悪役令嬢に成り代わったのに、すでに詰みってどういうことですか!?

ぽんぽこ狸

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人を襲う計画……。4

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 父に剣を習い始めて数カ月がたった頃、庭で父に作ってもらった剣を振っていると、町の武器屋の奥さんが子供を連れてやってきた。
「こんにちわー。サニーいますか?」
「はい。少しお待ちください。ママー!シン兄ちゃんののママが来たよー」
子供の名前はシン。一応、俺より2つ年上らしい。短髪の半そで短パンの前髪が上がっているやんちゃ坊主って感じだ。また、マルチダはふくよかでおしゃべりが好きそうな正に”おかん”って感じである。
「はーい。あ。マルチダさん、いらっしゃい」
「旦那に頼まれてた剣のメンテナンスが終わったから持ってきたよ。」
「それは、ありがとうございます。」
 …
そんな感じで奥様同士の話が始まった。長そうなので俺は、トレーニングの続きをしようと庭へ向かった。その時、
「おーい、タカミ。」
”ん?誰か俺の事呼んでる?あ、シン兄ちゃんか”
「なーにー?」
「騎士ごっこしようぜ!」
「うん。」
「よし!かかってこい!」
そんな感じで、子供通しの”チャンバラ”が始まった。
俺は、父に習った型通りにシン兄ちゃんの剣を受け流す。
一方、シン兄ちゃんは、我流なので無茶苦茶に振り回してくる。その剣筋は単純なものなので俺にはかすりもしない。これも、能力差なのかな。
「はぁはぁ…なんで当たらないんだよー!!」
「えっとね。シン兄ちゃんの剣筋は無茶苦茶に振り回してるだけだから避けやすいんだ。たまに、いい剣筋で来るけど、単純だから受けやすいんだよ。」
「むむ!タカミのくせに生意気だー!おりゃ!えい!えい!」
タカミのくせにッて…昔どっかで聞いたセリフだな。
そんなやり取りをしながら、夕方まで”チャンバラ”続いた。
「シン!そろそろ帰るよ!」
お。長い世間ミーティングが終わったらしい。マルチダさん、なんか“つやつや”してる感じがする。女性にとっておしゃべりはストレス発散なんだな。
「はぁはぁ!きぃー、なんか悔しい!」
シンは本気で悔しがってる。まぁ、俺は年下だしね。そういう時期なんだろうな。
「タカミ君はパパに剣を稽古してもらってるんだから当たり前じゃない!」
「うん、毎朝、パパに稽古してもらってる」
「えー、じゃあ、俺も稽古してほしい!」
「何言ってるの!ご迷惑でしょ!」
まぁ、そうなるわな。でも、一緒に鍛錬できれば、張り合いもあるし切磋琢磨できそうだ!
「シン兄ちゃん、シン兄ちゃんが”剣を習いたい”って言ってたってパパに聞いてみるよ。」
「本当か!タカミ。頼んだぞ!じゃあ、明日の朝、来るからな!」
え、聞いとくって言っただけなのに剣の鍛錬を一緒にする事になっているし。まぁ、いっか。
「じゃあ、また明日な!」
そう言いながら、シンは母親と共に帰っていった。
しばらくして、父が返ってきた。
「ただいまー。腹減った!」
「おかえりなさーい。」
「あ、パパ、お帰り」
そう言いながら、父は浴室へと向かった。
「タカミ、風呂入るぞ!一緒に入るか!」
これも、いつもの日常。こんな普通の事が幸せなんだなっと感じる。
「今日ね。シン兄ちゃんが来て、騎士ごっごした。」
「お!そうか!楽しかったか?」
「うん。でもね。シン兄ちゃん、なんか悔しそうだった!」
「そかそか、そりゃ。タカミはちゃんとした剣術を習ってるんだからな。でも、稽古を怠るとすぐに追い抜かれちゃうぞ!」
「うん。僕、一生懸命練習する!」
「それでね。シン兄ちゃんも一緒に剣の稽古したいって。」
「ん?別にいいぞ!相手がいたほうが稽古になるしな。」
「やったー!じゃあ、明日からシン兄ちゃんと一緒に稽古できるね!」
「じゃあ、明日から二人まとめて面倒見るか!」
と、キッチンから母の声が聞こえる。
「ご飯の用意ができてるよー。いつまで入ってるの?」
「はいよー。今出る!」
父はそう言うと、俺を肩までつけて100数えさせた。
この習慣は、どの世界でも共通なのだ。
ご飯を食べ、寝る前にいつものように魔法の鍛錬をして寝た。
翌日、シンが家にやってくる。
「タッカミー!」
「あ、シン兄ちゃん」
「よ!シン。お前も稽古したいらしいな」
父がシンに問いかける。
「はい!お願いできますか?」
「いいぞ!ほれ、お前の木刀だ」
父は、シンの分の木刀も用意してくれていた。
「よし、じゃあ、これからビシビシいくから音を上げるなよ。」
『はい。よろしくお願いします。』
そう言って、稽古が始まった。
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