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まだ終わりではない (アカイ36)
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そう、いまの言葉を翻訳したら私はあなたの事が好きですになるのではないのか? そう考えても良いのではないのか? そうであっても良いのではないか? いいやそうであるべきだが、ひとまず俺の聴き間違いという可能性も考慮し己の耳を疑い確認して見よう。
「嫌、なのか」
恐る恐る確認のために小声で聞き返すとすぐさま返事が来た。あたかもコール&レスポンスのごとくに。
「嫌なの」
好きです、と俺には聞こえた、聞こえたのだ、聞こえていいのだ。俺は難聴型主人公であることを否定し耳が敏感な主人公をここに自認する。正直もう解釈を通り越してこちらの魂で以って勝手に判断しているわけだが、それでも俺はそう思わざるを得なかった。
シノブ……以前ならここはあなたがどの女と仲良くしていても別に私にとって死ぬ程どうでもいいから勝手にしていたら? といった無関心な態度をとるはずだ。それなのに今となってはもうそんな態度をとらなくなっている。はっきりと言ったのだ。俺は聴いたのだ。他の女のことを好きになっちゃ嫌だって。
どうしてそんなことを言うんだい? そんなの決まっているじゃないか。私はあなたの事が好きだから……ええい! 弁えんかアカイ!! 俺は心中において己を罵り引っ叩いて地面に転がし倒れた俺の腹に蹴りを入れた。この一人二役ってなかなか疲れんだよこれ。
まーたまた調子に乗るんじゃあない! そんなことあるわけないだろ! 愚かにもほどがある妄想が過ぎるんだよ。まるで痛々しいおっさんじゃないか! ガールズバーとかで若いだけの娘に揶揄われ騙されている哀れで寂しい中年オヤジ丸出し思考だろそれ。お前はああいうのとは違うんだから気をつけろ! そうだ俺はああいうのとは違うんだ! ああなってはおしまい! そうなる一歩手前で辛うじてとどまっておくんだ! お前がお前であるために、人間であるために、己という人間の尊厳を守るためにだ。
よって俺は客観的かつシビアに正しくクールにシノブの今の言葉を捕えることが可能なのだ。さて、いまのあなたの事が好きだが、これは文字通りの意味である。シノブは俺のことが、好き。こうなる。これはそのまま受け取って良いとはいえ、ただし、がつく。ここに気付けるのが弁えている証拠なのだ。他の男とちがってその点はちょっと賢い俺。勉強はできないが地頭が良いはずの俺。こんな無駄なことばかり考えているのは絶対に知能の無駄遣いだけどな。
さて話を戻し、ここは「ただし友達として仲間として同志としてあなたの事が好き」となる。
全く以てその通りだ。俺の心中において開催された会議はこれを以って満場一致で可決された。反対意見を言うものはこのアカイのように会場の外に連れ出されその腹に蹴りを入れられお陀仏だ。「一人の異性としてあなたの事が好きなはずだ!」といった早漏気味な気持ちの悪いことを言うアカイはこうして全員粛清され、俺というアカイの現実的な純粋さはより高まったと言えるのである。
だいたいそうでなかったら俺の冒険は終わってしまう。『愛する彼女に心の底から惚れられる』という素敵なゴール。こんなところで彼女の愛を手に入れてしまったら物語が中座してしまう。ほら見上げてごらんこの夜空のほにゃららを。上空には約束してくれた『大いなるもの』が出てくる気配がない。その大いなる力が舞い降りて来る気配すらないではないか。
これがなによりの証拠でもある。そうだ俺が試練を乗り越えた暁には何らかの形で以ってそれが現れ俺にエンディングをもたらすに決まっている。現在の空は静かで穏やかだ。何かが到来する予兆もこちらの予感すら、ない。よってこれはそうではない。
そもそもがだ、シノブはまだ俺に対する愛を自覚する段階にまで達しているとは到底に思えない。つまりはだ、シノブは俺に好意的な感情が芽生えここに恋心が始まったと考えるのが最も現実的かつ冷静かつ弁えている。しかもだ、自分の心の変化そのものにシノブはまだ気づいてはいないのだ。
俺が他の女の誘惑に負けそうになったことについて、どうしてかイライラしてなんだか嫌だというしかないこの不可思議さ。これは一言で言えば、恋の始まりだ。そうだシノブ君は俺に恋をし始めている。そうであって欲しいので、そうであるのだ、そうでなくてはならない。
だがしかし、俺はそこを指摘しない。俺のことが好きなんだろ? とかそんな究極レベルの無駄で余計なことなんか言ったりなんかしない。それは恋の芽をむしり取るようなことだ。よってここは自然に放っておくのが極めてベストなのである。
この初期段階である友達と仲間認定。ここから焦らずじっくりと段階を踏んでいけばいいだけのことだ。よってあの好きです、で浮かれてはならない。そうであるからここで取りべき反応はこうだ。
「ごめんごめん、もう二度としないよ」
仲間として男としての対応。あまり動き過ぎてはならない。これだクールにいくぜ。どうだいシノブ?
