111 / 111
救世主と忍者の新たな使命 (アカイ54)
しおりを挟む
ことは全て秘密裏に片付けられたようだった。
封印の解除は城周辺にて限定的に行われたために外にはまだ漏れていなかった。城に集結していた鬼ン肉一族は逮捕されたものの、彼らにはもはや脅威はないため後に釈放されるとのこと。
「そなたのおかげで世界の秩序は元に戻った。礼を言うぞキリヒトまたは救世主」
同じ机に座っている俺はイエス王子に名前を呼ばれ感謝を述べられた。これが王子かとそのカッコよさに圧倒されるも何故か脅威を感じなかった。それどころかどこか懐かしい、いや不思議な親しみやすささえ覚えている。あれかな? 俺には構ってくれるクラスメイトの女子はいなかったが構ってくれるイケメン男子がいたなという記憶があるからそれか?
「いや、その、こちらこそありがとうぞんじあげまして」
礼儀作法なんてろくに習ってこなかったため、意味不明な口上を述べると王子は苦笑いした。
「やめてくれ。そなたと余は対等の関係なんだからな」
「どこが?」
俺は素のままそう返すと王子が机を叩いて笑った。
「その反応こそが、それだな。余とそなたは同じなのだ。ともに救世主。余はこの現世においての、そしてそなたは違う世界からのだ」
言いながら王子は俺の胸を指差した。
「そなたも余の胸を指差せ」
言われたので俺は王子の胸を指差すと、自分の胸に炎が宿ったかのように熱を持った。
「そなたの炎は余の胸に宿り、そして余からそなたへと戻った。余の光と共にな。血を分かち合ったもの同士どころか炎と光を分かち合ったもの同士だ。対等でないとしたらなんだというのか?」
「いや、でも、しかしその」
「おっするとこう言いたいのか? 対等ってなんだ? お前は俺より下の癖に、といった反感をもっているとか?」
「いやいやそうじゃなくてその」
「冗談だ。まぁこのことは別に公表するということではないからな。知っているのは余とそなた、それだけだ。マチョにだって教えるつもりはない」
シノブは? と俺は思ったが王子が言った。
「そなたもここだけの話にしてくれ。まっ誰にも話さないと信頼しているから伝えたのだがな」
俺は掌を見ると光って見えた。見覚えのあるその輝き。
「……もしかしてあの時に俺を導いてくれたのは」
「ご存じのように余だよキリヒト。死に瀕している余は感じたのだ。そなたの炎をな。だから最後の力で以って呼んだといって過言ではない。とはいえ」
王子は俺の掌をとると自らの掌で以って影を作り、光を消した。
「弱い輝きを放つのみだ。こちらも炎を出せるがちょっとあったかいなと感じる程度の火だ。お互いに身体に残ったものはこの程度、まぁこんなものだ。さて」
王子は俺に目を合わせながら、言った。
「どうしたい救世主?」
「えっと……先ず借りた財布を返したいな。それとお爺さんにお礼をね」
「いや、そうではなくてだな……」
城を出て道すがら俺は考えた。どうしたいのだろうか?
