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しおりを挟む……羞恥心も私の日々の苦労もお構いなしですか。私がどれだけ、貴方様に相応しくあるようにしてきたか知ってるでしょうに。
酷な命令をそんな風に考えながらも前を開かれたシャツを脱いで、そのままベルトに手をかける。彼がどんな顔をしているのかもわからないし、仕事場であるレオンハルトの部屋で裸になる行為は、馬鹿みたいにオリヴァーの鼓動を早くして何かの犯罪でも犯しているかのような気持ちにさせた。
ゆっくりとスラックスと下着を脱いでいく、外気に触れて、目隠しをしているせいで自分の体に変な部分があるのではないかと思っても確認ができない。
それでも従順に手探りでベットの淵を探して、自分が毎日綺麗に整えている主の為のベットへと乗り上げた。
オリヴァーのベットとは違い柔らかく沈み込む感覚が泣き出してしまいそうなほど辛くて、それでも口を引き結んで、ベットの真ん中で腕を背後で組んで、足を引き寄せて小さくなる。
「あられもない姿とはこのことだな。お前は常に身だしなみを整えて俺のそばにいるのに、こうして裸をさらすのはどんな気分だ?」
……惨め、ですし、怖いですし、女性にでもなったような気分です。主様。
言われて心の中で返すと涙がにじんできて、ついにはオリヴァーの目元をかくしているリボンに滲んでしずくを落とした。それを掬うようにしてレオンハルトの指先が触れて、涙を流しているのが彼にばれてしまった事にも情けなくなる。
「泣き虫は直ったんじゃないのか? ……愉快だな。あれほど、手の届かない存在に感じていたのに命令するだけでこんなに簡単に、泣かせることも、奉仕させることもできるなんて考えもしなかった」
……そうですか、でも、私は知ってると思ってましたよ。レオンハルト様、貴方様が私に依存しているように私だって貴方様無しでは生きていけない。
「いや、出来るかもしれないとは思っていたが、やってしまえば後戻りは出来ないだろうと思っていた。もう、今ではそんなこともどうでもいいいがな」
「……」
「今はただ、戻るあてもなく、お前の全部を壊して泣かせて、どこにも行けないように凌辱するだけだ。オリヴァーはまだ俺に信じて貰えるなんて考えてるようだが、口を使われて剥かれても、従うその心意気は滑稽に思えるほどだ」
……そんなこと言われましても、こうする以外にどうしようもないではないですか、貴方様をただひたすら受け入れることしか私は出来ません。
エミーリア様のように貴方様の問題を取り除くこともできないし、何か貴方様の生きる道の導になるようなこともできません。
「この俺を置いていこうとした傷と同じに、お前の心に俺以外の誰にも心を許せないように傷をつけてやる。二度と逆らえないように」
髪を纏めるようにして掴まれて、オリヴァーはベットに転がされて、足を掴まれた。
「俺の元から去れないように、してやらなければ」
独り言のようにそういってから、オリヴァーの胸元にある大きな袈裟切りの後に舌を這わせた。柔らかく熱い舌が、皮膚の薄い傷跡の上をなぞって、ゾクゾクと背中を不思議な感覚が駆け上がる。
「ぅ、……」
……こんなこと、しなくても私は貴方様の元からいなくなりません、し、絶対、もう、自分を犠牲に主様だけを生かそうとなんてしません。
頭のなかだけで言葉を紡ぎ、必死に堪えるのに微かに声は漏れて、やめてくださいと言ってしまいたくなる。けれども言葉だけでは、絶対に理解してもらえないし変えることもできない。
信じてもらうためにはなんだってすると決めた。出来ない事を課せられるより、遠ざけられてレオンハルトの安否が確認できなくなる事よりずっと楽だと己に言い聞かせる。
まだ誰にも開いたことのない純真な体を傷つけるために無理やりこじ開けられようとも、一時の苦悩で終えることが出来る。
自分が納得できるように考えて、初めての行為に怯える体も心も押さえこんで震える吐息を漏らす。
「、……っ、」
ぐっと後孔に指をあてがわれ容赦なく中へと挿入される。潤滑剤は使われているようで引き攣るような感覚はないものの初めてであるのを知っているのにまったく配慮のない挿入に呼吸が詰まる。
