【R-18】17歳の寄り道

六楓(Clarice)

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第2章、村上編

【3】化学教師、村上浩輔 *R18

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昼間浅野に見せていた、あんな淫らな色はなく、17歳そのもののあどけなさの残る寝顔。
俺は、彼女が寝ているのをいいことにまじまじと観察する。

白い肌だな。さっきは真っ青だったけど、少し桜色になっている気もする。
改めて見ると詩織に全然似てねぇな。何で似てると思ったんだろう…

そんな事を思いながら、腕を組んで溜息をつく。
俺はまだ、詩織の面影を追いかけているのか。


普通に送り届けるつもりだった。
なのに……そうはさせてくれなかった。
苦しそうにする彼女を胸の中に収め、心配しながらもそれ以上を妄想する始末だった。

瞳を潤ませて縋りついてくる白川をどうしても振り切れない。

昼間の光景が頭をよぎる。
ガキが、あんな顔しやがって。

何故だか拒めない、見捨てられない感情は、俺を甘く刺激した。
彼女の柔らかな体とうなじから漂う甘い香りは、俺の興奮材料となり、気がつけば、車の中で白川を抱きしめていた。

俺が抱き締めたかったのか、白川が望んだのか、どちらかわからないほど興奮していた。


ガキなんて興味ない。
なのに……。

なんで抱きしめてるんだ?


白川の顔は上気して、俺に服従するように見上げる。
この桜色の唇を塞いでやろうか。そしたら、白川はどうするだろう。
俺を受けいれるだろうか。

僅かに残る理性で衝動を抑えながら、「誰にも言うなよ」と、釘を刺し、俺の下半身は痛いほど怒張していた。


何とか、白川を送り、母親に声を掛けた。
白川を少しシャープにさせたような風貌の母親。
気ぜわしく、まくしたてるような話し方。白川は精一杯いい子でいようと努めているように見えた。


「彼女の事を気に掛けてあげて下さい」

俺なんかが言えた事かと、自分に突っ込みを入れながら、母親に説いた。

所詮、俺なんてこの程度の男だ。
先生、先生、と声を掛けてくる生徒はいても、尊敬されるような男ではない。
女子生徒に迫られて、簡単にズボンを膨らませるような男なのだ。


白川を届けた後は酷く疲れた。
が、俺の昂りは全く治まらない。

家に帰ってソファに腰掛け、熱と硬さをもつ自分自身の肉を握ると、取り憑かれたようにこすった。
いつもはオナニーするのにも適当に動画などを引っ張ってくるが、そんなものはいらなかった。

詩織の選んだこの深みのあるブラウンのソファで俺は、男性器に指を添え、無心でカリを刺激する。

白川のあの肉感的な体を思い起こしながら、想像力が足らない部分は詩織で補う。


一糸纏わぬ白川が、俺に跨り、目の前で白い乳房を揺らす。
その乳房を捕まえ、揉みしだいて先端を吸い上げる。

「あんっ、せんせい、気持ちいいっ」
とだらしない恍惚の表情で、俺の上で腰を振り、俺の肉塊は白川の淫靡な蜜を掻き出す。

「いっちゃう、いっちゃう浩輔さんっ……」



「はあ、はぁ…っ、」

吐きそうなほど最低な妄想に耽り、俺は白濁した邪念を発した。
この時の昂りは若い頃に引けを取らないほどだったが、終わってみると酷く虚しいものとなった。


何て想像をしてしまったんだ
何を簡単に翻弄されているんだ。

これでは俺も、あいつが忌み嫌っている義父と同じじゃないか―――。


そういう葛藤の一方で、白川が浅野だけでなく俺にまでもすり寄ってきた事実も心配になっていた。

あいつは、男なら誰でもいいのだろうか。
浅野と付き合い始めたんじゃないのか…?

いかん。もう考えるな。忘れろ。
のめり込んでどうする。

明日から、何もなかったようにすればいいだけだ。

考えれば考えるほど、闇に陥りそうな思考を振り切り、バルコニーに出て煙草に火をつける。
空は、ほとんど満月に近い黄色い月に、雲がかかっていた。

「明日は雨か……」

曇り空と同じ色の煙が上がる。
溜息と苛立ちを乗せて、夜空へ。


―――翌朝。

遅れてきた白川が昇降口にいた。

雨に濡れたのか、棚に片足を掛けて脚を拭いている。
白く滑らかな肌をした太ももがスカートから覗き、目のやり場に困った。

「何て格好してるんだ」

注意したが、白川は動揺もせずに俺を見、ばさりとスカートを直しながら足を下ろした。
その瞬間、煙草のヤニの臭いがほのかに漂った。昨日の甘く俺を刺激する香りとは正反対の……。

とりあえず喫煙したかどうかを確認したが、周りに吸っている人間がいただけだと答える。
そこで正直に吸ってるなどと答えるやつはめったにいない。まあ、白川は吸ってはいなさそうだが。

お義父さんが吸うのか聞いたら、なぜか白川の頬が赤くなった。

……あまりのめり込むなと自分に言い聞かせ、観測会に話題を変えた。
艶のある黒髪を耳に掛けた後、白い指に桜色の爪は承諾書を取り出し、俺に触れる。少しひやりとした指先。白川は口元に微笑みを浮かべる。

「確かに受け取りました。また遅刻になりますよ。急いで」

触れたことになど何にも気付いていない顔をしながら、教室の方向を指さした。


その晩。
学校からの帰宅中、運転しながら信号待ちをしていた俺は、ダッシュボードで震える携帯電話に気付いた。
画面には白川の名前。何事かと思って電話に出た。

「先生」と俺を何度も呼び不安がる彼女を、電話越しで宥める。

『会いに来て……』

その誘いは悪魔のようにすら思えた。引き込まれては最後だ。

「行ってやりたいけど……問題だろ、いろいろと…」

そう答えると我に返ったのか、白川は少し冷静になったように思えた。

今から庭で洗濯物を干すと言う。
一生懸命家事しているけなげな白川の姿が浮かび、顔が綻ぶ。気がつけば、「ちょっとだけ寄る」と口にしていた。

道沿いにあったコンビニに車を停め、煙草と焼きプリンを買い、再び車に戻る。鞄の中にある白いメモ用紙を取りだし、一言「明日話を聞くよ」と書きなぐった。
車には乗せない決意だ。今日は白川の顔を見て帰るだけだ。

―――次あいつを乗せてしまったら。
もう後には戻れない予感がしていた。
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