35 / 45
35 自覚
しおりを挟む「アアッ……イくっ! イッ、っ、あ、はっああ!!」
グレンは僕の事を上からじっと見て、中に押し込められた指はまだ前立腺をトントンと刺激していて、精液があふれるように押し出される。
射精をともなう絶頂は、疲労の体感がドライでイくのとは比較にならない。
それに気持ちよさだって全然違う、腰を逸らせて快感を逃がそうとするのに指は引き抜かれることなくずっと中を擦っていて、散々慣らされたそこはいつも以上に敏感に感覚を拾う。
「も、やだっ、もぉ、イけなっ、あっ、あっ、アウッ、んああ!」
「本当にイけなくなったら、やめるから大丈夫、だよ。ニコ、それにそろそろ、いい具合かな」
言いながらグレンは指を引き抜いて、一度、僕の頭の下にある枕の位置を調節してから、足首を持って足を開いた。
彼の視界には散々前戯で乱れたあられもない姿の僕が移っているだろう。
もう何回イったかわからないし、涙とか汗とか後はカウパーとかいろんなものが枯れそうなほど出尽くして満身創痍だった。
後孔が少し広げられている感覚がして、グレンは僕のことを改めてじっと見た。
「はーっ、はぁ……はぁ」
もっと高揚しているのかと思っていたが、本人は案外平然としていて、あんなに執拗に責めて、過激な執着を見せていたのに冷静そうに見える。男にしては少し長い銀髪を耳にかけて、ふいに近づいてくる。
「……ぼんやりしてる? ニコラス、俺のせいでこんな風になってるんだよね。……うれしい」
頬にキスされて頭をゆっくりと大きな手が撫でる、髪を手櫛で梳くみたいに何度も。
この手が何度も僕の事を責め立てているというのに、不服なのに愛おしくて、安心する。
……そ、そうだ、グレンが僕のこと好きだっていうなら、べたべたに甘えてもいいんだ。
甘えたいし、媚びたいし、尽くしたい。
理性で今までずっと押さえていた欲求。グレンはノンケで僕の事なんか端から恋愛対象じゃなくて、女の子みたいに気持ちを向けても気持ち悪いと思われるだけ。
そんなの分かっていたから、自分の好きなしたいこと、ちゃんと抑えられるように壁を作っていた。
「可愛いなぁ、ニコラス。ずっと言いたかったし、ずっとこうしたかったって今ならわかる。今、すごく幸せ」
少し微笑んで、藍色の瞳が細められる。まるでエッチな事なんかしていないみたいな純粋な笑み。
画面越しにルシアに向けられていた瞳、それが自分に向いていて、こんな風にみだらな行為を共にしている。汚してしまっているし、僕じゃあだめだろうという気持ちになる。
でも本当にたしかに満たされていそうで、嬉しそうでいいなと思う。
……僕も、そんな風に安心したい。
本当はずっとずっとこうしてみたかった。向き合ってお互いを認識して快楽を感じたかった。
うらやましい気持ちが最後に残った理性のタガを外して、もうそれを意識することはできない。
「……ぐれん……ぎゅってして」
手を伸ばして、その胸板に触れる。少し汗ばんだ熱い体に顔に出なくても興奮していることがわかって、不思議な気持ちになった。
「ん、わかった。……挿れるよ」
「っ、ふ、うん」
体が密着して触れ合っている全身で彼を感じることができる。腕の動き、心臓の鼓動、耳元の吐息。
体が逃げないように頭を抱えるように抱きしめられて、後孔にグレンの熱く張り詰めた先があったって、いつもはなんてことない挿入で全然、体が強張ったりしないのに、解されすぎて緩くなったそこに少し力を込めた。
「っ、う、うっン」
しかし滑剤も使っているのでその程度で挿入を拒むことはできない。中の壁をぐっと押し広げるようにして、腹の奥まであっという間に入ってしまう。
「ああっ、あっ、っくぅ」
「くるしい? ごめんね、ニコ」
ふと離れていってグレンが、快楽と圧迫感に顔をゆがめている僕を見て、困っているような笑っているような顔でそういった。
声も隠し切れない嬉しさみたいなものが混じっていて、なんで、と疑問に思うけれど先ほど言っていた、僕を自分が乱しているという喜びからなのか。
長年反応を殺した行為を続けた結果、どんなでも乱れていたらそれが嬉しいと思うようになったとでもいうのだろうか。
……こわ、っ、ていうか、それじゃ、ぼくも、わるい、けどっ。
「うごく、よ。あなたの好きなところ、たくさん、ついてあげるから」
「うっ、っあ、ぅぅ」
そういって引き抜かれると、いつもとは非にならない感覚に必死にグレンを搔き抱いてその肩口に頬をこすりつける。涙が堪えられずに頬を伝って落ちていく。
抜き差しするたびに鳴る水音と、腰が砕けてしまいそうな痺れる快楽、前立腺に固い亀頭が圧迫するようにゴリゴリと当たって、堪らなく気持ちいい。
