぜてくれよ!」
男2人がこちらに向けて声をあげている。
「そこの君ー!
昨日の演奏、本当に感動したー!
ぜひ一緒に一曲弾かしてくれー!」
幸1人分の背丈ほどの高さのステージから、聞こえるその声は、幸達に勇気を与えるものであった。
「ステージ、綺麗にしてくれたんだ……。
ありがとう!!
俺もみんなで演奏したい!!
そのためのチケット配りだ!!」
幸は必死に自分を鼓舞する。
しかし、既に顔の割れている幸とキヨラのチケットを人々が手に取ってくれるわけもなく、事態は好転することなく刻々と時間だけが過ぎていく。
「頑張ってるけど駄目だ……。
いったいどうしたら……。」
チケットを配る事を成せない3人が途方に暮れる。
そんな時に大きな声が、子供の小さな6つの口から聞こえて来るのだった。
「「「「「「俺達に任せろ!!!!!!」」」」」」
………………。
…………。
……。
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【バーウの村】
バーウの村は人々で溢れかえっていた。
村の名産であるピーマンをまるまま焼いた"ピーマン焼き"。
その屋台に並ぶ人々。その他も様々なお店も並ぶ。
多種多様な店が立ち並んでいる中央の通りは、賑やかであった。
幸とキヨラが村のエントランスに入った時、村人は2人の存在にすぐに気付き始める。
昨日の今日であるから、警戒していたようだ。
すると、うじゃうじゃといた人々は、まるで蜘蛛の子を散らすように自宅へ帰って行く。
あっという間に伽藍堂の中央通りになってしまった。
バーウの村は、中央通りから綺麗に左右に店と家が並んでいる村だ。
村の入り口から通りを行き切った先の、最奥にあるステージがポツンと取り残されている。
「……今の間に屋台の食べ物、食べちゃおうか。」
これもまたポツンと取り残された屋台に捨て置かれた食べ物達を見て言う。
日頃から羨ましくみていたのであろう、ほかほかと湯気立つ肉まんのようなものや、宝石の様にキラキラした果実を見つめながら冗談をのたまうキヨラ。
「……駄目だよ。
一件一件、扉を叩いて開けてもらうしかない……。
頑張ろう。」
幸の決意はまだまだ折れなかった。
「冗談だよ……。
そうだね!
幸なら大丈夫。行こう!!」
キヨラはそう言うとまずは私が切り込む!と勢い良く右側の道に並んだ家々の扉を一件一件叩いて行く。
「すいません!
開けてください!!
とても素晴らしい催し物が今夜、ステージで開催されます!
そのチケットをプレゼントしたいだけなんです!」
キヨラの懸命な訴えは、居留守で応えられる。
夜のライブは、今はほとんど使われていない、村の最奥に鎮座するステージで行う予定である。
その使われていないステージに気づけば、2人の人影が……。
それはキヨラ以外にこの村にいた男性の"楽奴"の2人であった。
スネアを叩く男と、ウッドベースを弾く男、リズム隊と呼ばれる楽器を担当する2人。
最奥のステージからの声は最手前にいる幸達には届かないが、
何かを叫び、こちらに向けて大きく手を振っていた。
その顔は笑顔である。
「あぁ!
すっかり忘れてた!
2人のこと!!
あの感じは私達のライブに参加するつもりね。
大丈夫。
あの人達ならどんな曲でもアドリブで合わせることが出来るよ。」
キヨラは無表情に話す。
楽奴達は長い間、楽しくない合奏を続けていたわけだ。
お互いの関係は冷え切っているそう。
なので、キヨラが幸を追っかけて走り出した時も特に止める事もなかったのだ。
それでも、その2人は、村人達と同じように、明日も来るかも?と期待して(期待のベクトルは真逆だが)、そして次はステージで!と、ホコリやチリなどを昨日のうちから片付け、掃除し、ピカピカのステージに仕上げていた。
幸達にはまだその熱意は伝わっていないが、扉を順に叩いて行った先に気付くことになる。
「しゅっしゅみません!
さっ、佐倉幸でふ!!
今日の夜、素敵な催し物があります!
そっそのチケットです!!
どうか受け取ってください!!」
速攻噛むが幸の精一杯である。
しかし、こちらもやはり、出て来てはくれない。
―シューッ―
空を切って地上に舞い降りたのはピーネ。
「だめだチケット、ヒラヒラして煙突に入ってくれない。」
空から煙の立ってない煙突目掛けて、チケットを落とすものの、目定められるはずもなく風に飛ばされてどこかへ飛んで行く。
「頑張ろう!
絶対成功させるんだ!」
幸は折れない。
3人は、どれだけ冷たくあしらわらても、風に飛ばされてもめげずに、右翼左翼、順番に扉を叩き、そしてピーネはチケットを落とした。
そして、一枚もチケットを手渡せる事なく、最奥のステージまで辿り着いてしまった。
「だっ駄目だ……。
このままじゃ、夜になっちゃう……。」
ついに心が折れる幸。弱音が垂れる。
「大丈夫!
幸!絶対なんとかなる!」
一枚として手渡せてないが、キヨラがにこりと笑いかける。
「そうだ!
大丈夫だ!!
俺もまだ飛べる!!」
ピーネも諦めない。
3人が気持ちを絶やさぬよう、鼓舞し合う中、ステージの上から声がする。
「おーい!キヨラ!
ステージ、ピカピカに掃除しといたぜ!!
俺達も混ぜてくれよ!」
男2人がこちらに向けて声をあげている。
「そこの君ー!
昨日の演奏、本当に感動したー!
ぜひ一緒に一曲弾かしてくれー!」
幸1人分の背丈ほどの高さのステージから、聞こえるその声は、幸達に勇気を与えるものであった。
「ステージ、綺麗にしてくれたんだ……。
ありがとう!!
俺もみんなで演奏したい!!
そのためのチケット配りだ!!」
幸は必死に自分を鼓舞する。
しかし、既に顔の割れている幸とキヨラのチケットを人々が手に取ってくれるわけもなく、事態は好転することなく刻々と時間だけが過ぎていく。
「頑張ってるけど駄目だ……。
いったいどうしたら……。」
チケットを配る事を成せない3人が途方に暮れる。
そんな時に大きな声が、子供の小さな6つの口から聞こえて来るのだった。
「「「「「「俺達に任せろ!!!!!!」」」」」」
………………。
…………。
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