34 / 111
ふわふわした自信に戦慄する忍者 (シノブ24)
しおりを挟む
とんでもない存在を寄越してくれたものだなその神様、と思いながらシノブは頷きながら聞いた。
そいつはもしかして疫病神のお仲間では? 送ってくれるのならもう少しましな存在も良かったはずよね? 都合は良いには良いがよりによって、これか。そこまで贅沢は言わないから、せめてもうちょっと若くて多少かっこよくてそこそこ強くて性格が良くてそしてなによりも下心のない男だったらどれほどよかったか。これは酷いと思うよ。年頃の女の子にこれをあてがうとか残酷な神が支配でもしているの? それともなに? 都合は良さと下心ありはトレードオフな関係だとも? スケベさは女の子を守りたい心と表裏一体とでも? でもバランスが悪いよ。それとそういうのって都合が悪いから切り離して欲しいよね。別にいいでしょ? 多少は夢ぐらい見させてくれても罰は当たらないわよ。こんな露悪な現実をぶつけてきてあなた自分が何をしているのか分かっているの?
「その、まぁ、細かいことは抜きにしてそのアカイにとっての神様に導かれたのだから、自分には能力や才能が開花するって発想、私は分からないんだけど」
「たとえば魔法とか術とかがこの世界にあると思うんだ」
おっ知っているのかとシノブはちょっと感心した。ある意味見直した。どこか妙に遠いところからやってきてもそういったことは知っているのか。数少ないアカイが有している常識の発見にシノブは安堵した。
「シノブもその魔法や術を使えるものなはずなんだ。そうだろ?」
「なんで知っているの?」
シノブは無意識に立ち上がりアカイを見ながら構えた。脊髄反射的な構え、臨戦態勢、そう、そうなのだ。忍者として正体を知られてしまったからには何らかの対処をしなければならない。そういった教育が骨の髄まで染み込んでいるがための行動。私は暗殺の訓練も受けた忍者。仲間以外にはうち明けられない誰にも言えない存在。
だがアカイはそれには気づいていないボケっとしたままシノブを見上げている。そしてシノブはアカイの瞳の色を見て座り直した。勘で当てたのに違いはないと判断して。何故ならアカイの瞳は呆けた色をして緊張感が皆無であったからだ。妙にぎらつきテカる瞳の光沢。その色は自分に対する分不相応な欲望ゆえのものだとも理解している。
「ごめんなさい。驚きのあまり立ち上がっちゃって」
「いやいいんだ。俺こそ秘密を話してしまって。まぁ勘なんだけどね」
「怖いぐらい勘が冴えているね」
他は鈍いにも程があるのにますます不気味だなぁとシノブは首を振りながら落ち着くために水を口に運んだ。
「まっまぁそれは君が力を封じられてしまっていることからの逆算というか、そこは隠さなくていいし否定しなくていい。間違いなく君は力を封印された魔法使いか何かに決まっている。そうでなければこんな旅にはならない。俺達は出会わない」
論理展開には難があるもののアカイのいつもの持論にはシノブは内心で驚く他なかった。しかし一方で。
「ええ。隠しもしないし否定もしません。私は力を封じられた呪われしもの、そういう解釈でお願いします。実際に私は今は使えませんがそういったことに関わってきたものです。しかし残念ながらそういったものは長い年月による修練が必要であるものであって、今までそういうことをしてこなかったものが突然魔女か何かに力を授けてやろうと言われその力を身に着けられるものではありません。そこだけは残念ながらいけませんね」
もっとも私は天才で少しの訓練でめきめきと才能を開花させていきましたけどね、とシノブは内心で笑いながら思う。ああ早く元の力に戻りたい……物思いに耽ろうとするとアカイの目は輝いている。なんで? 今の話で諦めて暗い瞳をしているはずなのに。あんたじゃ駄目って言ったつもりなんだけど。やっぱり勘が悪いな。
「訓練すれば、もしかしたらがあるんだな」
「えっ? ええ。でも才能があればな話しな上にその才能というのもかなり稀少なもので」
「そこは大丈夫だ。俺には才能があり理由もある。あとはきっかけだけなんだ」
アカイはそう言うと机の上の料理を一気に平らげ、立ち上がった。シノブは既に食べ終わっておりこれにて夕食は終わり。
「そうだよ俺はやればできる男なんだ。魔法も術もな。どうか教えてくれ。そして君の目的の力になりたい」
シノブは呆れを通り越して戦慄する。この無根拠どころか地に足がまるでついていないふわふわしきった自信は何だというのか? 自分が神に選ばれしなにかだと勘違いしているのでは? 一日どころか一晩で目覚めるはずがないというの。この天才だってそれはできなかった。それをこの男はそんな……ハァッと溜息を尽きつつシノブも立ち上がる。もしかしたらがあるし、それに、だ。その目的が自分のためつまり使命達成のためだというのなら断る理由はない。無駄だとは思うがやってみようか仕方がない。
ただし、部屋ではやめよう。部屋に入って来る口実もしくは入れさせようとする口実かもしれない。眠り薬は入れられなかったのだから今夜は最大限の警戒で以ってことに挑もう。シノブはそう思った。
そいつはもしかして疫病神のお仲間では? 送ってくれるのならもう少しましな存在も良かったはずよね? 都合は良いには良いがよりによって、これか。そこまで贅沢は言わないから、せめてもうちょっと若くて多少かっこよくてそこそこ強くて性格が良くてそしてなによりも下心のない男だったらどれほどよかったか。これは酷いと思うよ。年頃の女の子にこれをあてがうとか残酷な神が支配でもしているの? それともなに? 都合は良さと下心ありはトレードオフな関係だとも? スケベさは女の子を守りたい心と表裏一体とでも? でもバランスが悪いよ。それとそういうのって都合が悪いから切り離して欲しいよね。別にいいでしょ? 多少は夢ぐらい見させてくれても罰は当たらないわよ。こんな露悪な現実をぶつけてきてあなた自分が何をしているのか分かっているの?