「っ、はっ、はっうっ、あっダメッ!! っ~!!」
ぐっと押しつぶされて、快感を逃がす間もなく精を放つ。
もうイけないはずなのにこれ以上なんて考えられなかったはずなのに、快楽は留まるところを知らず、際限なく気持ちがいい。
息が切れて心臓が爆発しそうなのに、グレンのが僕の中を擦りあげる少しの感覚も鮮明に拾う。
「あ、はぁ。よかったニコ、まだイけるね。いっぱい、気持ちよくなれる」
「はぁ、はっ、あや、やらぁ、っ、ンアッっ、グレンぅ」
「なぁに、ニコ、ニコラス、っ、かわいい」
グレンも今までの前戯で相当我慢していたのか、普段よりも余裕がない様子で抽挿を続ける。
抜ける限界まで引き抜いて、一気に押し込めたり、奥の一番深い所をこねるみたいについてみたり、前立腺をこすりあげてどんなにグレンにしがみついて懇願するような声を上げても容赦はない。
いや、グレン自身は容赦しているつもりなんだろう、体を二つ折りにされてぐっと押し込められると、苦しくて圧迫感があって堪らないのに同時に何故だか馬鹿みたいに幸福で、縋れることが名前を呼べることがこんなにも嬉しい。
「ぅああっ、ア、ひっ、っグレンっ、ぐれん、っん、ゔ」
「っ、ふ……」
いやだいやだといいつつ、それでもグレンとの行為が好きだ。多分、今まで出会った誰よりも相性がいいし、替えなんかいない、彼と以外はありえない。
頭がおかしくなりそうなほど気持ちよくて、逃げ出したいのに、逃げ出したいと嫌だといいつつ縋れる相手がいることが僕はなにより満たされる。
僕が子供みたいに名前を呼ぶと、グレンはすごくうれしそうに顔を赤らめながらも頭を撫でて、手のひらにキスをする。
ゆっくり、腰を打ち付けられてまたすぐに堪らなくなって、腰を浮かせるけれどきつくそそり立っている僕のにグレンは優しく包み込むように触れて、怖さと嬉しさの二つの感情が両方あった。
「アッ、っ、っ~……ぅぐぅ」
「すごいしまる、ぐって、はぁ。前も気持ちいよな、ニコ」
体を縮こまらせて、ぶるぶる震えて、あまりの快感に体が硬直して涙が出てくる。
それでもその中をかき回すように突き上げられると、もうダメで、そんなセックスを時間を忘れて僕らは続けたのだった。
78
お気に入りに追加
615
あなたにおすすめの小説
乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?
シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。
……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
悪役令嬢はモブ化した
F.conoe
ファンタジー
乙女ゲーム? なにそれ食べ物? な悪役令嬢、普通にシナリオ負けして退場しました。
しかし貴族令嬢としてダメの烙印をおされた卒業パーティーで、彼女は本当の自分を取り戻す!
領地改革にいそしむ充実した日々のその裏で、乙女ゲームは着々と進行していくのである。
「……なんなのこれは。意味がわからないわ」
乙女ゲームのシナリオはこわい。
*注*誰にも前世の記憶はありません。
ざまぁが地味だと思っていましたが、オーバーキルだという意見もあるので、優しい結末を期待してる人は読まない方が良さげ。
性格悪いけど自覚がなくて自分を優しいと思っている乙女ゲームヒロインの心理描写と因果応報がメインテーマ(番外編で登場)なので、叩かれようがざまぁ改変して救う気はない。
作者の趣味100%でダンジョンが出ました。
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!
八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。
『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。
魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。
しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も…
そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。
しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。
…はたして主人公の運命やいかに…

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる