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隠されたしくじり伝説
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「勇者ジーク一行は隣国のエルトシャーへ。アレクとノイスそしてヤヲさんが加わったことによって戦力は大幅に上がりましてここからが本番ですよね」
「そうだがそれはアレクとノイスであって俺はそこだとほぼ何もしていないぞ」
列車のなかラムザの言葉に俺が反論するとアルマが睨んできた。
「なに言ってんの? 何もしていないわけないじゃない。あんたもちゃんと二人と同様に活躍するんでしょ? それともなに? ここからもう捏造なの?」
「まぁそうなってしまうのかな。たぶんこの次は活躍どころの話ではないのだが……その前に俺はこのあとどうなっているんだ? そちらにどう伝わっているのか教えてくれ」
俺は自分は妙な言い方をしていると思っているが二人は深々と頷き互いに視線で会話している。
なんて奇妙なやりとりであるなと考えているとラムザが先ず言った。
「そこはですね。ヤヲさんの物語というか勇者ジークの物語としては、三人の戦士を加わえて次なる地であるエルトシャーへと向かいます。
ちょうど僕達の列車もそこへと向かっているところです、はい。
グラン・ベルンが破壊による支配であった一方で、こちらは早々に降伏し魔王側に着いた悪徳貴族たちが悪政を敷く国ですね。
勇者ジークは襲い掛かって来る悪徳貴族を次々と撃ち破っていきます」
「そうそう、それに違いない。勇者ジーク様やその騎士たちは大活躍。アレクもノイスももちろん活躍。そういう物語だな、うん」
「なんか引っ掛る言い方ね。あんただって多少は活躍しているでしょうが。特にあれよあれ、宝物庫の防衛戦」
アルマの言葉に俺は固まる。分かってはいたが、やはりそこになるのかと。するとそこは……
「うん? あっ忘れているようだから教えてあげる。
それは魔王側に着いた悪徳貴族が民を虐げ搾取した結晶たるその宝物庫をめぐる一戦!
劣勢に立たされた悪徳貴族が逆に奪われるぐらいならばと火をつけ灰燼に帰してしまえと、付け火にやってきた際にそこを守備していたあんたは戦うもそれでも火が放たれ宝物庫が炎上!
それでもあんたは燃え盛る炎のなか飛び込み剣を一振り回収できて、それを勇者ジークに献上するんだけど怒られるのよね。
こんなもののために命を危険にさらすな! と勇者ジークは激怒で以って剣をへし折りあんたに言うのよ、剣よりもお前の命のほうが我に必要だと。
これであんたは勇者ジークに無限の忠誠心を抱く感動的なシーンで……熱い、とにかく熱いのよここ……」
感慨深げにしていたアルマが目を覚ましたようにあっちの方向に視線を送りそれから首を捻っている。
「あれ? 待った。勇者ジークって喋れないんだよね。
そうなるとこれって、いやいや今のは実は無しってこと?
あんたはなにもしていないと言ったし、それにええっと考えてみるとあんたみたいなのがそんな活躍をするわけないし、するとこれって……」
「嘘だな」
俺がそう言うとアルマの表情に陰が射した。
何故だか知らないがショックを受けているようだ。
どうしてだろうと思い俺はアルマの返事を待つことにした。
不思議な間を置いた後にアルマが呟いた。
「嘘、なの?」
「嘘というかなんというか。隠蔽というか誤魔化しというか、とりあえず俺のために誰かがそうしてくれたのなら感謝すると同時に、なにか政治的な理由があるのなら俺はとやかく言わない。
だけども、二人には言っておくが、これはそうではない。
だいたい前に話した通りジーク様は喋れないからな」
二人が頷くもどこか緊張している。
俺も目蓋を閉じることにした。
闇のなかで語る方がこの場合は良いのだろう。
「あの頃の俺は活躍をしたかった。ジーク様のパーティーに入って俺は後ろでの雑用係を命ぜられた。
それも当然だがな。俺は荷物夫として二人の後を追ったんだ。
ならば勇者パーティーでもその役割のままで仕事をしていた。
一度オルガ様に剣の腕を見てもらったがイマイチと判断されて、これでは前線には出せないが後方では役に立ってもらうようにと言われた。
ならばもう役割は決まったも同然。
俺の中に焦燥感が募った。ここまで来てやっていることがこれなら俺は何のためにここまで来たんだ?