「その、まぁ、細かいことは抜きにしてそのアカイにとっての神様に導かれたのだから、自分には能力や才能が開花するって発想、私は分からないんだけど」
「たとえば魔法とか術とかがこの世界にあると思うんだ」
おっ知っているのかとシノブはちょっと感心した。ある意味見直した。どこか妙に遠いところからやってきてもそういったことは知っているのか。数少ないアカイが有している常識の発見にシノブは安堵した。
「シノブもその魔法や術を使えるものなはずなんだ。そうだろ?」
「なんで知っているの?」
シノブは無意識に立ち上がりアカイを見ながら構えた。脊髄反射的な構え、臨戦態勢、そう、そうなのだ。忍者として正体を知られてしまったからには何らかの対処をしなければならない。そういった教育が骨の髄まで染み込んでいるがための行動。私は暗殺の訓練も受けた忍者。仲間以外にはうち明けられない誰にも言えない存在。
だがアカイはそれには気づいていないボケっとしたままシノブを見上げている。そしてシノブはアカイの瞳の色を見て座り直した。勘で当てたのに違いはないと判断して。何故ならアカイの瞳は呆けた色をして緊張感が皆無であったからだ。妙にぎらつきテカる瞳の光沢。その色は自分に対する分不相応な欲望ゆえのものだとも理解している。
「ごめんなさい。驚きのあまり立ち上がっちゃって」
「いやいいんだ。俺こそ秘密を話してしまって。まぁ勘なんだけどね」
「怖いぐらい勘が冴えているね」
他は鈍いにも程があるのにますます不気味だなぁとシノブは首を振りながら落ち着くために水を口に運んだ。
「まっまぁそれは君が力を封じられてしまっていることからの逆算というか、そこは隠さなくていいし否定しなくていい。間違いなく君は力を封印された魔法使いか何かに決まっている。そうでなければこんな旅にはならない。俺達は出会わない」
論理展開には難があるもののアカイのいつもの持論にはシノブは内心で驚く他なかった。しかし一方で。
「ええ。隠しもしないし否定もしません。私は力を封じられた呪われしもの、そういう解釈でお願いします。実際に私は今は使えませんがそういったことに関わってきたものです。しかし残念ながらそういったものは長い年月による修練が必要であるものであって、今までそういうことをしてこなかったものが突然魔女か何かに力を授けてやろうと言われその力を身に着けられるものではありません。そこだけは残念ながらいけませんね」
もっとも私は天才で少しの訓練でめきめきと才能を開花させていきましたけどね、とシノブは内心で笑いながら思う。ああ早く元の力に戻りたい……物思いに耽ろうとするとアカイの目は輝いている。なんで? 今の話で諦めて暗い瞳をしているはずなのに。あんたじゃ駄目って言ったつもりなんだけど。やっぱり勘が悪いな。
「訓練すれば、もしかしたらがあるんだな」
「えっ? ええ。でも才能があればな話しな上にその才能というのもかなり稀少なもので」
「そこは大丈夫だ。俺には才能があり理由もある。あとはきっかけだけなんだ」
アカイはそう言うと机の上の料理を一気に平らげ、立ち上がった。シノブは既に食べ終わっておりこれにて夕食は終わり。
「そうだよ俺はやればできる男なんだ。魔法も術もな。どうか教えてくれ。そして君の目的の力になりたい」
シノブは呆れを通り越して戦慄する。この無根拠どころか地に足がまるでついていないふわふわしきった自信は何だというのか? 自分が神に選ばれしなにかだと勘違いしているのでは? 一日どころか一晩で目覚めるはずがないというの。この天才だってそれはできなかった。それをこの男はそんな……ハァッと溜息を尽きつつシノブも立ち上がる。もしかしたらがあるし、それに、だ。その目的が自分のためつまり使命達成のためだというのなら断る理由はない。無駄だとは思うがやってみようか仕方がない。
ただし、部屋ではやめよう。部屋に入って来る口実もしくは入れさせようとする口実かもしれない。眠り薬は入れられなかったのだから今夜は最大限の警戒で以ってことに挑もう。シノブはそう思った。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。
Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。
それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。
そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。
しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。
命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる