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第1巻 異世界でもギターしかなかった ~迷わずの森とバーウの村~

第7話「種族混合村と大合唱」

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 「ついたぞ!!」

 ピーネの道案内でたどり着いた村は、
それは、村と言うにはかなりおそまつなものではあった。
    
 森の中の少し開けた空間をおそらく爪や牙であろう、邪魔な位置にある木を雑にへし折り、太くとがった幹と根が、そのままになっているのが所々見受けられる。
 
 家と思われる建物も、石や鉄などの鋼材も、布等の繊維素材も使わず、何者かが、ただ木の上を陣地として所有していたり、鳥の巣の様に木を編んでドーム状にしている様な家ばかりだ。

 そして、確かに魔物の村であることは間違いない。
そこまで広くないであろうこの集落を見渡せば、耳がとがって緑色をしている者や、豚の顔をした巨漢がいたり、水の様な生き物だっている。

 まさに日本にはいなかった、ラノベに出てくるような「ザ モンスター」というような生き物ばかりであった。

「ここがピーネの村か……。」
幸はこの世界は、まだこの「迷わずの森」しか知らないので、元の世界と比べる事は出来ても、これがこの異世界でのどの程度の文明力なのかは全く図れない。

 ただ、何か加工したのであろう道具や工具、皿や壺の様な陶材も見当たらない。
だとすると、ここには人間のような文明人はおらず、やはりそれが作れる人間の知恵、技術の偉大さを、幸は何となく感じた。
   
「幸!待ってろ!俺も家から取ってくる!」
ピーネはそういってバサバサと翼を仰いで幸から離れていく。
    
「え!?ちょっちょっと待ってよ!」
独りにされた幸は叫ぶ。

    
             ”ギャオース!!!”


 幸が叫んだせいか、魔物達がどんどん集まって来た。
先ほどから見えていた者達のほかにも、身体が馬で人の身体がある者や、自分の身体よりも遥かに大きな蜘蛛も現れた。

 さらに後方からは角が生えて一つ目の大男が歩いて来る。

 混合村と呼ばれ、はぶれた物共が集まるとピーネが言っていたが、同じ種族である魔物は、なるほど、1人として見受けられなかった。
   
「ひぃ~!!」
幸は、先ほどはピーネ、たった一人にすらゲームオーバーを覚悟していたのに、これほどの数の魔物と対峙するのは恐怖でしかない。

 しかもピーネはどこかに飛び去った。

 幸は恐れながらも、これしかないとばかりに抱えていた物を見る。
そして緑の相棒を演奏するポジションに構えた。
        

            「B E F# G#m7♪」


 奏でられた音はキーの音から始まり綺麗に循環しまたキーに戻る優しいコード進行。
 物悲しさはなく元気に、そしてその中に温かな優しさが包まれたメロディー。

 幸はそれを巧みなアルペジオで優しくつま弾いた。

    

                「~♪」

    

「なんだこれは!?」

「美しい!」

「気持ちいい」

魔物の奇声が次々に言語化され、幸の耳に届く。

   

                「~♪♪」

   

「最高だ!!」

「涙が勝手に溢れてくる」

 この規模の村なら、余裕で端から端まで届いていく。
いつしか村の生物全員が、幸の元まで寄って来て音楽を聞き入っていた。

  
              「ピロポン♪パロポン♪」


 そんな時、上空から弦楽器が小気味良いリズムを蓄えて鳴る。
幸はギターを弾きながら上空を見る。

 ピーネだった。

 幸を置いて飛び去ったピーネは、"ハープ"を自分の家から取って戻って来たのだ。

 着地したピーネのハープは、ギターに寄り添う様に爪弾かれ、幸のギターの輪郭が強くなっていく。

          "文明の力がないこの村に何故ハープが?"

 と言うクエスチョンは後述する事になるが、ハーピーのハープ、その音色も幸のギターと重なり、キラキラと光を帯びて村中に伝わって行く。


 幸はニヤニヤが止まらない。


 誰かと演奏を披露するのは、幸にとって人生で2回目だが、一人で弾くより10倍楽しいのは既に知っている。

 村は幸せに包まれていつしか全員肩を組み歌い出す。


「WOW!!さぁ輪になって踊ろう!!らららららすぐに分かるから!!」
と言わんばかりにゴブリンやオークやスライム達は高らかにみんなで歌い出すのだ。


 幸も嬉しくなって、ギターを止めない。



            「~♪」

   

 幸とピーネの2重奏は、この村の全ての魔物を虜にした。

 幸の笑顔は村中の魔物を笑顔にした。

 そして大合唱を巻き起こしたところで、最後の小節も弾き切っていた。

   

   「「「「パチパチパチパチ」」」」


 村の魔物達が怒号の様な拍手と共に、


   「「「「「お前はもう俺たちの仲間だ!」」」」」

 心が一つになった瞬間である。

 幸は気持ちよさの中にトリップしていく。

……。

……やっぱりライブって最高。

…………目の前がまだ真っ白に揺らめいて輝いてんだ。

………………。

…………。

……。

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