これでいいのか俺は? このままでいいのか俺は? ところがある日に声を掛けられた。前線に出て貰いたい。
宝物庫の番人というか見張りとしてな」
語るにつれて目蓋を少しずつ閉じていき闇のなかに淡い光が入り乱れる。
記憶が再生されていく、いまに過去を再現させるに相応しいその混乱した光のなか。
「それでも……不服だったでしょうね」
アルマの声が聞こえた。その言葉で俺の目蓋は少しだけ開き彼女を見る。
そうだと俺はアルマの言葉を受け止めた。
「あぁ、不服だった。ただの穴埋めだし俺でなくても良い任務と俺は思った。
回収の荷車やらが来るまで見張っているとのことだが、俺には我慢できない。
その時はこう思った。これは任務を果たしてもプラスにはならない、このまま終わっても俺は活躍したことにならなくて、
次はまた後方に戻されてそのままだ。なにもならない、なにか手柄を立てないと、活躍しないと俺は……何者になれない。
俺は何者かになるために村を出たんだ。それなのにどうして俺はここにいるんだ? ここで立っているんだ?」
俺は語りながら立ち上がり目蓋を完全に開き光溢れる世界へと戻る。
だが己の中が闇で満たされているのを感じながら二人に言った。
「すると繁みから物音が、した。木の陰に誰かがいる。だから俺は誰何した、おい誰だ、ってな。
すると剣の先が現れ、それから走り出す音がした。森へと逃げていく敵兵がいたんだ」
「追いかけないで!」
アルマは叫んだ。五十年前に、もう終わった過去に向かって制止するも俺はあの時の心で言い返した。
「駄目だ! ここは敵兵を仕留めて手柄にするんだ!宝物庫に侵入者が来て撃退した! そうすれば俺は認められる!」
俺はアルマの前にまで歩き彼女を見下ろす。アルマが俺に視線を合わせ見ているのだろう。俺のこの濁った瞳を、あの頃と変わらぬ色をしたこの瞳の色を。
「認めてもらい戦線に出て手柄を立てれば勲章が授与されれば見返せられるんだ!
本家の男達に地元の連中に! そしてもっと活躍したら伝説となれば銅像にだってなれる、あれはその第一歩目だ。だから俺は追いかけた。薄闇の森の中を自らの栄光を求めて……」
俺は言葉を切り、後ろに下がって椅子に座り顔を手で拭った。
汚れている、と感じた。
顔を覆う手の指の間から近づくアルマの顔が覗けた。
その痛みに耐えているような面持ちに俺には不思議であった。
何故そんな沈痛な面持ちとなる? 関係、ないというのに。お前と俺は何の関係があるのだ?
