悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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この世界で生きていく……。9

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 寮へ戻り簡単にお化粧や髪型を直し、時間を確認して、ローレンスの部屋へと向かう。ちょうどパーティが終わる時間に部屋へ呼び出されていた。

 これを私は、ローレンスはパーティに出て、それから私と会いたいんだなと思っていたのだが、多分パーティでは、王子らしくしているのが優先で、私とは身分差であまり気軽に話ができないだろうと言う事の埋め合わせなのだと思う。

 実際に、先程も、ローレンスだけは特別扱いで、気軽に立食パーティーを楽しむと言うよりは、彼のための特別席にチームごとに挨拶に行くような形だった。

 ……確かに少し距離を感じて寂しいけれど、そんなに気にしなくていいのにな。

 そう思いつつ、侍女ちゃんに案内されてローレンスの部屋へと入る、けれど居室には彼の姿は無く、バルコニーへと続く窓にアーネストとユージーンが護衛として、立っていて、あとはソファに並んで座る二人がいる。

「…………こんばんわ、ララも来ているの?って……どっちがどっち?」

 並んで座る彼らを見て、私は思わずそう聞いてしまった。なんせ、両方とも制服を着ていて、外見がまったく瓜二つなのだ。

 今までは、制服を着ている方がコーディで、そうじゃない方がカティだと、覚えていたのに、これではまったく差異がない。

「姉さん、あ、じゃなくて……クレア、バッチを見ればわかる、カティは今年から入学だから」
「そうだよクレア、学園で見ても間違えないでね、周りの学生に変な目で見られるから」
「う、うん、頑張るよ」

 コーディが自分のプラチナバッチをさしてそう言う。カティは目の前に置かれている紅茶を一口飲んで、ニコリともせずに言う。

 彼女達は、団体戦の事件の後に、やっと、エリアルとクラリスから一から十まですべてを説明された、今では二人は私の秘密も知っているし、私も彼女達から、呪いの力と固有魔法の関係に付いてなどの話を聞かせてもらった。

 ララが彼女達について責任を持つといったことにも驚いたが、私は何より二人の容姿に驚いた。原作では立ち絵も無く、よく似た双子だよ言うことは知っていたが、これ程までにそっくりだと違いがなければ見分けがつかない。

 ちなみに私がクラリスでは無いと知ってから、顔を合わせれば、話をする仲であるのだが、多分あまり好かれてはいないと思う。

「ララはもうすぐ戻ってくるよ、この後、私達の入学祝いに外に連れていってくれるって、言ってたし」
「貴方はパーティに参加してきたんだ? あんなもの疲れるだけじゃない?」
「ん? 疲れるけど、知り合いばっかりだからね、割と気楽で楽しいよ」

 自分が話をしているのがコーディなのかカティなのか分からないが、答えているとタイムリーにララがバルコニーから戻ってくる。

 そうすると、今までクールに話をしていた二人が立ち上がって、ララの元へと向かう。

「おまたせ、カティ、コーディ」
「全然っ待ってない、それより早く行こう? 私、明日の初戦に備えてポイントとか聞きたいな」
「いいわよ! コーディは、どこのお店に行きたいとかある?」
「ボクは別になんでもいい、二人が好きなのにして、ララ」

 二人はララを挟むようにして、両サイドから話をして、先程私と話をしていた時とはまったくの別人である。

 コーディもカティも、冷静に難しい顔をしていれば年相応に見えるのだが、笑顔になると途端に幼く見えた。

 それもまったく同じ声、まったく同じ顔なので見ていると不思議な気分だ。

 するとララがこちらに気が付き、そうするとツカツカとこちらに来て、おもむろに私をキュッと抱きしめた。

「うおっ」
「クレア! ドレスすっごく似合っているじゃない、わざわざブティックまで行って生地を指定した甲斐があったわ」
「え? ん? あれ、ローレンスから贈られたドレスなんだけど?」
「ローレンスも一緒に選んだわよ? 可愛い貴方が見たくてね」

 笑顔を見せる彼女の顔にはまったく屈託がない。きっとまったくこの言葉に嘘は無いのだろう。

 それに、二人に選んで貰ったと思うとローレンスだけから貰ったより二倍嬉しい。けれど、二人が私の衣装について吟味しているところを思い浮かべて少し気恥ずかしい気持ちだ
 
「あ、ありがとう」
「いいえ、お礼には及ばないわ。私も、自分で選んだ服に身を包んでいるあなたが見られて満足だから」

 ピンクの瞳を細めてけれどまっすぐ言われると、もうダメだ、彼女はただでさえ主人公力でキラキラしているというのに。

「あぁ、でも少しだけ、不満なことがあるわ。こんなに可愛い姿をパーティーで色んな子に晒して来たんでしょう? 面白くないわ」
「え、う、うん?」
「今度、私からも衣装を贈るわね、それは私とローレンスの前だけで着るのよ、約束ね」
「は、はーい」

 新しいタイプの束縛に、私は、思考を停止させて返事をした。彼女は束縛されるのは嫌いだというくせに、人にはこういう事を言うのだが、まぁ、いい。

 別に私は嫌では無いが、問題は。

 ララの後ろにいる双子を見ると、彼女達は、じとっと私を見ていて、何やら言葉を交わしている。
 ……多分、双子が私の事あんまり好きじゃないのって、ララが私を好きなのへの嫉妬だよね。
 
 ……なんだかな、どうしたもんか。

「クレア、ローレンス殿下が待っているんじゃなかった? 早く行った方がいいよ」
「!……それもそうね、私たちはこれから予定があるからもう行くけれど、貴方はゆっくりして行ってね」
「うん、またね、ララ、コーディ、カティ」

 ララの両手を引くようにして、去っていく三人にそう声をかけて、見送る。

 それから私は、ヴィンスもユージーン達と待機して貰って、バルコニーへと出た。



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