王子は俺に提案をしてきた、望みは何だと。公式に表彰することはできないが、その代わりにこちらの可能な限りの礼をしたいと。金か地位か土地かそれとも他の何かか。財布の中身の返済はどうでもいいと笑われたものの、あの王子ならなんでも願いを聞き入れてくれるのだろう。だが俺はその返事を保留した。
すると王子は笑顔で肩を叩きながら言った。
「ならゆっくりと考えてからまた来てくれ。余はいつでもそなたと会うと。なぁ兄弟」
その言い方だと兄はそちららしいが、年なら俺の方がずっと上だとは思うものの口に出さなかった。そこについても俺は成長したはずなのだから。
それよりも俺は考えなくてはならない、俺は何を望んでいるのか。そんなのは当然幸せだが、それはそのまま。
「……シノブ」
あの時以来俺はシノブとは会っていない。俺は王子によって治療を受け続けるその間に彼女はいなかった。
もう数日が経ちその気配はどこにもない。俺の元から去ったのだろう。使命を終えたのだから、もう俺達の関係は……そんなことをぐるぐると考えながら、最後に泊まった宿屋に向かった。
一応、荷物があるし。捨てられたらと心配していたら王子から大丈夫だと言われるも一応戻ることにした。というか俺にとって戻る場所なんかこの世界にはどこにもないし。
だったらとりあえずここで、と部屋に入ると声を掛けられた。
「遅かったね」
シノブがいつもの旅の衣装で荷物のうえに座っていた。
「準備は済んでいるからもう行こうか」
「どこに?」
呆然とする俺はアホみたいな声で尋ねた。
「どこにって……決まっているじゃない」
いつも俺に見せていた呆れ顔でシノブは答える。
「私の実家のある里よ。だからアカイ」
シノブはふしぎと笑った。
「荷物を持ってよ」
分かった、これが最後の使命だと俺は納得した。シノブが里に戻ることで全ては丸く収まる。
家に帰るまでが遠足・使命です。
そうだとも俺は小学校の頃の担任の言葉をよく覚えている。そんなことを道すがら懐かしみながら俺はシノブの荷物を背負い共に歩いた。
ぽつぽつと会話をすると、どうやらシノブの力は元に戻ってしまったらしい。その元に戻ったは俺が知っている方のほうであって、つまり弱いほう。
「王子の血は封印の力の源らしくてね。それを浴びてしまって私は弱くなっちゃったみたいなの」
それはそのまま王子の復活と共にシノブの力もまた封印されてしまったとのこと。良い、すごく、良い。巨大な力を持った美少女が力を封印されてしまった設定、やはり良い。考えてみるとこれは俺が最初にシノブに抱いた感想であって、意外と俺は外していなかったと自分の判断に対して妙な感想を抱いた。
「治療というか封印解除は可能みたいなんだけど時間が掛かるようなの。方法はすごく限定的なものらしいけれど、それでもまぁいつかは元に戻れるようだから大丈夫みたい」
楽観的だなと思いつつも俺は思った。シノブは頗る機嫌がいいと。とてもふしぎだ。世界は不思議に統治されているとはいえふしぎだ。だってシノブの目的は王妃になることだったのに。
王子はそのまま鬼みたいな顔をした女を嫁にするようだ。俺はすごいなと思った。これが王だ偉い人は違う。男は凄まじい力を持つ女を嫁に持つ男を尊敬する生き物なのだ。
高貴なるものの義務ってやつ? そんな男がシノブを選ばなくても俺は少しも怒りを覚えない。だがシノブは違うはずだ。あんなに頑張っていたのに結局は願いは叶わずに世界だけを救った。
偉いなぁシノブはと俺はこちらにも強い敬意を抱いた。それもまた王子への愛とも考えると更に偉さが増した。使命に生きた女の子だったわけだ。
だけども俺は? と空を見上げた。あるのは濃いめの青だけだ。
そうだ俺もまた使命だけを成し遂げて光の輪に包まれてこの世界から消失するはずだ。あの時に俺は拒否してしまったから一時停止状態なのだろう。
この広い空のどこかにあるはずのそれ。今か今かと待ち構えているはず。あちらとしては今すぐにでも発動させたいのだろう。
だけどもう少しだけ待ってくれ。シノブの荷物を里に届けなくてはならないのだから。というか俺の使命って要約すると、そのひとつになるのかもしれない。このやけに重い荷物との旅。シノブには背負いきれないもの。
人の苦しみを代わりに背負う。
誠に実に俺らしくてなかなかによろしい。愛した女のために頑張る。理想の俺らしくてよろしい。それにしてもこの坂道は苦しいな。人の一生は荷物を背負って坂道を登るが如くってやつか?