……主様、レオンハルト様。
心の中で名前を読んで硬く強張るそこを強引に解す指に涙が出てくるのをそのままにしてただ受け入れた。
こんなにこういう事が恐ろしい行為なのだと知らなかった。視界を奪われて抵抗も、懇願も許されず行われることは暴力にも近しくて、体の内側に誰かを受け入れる相手がもしも、愛する主でなかったらと思うとぞっとしてならない。
「苦しそうだな。命令を破って俺に懇願してみるか?」
そんな風に真上から主の声が降ってきて、試すような言葉にそうしてしまいたい気持ちも若干芽生える。もう、信用などされなくてもいいから、せめて普通にそういった情を向ける相手のようにしてほしいと言いたくなった。
「やらないのか、殊勝な心掛けだが、決して報われはしないのだぞ」
冷たい声とともに指が増やされて、「ぐっ」とオリヴァーは声を漏らし、手を離しそうになった。しかし、手を握ったまま声を漏らさないように喉を締めるのをやめてはあっと吐息を漏らす。
「あ゛、ゔぅ、っ、う」
「他人に体の中をまさぐられる気持ちはどんな気持ちだ」
堪らず声を漏らしたオリヴァーにレオンハルトは少し興奮したような声で聴いてくる。くちゅくちゅと中で指を動かされて、腸壁が押し広げられる。一言でいうなら耐え難い感覚だった。
……乱暴に、している自覚がおありなのに、そんなこと、聞かないでくださいよ。
血の気が引いて、入口がきつくこわがばってとてもじゃないが声を我慢できるようなものじゃない。レオンハルトは本来、他人にやさしい人間で、配慮をすることがきちんとできる人間だ。そんな彼が、オリヴァーの痛みが分からないはずがない。
「ぐ、っ、つう、っ゛」
感覚に慣れないうちに指を抜き差しされて、引き抜かれる感覚には背筋がヒヤリと冷えるような心地がするし、押し込まれるとじたばたと暴れたくなるような心地がする。
……くるしい、です。主様、こんなの。
「ふっ、はは。本当にいい眺めだな。苦痛に歪んだお前の顔もその艶めかしい体もすべて、私のものだオリヴァー」
足を閉じて必死に我慢していたオリヴァーの片足をレオンハルトがおもむろに掴み、ぐっと引いて肩にかけた。足を開かれるとさらにひどく抽挿されて、男性の長い指がオリヴァーの中身を抉るようにして動かされる。
「っい゛、あぁ゛ひっぃ」
「俺を恨んでもいいぞ、こんなお前の忠誠をあだで返すような男を恨んでいい」
「っ、ぐぁ、ぁっ」
「まだ健気に命令を守り、こんな無情な行為すら受け入れようとするのは、どうせお前が優秀な従者だからだ」
「あうっ、ゔぅ、っ」
「俺のすべてを受け入れようとして、許そうとして、苦痛を堪えている。そんなもの俺はいらない。そんな出来たお前はいらない」
レオンハルトはオリヴァーの中を虐めながら彼に顔を近づけた。オリヴァーのすぐ耳元で声がする。彼の聞きなれた声が鼓膜を揺らす。
「壊れてしまえ、従者の教示など忘れて、俺に逆らって逃げ出そうとするような人間になってしまえ、その方がずっと安心できる」
……っ、うそですよ。
「お前がそんな人間になれば、俺だって気兼ねなくお前から何もかもを奪ってやれるのに」
……嘘ですね。分かりますよ。僕に逆らわれたら傷つくのは貴方様です。
そんな風に思ってオリヴァーは中をまさぐられているままでもレオンハルトに視線を向けた、彼がどんな顔をしているのか分からなかったけれども、それでも、そんな嘘は通用しないのだと、彼に言えない代わりにじっと見た。
「なんだまだ、心折れないのか、本当にお前は賢くて強い」
「っ、はぁ、っ、」
「だがしかし、こうして男のものを突き入れられていつまでその態度を保っていられるのか見ものだ、な」
いいながら熱いものが臀部に触れて、体が強張る。それでも逃がさないとばかりにレオンハルトはきつくオリバーの片足をもって押し当てた。
「っ、っ~」
……そんなの、レオンハルト様以外だったら、許せなかったですよ。僕のことをどんだけ優秀な従者だと思ってんですか。
ただ、主様だから、受け入れられるし、逆らわずにいられるんじゃないですか。
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