「その隙に宝物庫は焼けたのね」
「そうだ背後で爆発音が鳴った。まるで背中が吹き飛ばされそうな爆音だった。
実際はちょっと爆発して火がついただけだが俺にとっては衝撃的でな。お察し通りに罠だったわけだ。すぐに引き返した俺が見たのは大騒ぎする輸送隊のものたち。
こりゃもう駄目だといった声を聞きながら俺は火の中に飛び込んだ」
「えっ? 死にたいのこの馬鹿」
「馬鹿だよな、まぁ半分は死にたい気持ちだったな。
だからなにか一つでもという思いで剣を一振り持ち出せて、言い訳程度とばかりに焦げた剣をジーク様に渡したら、折れて砕け散った。
そのエピソードはそれだけの話だ」
「……上手いこと創作されたわけね。こんなしょうもない話をあんな風に変えられるだなんて」
「そのままだと酷すぎるから脚色をしたんだろうな。もしくは俺の活躍が少なすぎるから改変したのか。
どちらにせよそこは俺には関係のない後の者たちの思惑からのこと。
ことの問題の本質は俺が功に焦り任務に失敗し取り返しのつかないことをしてしまったことだ。
その夜に俺達は呼び出された。そう俺個人ではなくアレクとノイスもな。つまり連帯責任ということだ」
「そうだがそれはアレクとノイスであって俺はそこだとほぼ何もしていないぞ」
列車のなかラムザの言葉に俺が反論するとアルマが睨んできた。
「なに言ってんの? 何もしていないわけないじゃない。あんたもちゃんと二人と同様に活躍するんでしょ? それともなに? ここからもう捏造なの?」
「まぁそうなってしまうのかな。たぶんこの次は活躍どころの話ではないのだが……その前に俺はこのあとどうなっているんだ? そちらにどう伝わっているのか教えてくれ」
俺は自分は妙な言い方をしていると思っているが二人は深々と頷き互いに視線で会話している。
なんて奇妙なやりとりであるなと考えているとラムザが先ず言った。
「そこはですね。ヤヲさんの物語というか勇者ジークの物語としては、三人の戦士を加わえて次なる地であるエルトシャーへと向かいます。
ちょうど僕達の列車もそこへと向かっているところです、はい。
グラン・ベルンが破壊による支配であった一方で、こちらは早々に降伏し魔王側に着いた悪徳貴族たちが悪政を敷く国ですね。
勇者ジークは襲い掛かって来る悪徳貴族を次々と撃ち破っていきます」
「そうそう、それに違いない。勇者ジーク様やその騎士たちは大活躍。アレクもノイスももちろん活躍。そういう物語だな、うん」
「なんか引っ掛る言い方ね。あんただって多少は活躍しているでしょうが。特にあれよあれ、宝物庫の防衛戦」
アルマの言葉に俺は固まる。分かってはいたが、やはりそこになるのかと。するとそこは……
「うん? あっ忘れているようだから教えてあげる。
それは魔王側に着いた悪徳貴族が民を虐げ搾取した結晶たるその宝物庫をめぐる一戦!
劣勢に立たされた悪徳貴族が逆に奪われるぐらいならばと火をつけ灰燼に帰してしまえと、付け火にやってきた際にそこを守備していたあんたは戦うもそれでも火が放たれ宝物庫が炎上!
それでもあんたは燃え盛る炎のなか飛び込み剣を一振り回収できて、それを勇者ジークに献上するんだけど怒られるのよね。
こんなもののために命を危険にさらすな! と勇者ジークは激怒で以って剣をへし折りあんたに言うのよ、剣よりもお前の命のほうが我に必要だと。
これであんたは勇者ジークに無限の忠誠心を抱く感動的なシーンで……熱い、とにかく熱いのよここ……」
感慨深げにしていたアルマが目を覚ましたようにあっちの方向に視線を送りそれから首を捻っている。
「あれ? 待った。勇者ジークって喋れないんだよね。
そうなるとこれって、いやいや今のは実は無しってこと?
あんたはなにもしていないと言ったし、それにええっと考えてみるとあんたみたいなのがそんな活躍をするわけないし、するとこれって……」
「嘘だな」
俺がそう言うとアルマの表情に陰が射した。
何故だか知らないがショックを受けているようだ。
どうしてだろうと思い俺はアルマの返事を待つことにした。
不思議な間を置いた後にアルマが呟いた。
「嘘、なの?」
「嘘というかなんというか。隠蔽というか誤魔化しというか、とりあえず俺のために誰かがそうしてくれたのなら感謝すると同時に、なにか政治的な理由があるのなら俺はとやかく言わない。
だけども、二人には言っておくが、これはそうではない。
だいたい前に話した通りジーク様は喋れないからな」
二人が頷くもどこか緊張している。
俺も目蓋を閉じることにした。
闇のなかで語る方がこの場合は良いのだろう。
「あの頃の俺は活躍をしたかった。ジーク様のパーティーに入って俺は後ろでの雑用係を命ぜられた。
それも当然だがな。俺は荷物夫として二人の後を追ったんだ。
ならば勇者パーティーでもその役割のままで仕事をしていた。
一度オルガ様に剣の腕を見てもらったがイマイチと判断されて、これでは前線には出せないが後方では役に立ってもらうようにと言われた。
ならばもう役割は決まったも同然。
俺の中に焦燥感が募った。ここまで来てやっていることがこれなら俺は何のためにここまで来たんだ?
