ゴミ捨て場で男に拾われた話。

５８

　可愛いとは確かに思う。しかし、酒に酔っているせいか妙な嫉妬が顔を出す。

「……かわいい」

　でも一応同意しておこうと、口を開くと、ふてくされているような声で言ってしまって、恥ずかしくなって酒をあおった。

　それから、こうなったらもう何でもいいかと思い、のそのそと動いて、セージの腿の上に頭をのせる。それから仰向けになって、彼を見つめた。

「っあはは、かわいいね、ゆーき。君の方がずっとかわいい」
「……そーかよ」
「うん」

　ボクの思考を読んだようにセージはそういって、ボクの髪を撫でる。

　先ほどは、髪に触れられるだけでも嫌だったのに、彼の手だというだけで馬鹿みたいに安心してしまう。髪をくくっているゴムを外して、何度か指で梳くようにボクの頭を撫でつけて、それから小さく背を丸めてセージはボクのほっぺにキスをする。

「……、ン」

　それだけして離れていこうとする、セージの首に手を回して、キスをする。舌を押し付けて、彼の柔らかいくちびるを控えめに舐めていれば自然と口を開いて、酒のせいで熱くなった舌を絡ませる。脳がしびれて気持ちがいい。歯列をなぞり、熱に浮かされたままの頭で、セージの舌に吸い付いて、彼の頬を両手で包み込む。

　しばらく深いキスをした後、顔を放すとセージは少し怪訝なニュアンスを含みながら、けれども朗らかに言う。

「今日はやけに積極的だね……？」
「……ダメか」
「いいよ。むしろ、うれしい」

　そういいながらセージは、缶を取って飲み干して、にっこりと笑みを浮かべる。

「理由が気になる。君に器の小さい男だって思われるかもしれないけど、やっぱり、ね」

　……それなら、今日はどこで何してたの？積極的なのには関係あるの？って聞いてくれればいい。

　それに器が小さいなんて絶対に思わないのに。

「……聞いたから、男同士でするときも、いろいろした方がいいって」
「……」
「お前の、フェラしてもいい。たぶんできる」

　この際だ。少し、強引にでもセージの興味を誘い出して、気になっているであろうこと全部、聞かせてやろう。

　セージは、普段のボクがそういうことを進んで話したりしない人間だと知っている。それなのに聞いたとなれば、誰からどんな状況で、何にもなかったのかと心配になるはずだ。

「マンネリ化？したらよくないっとも言ってたから、たまには、いいだろ」

　まあ、ボクは普段の優しいセージで十分満足なのだが、皆はそうではないらしいのだ。

　セージは、少しの間黙って、それから軽く眉間にしわを寄せる。

　ボクはここまで言ったら流石に聞いてくるだろうとたかをくくって、とりあえずフェラしようかなと、ソファーの上から降り、いそいそとセージの足の間に入る。

　そうすると、やっと動き出したセージは、丁度、股の間にいるボクを足を組んで捕まえるようにして、じっと睨む。