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夜の静けさの中で 8
しおりを挟むルシアンのものがゆっくりと俺の入口を広げて、いつもよりも配慮された速度で入ってくる。俺はその感覚を堪えようと何とか息を止めずにゆっくりと呼吸をして快感を逃がす。
「はー、っ、ふ、っ……」
同じ速度で入ってくると段々ときつく腹を押し上げられている感覚が強くなる。足が震えて、中に入ってきたものを押し返そうと無意識に腹に力が入ってしまう。
しかし、ルシアンはがくがくと俺が震えていても挿入を止めることは無くて、咄嗟に、腰を引いて、そのまま奥まで挿れようとする彼に抗った。
少しだけでいいから、このまま止まっていてほしかった。正直声を出さないというのはきつい。
AVの隠れてセックスをするなんていうシチュエーションがあるが、あんなものよりずっと緊迫感があって、それが見知った自分の庇護しなければならない相手であるとプライドというのもあるし、とにかく少し待ってほしくて、ぐっと腰を押さえられるのに抵抗して、体を持ち上げようとした。
「っ、るし、あ、まっ」
声を我慢したまま小さな声で彼に要望を伝えることは難しくて、要領を得ない単語だけを発して、彼に懇願する。
しかし、見上げたルシアンの方も苦し気で、一度やめて欲しいというのも可哀想に思えた。
けれどもほんの少しでいいから待ってと彼に言おうと、体を持ち上げて彼の耳元に口を寄せようとした。
不意に膝にするっと布が触れてズルっと滑って座面からずり落ちた。きっと先程脱がせたコートだと思うのだがそんなことは些末なことだった。
「っ~、ぁ、あ゛っつつ」
片膝が椅子からずり落ちて、支えを失って重力に従ってそのまま彼の上に腰を落とした。突然の事態に大きな声を少し漏らしたが、ルシアンが咄嗟に俺の口を強く覆うように掴んで、声を発することもできずにもだえる。
びりびりと腰の奥に響くような感覚がして、足ががくがく震えて力が入らなくなる。いつもは無理やり挿れられないと入らない一番奥まで届いてしまって、まったくどうしたらいいのかわからない。
普段と違う体位だからこその事態だと思うのだが、へたに抜こうとしてもすでにいっぱいいっぱいなので自分で動くこともできない。
腹の中は一応内蔵であり、そんな部分をこうして貫かれていると、ベッドで二つ折りにされて押しつぶされそうな時よりも、こうして自由が利く不安定な場所の方がよほど怖かった。
「リヒトっ、声、我慢、だろ?」
口を押えられたまま、小さな声でささやかれて、分かってると大きな声で反論したくなった。
そんなのは俺だってわかってる。でも呼吸は落ち着かないし、動けもしない。ただ腹のなかが熱くて、圧迫感があって、彼としっかり繋がってしまっていてどうしようもない。
「あと、あまり抵抗しないで、くれ、へたをして、君に痛い思いは、してほしくない、から」
「っ、ぅ……、ぅ」
言い聞かせるように、低い声で呟かれて脳みそに刺激が伝わる。
「身をまかせて、ほしい。……そうだ」
そうして彼は何かを思いついたとばかりに、俺を抱きかかえたまま少し腰を浮かせて座り直す。その些細な動きにもなかが擦れてくぐもった声を出す。
しかしルシアンに口を覆われているのでそれほど大きな声にはならない。
「少し、動くから、大人しく、な」
抱きしめるようにして体を押さえつけられて、このまま動かれたら堪ったものではないと足場をさがすけれど、どうやら先程よりもルシアンは浅く腰かけているようで、膝を乗せる場所がない。
「ぅっ、ン、ぅ~っ」
そんなことに今更気が付いて、足をばたつかせるが、それを落ち着かせるみたいに背中をトントンと優しくタップされて、腹が立つ。
これでも必死に声を我慢してやっているというのに、ルシアンと来たら抵抗できないようになんてしてきて、俺に酷だとは思わないのだろうか。
それに、こうして口が押えられていると、彼の手が大きくて鼻まで少し塞いでしまって苦しい。何とか吸っても声も出せないし、何も言えない。でも腰が緩く動かされて、いつもの容赦ない抽挿とはまた違った苦しいような気持ちいいような感覚が襲ってくる。
「っっ~、ぅ、う゛、っ、」
「……っ。はぁ」
苦し気な吐息が聞こえて、腰が揺らされる。ずっと腹のなかが苦しいのが続いて、圧迫感が与えられて、押さえられぐずぐずと慣らされていくのがなんとも言えない。
さらに、押しつぶされた前立腺がじわじわ快楽を呼び起こして、自分の性器が熱を持って感じると、同時に下腹部に力が入って中をきゅっと締め付ける。
それに応じるように俺の中に入っているものが大きくなって、トントンと軽く最奥を突かれる。
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