シノブは身体が弱いとはいえ地元であるからかすいすいと登っていく。ほんとうに身体が弱体化したままなのか疑わしいが、待ってくれ待って。
「アカイ早く」
笑いながら言うがそんなに急がせないでくれ。もう少しだけこの世界に居させてくれ。君がいるこの世界に俺は少しでも長くいたい。俺の願いはそれだけだ。そしてそれがとてつもなく偉大な願いなんだ。
坂道を登り切ると村の門が見えた。ゴールだ。つまりあそこまで歩いたら俺は……そう考えると俺は二の足を踏むというか地面に足を強く踏んだ。一歩一歩を大事にするように。
それを眺めていたシノブは不審な眼つきをこちらに向けたすぐ後に、怪しげな眼つきになりそれから俺の手を取り、引っ張った。
やめて俺を殺す気か? 当初の目的通りに! と俺は思うとシノブは無言で微笑みながら俺を引いていく。
でも俺の心はなんだか満たされる。無限に満たされていく。身体のどこかにある空っぽな空間がシノブで埋まっていく。
このシノブの手に引かれながら歩くこの時間が永遠になったら、いや、いまのこの瞬間が俺にとっての永遠なんだ。僅かなこの時を永遠にしたいと願うその心こそが永遠となり、俺は生きたということなんだ。そうだ俺は生きた、だから死ぬ、死ねる、永遠を願ったのだから。
ああ! 丘を越えてしまった! おお! 神の国が現れ俺はそこを訪れてしまうぞ! あっという間に門に辿り着くと村の人たちが集まってきた。
シノブのお出迎いなのだろう。
正面にスレイヤーとカオリもいる。彼女が手を振ってくれたので振り返したいができない。俺の左手にはシノブの荷物、俺の右手にはシノブの手。いつかは離れてしまう手が握られている。
少し早歩きになったためかシノブは呼吸を整えている。挨拶を言う力を溜めているのだろう。シノブはひとつ息を吐きそれから吸った。それが掌から伝わってきた。
そのシノブの命の息吹。
「みんな紹介するね。この人は私の」
挨拶の口上の最中に俺は空を見上げた。変わらぬ青空。さぁエンディングだ。もう現れていいぞ光の輪よ。あの輝きで以って俺を予定通りに終わらせてくれ。
しかしそんな気配はまるで感じられない。どうしてだ使命は終えるのだぞ?
それともなにか? 俺の使命はまだあるということなのかな?
完
封印の解除は城周辺にて限定的に行われたために外にはまだ漏れていなかった。城に集結していた鬼ン肉一族は逮捕されたものの、彼らにはもはや脅威はないため後に釈放されるとのこと。
「そなたのおかげで世界の秩序は元に戻った。礼を言うぞキリヒトまたは救世主」
同じ机に座っている俺はイエス王子に名前を呼ばれ感謝を述べられた。これが王子かとそのカッコよさに圧倒されるも何故か脅威を感じなかった。それどころかどこか懐かしい、いや不思議な親しみやすささえ覚えている。あれかな? 俺には構ってくれるクラスメイトの女子はいなかったが構ってくれるイケメン男子がいたなという記憶があるからそれか?
「いや、その、こちらこそありがとうぞんじあげまして」
礼儀作法なんてろくに習ってこなかったため、意味不明な口上を述べると王子は苦笑いした。
「やめてくれ。そなたと余は対等の関係なんだからな」
「どこが?」
俺は素のままそう返すと王子が机を叩いて笑った。
「その反応こそが、それだな。余とそなたは同じなのだ。ともに救世主。余はこの現世においての、そしてそなたは違う世界からのだ」
言いながら王子は俺の胸を指差した。
「そなたも余の胸を指差せ」
言われたので俺は王子の胸を指差すと、自分の胸に炎が宿ったかのように熱を持った。
「そなたの炎は余の胸に宿り、そして余からそなたへと戻った。余の光と共にな。血を分かち合ったもの同士どころか炎と光を分かち合ったもの同士だ。対等でないとしたらなんだというのか?」
「いや、でも、しかしその」
「おっするとこう言いたいのか? 対等ってなんだ? お前は俺より下の癖に、といった反感をもっているとか?」
「いやいやそうじゃなくてその」
「冗談だ。まぁこのことは別に公表するということではないからな。知っているのは余とそなた、それだけだ。マチョにだって教えるつもりはない」
シノブは? と俺は思ったが王子が言った。
「そなたもここだけの話にしてくれ。まっ誰にも話さないと信頼しているから伝えたのだがな」
俺は掌を見ると光って見えた。見覚えのあるその輝き。
「……もしかしてあの時に俺を導いてくれたのは」
「ご存じのように余だよキリヒト。死に瀕している余は感じたのだ。そなたの炎をな。だから最後の力で以って呼んだといって過言ではない。とはいえ」
王子は俺の掌をとると自らの掌で以って影を作り、光を消した。
「弱い輝きを放つのみだ。こちらも炎を出せるがちょっとあったかいなと感じる程度の火だ。お互いに身体に残ったものはこの程度、まぁこんなものだ。さて」
王子は俺に目を合わせながら、言った。
「どうしたい救世主?」
「えっと……先ず借りた財布を返したいな。それとお爺さんにお礼をね」
「いや、そうではなくてだな……」
城を出て道すがら俺は考えた。どうしたいのだろうか?