「嫌、なのか」
恐る恐る確認のために小声で聞き返すとすぐさま返事が来た。あたかもコール&レスポンスのごとくに。
「嫌なの」
好きです、と俺には聞こえた、聞こえたのだ、聞こえていいのだ。俺は難聴型主人公であることを否定し耳が敏感な主人公をここに自認する。正直もう解釈を通り越してこちらの魂で以って勝手に判断しているわけだが、それでも俺はそう思わざるを得なかった。
シノブ……以前ならここはあなたがどの女と仲良くしていても別に私にとって死ぬ程どうでもいいから勝手にしていたら? といった無関心な態度をとるはずだ。それなのに今となってはもうそんな態度をとらなくなっている。はっきりと言ったのだ。俺は聴いたのだ。他の女のことを好きになっちゃ嫌だって。
どうしてそんなことを言うんだい? そんなの決まっているじゃないか。私はあなたの事が好きだから……ええい! 弁えんかアカイ!! 俺は心中において己を罵り引っ叩いて地面に転がし倒れた俺の腹に蹴りを入れた。この一人二役ってなかなか疲れんだよこれ。
まーたまた調子に乗るんじゃあない! そんなことあるわけないだろ! 愚かにもほどがある妄想が過ぎるんだよ。まるで痛々しいおっさんじゃないか! ガールズバーとかで若いだけの娘に揶揄われ騙されている哀れで寂しい中年オヤジ丸出し思考だろそれ。お前はああいうのとは違うんだから気をつけろ! そうだ俺はああいうのとは違うんだ! ああなってはおしまい! そうなる一歩手前で辛うじてとどまっておくんだ! お前がお前であるために、人間であるために、己という人間の尊厳を守るためにだ。
よって俺は客観的かつシビアに正しくクールにシノブの今の言葉を捕えることが可能なのだ。さて、いまのあなたの事が好きだが、これは文字通りの意味である。シノブは俺のことが、好き。こうなる。これはそのまま受け取って良いとはいえ、ただし、がつく。ここに気付けるのが弁えている証拠なのだ。他の男とちがってその点はちょっと賢い俺。勉強はできないが地頭が良いはずの俺。こんな無駄なことばかり考えているのは絶対に知能の無駄遣いだけどな。
さて話を戻し、ここは「ただし友達として仲間として同志としてあなたの事が好き」となる。
全く以てその通りだ。俺の心中において開催された会議はこれを以って満場一致で可決された。反対意見を言うものはこのアカイのように会場の外に連れ出されその腹に蹴りを入れられお陀仏だ。「一人の異性としてあなたの事が好きなはずだ!」といった早漏気味な気持ちの悪いことを言うアカイはこうして全員粛清され、俺というアカイの現実的な純粋さはより高まったと言えるのである。
だいたいそうでなかったら俺の冒険は終わってしまう。『愛する彼女に心の底から惚れられる』という素敵なゴール。こんなところで彼女の愛を手に入れてしまったら物語が中座してしまう。ほら見上げてごらんこの夜空のほにゃららを。上空には約束してくれた『大いなるもの』が出てくる気配がない。その大いなる力が舞い降りて来る気配すらないではないか。
これがなによりの証拠でもある。そうだ俺が試練を乗り越えた暁には何らかの形で以ってそれが現れ俺にエンディングをもたらすに決まっている。現在の空は静かで穏やかだ。何かが到来する予兆もこちらの予感すら、ない。よってこれはそうではない。
そもそもがだ、シノブはまだ俺に対する愛を自覚する段階にまで達しているとは到底に思えない。つまりはだ、シノブは俺に好意的な感情が芽生えここに恋心が始まったと考えるのが最も現実的かつ冷静かつ弁えている。しかもだ、自分の心の変化そのものにシノブはまだ気づいてはいないのだ。
俺が他の女の誘惑に負けそうになったことについて、どうしてかイライラしてなんだか嫌だというしかないこの不可思議さ。これは一言で言えば、恋の始まりだ。そうだシノブ君は俺に恋をし始めている。そうであって欲しいので、そうであるのだ、そうでなくてはならない。
だがしかし、俺はそこを指摘しない。俺のことが好きなんだろ? とかそんな究極レベルの無駄で余計なことなんか言ったりなんかしない。それは恋の芽をむしり取るようなことだ。よってここは自然に放っておくのが極めてベストなのである。
この初期段階である友達と仲間認定。ここから焦らずじっくりと段階を踏んでいけばいいだけのことだ。よってあの好きです、で浮かれてはならない。そうであるからここで取りべき反応はこうだ。
「ごめんごめん、もう二度としないよ」
仲間として男としての対応。あまり動き過ぎてはならない。これだクールにいくぜ。どうだいシノブ?
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