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忍者指名手配 (シノブ16)
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「ばかものおおおおおお! なにをしておるんだおまえらはあああ」
ここは大臣の別荘がある地域とお城とのちょうど真ん中にある町の宿屋。大臣は忍者暗殺成功の知らせを一刻も早く聞きたくて堪らずに全速力でここまでやってきたものの、しかし! オオゼキ兄弟による報告は期待を裏切るものであったために頭が沸騰しきっている大臣の怒号もどこ吹く風な様子で兄弟は首を振り振り。
「だからあれは偽者ですってば大臣」
「そうそう偽忍者。俺達がこれから本物捜しますからご安心を」
「安心できるか! なんだその偽者ってのは! あれは正真正銘の忍者だぞ!」
自らの大声に息を切らしながら訴えるも兄弟にはまるで通じない。壁に卵を投げつけているかのような無力感。一体全体どういうことだと大臣は不条理感でいっぱいである。計画は完璧だった。最強忍者を最強兄弟によって地方で人知れず暗殺させる。あそこでなら王子の耳に入ることは絶対に無かった。油断も隙もない最善の一手。そうであるからこそ兄弟を見た瞬間に大臣の心は浮き上がった。ミッションコンプリートだな! だがそうではなかった。なんと兄弟は最強忍者を、見逃したのだ。二人が返り討ちに会うよりも酷い状況だ。
「弱体化していたのならそのまま暗殺すればいいだろうに!」
「おいおいおいおいやめてくれよ大臣。強ければ女の子だろうが戦って殺すがあんなよわっちい女の子を殺すとか絶対に出来ない」
兄の方が広い肩をすくめると弟が天を仰いだ。
「そんなことしたら筋肉が泣いちまうぜ。何のために俺達が鍛えていると思ってるんだ? 難行苦行の荒行は強敵と戦う為、これさ。あんなのを殺すのなら鍛えなくてもできるってやつだ。頼むんなら他のどうしようもないクズに頼んでくれ」
「お前ら騙されたんだぞ! あいつは難を逃れるために演技で以てお前らを」
「全然そうには見えなかったぜ。あれはマジで弱いぜ」
兄が自信たっぷりに告げたために大臣は何も言い返せない。もしかしてマチョとの闘いの傷が癒えていないとか? でも暗殺してくれよ!
「まぁもしも万が一にも演技だとしたら俺達は顔を覚えたからそれはそれでいいじゃん。正体を現したら俺達兄弟が全力で相手するからさ。そう怒るなって大臣。じゃ、とりあえず俺達は城の見回りに行くからまた後で」
さっさと部屋から出ていく二人を見ながら大臣は椅子を蹴った。憤懣やるかたなしとはまさにこのこと! その証拠が蹴った脚が痛くて後悔するぐらいだ!
あの脳筋どもめ! なんということだ! まさかここでこんな大失敗してしまうとは。なんだって? 新たな鬼ン肉族の刺客を放てばいいじゃないかって? 出来るかそんなこと! もう同族の猛者を派遣などできない。だってそのためには家族にそのことを告げなくてはならないからだ。
このことを妻になんと言えば良いのか? 息子になんと言い訳すればいい? 大臣は頭を抱えた。兄弟の失敗だがあいつらは絶対に俺のせいにする。俺を馬鹿にするということにかけてはあの女は容赦はなく息子も蔑みの目で俺を見るだろう! そんなのはいつものことだが今回に限ってはあんなに大見得を張ってやった手前、そんなことは絶対に言えない。このまま帰って忍者は暗殺されたと告げたい! そのことについて称賛はされないことは分かり切っているが、これ以上の軽蔑は買いたくない。マチョにも失望されたくもない……ここはなんとしてでも奴をこっそりこのまま暗殺せねば。その方法は。
「おい、あの地方にクズの巣窟といったものがあったよな?」
後ろで控えている部下に聞くと怯えた声が返ってきた。
「はっはい! ええっとそれはその冒険者ギルトいうものでしょうか?」
「金次第では無力な女子供すらなぶり殺しにする連中の癖に大層ご立派な名前がついているようだな」
「依頼するのはこちらなのですが」
「うるさい! これしかないんだから仕方がないんだよ! そうそのクズ連中に忍者暗殺の依頼を出す! 兄弟の話が本当で現在弱体化状態なら暴力が得意なだけの人間のクズたちでも仕留められよう。いいか? 大至急出して来い。それと兄弟には妻やマチョに聞かれてもこの件は解決したと答えるよう伝えておけ!」
「はっはいぃ!!」
部下は全速力で駆けていくと大臣は疲れから項垂れた。
「おのれ忍者め……」
大臣は眉間に皺を寄せながら思う。ここまで完璧に計画は進んでいたのだ、と。王子が産れたタイミングでマチョが誕生した。しかもマチョは母親の美貌と筋肉そして自分の頭脳を受け継いだ完璧なお姫様であった。誰にも負けるはずはなく予定通りに王妃候補受験に合格した。
これでついに歴代法王が我々に対してかけ続けてきた封印を解除できるところまでやって来られた。なにもかもが予定通りでありむしろ怖くなるぐらいに順調だという不安はある意味で的中してしまった。
あの真実を掴んだ忌々しき忍者が現れ肝心要のマチョを暗殺寸前にまで追い詰めてきた。奴は我々の計画の邪魔をする唯一無二な存在。不幸中の幸いというべきか誰にもそのことを話していないようであるが、それがもしも王子と接触したら……大臣は身震いした。
「忍者すべからく殺すべし」
必ず殺さなければならない。忍者を抹殺せねばならない。一族のために……それよりも愛しの娘のために。こうしてシノブは冒険者という名のごろつきどもに追われることとなった。
立ちはだかる女と酒にしか興味のないごろつきたち。危うし忍者、はたして救いはあるのか?