これでいいのか俺は? このままでいいのか俺は? ところがある日に声を掛けられた。前線に出て貰いたい。
宝物庫の番人というか見張りとしてな」
語るにつれて目蓋を少しずつ閉じていき闇のなかに淡い光が入り乱れる。
記憶が再生されていく、いまに過去を再現させるに相応しいその混乱した光のなか。
「それでも……不服だったでしょうね」
アルマの声が聞こえた。その言葉で俺の目蓋は少しだけ開き彼女を見る。
そうだと俺はアルマの言葉を受け止めた。
「あぁ、不服だった。ただの穴埋めだし俺でなくても良い任務と俺は思った。
回収の荷車やらが来るまで見張っているとのことだが、俺には我慢できない。
その時はこう思った。これは任務を果たしてもプラスにはならない、このまま終わっても俺は活躍したことにならなくて、
次はまた後方に戻されてそのままだ。なにもならない、なにか手柄を立てないと、活躍しないと俺は……何者になれない。
俺は何者かになるために村を出たんだ。それなのにどうして俺はここにいるんだ? ここで立っているんだ?」
俺は語りながら立ち上がり目蓋を完全に開き光溢れる世界へと戻る。
だが己の中が闇で満たされているのを感じながら二人に言った。
「すると繁みから物音が、した。木の陰に誰かがいる。だから俺は誰何した、おい誰だ、ってな。
すると剣の先が現れ、それから走り出す音がした。森へと逃げていく敵兵がいたんだ」
「追いかけないで!」
アルマは叫んだ。五十年前に、もう終わった過去に向かって制止するも俺はあの時の心で言い返した。
「駄目だ! ここは敵兵を仕留めて手柄にするんだ!宝物庫に侵入者が来て撃退した! そうすれば俺は認められる!」
俺はアルマの前にまで歩き彼女を見下ろす。アルマが俺に視線を合わせ見ているのだろう。俺のこの濁った瞳を、あの頃と変わらぬ色をしたこの瞳の色を。
「認めてもらい戦線に出て手柄を立てれば勲章が授与されれば見返せられるんだ!
本家の男達に地元の連中に! そしてもっと活躍したら伝説となれば銅像にだってなれる、あれはその第一歩目だ。だから俺は追いかけた。薄闇の森の中を自らの栄光を求めて……」
俺は言葉を切り、後ろに下がって椅子に座り顔を手で拭った。
汚れている、と感じた。
顔を覆う手の指の間から近づくアルマの顔が覗けた。
その痛みに耐えているような面持ちに俺には不思議であった。
何故そんな沈痛な面持ちとなる? 関係、ないというのに。お前と俺は何の関係があるのだ?
「その隙に宝物庫は焼けたのね」
「そうだ背後で爆発音が鳴った。まるで背中が吹き飛ばされそうな爆音だった。
実際はちょっと爆発して火がついただけだが俺にとっては衝撃的でな。お察し通りに罠だったわけだ。すぐに引き返した俺が見たのは大騒ぎする輸送隊のものたち。
こりゃもう駄目だといった声を聞きながら俺は火の中に飛び込んだ」
「えっ? 死にたいのこの馬鹿」
「馬鹿だよな、まぁ半分は死にたい気持ちだったな。
だからなにか一つでもという思いで剣を一振り持ち出せて、言い訳程度とばかりに焦げた剣をジーク様に渡したら、折れて砕け散った。
そのエピソードはそれだけの話だ」
「……上手いこと創作されたわけね。こんなしょうもない話をあんな風に変えられるだなんて」
「そのままだと酷すぎるから脚色をしたんだろうな。もしくは俺の活躍が少なすぎるから改変したのか。
どちらにせよそこは俺には関係のない後の者たちの思惑からのこと。
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