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しおりを挟む「……んで!結局乎雪は、清司に告白すんの?」
「する。……リクが言うほど、独占欲がつよいなら多分今は我慢してんだろ、それは……なんていうか辛いだろ」
「!……へえ、強気だねぇ~?そもそも君、清司に好かれてるって確証はあるわけ~?」
煽るようにいわれるが、まったく響かない。なんせ、まぁ、毎日一緒にいるのだ。
「あるぞ」
「言うじゃん?じゃあ束縛されんのはどうなの?」
「……」
……そもそも、それを問題に感じたためしがないのが困ったところだ。気が済むまで束縛したらいいなんて思うのはまずいのか?
「……位置情報把握されるのは、だめなのか?」
何が正解かわからないのでとりあえず二人に聞いてみる。リクは「僕はいや」と即答して、フジナミさんは少し考える。
「知られたくない場合に行くときには、停止できるのであれば構わないんですけどね」
「それは無しらしいよ?」
「……では、俺も」
「そっか……」
二人ともNGらしい。確かに、見せたくない時も消せないというのは、プライバシーがないように思う。ボクから見てもよく考えれば、あまりやらない方がいい気がする。
「じゃあ、出来ないって、セージには言っといたほうがいいのか?」
自身の事のはずが、なんとなく疑問形で聞くと、二人は顔を見合わせて、それからフジナミさんの方が口を開く。
「もしかして、乎雪さんはGPSも許容できる範囲なんですか?」
「……ふ、不便はないな」
「え~?だって、仕事の飲み会で行ったお店も、友達と旅行行くときも全部見られてんだよ!?嫌じゃない?」
「……旅行も、飲み会もない業種ってか、友達?もリク以外いまのとこいないし。ここにくんのは、ちゃんと説明すれば問題ねぇかなって」
「…………?」
高校卒業してからずっと引きこもって絵ばっかり描いてきたのだ。考えてみれば、絵を描いている時間さえ確保できてるなら、それがボクの確保したいプライベートなのだ。
ボクの返答に疑問を持ったのかリクはすこし間をおいてから、真剣な顔をして、ボクと目を合わせる。
「ねえ、乎雪、ぶっちゃけ聞いていい?」
「な、なに」
「君って何者?」
……何者?ど、どういう意味だ?
質問の意図がわからなくて首をかしげると、リクは続けざまに言う。
「何者っていうか、何してる人で、なんで清司のところに居んの?」
「……」
……ああ、そういう話か。というか、言ってなかったのだから不思議に思われても仕方がないだろう。
ただ、自分の仕事を他人に言うのは、ボクの心情的に難しい。それでも、真剣にボクの恋路を応援しようとしてくれている二人に、嘘をつくのは誠実ではない、それだけはわかる。
「……絵描き。水彩かいてる。ボクの絵を売ってくれる人とそりが合わなくなって、逃げてた、そんで拾われた」
「あ!え?君あれ、趣味っていってたじゃん!」
「嘘ついた。悪かったな」
「良いけど~?それで、色々自由なの?友達少ないのは別として」
「まぁ、そんなとこ」
「へぇ~なるほどね」
なんてことないように納得してくれてホッと胸をなでおろす。馬鹿にされなくてよかった。
「ねえねえ、実は有名な絵描きだったりするの~?」
「全然、賞もとってねぇし、無名だ」
「なぁんだ。まあ、そういう色々融通聞くなら、清司の意見を飲んでもいいかもね」
「許容できる範囲は人ぞれぞれですからね。乎雪さんからして、無理がないと思えるなら、それでもいいかもしれません。ただ、さっき凛久さんが言っていた事も、すこし加味しておいた方がいいと思います」
「さっき?」
「ああ、清司が金持ちだって話?」
「そうです。俺も恋人同士は対等が一番だと思いますから」
そういわれて、そういえばセージにまだお金を受け取ってもらえていないことを思い出す。
そういう部分から、せっかく恋人になれたとしても関係がゆがんでいっては意味がない。
「それと関連する話なんだが、相談してもいいか?」
「もちろん!この僕に任せてよ!」
「構いませんよ」
そうしてボクらは長い事、酒を飲みながら話し合って、店が混み始めてからも、こうすべきああすべきだと、おもにボク以外の二人が話し合ってくれた。もし付き合えたらセージとお礼を言いにこの店に来ようと思う。
それで結局出た結論は、借りてるお金はプレゼントにして返すのがいいのではないかということだ。そして、ついでに告白してしまえば一石二鳥という事らしい。リクがプレゼント選びに付き合ってくれることも心強い。
そして束縛についてはよく話し合う事。これをとにかく守れと言われた。そして、何かあったら相談にのるから必ず話せと。人の恋バナを多少面白がっているように感じつつも、これならもし玉砕しても立ち直れるなと、なんとなく思えた。
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