ここは大臣の別荘がある地域とお城とのちょうど真ん中にある町の宿屋。大臣は忍者暗殺成功の知らせを一刻も早く聞きたくて堪らずに全速力でここまでやってきたものの、しかし! オオゼキ兄弟による報告は期待を裏切るものであったために頭が沸騰しきっている大臣の怒号もどこ吹く風な様子で兄弟は首を振り振り。
「だからあれは偽者ですってば大臣」
「そうそう偽忍者。俺達がこれから本物捜しますからご安心を」
「安心できるか! なんだその偽者ってのは! あれは正真正銘の忍者だぞ!」
自らの大声に息を切らしながら訴えるも兄弟にはまるで通じない。壁に卵を投げつけているかのような無力感。一体全体どういうことだと大臣は不条理感でいっぱいである。計画は完璧だった。最強忍者を最強兄弟によって地方で人知れず暗殺させる。あそこでなら王子の耳に入ることは絶対に無かった。油断も隙もない最善の一手。そうであるからこそ兄弟を見た瞬間に大臣の心は浮き上がった。ミッションコンプリートだな! だがそうではなかった。なんと兄弟は最強忍者を、見逃したのだ。二人が返り討ちに会うよりも酷い状況だ。
「弱体化していたのならそのまま暗殺すればいいだろうに!」
「おいおいおいおいやめてくれよ大臣。強ければ女の子だろうが戦って殺すがあんなよわっちい女の子を殺すとか絶対に出来ない」
兄の方が広い肩をすくめると弟が天を仰いだ。
「そんなことしたら筋肉が泣いちまうぜ。何のために俺達が鍛えていると思ってるんだ? 難行苦行の荒行は強敵と戦う為、これさ。あんなのを殺すのなら鍛えなくてもできるってやつだ。頼むんなら他のどうしようもないクズに頼んでくれ」
「お前ら騙されたんだぞ! あいつは難を逃れるために演技で以てお前らを」
「全然そうには見えなかったぜ。あれはマジで弱いぜ」
兄が自信たっぷりに告げたために大臣は何も言い返せない。もしかしてマチョとの闘いの傷が癒えていないとか? でも暗殺してくれよ!
「まぁもしも万が一にも演技だとしたら俺達は顔を覚えたからそれはそれでいいじゃん。正体を現したら俺達兄弟が全力で相手するからさ。そう怒るなって大臣。じゃ、とりあえず俺達は城の見回りに行くからまた後で」
さっさと部屋から出ていく二人を見ながら大臣は椅子を蹴った。憤懣やるかたなしとはまさにこのこと! その証拠が蹴った脚が痛くて後悔するぐらいだ!
あの脳筋どもめ! なんということだ! まさかここでこんな大失敗してしまうとは。なんだって? 新たな鬼ン肉族の刺客を放てばいいじゃないかって? 出来るかそんなこと! もう同族の猛者を派遣などできない。だってそのためには家族にそのことを告げなくてはならないからだ。
このことを妻になんと言えば良いのか? 息子になんと言い訳すればいい? 大臣は頭を抱えた。兄弟の失敗だがあいつらは絶対に俺のせいにする。俺を馬鹿にするということにかけてはあの女は容赦はなく息子も蔑みの目で俺を見るだろう! そんなのはいつものことだが今回に限ってはあんなに大見得を張ってやった手前、そんなことは絶対に言えない。このまま帰って忍者は暗殺されたと告げたい! そのことについて称賛はされないことは分かり切っているが、これ以上の軽蔑は買いたくない。マチョにも失望されたくもない……ここはなんとしてでも奴をこっそりこのまま暗殺せねば。その方法は。
「おい、あの地方にクズの巣窟といったものがあったよな?」
後ろで控えている部下に聞くと怯えた声が返ってきた。
「はっはい! ええっとそれはその冒険者ギルトいうものでしょうか?」
「金次第では無力な女子供すらなぶり殺しにする連中の癖に大層ご立派な名前がついているようだな」
「依頼するのはこちらなのですが」
「うるさい! これしかないんだから仕方がないんだよ! そうそのクズ連中に忍者暗殺の依頼を出す! 兄弟の話が本当で現在弱体化状態なら暴力が得意なだけの人間のクズたちでも仕留められよう。いいか? 大至急出して来い。それと兄弟には妻やマチョに聞かれてもこの件は解決したと答えるよう伝えておけ!」
「はっはいぃ!!」
部下は全速力で駆けていくと大臣は疲れから項垂れた。
「おのれ忍者め……」
大臣は眉間に皺を寄せながら思う。ここまで完璧に計画は進んでいたのだ、と。王子が産れたタイミングでマチョが誕生した。しかもマチョは母親の美貌と筋肉そして自分の頭脳を受け継いだ完璧なお姫様であった。誰にも負けるはずはなく予定通りに王妃候補受験に合格した。
これでついに歴代法王が我々に対してかけ続けてきた封印を解除できるところまでやって来られた。なにもかもが予定通りでありむしろ怖くなるぐらいに順調だという不安はある意味で的中してしまった。
あの真実を掴んだ忌々しき忍者が現れ肝心要のマチョを暗殺寸前にまで追い詰めてきた。奴は我々の計画の邪魔をする唯一無二な存在。不幸中の幸いというべきか誰にもそのことを話していないようであるが、それがもしも王子と接触したら……大臣は身震いした。
「忍者すべからく殺すべし」
必ず殺さなければならない。忍者を抹殺せねばならない。一族のために……それよりも愛しの娘のために。こうしてシノブは冒険者という名のごろつきどもに追われることとなった。
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