王子は俺に提案をしてきた、望みは何だと。公式に表彰することはできないが、その代わりにこちらの可能な限りの礼をしたいと。金か地位か土地かそれとも他の何かか。財布の中身の返済はどうでもいいと笑われたものの、あの王子ならなんでも願いを聞き入れてくれるのだろう。だが俺はその返事を保留した。
すると王子は笑顔で肩を叩きながら言った。
「ならゆっくりと考えてからまた来てくれ。余はいつでもそなたと会うと。なぁ兄弟」
その言い方だと兄はそちららしいが、年なら俺の方がずっと上だとは思うものの口に出さなかった。そこについても俺は成長したはずなのだから。
それよりも俺は考えなくてはならない、俺は何を望んでいるのか。そんなのは当然幸せだが、それはそのまま。
「……シノブ」
あの時以来俺はシノブとは会っていない。俺は王子によって治療を受け続けるその間に彼女はいなかった。
もう数日が経ちその気配はどこにもない。俺の元から去ったのだろう。使命を終えたのだから、もう俺達の関係は……そんなことをぐるぐると考えながら、最後に泊まった宿屋に向かった。
一応、荷物があるし。捨てられたらと心配していたら王子から大丈夫だと言われるも一応戻ることにした。というか俺にとって戻る場所なんかこの世界にはどこにもないし。
だったらとりあえずここで、と部屋に入ると声を掛けられた。
「遅かったね」
シノブがいつもの旅の衣装で荷物のうえに座っていた。
「準備は済んでいるからもう行こうか」
「どこに?」
呆然とする俺はアホみたいな声で尋ねた。
「どこにって……決まっているじゃない」
いつも俺に見せていた呆れ顔でシノブは答える。
「私の実家のある里よ。だからアカイ」
シノブはふしぎと笑った。
「荷物を持ってよ」
分かった、これが最後の使命だと俺は納得した。シノブが里に戻ることで全ては丸く収まる。
家に帰るまでが遠足・使命です。
そうだとも俺は小学校の頃の担任の言葉をよく覚えている。そんなことを道すがら懐かしみながら俺はシノブの荷物を背負い共に歩いた。
ぽつぽつと会話をすると、どうやらシノブの力は元に戻ってしまったらしい。その元に戻ったは俺が知っている方のほうであって、つまり弱いほう。
「王子の血は封印の力の源らしくてね。それを浴びてしまって私は弱くなっちゃったみたいなの」
それはそのまま王子の復活と共にシノブの力もまた封印されてしまったとのこと。良い、すごく、良い。巨大な力を持った美少女が力を封印されてしまった設定、やはり良い。考えてみるとこれは俺が最初にシノブに抱いた感想であって、意外と俺は外していなかったと自分の判断に対して妙な感想を抱いた。
「治療というか封印解除は可能みたいなんだけど時間が掛かるようなの。方法はすごく限定的なものらしいけれど、それでもまぁいつかは元に戻れるようだから大丈夫みたい」
楽観的だなと思いつつも俺は思った。シノブは頗る機嫌がいいと。とてもふしぎだ。世界は不思議に統治されているとはいえふしぎだ。だってシノブの目的は王妃になることだったのに。
王子はそのまま鬼みたいな顔をした女を嫁にするようだ。俺はすごいなと思った。これが王だ偉い人は違う。男は凄まじい力を持つ女を嫁に持つ男を尊敬する生き物なのだ。
高貴なるものの義務ってやつ? そんな男がシノブを選ばなくても俺は少しも怒りを覚えない。だがシノブは違うはずだ。あんなに頑張っていたのに結局は願いは叶わずに世界だけを救った。
