【完結】契約結婚しましょうか!~元婚約者を見返すための幸せ同盟~

ぽんぽこ狸

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 今度は、ウォーレスの意外な本性と姉のぼんやり具合を聞かされたダイアナは呆れた様子でイーディスを見ていた。

「お母さまやお父さまに似て、あまり私生活を大切にしない人だとわかってはいたけれど……はぁ、あたしびっくりよ。お姉さま。それならアルバート様はお姉さまの恩人なのね」

 呆れつつも納得した様子で、難しい顔をやめて、瞳をキラキラとさせる。

「それにしても、さらっと助けてくれるなんてロマンスだわ!素敵! あたしの質問に答えを濁していたのは、勝手にお姉さまの事情を話すのは、良くないと思っていたからなのね」
「ええ、良い人よ」
「たしかに、魔法使いの中でも水の魔法持ちは優しくて魔法使い以外の貴族からもよくモテてるって聞くわ。お姉さまみたいな人には心配してくれるような優しい人が合っているのかもしれないわ」

 丁寧に説明したおかげか、アルバートへの疑念もだいぶ払拭することが出来た様子で、ダイアナは彼を誉める。

 それになんだか少し誇らしくなるような嬉しいようなそんな気分になった。

 うんうんとうなづいて、それで元の話題に戻るが、いったい何を言い淀んでいたのかと気になる。すると彼女もそのことを忘れてはいなかったようで「それで……あたしが言おうとしていたことなんだけれど」と続ける。

「いたずらに疑いを持たせるだけだったらよくないと思ったけど、もしかすると、前の婚約者と関わる重要な事に繋がるかもしれないから……」
「……わかった、私も慎重に動くと約束します」
「ええ、そうして」

 きちんと前置きをして、ダイアナは、言葉を選びつつも続きを言った。

「昨日、お姉さまが急用で出かけた後に、彼が人目を憚ってこのお屋敷を出ていくのをみた侍女がいるのよ。あたしがそちらの屋敷に行くときにはもう戻ってきていて事情を説明してくれたけれど……なにかアルバート様から聞いている?」

 ……彼が一人で外出? それもまだ事態がはっきりしていないときに……?

「いいえ、そんな話は聞いていないわ」
「やっぱりそうなのね。隠し事が一切ない方が健全だとは思わないけれど、それでも、気になる行動よね」

 ダイアナの言葉に頷きつつも、イーディスは思考を巡らせた。

 アルバートはあまり嘘や隠し事が得意なタイプにも見えないし、イーディスとの契約結婚をそれなりによく思ってくれていると思う。

 今の生活にも不安はないはずだ、それでもイーディスに知られないように行動をする理由は因縁が深いであろう婚約者のことぐらいしか思い浮かばない。

「そうね、話してくれてありがとう。ダイアナ、元からこういう事は起こるかもしれないと思っていたし、まずは疑うのではなくてアルバートに直接話を聞いてみるわ」
「それがいいかもしれないわ。あたしの方こそ話をしてくれてありがとうお姉さま。ミオ様の事もあるのだし、あたしもあまり学園にいなくても何とかなるからしばらくは実家にいるわ。いつでも、相談に乗るからね」
「ふふっ、ありがとう心強いわ」

 彼女の気遣いに良い妹を持ったと思う。けれど少しだけ心は重かった。アルバートの不審な行動の意味を問うとして、勘違いでなければ、何かしらの良くない事態が露呈するだろう。
 
 ……そうなったとき、私は、彼に怒ったらいいのか、それとも、悲しんだらいいのかわからないわ。

 それに彼自身も負担に思うだろう。

 それはやっぱり可哀想な気がしたけれども、まずははっきりさせない事には始まらない。何とか気持ちを持ち直してイーディスは自分の屋敷に戻るのだった。


 屋敷に戻ると彼は今の時間は勉強に当てているらしく、書斎でオルコット侯爵家や領地の事をノートに書き写して覚えている様子だった。

 婿に入ってもらったので領地の管理や、税収、国への申告など、いろいろやることがある。しかしそれらは、オルコット侯爵や侯爵夫人からゆっくりと引継ぎをすればいい。

 そのための基礎知識さえ入っていれば、今の魔法使いとして来る依頼をこなしつつイーディスと屋敷で生活をしていれば問題ない。稼ぎは領地の収益もあるし、イーディスも自分の仕事や王族からの些細な依頼で色々と稼いでいる。

 それぞれが自由に使えるお金も時間も割と多いのが現状だ。

 書斎の扉から彼をのぞいてみて肩にルチアを乗せたイーディスがひょっこり顔を出すとぱっと顔をあげて「おかえり、どうでした?」と優しく聞いてくる。
 
 その表情はいつもと変わらない困ったような笑みだ。それにイーディスも持ち前の気さくな笑みをうかべてミオの件を了承してくれたことを話す。

 イーディスに内緒でとった行動の意味を察せられる彼の変化はないだろうかと注意深く見てみるが、帰ってきたときにも何も気にならなかったし、話を聞いたからと言って何かわかるようになるわけでもなかった。

 それから落ち着いて話せる時間までは、それぞれ別の事をして過ごした。



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