【R-18】17歳の寄り道

六楓(Clarice)

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第13章、東野編

【4】高校卒業、東野涼太

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返信はすぐに来た。

『東野君!?
久しぶりだね!元気?
私は相変わらずだよ٩( 'ω' )و
その日はバイトないから
いつでも空いてるよ♪
会いたいね~!』

やっ……やった。
約束を取り付けた。

二人?二人だよな?

この後俺は、前日にサッカー部OBの集いがあることを告げた。白川と会う時間は泊まった翌日を予定していたからだ。ついでに三浦家に泊まることも伝えたら、すぐ返信が来た。

『じゃあ千晴も呼ぶね٩( 'ω' )و』

えっ。
そ、それは…。

二人きりがいい、なんて、言っていいのか…?
白川は俺と二人じゃ嫌かもしれない。
が、そこは我ながらナイス機転で切り返す。

『俺から千晴に聞いとくよ。』

どうせなら千晴も味方につけたい。
白川は、『じゃあお願いするね!楽しみ♡』と、可愛らしく締め括ってくれた。

はあ……。
目が冴えて寝れない。
かわいいな……。
絵文字がまた白川っぽくてかわいい。

スマホをタップし、俺はまた白川のセーラー服姿をおかずに、白川に似たセクシー女優の無料動画を観ながら右手を動かす。

男のそれを恥ずかしげに両手で握り、小さく舌を動かす動画に白川を重ね、すぐに果ててしまった。



そうして、翌日。
俺は千晴を味方につけるべく電話中。
千晴もその日は空いていて、「白川に告りたいから、二人にしてくれ」と正直に話した。

『まあいいけど、今更?』と千晴。

白川に彼氏ができたのかと不安になったが、それはないらしい。
勢いづいた俺は、浅野が同じ大学に通っていることも、浅野本人から別れた事実を聞いたことも、千晴に話した。

『まあ話はわかったけどさ。碧は浅野のこと忘れてないでしょ』
「嫌なこと言うなよ……」

千晴の言葉にシンプルに落ち込む。

『あ、ごめん。ま、でもいんじゃない?諦めるために告りたい気持ちはわかるから』
「諦めるためじゃねえよ。できれば成就が目標だよ」

そういうと千晴は『あ、そっか、ごめんごめん』と笑っていた。

相変わらず失礼なやつ。
でも、女でこれだけ本音が話せるのは千晴ぐらいのものだった。
本心では、とても信頼してる。


いつしか、浅野が来る日は予定を空けていた俺。特段会話があるわけではないあの時間も、嫌いではなくなっていた。

浅野に対する後ろめたさは消えず、『来週は家にいねーから来るなよ』とLINEした。夜中に『了解』と返事が来ただけで、静まるスマホ……。

しかも来週、白川と会うんだけど。
そう言いたいけど、また自分の首を絞めることになったら……。

何だこの落ち着かない感じ。
何か、罪を犯しているような……
浅野に対して、何も悪いことなんてしていないというのに。


浮かない気分のまま、サッカー部OB会当日になった。
明日は白川に会えるのに、何で低迷してるんだ。

夏休みのレポート作成のために大学図書館を利用していた俺は、これから家に戻ってから、数時間掛けてミウの家まで向かう予定にしていた。
キャンパス内の石畳を早足で歩いて門を出ようとしていると、向こうの方で俺を見ている露出多めのオフショルダー女子がいた。
あ。この前の目力?

「あーっ♡広瀬君のトモダチだよね?」

笑顔で駆け寄ってくる派手派手しい目力。
一層化粧濃くなったんじゃね?

「ああ……」
あいつと友達かと聞かれるといつも言葉に詰まる。

「今から帰るの~?」
「うん……」
「あたしも帰るー♡涼ちんは電車で通ってるのー?」
「そうだけど……」

目力の舌足らずな話し方に眉をひそめながらも、何故だか二人で駅まで歩く。
知らない女子(おまけに肉食系)だと、何をしゃべっていいのかわからない。

――という心配も杞憂に終わったほど、目力はいろいろしゃべってくれた。
逆に、人のことを簡単にしゃべりすぎじゃないかと心配になる中、俺は耳を疑う事実を知った。
どうやら、この前いた目力の友達(目力B)は、浅野のセフレらしい。

何やってんだよ浅野……!

「君も、浅野…じゃなくて広瀬とセフレなの?」

俺は目力Aの瞳を見つめて尋ねた。
先日見かけたベタベタ加減ではそうであってもおかしくなく、むしろ絶対ヤッてんだろというような空気だったのだが。
目力Aは、こってりアイラインが引かれた目を泳がせながら体をしならせる。

「え、あたしは違うよ……広瀬君のこと、かっこいいとは思うけど……」
「絶対やるなよ。自分を大事にしろよ。女の子なんだし」
「え……」

目力Aの心配をしているつもりはなかった。
俺はただ、股の緩い女が嫌いなだけだ。

「ちょっとごめん。俺、先行くわ」
「あ、う、うん……!」

俺は、心なしか頬を赤らめているように見えるAを置き去りにして改札に入り、電車に飛び乗る。

今、浅野は何してんだ?
超落ち着かねえ。事実確認したい。
何セフレ作ってんだよ!調子乗るのもいい加減にしろ!


俺はスマホを取り出したが、浅野に発信する直前で踏み止まった。

白川の事は、本当に終わったということなのかもしれない。
そうであれば、俺がここまで気に掛ける必要はなく……あいつにとってはお節介でしかない。
晴れる事のない葛藤に唇を噛み、俺はスマホをポケットに入れた。





「おい……久しぶりに会ったのに、何でそんなテンションなんだよ……元気出して行けよ」

ここはミウの車の中。
俺は助手席に乗っている。
ミウも浅野と同じく、早々に車の免許を取得していた。
温厚な彼もさすがに険しい顔をして、俺を見ている。

「……いや。別に。元気だよ」
「せっかくなのにさー。ま、いいや。みんなそろそろ集まり出してるみたいだよ。加納ちゃんももう着いたって」
「ああ。今日藤田コーチは来ないの?」
「なんか、家が大変みたいで来れないらしいよ」
「ふーん……」

サッカー部内では、藤田コーチは部外の生徒ほど煙たがられてはいない。
しかし物凄く厳しく、時には手も出るので、ただただ怖い存在ではあったけど。

「どうせ『早く明日にならねーかなー』って思ってるんだろ?」

ミウは穏やかに車を進めながら笑っている。

「え」
「『早く碧ちゃんに会いたいなー』って」
「……別に、そんなことは……」

白川への想いは完全バレているというのに、俺はこの期に及んで言い逃れを図る。

「涼太……素直にならないと損するよ」とミウはわかったような顔をして言った。

……素直になったって、白川は俺を見てはいないけどな。

告白する前からこの女々しさ。千晴にも叱られそうだ。
女には女らしさを求めるくせに、俺は全く男らしくない。
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