偉いなぁシノブはと俺はこちらにも強い敬意を抱いた。それもまた王子への愛とも考えると更に偉さが増した。使命に生きた女の子だったわけだ。
だけども俺は? と空を見上げた。あるのは濃いめの青だけだ。
そうだ俺もまた使命だけを成し遂げて光の輪に包まれてこの世界から消失するはずだ。あの時に俺は拒否してしまったから一時停止状態なのだろう。
この広い空のどこかにあるはずのそれ。今か今かと待ち構えているはず。あちらとしては今すぐにでも発動させたいのだろう。
だけどもう少しだけ待ってくれ。シノブの荷物を里に届けなくてはならないのだから。というか俺の使命って要約すると、そのひとつになるのかもしれない。このやけに重い荷物との旅。シノブには背負いきれないもの。
人の苦しみを代わりに背負う。
誠に実に俺らしくてなかなかによろしい。愛した女のために頑張る。理想の俺らしくてよろしい。それにしてもこの坂道は苦しいな。人の一生は荷物を背負って坂道を登るが如くってやつか?
シノブは身体が弱いとはいえ地元であるからかすいすいと登っていく。ほんとうに身体が弱体化したままなのか疑わしいが、待ってくれ待って。
「アカイ早く」
笑いながら言うがそんなに急がせないでくれ。もう少しだけこの世界に居させてくれ。君がいるこの世界に俺は少しでも長くいたい。俺の願いはそれだけだ。そしてそれがとてつもなく偉大な願いなんだ。
坂道を登り切ると村の門が見えた。ゴールだ。つまりあそこまで歩いたら俺は……そう考えると俺は二の足を踏むというか地面に足を強く踏んだ。一歩一歩を大事にするように。
それを眺めていたシノブは不審な眼つきをこちらに向けたすぐ後に、怪しげな眼つきになりそれから俺の手を取り、引っ張った。
やめて俺を殺す気か? 当初の目的通りに! と俺は思うとシノブは無言で微笑みながら俺を引いていく。
でも俺の心はなんだか満たされる。無限に満たされていく。身体のどこかにある空っぽな空間がシノブで埋まっていく。
このシノブの手に引かれながら歩くこの時間が永遠になったら、いや、いまのこの瞬間が俺にとっての永遠なんだ。僅かなこの時を永遠にしたいと願うその心こそが永遠となり、俺は生きたということなんだ。そうだ俺は生きた、だから死ぬ、死ねる、永遠を願ったのだから。
ああ! 丘を越えてしまった! おお! 神の国が現れ俺はそこを訪れてしまうぞ! あっという間に門に辿り着くと村の人たちが集まってきた。
シノブのお出迎いなのだろう。
正面にスレイヤーとカオリもいる。彼女が手を振ってくれたので振り返したいができない。俺の左手にはシノブの荷物、俺の右手にはシノブの手。いつかは離れてしまう手が握られている。
少し早歩きになったためかシノブは呼吸を整えている。挨拶を言う力を溜めているのだろう。シノブはひとつ息を吐きそれから吸った。それが掌から伝わってきた。
そのシノブの命の息吹。
「みんな紹介するね。この人は私の」
挨拶の口上の最中に俺は空を見上げた。変わらぬ青空。さぁエンディングだ。もう現れていいぞ光の輪よ。あの輝きで以って俺を予定通りに終わらせてくれ。
しかしそんな気配はまるで感じられない。どうしてだ使命は終えるのだぞ?
それともなにか? 俺の使命はまだあるということなのかな?
完
0
お気に入りに追加
8
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる